日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
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26 巻, 4 号
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原著
  • 有村 隆明, 境澤 隆夫, 山田 響子, 齋藤 学, 小沢 恵介, 西村 秀紀
    2012 年 26 巻 4 号 p. 364-368
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    自然気胸症例に携帯型気胸ドレナージキットであるソラシックエッグ(以下TE)を用いた外来治療の有用性を検討した.対象は2006年11月から2011年4月までにTEで治療を行った自然気胸患者137例,男性116例,女性21例で患側は右側73例,左側63例,両側1例であった.初発気胸は81例,再発は32例,2回以上の再発は8例,術後再発は16例であった.TEで外来治療を行い得たのは132例であった.84例はTEで治癒,48例はTEの後,手術となった.平均外来治療期間はTEで治癒した場合5.77日,手術となった場合は術前9.75日であった.合併症は1例にTE刺入部の感染,1例にTEの破損,5例にTEの偶発的抜去があったがTEの再挿入は行わなかった.TEを用いた自然気胸外来治療は重篤な合併症も無く,外来通院完遂率も高い.自然気胸患者にとって社会的,経済的負担の軽減の点で非常に有用な治療法であるといえる.
  • 川口 剛史, 東条 尚, 木村 通孝, 内藤 洋
    2012 年 26 巻 4 号 p. 369-372
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    当科では,胸腔鏡下手術の際にLigaSureTM(以下LS)を肋間筋切離に使用している.その有用性を後ろ向きに検討した.2010年5月から2011年6月までに当科で施行した非小細胞肺癌に対する胸腔鏡補助下肺葉切除67症例を対象とした.開胸時,肋間筋切離に従来通り電気メスを使用した24症例と,LSを使用した43症例を比較した.LSを肋間筋切離に使用した43例に関して,肋間筋切離断端は良好にシーリングされ,全例良好な止血が得られた.また,後ろ向き検討ではあるが,肋間筋切離にLSを使用した群で,手術時間の短縮(183.6±31.4分vs 215.2±39.7分,p= 0.0007)と術中出血量の減少(17.2±37.0 ml vs 49.3±71.8 ml,p=0.0181)を認めた.LSを用いた肋間筋切離は,簡便,かつ確実な止血が得られ有用であった.
  • 杉村 裕志, 栃井 大輔, 芦刈 周平, 鬼原 真理子, 北村 由香, 栃井 祥子, 須田 隆, 服部 良信
    2012 年 26 巻 4 号 p. 373-379
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡下手術患者群において持続傍脊椎神経ブロックの有用性を後ろ向きに検討した.完全鏡視下肺切除術を行った連続した92名のうち32名で術中に傍脊椎神経ブロックを施し,術直後から0.2%塩酸ロピバカイン水和物注射液(アナペイン注2mg/ml),全量200 mlを3ml/時で持続投与した.同鎮痛法を行わない患者群と術後疼痛パラメーターを比較した.術当日から翌日の疼痛程度は傍脊椎神経ブロック施行群で有意に低値であった(Visual Analogue Scaleスコア平均値28±16 vs.43±18,p<0.01).疼痛増強時の臨時鎮痛薬投与量は同鎮痛法施行群でより少なかった.同鎮痛法に関連した副作用はみられなかった.胸腔鏡下肺切除術患者において持続傍脊椎神経ブロックは安全で簡便,かつ有効な疼痛緩和法であった.
  • 鈴木 聡一郎, 河野 匡, 藤森 賢, 多賀谷 理恵, 一瀬 淳二, 原野 隆之
    2012 年 26 巻 4 号 p. 380-384
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    75歳以上の縦隔疾患に対する胸腔鏡手術20例を後ろ向きに検討した.術後在院日数は4.6±3.4日,中央値3日であった.術後合併症は2例,また術後譫妄は20例中2例に認めた.胸腔鏡手術は従来の開胸手術と比較し,術後合併症を軽減し在院日数を短縮することが可能であると考えられた.高齢者に対する胸腔鏡下縦隔腫瘍手術は高齢化に伴い今後さらに重要性を増すものと思われる.
