臨床神経学
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62 巻, 11 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
症例報告
  • 山下 魁理, 立石 洋平, 金本 正, 上田 真由, 中村 祐太, 辻野 彰
    2022 年 62 巻 11 号 p. 839-843
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/26
    [早期公開] 公開日: 2022/10/26
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    甲状腺クリーゼを呈した急性期脳梗塞2例を報告する.症例1は43歳男性.左片麻痺で発症し,右中大脳動脈が閉塞していた.心房細動と左房拡大が検出された.再開通療法で良好な再開通が得られた.症例2は66歳女性.重度の両側中大脳動脈狭窄を以前から指摘されていた.構音障害,右不全片麻痺で発症し,MRIで左前頭葉から頭頂葉に急性期脳梗塞があった.いずれの症例も重度の甲状腺クリーゼ状態であり,さらにプロテインC活性の低下と,血液がうっ滞する動脈性病変があった.甲状腺クリーゼは,プロテインC活性低下を惹起することで,脳梗塞発症に関与する可能性がある.

  • 潟山 高士, 黒田 順一郎, 大田 和貴, 井上 泰輝, 植田 光晴, 武笠 晃丈
    2022 年 62 巻 11 号 p. 844-849
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/26
    [早期公開] 公開日: 2022/10/26
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    症例は65歳女性.10年ほど前から両下肢の筋力低下を自覚しており,既に筋強直性ジストロフィー1型(dystrophia myotonica type 1,以下DM1と略記)と診断されている長男の通院に同伴した際,顔貌,体格などからDMを疑われた.初診時に筋萎縮に加え把握ミオトニーを認め,遺伝子検査からDM1と診断された.全身の腫瘍性病変スクリーニングで行った頭部MRIで右側頭葉に辺縁不整のリング状増強効果を伴う腫瘍性病変を認めた.同病変は1か月の経過で増大傾向を認め,開頭腫瘍摘出術を施行し病理診断は膠芽腫であった.DMは全身性疾患のため周術期管理の配慮も必要である.DM患者のがん発症リスクは一般集団の約2倍とされるが,膠芽腫との合併は稀であり報告する.

  • 高橋 祥也, 谷口 昌光, 谷口 央, 冨樫 厚仁, 鈴木 光典
    2022 年 62 巻 11 号 p. 850-855
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/26
    [早期公開] 公開日: 2022/10/26
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    症例は統合失調症と糖尿病を有する71歳女性.右化膿性膝蓋前滑液包炎のため服薬が困難となり向精神薬を中断した.中断5日後から40°Cを超える発熱,高度の意識障害と鉛管様筋強剛,頻呼吸と高血圧を認めた.向精神薬中断により発症した悪性症候群(neuroleptic malignant syndrome,以下NMSと略記)と診断した.ダントロレンの投与と全身管理で軽快した.本例を含めた向精神薬の中断で発症したNMS本邦報告例についてその臨床的特徴を検討した.向精神薬を中断する際には,NMSを念頭においた診療が求められる.特に早期のNMSの発症は重篤化のリスクを示唆しており,より厳格な管理が必要と考える.

  • 原 賢寿, 大内 東香, 濱中 耕平, 宮武 聡子, 松本 直通
    2022 年 62 巻 11 号 p. 856-859
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/26
    [早期公開] 公開日: 2022/10/26
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    電子付録

    症例は39歳男性である.5歳頃,歩行時に足を底屈させる歩容異常が出現し,6歳時に右手の書痙を,15歳時に発声障害を認めた.16歳時には歩行時に左下肢を跳ね上げるような動作性ジストニアが出現し,19歳時に右下肢にもジストニアが拡大した.頭部MRIには異常なく,レボドパ治療は無効であった.全エクソームシークエンス解析にてKMT2B遺伝子に新規のナンセンス変異(c.433C>T, p.Arg145*)を認めDYT28と確定した.両親には同じ変異はなくde novo変異であった.小児期に下肢のジストニアで発症する例ではDYT1,DYT5(瀬川病)の他,DYT28も考慮すべきである.

  • 黒野 裕子, 鳥飼 裕子, 原 一, 岡村 正哉, 國本 雅也
    2022 年 62 巻 11 号 p. 860-864
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/26
    [早期公開] 公開日: 2022/10/26
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    5年以上経過を追えた抗自律神経節アセチルコリン受容体抗体陽性で自己免疫性自律神経節障害(autoimmune autonomic ganglionopathy,以下AAGと略記)と診断された3例の経過を報告する.1例目は20代女性で慢性経過の羞明・便秘・無月経を認めたが,血漿交換後,症状は緩解した.感冒を契機に一度再発したが,2度の妊娠による悪化はなかった.2例目は60代男性で急性の起立性低血圧(orthostatic hypotension,以下OHと略記)と精神症状で発症した.再燃を繰り返し治療に難渋したが,経過8年時,特に原因なく状態が安定した.3例目は80代女性で慢性経過のOHで再燃を繰り返した.経過中,OHによる転倒で大腿骨を骨折し歩行困難となった.AAGの長期観察例の報告は少なく,臨床経過を観察する上で貴重と考え報告する.

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