臨床神経学
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56 巻, 6 号
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総説
  • 田中 章景, 土井 宏, 國井 美紗子
    2016 年 56 巻 6 号 p. 395-399
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/22
    [早期公開] 公開日: 2016/05/14
    ジャーナル フリー
    近年のゲノムシークエンス技術の進歩により,常染色体劣性遺伝性脊髄小脳変性症の新たな責任遺伝子が次々と明らかになってきている.しかし,同じような表現型を示していても責任遺伝子が全く異なる場合や,逆に同じ責任遺伝子であっても発症年齢,症状,疾患進行が大きく異なる場合があり,診断は容易ではない.また,欧米の特に小児期発症例において同定された遺伝子変異が,本邦の成人発症例においてもみられるのかどうかは,今後も引き続き検討が必要な課題である.本稿では,主として近年本邦でも存在が確認された比較的まれと考えられる劣性遺伝性脊髄小脳変性症について概説する.
原著
  • 山田 茜, 村上 丈伸, 康 英真, 飯國 洋一郎, 森松 暁史, 白田 明子, 伊藤 浩, 宇川 義一, 山根 清美
    2016 年 56 巻 6 号 p. 400-406
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/22
    [早期公開] 公開日: 2016/05/21
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病(Parkinson’s disease; PD)とその関連疾患に対して[123I]イオフルパンSPECT(single photon emission computed tomography)と[123I]MIBG(metaiodobenzylguanidine)心筋シンチグラフィーを併用し,PD診断への有用性について検討した.どちらも陽性の場合はPDの検出感度が70%だったが,どちらか一方が陽性の場合を加えると97%に上昇した.イオフルパンSPECTの疾患特異性は低かった.罹病期間が長いほど,SBR値とH/M比は低下していた.イオフルパンSPECTとMIBG心筋シンチの併用はPDの検出を向上させるが,イオフルパンSPECTはPD関連疾患でも異常を呈するため鑑別は困難である.病期の進行に伴い集積がより低下するため,陰性例では継時的に検討すべきである.
  • 小林 道雄, 石崎 雅俊, 足立 克仁, 米本 直裕, 松村 剛, 豊島 至, 木村 円
    2016 年 56 巻 6 号 p. 407-412
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/22
    [早期公開] 公開日: 2016/05/21
    ジャーナル フリー
    ジストロフィン異常症の女性保因者(変異保有者)の疫学研究に展開することを目的に,全国遺伝子医療部門連絡会議に加盟する104施設に遺伝カウンセリング・健康管理に関するアンケートを行い51施設より回答を得た.2013年度に保因者の遺伝カウンセリングは21施設,57名,遺伝学的検査は15施設,37名に行われていた.保因者の健康問題や発症リスクについては20施設で説明されていたが,心筋症・心不全や定期健診について助言していた施設はそれぞれ14施設であった.女性保因者に関する最新の正確な疫学研究に基づくエビデンスが,患者家族,医療者,社会に広く共有され理解されることが望ましい.
症例報告
  • 佐藤 健治, 小林 万希子, 上田 優樹, 田中 伸幸, 南里 和紀
    2016 年 56 巻 6 号 p. 413-417
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/22
    [早期公開] 公開日: 2016/05/21
    ジャーナル フリー
    症例は81歳女性である.歩行障害を主訴に来院し,頭部MRIにて軽度小脳萎縮,脳血流シンチグラフィーでは小脳に血流低下をみとめ皮質性小脳萎縮症と診断した.タルチレリン水和物は無効であった.発症13年後に抗transglutaminase 6(TG6)IgA抗体陽性が判明し,グルテン失調症と診断した.ステロイド治療と無グルテン食治療は無効で独歩不能となった.大量免疫グロブリン療法にて,ICARS(姿勢・歩行障害)は15から11と改善した.我が国ではグルテン失調症の報告は少ないが,抗TG6抗体はその診断に有用と考えられた.
  • 志賀 裕二, 金谷 雄平, 河野 龍平, 竹島 慎一, 下江 豊, 栗山 勝
    2016 年 56 巻 6 号 p. 418-423
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/22
    [早期公開] 公開日: 2016/05/21
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の女性である.不眠とうつ病で発症し,進行性認知機能低下,具体的な幻視,パーキンソン症状,イオフルパンSPECTで線条体への著明な集積低下,IMP-SPECTで後頭葉の脳血流低下などを認め,レヴィ小体型認知症(dementia with Lewy bodies; DLB)と診断した.亜急性に舌突出と咬舌が出現し救急入院した.レボドパ,ロチゴチン,ロピニロールの高容量投与で,ドパミンD1受容体が長期に刺激状態で,急激な増量で生じた舌ジストニアと診断した.また声門閉鎖を伴う喉頭ジスキネジアによる呼吸困難も出現した.抗精神病薬による薬剤過敏性およびレボドパ過剰投与などが関連した病態と推定され,致死的にもいたる症例であった.
  • 濱谷 美緒, 陣上 直人, 植村 健吾, 仲宗根 眞恵, 木下 久徳, 山門 穂高, 二宮 治明, 髙橋 良輔
    2016 年 56 巻 6 号 p. 424-429
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/22
    [早期公開] 公開日: 2016/05/14
    ジャーナル フリー
    症例は40歳男性.新生児期に遷延性黄疸を認めた.幼少時に自閉症が判明し,カレンダー計算能力をもちsavant症候群を合併した.15歳に幻視と幻聴を認め,30代後半から垂直方向の核上性注視麻痺,四肢脱力発作,小脳失調を認めた.臨床像からニーマン・ピック病C型(Niemann-Pick disease type C; NPC)を疑い,培養皮膚線維芽細胞のfilipin染色からNPCのvariant biochemical phenotypeと考えた.成人期発症のNPCは精神神経症状が主体となり,相対的に症状が軽いvariant biochemical phenotypeを呈することが多いとされ,診断は困難である.NPCは皮膚生検と遺伝子検査により診断可能であり,近年本邦でも治療薬が承認されているため,特徴的な臨床症状を呈する場合は検索を行うことが重要である.
  • 前谷 勇太, 上利 大, 野村 栄一, 植田 光晴, 安東 由喜雄, 山脇 健盛
    2016 年 56 巻 6 号 p. 430-434
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/22
    [早期公開] 公開日: 2016/05/21
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性.58歳で硝子体混濁,68歳で歩行障害と四肢の異常感覚が出現し,遺伝子検査で異型トランスサイレチンVal30Metホモ接合体を認め,家族性アミロイドポリニューロパチーと診断された.両親が血族婚で,叔母が類症疑い.歩行障害が徐々に増悪.76歳時に入院.小脳萎縮の進行と左右対称性のヘモジデリン沈着を認めた.脳アミロイドアンギオパチーで見られる限局型脳表ヘモジデリン沈着症(superficial siderosis; SS)とは分布が異なることから,古典型SSの合併と診断した.Val30Metホモ接合体患者では中枢神経症状を伴うことがあり,その原因として古典型SSの可能性が考えられた.
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