60歳男性.主訴は呼吸困難.30歳代で心拡大,42歳時より心房細動,心不全を認め,弟とともにfour and a half LIM domains 1(FHL1)遺伝子変異を認めた.60歳になり食思不振と呼吸困難を自覚,心不全の増悪が疑われ循環器内科へ入院した.血液ガスにて呼吸性アシドーシスを認め,人工呼吸器を装着した.筋力は肩甲帯筋でのみ低下し,肘,足首,脊椎に関節拘縮を認めた.Emery–Dreifuss型筋ジストロフィー様のミオパチーにより筋力低下の自覚なく呼吸不全を呈した兄弟例と診断し,兄は気管切開を施行,日中は人工呼吸器を離脱するようになり退院した.FHL1変異では主徴として呼吸筋障害をきたすことがあり,心筋症による心不全と鑑別する必要がある.