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藤原 一央, 奥野 芳茂, 早川 克己, 中村 達雄, 清水 慶彦, 竹林 禎浩, 田畑 泰彦, 筏 義人
1992 年21 巻3 号 p.
1071-1075
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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従来、徐放剤として臨床応用されてきた、ポリL-乳酸マイクロスフェ上レ(以下聡)を新しい塞栓物質として肝動脈塞栓に使用し、その塞栓効果について成犬を用いて基礎的実験を施行した。肝動脈塞栓前後の造影像の比較では、二次分枝までの太い血管には明らかな変化は認められず、かなり末梢レベルでの塞栓が可能と考えられた。血液デ上タでは、塞栓2週後の白血球数が塞栓前と比較して上昇傾向を示しており、4~6週後にはほぼ塞栓前のレベルまで回復していた。これは、生体反応による結果と考えられた。組織標本では塞栓を施行した肝実質に、小肝動脈系を中心とした梗塞巣を認め塞栓効果が確認できた。しかし、その塞栓効果のために両葉に渡って広範な梗塞を起こし、急性肝不全の状態を呈することがあり、MSのサイズ・使用量については今後の十分な検討が必要である。
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近藤 威史, 若槻 真吾, 齋藤 史郎
1992 年21 巻3 号 p.
1076-1079
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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腹水濾過濃縮再注入法は難治性腹水に効果的であるが、再注入後にしばしば発熱が見られ、再注入さ液たエンドトキシン(Et)が発熱を起こす可能性がある。発熱を抑制するため、より効果的な処理法を考案した。基礎的検討としてEt濃度30pg/mlの2%アルブミン溶液3Lを以下の方法で処理した。(1)単純法:AHF-UNまたはCella-filterで濃縮、(2)吸着法:活性炭力ラムN-50で吸着した後単純法で濃縮。(3)EVAL-1A法:タンパクも透過するEvaflux-1Aで濃縮。対象は難治性腹水を合併した肝硬変4例、悪性腹膜中皮腫1例である。AHF-MAまたはPVAで濾過した2.5-4Lの除細胞腹水を、15回((1)6回、(2)3回、(3)6回)処理した。処理腹水注入後24時間以内の体温上昇度を測定した。Etの定量はEndospecyで行った。アルブミン溶液でのEt除去率は(1)45.6%、(2)55.0%、(3)64.6%で、(2)および(3)は有意に(Dより効果的であった。除細胞腹水でも(1)46.5%、(2)63.6%、(3)65.1%と、アルブミン溶液と同様の結果を得た。体温上昇度は体重当たりのEt注入量と有意に相関したが、Et除去率は濃縮度と相関しなかった。タンパク回収率は3方法で有意差は無かった。臨床的に施行可能なEVAL-1A法は再注入腹水中のEtの除去に優れ、発熱抑制に有用である。
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小林 和生, 岩田 博夫, 雨宮 浩
1992 年21 巻3 号 p.
1080-1084
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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ハイブリッド人工膵臓の異種移植への適用拡大を試みた。実験系は、膵ランゲルハンス島(ラ島)はハムスターから単離し、レシピエントはストレプドゾトシンで糖尿病にしたBALB/cマウスである。ラ島のマイクロカプセル化は、5%濃度のアガロースを用いて行った。マイクロカプセル化ラ島をラ島単離から数日以内に移植すると、一時的に血糖値は正常化するものの、いずれも移植後19日までに血糖値は術前の高値に戻ってしまった。In vitroで20日間以上長期培養して損傷ラ島を除去したマイクロカプセル化ラ島1500個を移植した場合、6例中4例は100日間以上血糖値が正常化した。また、封入していない裸のラ島を移植することで感作した糖尿病マウスをレシピエントとした場合でも、長期培養したマイクロカプセル化ラ島は、平均38日間血糖値を正常化した。
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山崎 義光, 河盛 隆造, 鎌田 武信, 吉川 悦雄, R KAWAMORI, M YOSHISATO, A MUKAI
1992 年21 巻3 号 p.