症例
  • 福永 亮朗, 北田 正博, 小澤 恵介, 佐藤 一博
    2012 年 26 巻 4 号 p. 385-390
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    症例は40歳男性.呼吸困難を主訴に前医を受診した.呼吸不全,右膿胸,両側肺動静脈瘻,肝膿瘍の診断で胸腔ドレナージ,人工呼吸管理を行ったが軽快しないため当院に紹介搬送された.既往歴,家族歴,現症から遺伝性出血性末梢血管拡張症に起因する肺動静脈瘻により呼吸不全となっていると診断し,肺部分切除による右下葉の肺動静脈瘻切除を行った.術後も人工呼吸管理を続けたところ次第に症状は軽快し,療養のため転院となった.
  • 田中 俊樹, 上田 和弘, 林 雅太郎, 濱野 公一
    2012 年 26 巻 4 号 p. 391-395
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.胸痛の精査で行われたCTで縦隔腫瘍を指摘され当科紹介となった.胸部下行大動脈・食道・左房・両側縦隔胸膜・椎体により囲まれた最大径5cm大の充実性腫瘤であり,超音波内視鏡下吸引細胞診で神経原性腫瘍と診断された.その存在部位から迷走神経発生神経鞘腫と診断し,周囲への浸潤がないとの判断で,3ポート完全胸腔鏡下に摘出術を行った.胸腔鏡下のアプローチが困難と思える症例であったが,術前CTによる手術シミュレーションを参考に3ポート完全胸腔鏡下手術を完遂し得た.当科での手術の実際と,その工夫を報告する.
  • 徳石 恵太, 諸鹿 俊彦, 宮脇 美千代, 山本 聡, 山下 眞一, 川原 克信
    2012 年 26 巻 4 号 p. 396-400
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    今回我々は,感染が原因と考えられる稀な気道狭窄に対し外科的治療を行い,良好な結果を得たので報告する.
    症例は55歳女性.2009年12月咳嗽,呼吸困難を主訴に近医を受診し,CTで気管分岐部から両側主気管支におよぶ狭窄を指摘され当院へ入院となった.診断と気道開大目的で硬性気管支鏡検査を行ったところ,気管分岐部より約3軟骨輪口側の気管から左右主気管支にかけて狭窄を認め,粘膜は軽度発赤し表面は平滑であった.生検による病理組織診断は非特異的炎症であった.気管支鏡検査後3日目に左主気管支が閉塞し左肺が無気肺となったため,気管分岐部,右肺上葉を切除した.術後は気管支粘膜の浮腫を認めたが,抗生剤とステロイドの投薬で軽快し3ヵ月目に退院した.
  • 常塚 啓彰, 加藤 大志朗, 寺内 邦彦, 島田 順一
    2012 年 26 巻 4 号 p. 401-404
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    Benign Metastasizing Leiomyoma: BMLは組織学的には良性である子宮筋腫組織が主に肺に転移する稀な疾患で本邦ではこれまでに64例の報告例がある.症例は51歳女性で8年前に子宮筋腫に対し腹腔鏡下子宮全摘術を受けた.今回,腹部膨満感を主訴に当院を受診し,その際撮影された胸部X線で多発する肺小結節影を指摘され精査後に胸腔鏡下肺生検を行った.手術は完全鏡視下で行い,右S3bとS7の臓側胸膜に隆起する2小結節病変を切除し,病理組織学的には均一な紡錘形腫瘍細胞の錯綜配列を認め子宮筋腫の肺転移と診断した.多発症例であり生検にとどめ,閉経後であることから無治療で経過観察を行っている.子宮筋腫の既往のある女性で多発肺病変を認めた際にはBMLを鑑別に置き診療に当たる必要がある.
