臨床神経学
Online ISSN : 1882-0654
Print ISSN : 0009-918X
ISSN-L : 0009-918X
59 巻, 6 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
総説
  • 大橋 十也
    2019 年 59 巻 6 号 p. 335-338
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/22
    [早期公開] 公開日: 2019/05/29
    ジャーナル フリー

    ファブリー病はαガラクトシダーゼAの欠損によりグロボトリアオシルセラミドなど糖脂質が,全身の様々な細胞,組織に沈着し,非常に多彩な症状を呈する疾患である.小児期には手足の痛み,発汗障害,被角血管腫,などの症状が出現し,成人になると腎障害,心障害,脳血管障害などの症状が出現する.以前は,対症療法しか出来なかったが,2000年初めより欠損する酵素を補充する治療法が臨床試験を経て,承認された.現時点で二つの製剤が承認されている.承認後,10年以上を経て,長期の安全性有効性を示すデータが発表された.また今年の8月には酵素を安定化させる薬理学的シャペロンも承認され,新しいコンセプトに基づく経口薬として注目を浴びている.

症例報告
  • 近藤 敏行, 猪狩 龍佑, 佐藤 裕康, 伊関 千書, 石澤 賢一, 鈴木 匡子
    2019 年 59 巻 6 号 p. 339-344
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/22
    [早期公開] 公開日: 2019/05/29
    ジャーナル フリー

    傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurological syndrome; PNS)の治療には癌の治療と免疫療法がある.今回,前立腺癌に対する精巣摘除術1年半後に小脳症状が出現し,免疫療法が繰り返し有効だった80歳男性例を経験した.亜急性に進行する構音障害と歩行障害で発症し,小脳失調と意識障害,呼吸不全を呈した.脳脊髄MRI,髄液検査は異常なく,検索し得た範囲では既知の抗神経抗体は陰性であった.補助換気と経管栄養を要したが,ステロイドパルス療法と単純血漿交換(plasma exchange; PE)で改善した.その後も前立腺癌進行で死亡するまで,約2ヶ月間隔で3度増悪したが,その度にPEで改善した.前立腺癌に伴うPNSは稀で,免疫療法への反応が繰り返しみられた点が特徴的と考えた.

  • 米元 康祐, 野村 俊一, 清水 愛, 坂尻 顕一, 新田 永俊
    2019 年 59 巻 6 号 p. 345-348
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/22
    [早期公開] 公開日: 2019/05/29
    ジャーナル フリー

    症例は69歳女性.先行感染後に両側眼瞼下垂,全外眼筋麻痺,運動失調,四肢腱反射低下が出現し,Miller Fisher症候群(MFS)が疑われた.重症筋無力症(myasthenia gravis; MG)の除外のためエドロホニウムテスト(edrophonium test; ET)を施行したところ,眼球運動は改善しないものの眼瞼下垂に改善を認めた.症状の日内変動がないこと,低頻度反復刺激誘発筋電図で減衰現象がないこと,抗アセチルコリン受容体抗体陰性であったことから,MGの合併は考えにくくET偽陽性と考えた.後日,抗GQ1b抗体陽性からMFSと確定診断した.ET偽陽性は他疾患でみられるが,MFSでの報告例はなく,貴重な症例と考えられた.

  • 横田 優樹, 見附 和鷹, 南 紘子, 森田 昭彦, 髙橋 宏通, 亀井 聡
    2019 年 59 巻 6 号 p. 349-355
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/22
    [早期公開] 公開日: 2019/05/29
    ジャーナル フリー

    症例は17歳男性.顔面と四肢の異常感覚が出現し,急速進行性の失調性歩行のため約1週間後に入院.神経伝導検査から軸索型の急性感覚性ニューロパチーと考えられた.胸部X線とCTで縦隔リンパ節の腫大を認め,胸腔鏡下生検でホジキンリンパ腫と診断し,傍腫瘍性神経症候群として感覚性ニューロパチーをきたしたと考えられた.経静脈的免疫グロブリン療法とステロイドパルス療法では治療反応を認めなかったが,ホジキンリンパ腫に対する化学療法の開始後すみやかに神経症状が改善した.ホジキンリンパ腫による傍腫瘍性感覚性ニューロパチーでは腫瘍のコントロールにより神経症状の改善が見込まれることから,腫瘍の検索と早期治療が肝要である.

  • 田中 里佳, 後藤 聖司, 安田 光宏, 高松 学文
    2019 年 59 巻 6 号 p. 356-359
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/22
    [早期公開] 公開日: 2019/05/29
    ジャーナル フリー

    患者は85歳女性である.突然,呂律の回り難さが出現し当院へ救急搬送された.診察上,構音障害を認め,口腔内を観察すると舌の腫脹が示唆され症状に影響している可能性を疑ったが,開口が不十分で評価が困難であった.急性発症であり脳血管障害の可能性は否定できず,緊急で頭部MRIを施行した.画像上,脳実質内に異常は認めなかったが,T2強調画像矢状断で舌,軟口蓋の浮腫を認めた.入院翌日には舌腫脹,構音障害は軽快した.2か月前からアンギオテンシン変換酵素阻害薬を服用しており,血管性浮腫による症状と診断した.急性の構音障害の鑑別診断において,血管性浮腫による舌腫脹の可能性も念頭に置き診療にあたる必要がある.

  • 澤井 大樹, 細川 隆史, 重清 太郎, 小川 将司, 佐野 恵理, 荒若 繁樹
    2019 年 59 巻 6 号 p. 360-364
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/22
    [早期公開] 公開日: 2019/05/29
    ジャーナル フリー

    症例は84歳女性.腎細胞癌に対しニボルマブが投与された13日後より複視,眼瞼下垂,四肢脱力,嚥下障害が出現し,高CK血症を伴った.塩酸エドロフォニウム試験及び反復刺激検査での漸減現象から重症筋無力症と診断した.抗アセチルコリン受容体抗体は陰性であった.IVIg及びステロイドの投与にてCK値は正常化したが,身体症状は改善せず,呼吸不全で死亡された.剖検にて,腸腰筋と横隔膜の筋線維周囲にCD8陽性T細胞を主とした炎症細胞の浸潤が認められ,少数のCD4陽性T細胞も観察された.心筋に炎症細胞の浸潤を認めなかった.ニボルマブ投与後の筋炎合併重症筋無力症の剖検例は報告されておらず,貴重な症例と考えられた.

  • 山下 彩, 德田 昌紘, 松尾 真稔, 入江 準二, 立石 洋平, 六倉 和生
    2019 年 59 巻 6 号 p. 365-370
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/22
    [早期公開] 公開日: 2019/05/29
    ジャーナル フリー

    症例は67歳男性.上気道炎症状後の複視,腱反射低下,小脳失調症状にてFisher症候群が疑われ当科に紹介された.脳脊髄液検査で細胞数は143/μl,蛋白は854.3 mg/dlと増加し,糖は9 mg/dlと低下していた.細胞診は悪性リンパ腫疑いだった.胸腹部CTで左副腎に腫瘤が検出され同部の病理および臨床所見から二次性中枢神経系リンパ腫(secondary central nervous system lymphoma; SCNSL)と診断された.化学療法が開始され症状は改善した.著明な髄液糖低下を認めた場合,早期から中枢神経系感染症だけでなく腫瘍性疾患も念頭に置いた全身精査を検討すべきである.

短報
地方会抄録
会告
編集後記
feedback
Top