1085-1088
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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バイオ人工膵β細胞の開発に資せんとして、発現ベクタにインスリン遺伝子を組み込み、線維芽細胞由来のNIH 3T3細胞にインスリン遺伝子を導入した。遺伝子を導入した3T3細胞培養上清中にインスリンを検出し、持続的インスリン分泌能を有することを確認した。さらに、バイオ人工細胞の皮下植え込み基材としてゼラチンを基質とした二層構造性人工皮膚マトリックスをラット皮下組織に植え込み、線維芽細胞の埋入、マトリックス中での生存を認め、人工皮膚マトリックスが遺伝子を導入したバイオ人工細胞の支持組織になりうることを認めた。
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高木 達止, 岩田 博夫, 雨宮 浩
1992 年21 巻3 号 p.
1089-1093
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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5%濃度アガロースをマイクロカプセル化用素材として用いたハイブリッド人工膵臓を作製した。ハムスター・マウス間の異種移植にハイブリッド人工膵臓を適用し、糖尿病治療効果の検討を行った。ゴールデンハムスターをラ島のドナーとし、レシピエントにはストレプトゾトシンで糖尿病にしたBALB/cマウスを用いた。マイクロカプセル化ラ島の移植を行った8匹中2匹において100日を越えるラ島の長期生着を観察したが、他の6匹では移植後10日前後に血糖値は上昇し糖尿病状態に戻ってしまった。マイクロカプセル化ラ島を移植し、さらにレシピエントへ免疫抑制剤15-デオキシスパーガリン(DSG)を2.5mg/kg(体重)連日投与を行ったところ、5匹中3匹は100日以上長期生着し、また他の2匹においてもマイクロカプセル化ラ島の生着期間は67日と96日であった。さらにマイクロカプセル化ラ島を移植し、DSG5mg/kg(体重)を移植後40目間のみ投与した例では、DSG投与中止後においても5匹中3匹でマイクロカプセル化ラ島は生着し続けた。
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橋口 恭博, 榊田 典治, 上原 昌哉, 西田 健朗, 梶原 研一郎, 福島 英生, 七里 元亮
1992 年21 巻3 号 p.
1094-1098
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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超小型血糖モニターシステムとして、ホロファイバーに生理食塩水を一定率で注入、回収するマイクロダイアリシス・サンプリング法を応用したシステムを試作、その特性、有用性をin vitro, in vivoにて検討した。(1)in vitroでのホロファイバーの潅流速度と回収液中のブドウ糖濃度との間は負の相関を示した。また潅流速度150μl/hrにおけるホロファイバーの長さの増加に伴い、回収液中のブドウ糖濃度は増加した。メディアム中のブドウ糖濃度(0~500mg/100mのと回収液中のブドウ糖濃度は正の相関を示し、ブドウ糖回収率は、Evalで13%, Cuprophanで33%であった。(2)in vivoで本法より求めた組織液ブドウ糖濃度は、ブドウ糖及びインスリン負荷による血糖値の変動によく追随した。以上より、本法は超小型血糖モニターシステムへの応用に極めて有用であることが示唆された。
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―口唇粘膜スペクトル解析によるブドウ糖定量化―
梶原 研一郎, 西田 健朗, 橋口 恭博, 上原 昌哉, 榊田 典治, 福島 英生, 七里 元亮
1992 年21 巻3 号 p.
1099-1103
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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著者らは減衰全反射装置(ATR)をフーリエ変換赤外(FTIR)分光計の試料室部へ導入, 血液試料の表面薄層中のブドウ糖分子による吸光スペクトルを解析することにより, 試料中ブドウ糖濃度の定量化が可能であること証明した。更に, 本法を生体粘膜, 皮膚表面試料に適用する場合にも, 血液試料ζ同種のスペクトル型が得られる。しかし, 血液試料の場合と違い, 吸光スペクトルは減衰全反射ブリズム・試料間接着圧に依存するため, 吸光強度とブドウ糖濃度の間には単純な一次の応答が証明できない。我々は今回, 波数2920cm
-1に出現するCH
2基の非対称伸縮バンドに基ずく吸光ピークの二次微分値をリファレンスとして, 蛋白・脂質による背景スペクトルの接着強度の変動に伴う変化を補正する式Y=0.295X-0.077(r=0.910, X: 2920cm
-1における吸光スペクトルの_次微分値[cm
-2], Y: 1033cm
-1における吸光スペクトルの二次微分値[cm
-2])を得, これを用いて口唇粘膜スペクトルよりブドウ糖スペクトルを分離, 血糖値Z(mg/100ml)と1933cm
-1における吸光スペクトルの2二次微分値Y[cm
-2]間にZ=(1.16Y+0.131)・10
3(r=0.773)と高い一次の相関を得た。
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池田 章一郎, 原 将記, 伊藤 要, 大倉 國利, 伊藤 勝基, 高木 弘, 近藤 達平
1992 年21 巻3 号 p.