  • 勝俣 博史, 八柳 英治
    2012 年 26 巻 4 号 p. 405-409
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    症例は肺結核に対し57年前に左胸郭形成術を施行された77歳男性.術後早期より出現するも放置していた胸壁腫瘤の増大を自覚し近医受診,精査加療目的に当科紹介となった.左肩甲骨下縁から腸骨上縁にかけ弾性硬な胸壁腫瘤を認め,CTでは大部分が嚢胞性の病変であった.穿刺培養は陰性であった.術前確定診断には至らず診断的治療目的にて摘出術を施行した.腫瘤は内部に繊維性異物が存在し,病理組織学所見と合せ,ガーゼ由来の異物性肉芽腫と診断した.X線感光性のないガーゼを用いた時代に手術既往のある症例で腫瘤病変を認めた場合には,胸部領域においてもガーゼ由来の異物性肉芽腫を念頭に置く必要がある.
  • 鈴木 恵理子, 棚橋 雅幸, 雪上 晴弘, 羽田 裕司, 吉井 直子, 丹羽 宏
    2012 年 26 巻 4 号 p. 410-416
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性.膀胱癌,前立腺癌術後の経過観察中に左肺腫瘍を指摘された.境界明瞭で石灰化を伴っていたが,転移性腫瘍の可能性を考え手術を施行したところ肺過誤腫と診断された.その後76歳時に胸部CTで右肺S10に石灰化を伴わない小結節影が出現したため2回目の手術を施行し,高分化硬化型脂肪肉腫と診断された.PET検査や腹部CTで他部位に原発巣と思われる病変が存在しないことから肺原発と診断した.術後6ヵ月目の胸部CTで新たに右肺S7に同様な陰影が出現したことから3回目の腫瘍切除を施行した.軟骨肉腫の所見であったため,初回,2回目切除時の病理標本を見直した.初回標本では悪性間様性成分と正常上皮性成分を有しており,2回目腫瘍は脂肪肉腫成分と正常上皮性成分,3回目腫瘍は高度異型の骨,軟骨成分を含んでいたことから悪性過誤腫が多発肺転移したものとして矛盾しないと思われた.
  • 宮崎 涼平, 岡田 浩晋, 廣橋 健太郎, 久米 基彦, 渡橋 和政
    2012 年 26 巻 4 号 p. 417-421
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性.咳嗽を主訴に近医受診し,胸部CTで左上葉に大動脈弓部と接する腫瘍を指摘された.気管支鏡下生検で肺癌の診断が得られ,手術目的に当科紹介された.胸部造影CTで大動脈と腫瘍との境界が不明瞭であったため,経食道心エコーを施行した.心拍に同期して大動脈中膜の可動性を認め,中膜におよぶ浸潤はなく体外循環を使用せず切除可能と判断した.術中所見では,大動脈外膜に浸潤を認め,左上葉切除と大動脈外膜合併切除にて完全切除し得た.組織型はlarge cell neuroendocrine carcinoma(LCNEC)であった.大動脈浸潤の術前評価方法に関してCT,MRIではいまだ満足しうる成果は得られていない.大動脈浸潤を伴う場合,浸潤部位によっては完全切除に体外循環を使用するなどの大きな侵襲を伴う場合もあり,術前に大動脈浸潤の程度を正しく評価することは大きな意義がある.経食道心エコーは術前に大動脈浸潤の程度を正確に評価する上で有用であると考える.
  • 岡田 英, 保坂 靖子, 富樫 賢一
    2012 年 26 巻 4 号 p. 422-427
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    81歳男性.咳嗽,血痰,胸部X線異常影により当院を紹介受診.CTで右肺S6-10に空洞を伴う不整な腫瘤影を認め,気管支鏡検査でB6の不整な粘膜組織から扁平上皮癌を疑わせる細胞を検出し,cT2aN0M0 stage IBの原発性肺癌の疑いで右肺中下葉切除を実施した.術後病理診断では腫瘤は肺放線菌症で,B6気管支上皮には高度異形成を認めた.肺放線菌症は比較的稀で,特異的画像所見もなく確定診断が困難なため,肺癌を疑い手術切除されてから診断に至ることが多い.しかし内科的治療が奏効しやすいため,高齢者や低肺機能症例では手術回避を目指し術前に両者を鑑別する努力が必要で,生検組織の診断においては悪性組織と炎症による高度異形成の鑑別が重要である.また肺癌が合併した放線菌症例もあり,内科的治療の効果によっては再度精査し,外科的切除を検討実施する必要がある.
