症例は25歳女性,12歳から横紋筋融解症を繰り返していた.妊娠悪阻による飢餓を契機に横紋筋融解症が再燃し,当科紹介となった.血液検査でCK値の上昇と,総カルニチンの低下を認めた.末梢血リンパ球のpalmitoyl-CoA dehydrogenase活性が低値であり,極長鎖アシルCoA脱水素酵素(very-long-chain acyl-coenzyme A dehydrogenase,以下VLCADと略記)欠損症と診断した.ACADVL遺伝子のc.1349G>A(p.R450H)変異に加え,c.1332G>A変異との複合ヘテロ変異を認めた.VLCAD欠損症は脂肪酸酸化異常症の一つで,横紋筋融解症を生じうる.未診断のVLCAD欠損症が妊娠悪阻を契機に診断に至ることがある.
症例は35歳,男性.34歳頃より車の事故を繰り返すようになり,部屋の片付けが困難,言語障害・歩行障害が出現した.初診時は小声,つぎ足歩行拙劣だったが会話,独歩可能でMini-Mental State Examination(MMSE)23点と軽度認知障害を認めた.3ヶ月後に神経学的所見では発語不能,右優位に反復拮抗運動,指タップ拙劣,指鼻試験・踵膝試験拙劣,起立・歩行不能と亜急性に進行した.頭部MRIで小脳萎縮を認めた.Seizure-related 6 homolog like 2(Sez6l2)抗体が陽性でありSez6l2抗体関連自己免疫性小脳失調症と診断した.免疫療法にて症状の進行は停止し若干の改善を認めた.亜急性に進行する原因不明の小脳失調症ではSez6l2抗体測定と免疫療法が必要と考えられた.