1104-1108
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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すでに報告した、酸化チタン層を形成したチタンをカソードとした酸素電極系を用いた皮下測定型グルコースセンサーの特性を改善するために、基礎的な電極特性について詳細な検討を加え、さらに酸化チタン表面に白金の修飾を試みた。白金の高い触媒能により、酸素還元反応が白金上で優先的に進行し、その結果、残余電流と印加電圧が減少した。電極表面の走査型電子顕微鏡による観察から、白金が粒子となって島状に存在していることがわかった。その結果、酵素の固定化は前報通りに酸化チタン上で行えた。試作した白金修飾針状グルコースセンサーは、グルコース透過制限膜がない状態で、酸素雰囲気下で、50mg/dlまで、直線性良く30秒以内に応答した。以上の技術を用い、直径約1.1mm、長さ15mmの側面作動型の微小針型酸化チタングルコースセンサーを試作した。
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吉見 靖男, 金森 敏幸, 酒井 清孝
1992 年21 巻3 号 p.
1109-1114
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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糖尿病患者の血糖値を非侵襲的に監視できる、高感度で安定性の高い人工膵臓用センサの開発を本研究の目的としている。高感度なグルコース定量法である化学発光法では、試薬溶液を完全混合で反応させることができず、安定性の高い測定は困難であった。そこで我々は、化学発光の反応過程を電気化学的に操作する装置を開発し、試薬溶液を完全混合状態で反応させることを可能とした。さらにこの装置を高感度型のヴルコースセンサに利用し、安定性および感度を確認した。連続供給される一定濃度のゲルコース濃度に対して応答する発光強度の変動は8時間で5%以内であった。この安定性から本センサは人工膵臓への利用が期待できることが分かった。一方、本ゲルコースセンサの濃度測定可能範囲は0.1~1.0mg/dlであり、汗のゲルコース濃度範囲を包括している。本センサでの汗のゲルコース濃度測定による非侵襲的な血糖値監視の実現が有望である。
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椎野太 二朗, 小山 義之, 片岡 一則, 横山 昌幸, 岡野 光夫, 櫻井 靖久
1992 年21 巻3 号 p.
1115-1120
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/12/02
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本研究ではボロン酸基を側鎖に有するポリマーを用いて糖濃度応答性インシュリン放出システムを作製することを目的とした。ボロン酸基は糖等の多価水酸基化合物と結合解離することが知られている。
ここではボロン酸基を有するポリマーゲルとしてメタクリルアミドフェニルボロン酸、アクリルアミド、N, N'-メチレンビス(アクリルアミド)を共重合した。次にグルコン酸にてヒドロシキル化した牛インシュリンをこのゲルに加え、ボロン酸ポリマーに結合させた。このゲルを液クロ用カラムに詰め、溶出液中のグルコース濃度を200mg/dlと80mg/dlに交互に交換した。ボロン酸基に結合した修飾インシュリンはグルコースと置換反応により放出し、その濃度変化は溶出液のグルコース濃度変化に繰り返し応答した。ON-OFF実験において放出した修飾インシュリンは0.38mg/cm
2・hr. であり生体内埋め込みを考える上で十分な値であった。
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山下 正人, 阪本 寛之, 上野 幹彦, 新谷 繁之, 和田 正明, 鹿野 真勝, 下山 孝
1992 年21 巻3 号 p.