  • 鎌田 稔子, 吉田 成利, 星野 英久, 岡本 龍郎, 鈴木 実, 吉野 一郎
    2012 年 26 巻 4 号 p. 428-432
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    症例は16歳女性.胸部異常陰影を指摘され,CTで右縦隔腫瘍が疑われ当科紹介.320列area detector CT心電同期撮影法で右肺動脈から腫瘤に流入する異常血管と上大静脈への還流血管が確認され肺葉外肺分画症を疑い手術を施行した.分画肺は縦隔側に存在し,縦隔胸膜の一部は欠損していた.右主肺動脈より3本の細い流入動脈と,奇静脈および上大静脈に還流する数本の静脈を処理して分画肺を摘出した.肺動脈より血液供給された肺葉外肺分画症は頻度が低く,本邦報告例に関し文献的考察を加え報告する.
  • 梶浦 耕一郎, 先山 正二, 鳥羽 博明, 川上 行奎, 監崎 孝一郎, 近藤 和也
    2012 年 26 巻 4 号 p. 433-438
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性.5日前から咽頭炎症状と高熱があり,前医で降下性壊死性縦隔炎と診断され当院を紹介された.CTで咽頭後壁から後縦隔にかけて気腫優位の膿瘍腔を認めたため,緊急で気管切開術と頸部および開胸縦隔ドレナージ術を施行した.第5病日のCTで咽頭周囲から椎体前面,左縦隔,右胸腔内背側に膿瘍を認め,ドレナージ術と胃廔造設術を施行した.第13病日のCTで右頸部膿瘍と大動脈弓頭側の液体貯留を認め,3回目のドレナージ術を施行した.初回手術後は間欠的胸腔内洗浄を行っていたが,2回目手術後は持続洗浄,3回目手術後は持続かつ間欠的な洗浄へと切り替えた.61病日に軽快転院した.
    降下性壊死性縦隔炎はドレナージをしても再度膿瘍形成してくることがあり,適切な時期のCT撮影と,確実なドレナージが必要である.持続洗浄用のイリゲーションタイプのプリーツドレーンは素材が柔らかく頸部や縦隔への長期留置に有用であった.
  • 綾部 貴典, 富田 雅樹, 盛口 淸香, 丸塚 浩助, 清水 哲哉
    2012 年 26 巻 4 号 p. 439-443
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,女性.2009年3月乳癌手術時に施行された胸部CT検査で,両側肺に結節性病変(左下葉肺底区域気管支内腔B9,B10に30×14 mm,右S8に10 mm)を認めた.乳癌からの肺転移が疑われたが,2010年6月気管支鏡下に左肺病変の生検を行い,多形性腺腫と病理診断された.同年7月,両側肺病変を切除対象とし,胸腔鏡下に右S8部分切除を先行し,術中病理検査で良性腫瘍と診断された.体位変換後,開胸下に左下葉肺底区域切除を行った.切除標本の免疫組織化学的検索は,AE1/AE3(+),Synaptophysin(-),Chromogranin A(-)で,肺類基底細胞癌と病理診断され,左側が原発,右側が転移,T1bNxM1,IV期と診断された.術後17ヵ月外来経過観察し,局所再発・遠隔転移はみられていない.術前診断が困難であった対側肺転移を伴う肺腫瘍に対し,積極的に切除を行い,免疫組織化学的検索により,肺類基底細胞癌と確定診断された非常にまれな症例を経験した.
