臨床神経学
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50 巻, 8 号
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総説
原著
  • 青木 淳哉, 井口 保之, 小林 和人, 坂井 健一郎, 芝崎 健作, 坂本 悠記, 木村 和美
    2010 年 50 巻 8 号 p. 547-555
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
    経静脈的血栓溶解療法(recombinant tissue plasminogen activator[rt-PA]静注療法)中の経頭蓋超音波検査をもちいた連続的な評価(transcranial Doppler[TCD]連続モニタ)の有用性と安全性を検討した.対象はMagnetic Resonance Angiographyで中大脳動脈水平部(M1)閉塞と診断し,TCD連続モニタがおこなえた連続16例.TCD連続モニタで再開通を確認したのは8例(再開通群50%,年齢70[55~81]歳,男性7例[88%],NIHSSスコア18[12~22]点)で8例(非再開通群50%,年齢72[62~79]歳,男性6例[75%],NIHSSスコア19[15~23]点)では再開通がみられなかった.症候性頭蓋内出血は0例であった.TCD連続モニタとMRAでの再開通診断の一致率は88%であった(κ=0.75,P =0.002).3カ月後の転帰良好は非再開通群にくらべ再開通群に多かった(63% vs. 0%,P =0.026).rt-PA静注療法中のTCD連続モニタは再開通現象の評価および転帰の予測に有用である.
症例報告
  • 齊藤 博彦, 大塚 邦紀, 高橋 秀暢, 三浦 弘之, 田口 丈士, 南里 和紀
    2010 年 50 巻 8 号 p. 556-560
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性である.亜急性に全身の舞踏運動が出現しハロペリドールを投与されたが徐々に増悪し当科紹介入院となった.MRI T2強調・FLAIR画像で両側基底核に高信号をみとめ,原発性肺腺癌にともなうparaneoplastic choreaと診断した.抗CRMP-5抗体をふくめ抗神経抗体は陰性であった.ステロイドパルス療法,プレドニゾロン内服治療,放射線併用化学療法をおこない,舞踏運動,両側基底核高信号は改善,縦隔リンパ節の腫脹も縮小し,発症3年を超えて安定している.Paraneoplastic choreaには比較的予後良好な症例も存在し,舞踏運動患者の診療では鑑別疾患として重要と考えられた.
  • 村田 佳子, 岡本 智子, 近土 善行, 千原 典夫, 古澤 嘉彦, 村田 美穂
    2010 年 50 巻 8 号 p. 561-565
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は35歳時左手の筋力低下で発症し,さらに右手筋力低下を呈した多巣性運動ニューロパチーの41歳男性である.免疫グロブリン大量静注療法(high-dose IVIg;0.4g/kg/day 5日間連日投与)をおこない手指筋力の改善をみとめたが,重度の汗疱が出現した.抗アレルギー剤,ステロイド剤の併用にても汗疱の抑制は困難でIVIgを中止したところ,手指筋力の低下が進行した.IVIg 0.4g/kgを1日投与に減量し,毎月1回定期的に投与したところ,汗疱の出現はわずかでしかも筋力低下の進行を抑制できた.定期的免疫グロブリン少量静注療法は,IVIgの臨床効果が高い症例では副作用を減らし寛解維持に有効と思われた.
  • 本田 省二, 稲富 雄一郎, 米原 敏郎, 橋本 洋一郎, 平野 照之, 内野 誠
    2010 年 50 巻 8 号 p. 566-571
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は16歳,女性である.交通事故で当院に搬送された.搬入時には意識清明であり,その他神経学的に異常なく,頭部CTで脳実質は正常であった.左大腿骨骨幹部骨折,軽度の左肺挫傷をみとめ,来院約2時間後に全身麻酔下に左大腿骨骨折部のデブリドマンと鋼線牽引術を施行した.術後麻酔からの覚醒が悪く,意識レベルが徐々にJCS III-100まで低下.来院約36時間後の頭部MRI拡散強調画像(DWI)で,両側大脳白質を中心にびまん性かつ散在性の高信号域をみとめ,脳脂肪塞栓症と診断した.DWI異常像は3週後にはすべて消失し,症候も緩やかに改善した.頭部MRI-DWIは診断と病態把握に有用であると考える.
  • 北村 英二, 濱田 潤一, 鈴木 康輔, 阿久津 二夫, 菅 信一, 望月 秀樹
    2010 年 50 巻 8 号 p. 572-577
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は,左第1指,2指の筋力低下で発症した73歳の男性である.左の第1指,2指において橈骨・尺骨・正中神経いずれの支配筋も軽度の筋力低下をみとめたが,感覚障害をふくめ他の異常はみとめなかった.頭部MRIで右precentral knobに急性期脳梗塞をみとめ,各種検査より心原性脳塞栓症と診断した.大脳皮質局在病変による,手指に限局した運動麻痺(pure motor isolated finger palsy:PMIFP)の報告例はまれで,末梢性の単麻痺と診断された症例の中には本症例と同様の原因によるものが存在すると考えられる.PMIFPを呈する症例では大脳の局在性病変も念頭におく必要がある.
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