1121-1125
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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原発性胆汁性肝硬変(PBC)は抗ミトコンドリア抗体(AMA)の出現など免疫異常を呈し, 自己免疫疾患との考えもある。また, 肝内胆汁うっ滞を示し高脂血症も呈してくる。そこでPBCに対してIg M, 免疫複合体, 総コレステロールの除去などを目的として長期間にわたり二重濾過血漿交換療法(Double filtration plasmapheresis, DFPP)を施行した。対象は各種薬剤に抵抗性の2例でそれぞれ4年8か月, 1年3か月にわたり計102回施行した。その結果, 全身倦怠感, 皮膚掻痒感などの自覚症状の軽減とIg M, 免疫複合体, AMAの低下が認められ同時に血液生化学的検査においても改善傾向がみられた。特に当初, 免疫複合体, Ig Mが高値の症例においては総ビリルビンをはじめとして著明な改善が認められた。以上よりPBCに対するDFPPは対症療法のみならず, 免疫異常の改善にも効果があり病態の改善に寄与する可能性が示唆された。
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高木 豊巳, 桜井 謙次, 杉浦 清史, 小川 洋史, 斎藤 明, 吉増 史朗, 村越 正英
1992 年21 巻3 号 p.
1126-1131
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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5名の慢性関節リウマチ患者にSAC法とDF法を同一患者に実施し, 血漿交換の血漿処理量の変化に対する各蛋白質の除去率およびふるい係数の関係について検討した。SACの装置はS-201A, TR-350, DFの装置はPlasauto 1000とした。SAC法におけるIg G, Ig A, Ig MとアルブミンとのSCの推移は明かな差を認め, アルブミンと免疫グロブリンとの間に明かな除去選択性が認められた。DF法でのSCの推移はIg Mとアルブミン, Ig G, Ig Aとの間に除去選択性の相違が認められた。DF, SAC各法の2.0L処理時のIgGの除去率はDF: 35.1±6.1%, SAC: 56.0±7.0%であり, SACがDFよりも高値を示した(P<0.01)。Ig AではDF: 32.0±9.4%, SAC: 45.0±3.5%であった。Ig MではDF: 50.4±14.2%, SAC: 55.3±8.4%であった。また, SAC1.45L処理した時のIg G, Ig Aの除去率は38.0±4.8%, 37.2±4.9%であり, 同様にDF2.5L処理のIg G, Ig Aの除去率は37.0±3.6%, 33.2±8.0%であった。そのときの血漿交換前, 後のランズバリースコアは同等の改善であった。以上よりSACはDFに比べて少量の処理量でも除去効率および臨床効果において同等の効果が得られた。
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―原理および物質除去機構の解明―
村越 正英, 内田 睦規, 吉増 史朗, 深沢 弘道, 高木 豊巳, 斎藤 明
1992 年21 巻3 号 p.
1132-1136
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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我々が開発した血漿浄化法である、Salt-amino acid coprecipitation (SAC)法の血漿蛋白除去の原理を明確にし、施行中の患者体内における血漿蛋白除去状態を考察することを目的として、種々の観点からSAC法の特徴を検討した。
その結果、SAC法においては、塩析剤の添加後すみやかに沈澱生成が行われ、各蛋白質の物理化学的な性質の違いにより、グロブリン分画の高い選択的除去が行えることが確認された。また、塩析後のアルブミン濃度は、その初期濃度に対して一定の割合になり、グロブリン分画濃度は、ほぼ一定の濃度に集束する傾向を示した。SAC法は、二重濾過(DF)法と比較してその物質除去原理の違いから血漿処理量と除去率との関連に明らかな違いが認められ、アルブミン置換液を必要とせずにDF法と同等のグロブリン分画除去率を望む場合、血漿処理量の低減が可能になることが示唆された。
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―各種治療法による相違について―
金井 美紀, 藤田 新, 津田 裕士
1992 年21 巻3 号 p.