  • 深見 武史, 堤内 亮博, 井上 雄太, 吉田 幸弘, 村川 知弘, 中島 淳
    2012 年 26 巻 4 号 p. 444-447
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.1953年(8歳時)に甲状腺腫で甲状腺右葉切除後,1955年に全肺野の粟粒状陰影と頚部リンパ節腫脹を指摘された.リンパ節生検と右肺S3部分切除術が施行され,甲状腺乳頭癌肺転移,リンパ節転移と診断された.化学療法と放射線外照射施行後も変化は乏しく,経過観察となった.2008年5月検診にて前立腺癌を疑われ,精査中,胸部X線にて左肺腫瘤影を認めた.前立腺生検にて前立腺癌は否定されたが,胸部CTにて左肺上葉に21 mm大の不整な結節と両肺に数mm大の小結節を多数認めた.原発性肺癌もしくは甲状腺癌肺転移を疑い,確定診断目的に胸腔鏡下左上葉部分切除を施行.甲状腺癌肺転移とその多発陳旧性病変との診断を得た.甲状腺癌術後30年以上経過して再発する症例は稀であり,本症例が最長であった.
  • —免疫組織染色法を用いた2剖検例の検討
    北野 司久, 三澤 賢治, 三島 修
    2012 年 26 巻 4 号 p. 448-452
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    有瘻性膿胸に対する大網法Omentoplasty後の剖検症例で,D2-40を用いて大網弁を調べた結果,1)有茎性大網の状態は横隔膜トンネル部で手術創が治癒して,血管も把持されていた.また,充填した大網上に気管支粘膜上皮が再生していた.2)充填した大網の脈管は大網動静脈が増殖していた. D2-40免疫染色ではリンパ管の増殖が確認できて,Lymphangiogenesisと判定した.
  • 藤田 琢也, 井上 修平, 尾崎 良智, 大内 政嗣, 手塚 則明, 花岡 淳
    2012 年 26 巻 4 号 p. 453-458
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の女性.健康診断の胸部X線で異常を指摘され来院した.胸部CTでは右の肋骨横隔膜角部に 4×2cm大の漸増性に造影される腫瘤影を認め,胸部MRI所見ではT2強調画像で著明な低信号を示し孤立性線維性腫瘍等を疑い,胸腔鏡下手術を施行した.手術所見で横隔膜部胸膜より発生した有茎性腫瘍を認めた.腫瘍は,病理検査所見では細胞成分の少ない線維性組織が主体で異型細胞は認めず砂粒状石灰化が認められ,免疫染色ではvimentinが陽性で,CD34,α-SMA,ALK-1は陰性であり,石灰化線維性偽腫瘍(Calcifying fibrous pseudotumor)と診断された.本症は稀な疾患ではあるが胸腔内腫瘍の鑑別の一つとして念頭に置くべき疾患と考えられた.
  • 伊藤 祥隆, 小林 弘明
    2012 年 26 巻 4 号 p. 459-462
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    症例は78歳女性.個別健診の胸部レントゲン写真にて異常陰影を指摘され,当院を受診した.胸部CT検査では縦隔の食道・左心房・椎体に囲まれる部位に6×5×11 cmの腫瘤性陰影を認めた.MRI検査ではT2強調像では辺縁が低信号を呈し,内部が高信号を呈していた.以上から神経原性腫瘍疑いにて胸腔鏡手術を行った.長径11 cmの巨大な腫瘍は表面平滑かつ弾性硬であり鉗子による把持が困難であったため,エンドループ®を用いた吊り上げ展開法にて術野展開を行った.また巨大であったため肋間からの胸腔外への摘出は不能と判断し,肋弓下より経横隔膜経路にて腫瘍を摘出した.巨大な縦隔腫瘍に対して行った吊り上げ展開法による術野展開と経横隔膜経路での摘出は有用であった.
  • 菅野 恵美子, 三村 剛史, 向田 秀則, 多幾山 渉
    2012 年 26 巻 4 号 p. 463-467
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    今回我々は多発する肺動静脈瘻に対し,最大限肺機能温存を考慮した術式を選択し,治療し得た一例を経験したので報告する.症例は60歳代女性,胸部CTにてRendu-Osler-Weber病に併発した肺動静脈瘻を右肺S2とS10に認めた.S2病変の流入出血管が13 mmと太く,経カテーテル塞栓術は塞栓症の危険性があると考え,外科治療を選択した.手術は胸腔鏡補助下に行い,S2病変は胸膜面より深いため,右S2区域切除を選択,またS10病変に対しては部分切除を行った.良性病変でもある本疾患に対しては,外科治療が必要となることもあり,その際術式の選択において,肺機能温存を含めた低侵襲を追求すべきと考える.