1137-1141
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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フリー
血漿交換療法(以下PP)における血液粘度および血漿粘度の変化についてPPの各方法により相違を比較検討した。今回施行したPPは、二重膜濾過法(以下DFPP)、フェニールアラニンおよびトリプトファンをリガンドとした免疫吸着法(以下IMPおよびIMT)、LDL吸着に用いられているデキストラン硫酸セルロースをリガンドとした吸着法(以下LA)の4方法である。対象は膠原病患者でDFPPを23例、IMPを9例、IMTを8例、LAを4例に行った。血液および血漿粘度の測定には、それぞれ円錐-平板型回転粘度計(Brookfield社製)、微量毛細管粘度計(磯貝式)を用いた。全血での血液粘度では各法間で有意差は認められなかった。ヘマトクリット35%に補正後の血液粘度はPP前後で低下を認めたが、各法間では有意差は認められなかった。血漿粘度は4方法ともPP前後で有意な低下を認め、特にDFPPが他法に比べ、最も低下した。
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宮脇 富士夫, 須磨 幸蔵, 城間 賢二, 金子 秀実, 土肥 敏樹, 今西 薫, 川名 由浩
1992 年21 巻3 号 p.
1142-1147
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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フリー
虚血, 再灌流を余儀なくされる開心術中の冠動脈内皮は機能的, 形態的傷害を受けやすく, 血液中の物質流入調節機能が低下すると考えられる。この時期に動脈硬化促進因子であるLDLを十分低下させることは, 内皮下組織へのLDLの過剰流入を軽減し, ひいては冠動脈やバイパスグラフトの動脈硬化の進展を軽減することにつながると考え, 冠動脈バイパス術中の人工心肺回路にリポソーバーを並列させ, 人工心肺作動中LDLの吸着除去を2症例に施行した。LDL除去後の総コレステロール(TC)は, 術前値205, 257mg%dlからそれぞれ65, 73mg%dlに, LDLは449, 670mg/dlから96, 154mg/dlに低下した。術後, TCとLDLは徐々に増加し, 約2-3週で前値に近い値にもどった。約2時間のLDL除去中, 特別な異常を認めなかった。創治癒も良好で, 術後経過にも異常を認めなかった。人工心肺中のLDL吸着除去療法は安全に施行可能であり, 有用であると考えられた。
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桜井 裕, 小笠原 啓一, 酒井 清孝
1992 年21 巻3 号 p.
1148-1152
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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フリー
血液の生化学検査における検体の処理能力および検査精度を向上させるため、迅速かつ簡便な血漿採取法の開発を目的とし、基礎的な検討を行った。
中空糸血漿分離膜ミニモジュールを作製し、ポンプおよびシリンジによりミニモジュールに血液を流して血漿採取を試みた。得られた試料の評価には、ふるい係数および溶血度を用いた。
膜間圧力差100mmHg、壁ずり速度5000s
-1、血液量11mlの条件下、ポンプにより血液を灌流する方法においては、有効長3.5cm、膜面積74.7cm
2のポリエチレン膜ミニモジュールにより約14秒、シリンジにより灌流した場合には、膜面積37.4cm
2のモジュールにより約75秒で2mlの血漿が得られた。溶血は許容範囲であり、生理的食塩水による希釈は、添加生理的食塩水量と血漿採取量から換算が可能であった。
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高橋 恒夫, 横山 雅敏, 小玉 久江, 中瀬 俊枝, 関口 定美, 慶野 博是, 藤井 立哉, 柳下 明, 島根 博, 佐渡 峯生
1992 年21 巻3 号 p.
1153-1157
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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血漿分画製剤のための原料血漿を確保することを目的として開発した定圧濾過型採漿システム(CPAS-II: Constant Pressure Apheresis System-type II)の臨床評価を行い、その有用性を確認した。19名のドナーに対して、1回の採血量200mlとして5回、あるいは採血量400mlとして3回の採血を行った。1回採血量200mlにおいては平均358mlの血漿を35分で、また400ml採血においては平均453mlの血漿を31分で採取し得た。ドナーには副作用は全くみられなかった。本システムは一定圧力下で採漿を行うため血漿分離の制御が簡単である。そのため装置が小型で簡略化されており移動採血車内に於いても十分実施可能であると考えられ、今後の原料血漿確保のための有力な手段の一つになり得るものと考えられる。
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阿部 元, 谷 徹, 沼 謙司, 遠藤 善裕, 吉岡 豊一, 青木 裕彦, 松田 孝一, 花沢 一芳, 蔦本 慶裕, 荒木 浩, 横田 徹, ...
1992 年21 巻3 号 p.
1158-1162
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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グラム陰性桿菌由来のlipopolysaccharide(LPS)は、毒性とともに強力な抗腫瘍作用を有している。この毒性を発揮させることなく抗腫瘍作用を利用する目的で、LPS固定化ビーズを開発した。担癌C3H/HeNマウスに対する抗腫瘍効果を、E. coli LPS固定化ビーズで刺激された活性化脾細胞とlymphokine-activated killer(LAK)細胞で比較すると、活性化脾細胞はLAK細胞に比べて有意に腫瘍増殖を抑制し、生存日数を延長した。転移性肺腫瘍SDラットに対する肺転移抑制効果を、S. minnesota LPS固定化ビーズで刺激された活性化脾細胞とLAK細胞で比較すると、活性化脾細胞はLAK細胞に比べて有意に肺転移を抑制し、高率に腫瘍の完全治癒を得ることができた。担癌ラットに対するdirect hemoperfusion (DHP)では、わずか一回だけの施行で有意な腫瘍増殖抑制効果が認められた。以上より、LPS固定化ビーズを用いたDHPは、LAK療法より強力な体外免疫賦活療法となる可能性が示された。
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米川 元樹, 久木田 和丘, 目黒 順一, 川村 明夫, 高橋 昌宏, 小野寺 一彦, 上井 直樹, 駒井 喬, 中村 崇人, 宮本 啓一, ...
1992 年21 巻3 号 p.
1163-1167
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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良性疾患25例、悪性腫瘍術前例49例、悪性腫瘍3カ月以内死亡例20例のG/L比を検討すると、末期癌患者のG/L比は著しく高値であった。このG/L比を体外循環により低下させるシステムを開発した。まず顆粒球を吸着する5種類の材料を用いてスクリーニングテストを行なった結果、酢酸セルロースがもっとも選択的に顆粒球を吸着した。exo vivo実験では酢酸セルロースビーズへの顆粒球の吸着には時間経過が必要であることが判明した。以上の結果から吸着ビーズを酢酸セルロースと決定し吸着カラムを作成し、ビーグル犬を用いたin vivo実験を行なった。in vitroと同様に顆粒球が選択的に吸着し、その程度は時間経過と共に増大した。また血小板やフィブリノーゲンも吸着した。以上の現象から吸着の機序として循環開始後まず材料表面に蛋白層ができ、この蛋白層との相互作用で顆粒球が付着するものと推定された。本システムは安全であり、G/L比変換用として臨床応用可能と考えられた。
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米川 元樹, 久木 田和丘, 目黒 順一, 川村 明夫, 高橋 昌宏, 小野 寺一彦, 上井 直樹, 駒井 喬, 中村 崇人, 宮本 啓一, ...
1992 年21 巻3 号 p.
1168-1172
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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原発性肝癌2例、転移性肝癌2例、転移性肺癌3例にG/L比変換システムを用いた体外循環治療を行なった。吸着ビーズには顆粒球が選択的に吸着し、その程度は時間経過と共に増加した。血小板やフィブリノーゲンも吸着した。カラム吸着細胞数は(8.7±4.3)×10
8個でこれは回路循環顆粒球数の14.2%に相当した。治療期間中2例に著しい顆粒球増加がみられ、サイトカインの産生が示唆された。腫瘍マーカーの低下を2例に認めたが、長期にわたるG/L比の低下はみなかった。NK活性、PHA幼若化反応、OKT4a/8の変化には一定の傾向がみられなかった。7例中4例にPSの改善を認め、全例に自覚症の改善をみた。特に全身倦怠感の改善は顕著であった。腫瘍縮小効果はNC3例、PD4例でPR以上はなかった。本システムを用いた治療は副作用がなく、予想以上の自覚症の改善は臨床上寄与するところが大きく、免疫療法の一つとして有用であると考えられた。
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高島 征助, 中路 修平, 多田 康二
1992 年21 巻3 号 p.