  • 田中 里奈, 青木 稔, 中西 崇雄, 大竹 洋介, 石原 美佐, 橋本 公夫
    2012 年 26 巻 4 号 p. 468-474
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/07/03
    ジャーナル フリー
    炎症性筋線維芽細胞腫瘍(IMT)は,筋線維芽細胞への分化を示す紡錘形細胞の腫瘍性増殖に炎症細胞が混在する稀な腫瘍である.その臨床像や病理像は一様ではなく,診断に苦慮することもある.症例1:23歳女性.CTで右下葉に16 mm大の境界明瞭な腫瘤を認め,気管支鏡では右B8a内腔に突出する腫瘤性病変を認めた.生検でIMTが疑われた.FDG-PETではSUVmax 26.8と非常に高度の集積を認め,悪性疾患が否定できなかった.右下葉切除を施行し,IMTと診断された.免疫染色でALK(Anaplastic lymphoma kinase)陽性であった.症例2:43歳男性.CTで右上葉末梢に14 mm大の境界明瞭な腫瘤を認め,穿刺細胞診で腺癌が疑われた.右上葉切除を施行し,IMTと診断された.症例3:70歳男性.S状結腸癌の既往歴あり.CTで,右上葉末梢の5mm大のスリガラス様陰影が,1年後に8mmと増大傾向にあり,肺癌や結腸癌肺転移が疑われた.右上葉部分切除を施行し,IMTと診断された.
  • 井上 慶明, 青木 耕平, 福田 祐樹, 儀賀 理暁, 江口 圭介, 中山 光男
    2012 年 26 巻 4 号 p. 475-480
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/07/03
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性.3年前に他院で左肺上葉の腫瘤影を指摘されていたが,経気管支鏡的生検で悪性所見を認めなかったため経過観察されていた.2年前に瀘胞性リンパ腫を発症し,当院血液内科で半年に渡り化学療法が施行された.指摘されていた左肺上葉の腫瘤は半年の化学療法期間を含む約2年の経過で徐々に増大した.FDG-PET検査では肺癌に特徴的な集積所見を認めたため,原発性肺癌が否定しきれず,左肺切除術を施行した.病理組織検査では肺放線菌症と診断された.悪性リンパ腫に対する化学療法を施行した免疫抑制状態での肺放線菌症の経過を追った報告は稀であるため報告する.
  • 太田 英樹, 河合 秀樹
    2012 年 26 巻 4 号 p. 481-485
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/07/03
    ジャーナル フリー
    59歳男性,健診胸部X線写真の異常陰影で当院を受診し間質性肺炎と診断された.胸部CTで右S3に薄壁空洞性結節影が指摘され,非結核性抗酸菌性肉芽腫として経過観察となった.繰り返し施行された胸部CTで結節影の増大と空洞壁の肥厚が認められたため,初診から43ヵ月後に胸腔鏡補助下右上葉切除術を施行した.病理組織診断では2cm大の乾酪壊死を伴う抗酸菌性肉芽腫周囲のわずかな領域に腺癌が認められた(肺MAC症,pT1aN1M0:Stage II A).術後5ヵ月後に縦隔リンパ節転移と右大腿骨転移で再発し,術後10ヵ月後に全身転移にて死亡した.孤立性結節影を呈する肺MAC症と腺癌が同一病巣内に共存した稀な1例を経験した.両者の合併を鑑別することは困難であるため,空洞形成を伴う非結核性抗酸菌性肉芽腫症による肺野孤立性結節影では,肺癌の合併を考慮し,外科切除を検討すべきと考えられた.
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