1173-1177
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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劇症肝炎の患者血清の有機溶媒による抽出物をHPLCで分画分取し、分取成分をIRにて測定して化学構造を推定した。その情報に基づいて吸着剤を選択した。患者血清を表面が酸性あるいは塩基性の吸着剤で処理した後、有機溶媒で処理し、抽出物をラット初代培養肝細胞に接種して、
3H-thymidineの摂取量から細胞のDNA合成能を測定し、それによって吸着剤の肝細胞再生阻害物質の除去活性を判定した。その結果、DNA合成能は未処理の場合よりも吸着剤で処理した場合の方が良好な値を示すことが確認された。なかでも(固体酸+陰イオン交換樹脂)の組み合わせの吸着剤が高活性を示した。このことは肝細胞再生阻害物質は酸性と塩基性の物質の混合物、さらにはオリゴペプチド様物質である可能性を示唆している。
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長沼 信治, 阿岸 鉄三, 佐中 孜, 太田 和夫
1992 年21 巻3 号 p.
1178-1182
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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本研究の目的は、抗DNA抗体高値でステロイド抵抗性のSLE患者に選択的血漿成分吸着器SL-01の賦活再循環方式を適応し選択的吸着療法を行い、その有用性、安全性について検討することである。
今回、上記基準を満足するSLE患者2名を対象とし、選択的吸着療法を隔週5回(症例1)及び週1回計8回(症例2)それぞれ実施した。血漿処理量は41とした。その結果、臨床的には手のこわばり、紅斑、皮疹、レイノー症状の改善をみた。治療前後の抗DNA抗体の除去率は、平均47%(症例1)、平均38%(症例2)、抗カルジオリピン抗体では平均32%(症例2)で症例1は陰性であった。一方抗DNA抗体のカラムへの吸着率はそれぞれ総流入量の56%、57%であった。その他の臨床検査においては、コレステロール値以外大きな変化を認めなかった。吸着療法は安定して行われ、副作用も認めず安全に施行された。
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鈴木 好夫, 原 茂子, 小椋 陽介, 大坪 修, 三村 信英
1992 年21 巻3 号 p.
1183-1187
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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新たに開発された免疫吸着剤(PC-2)は、架橋アガロースに、Hexamethylene-di-isocyanate(HMDI)を架橋したゲルで、他の血漿成分と比較してIgGや各種抗体を選択的に吸着可能である。
本吸着剤により、慢性関節リウマチ、重症筋無力症、天疱瘡、ギラン・バレー症候群、全身エリテマトーデスの5疾患、8症例に対し、合計33回の免疫吸着療法を施行し、その臨床的有効性について検討した。その結果、免疫グロブリンG(IgG)、免疫複合体などを、アルブミン等の他のタンパク質成分と比較して選択的に吸着除去、減少が可能であり、臨床症状においても、関節痛の軽減、運動性の向上などの改善が認められた。
以上より、これらの免疫関連疾患に対する治療法として、本吸着剤の使用が有効であると考えられた。
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長屋 昌宏, 津田 峰行, 岸田 喜彦, 平岩 克正
1992 年21 巻3 号 p.
1188-1192
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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新生児ECMOの臨床的な検討を行ったので報告した。ECMOの方法は頸動静脈を用いた静脈-動脈方式であった。ECMO機器は私共が小児用に独自に開発したものを使用した。1985年から臨床応用を開始し, 1991年11月迄に27例の新生児が対象になった。疾患別では横隔膜ヘルニアが13例と多く, 敗血症の7例が次いだ。ECMOの目的としては胎児循環の持続の克服や細菌性ショックからの離脱にあるものが多かった。ECMOを開始した時間は平均で生後63.4時間であり, 運転時間の平均は, 89.1時間であった。そして, 27例中20例, 74.1%を救命できた。特にECMOは胎児循環の持続の克服に威力を発揮した。一方で出血に関わった合併症が63%に発生したので, 早急な対応が必要である。
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二宮 淳一, 庄司 佑, 田中 茂夫, 小坂 真一, 山内 茂生, 山内 仁紫, 杉本 忠彦, 野一色 泰晴
1992 年21 巻3 号 p.
1193-1195
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/12/02
ジャーナル
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小口径代用血管として4mm以下のbiological graftの臨床研究について報告する。使用したgraftはpolyepoxy化合物を架僑剤として用い、宮田、野一色らの方法
5,8)によりheparin化した頸動脈由来の小口径生体血管とbioflow ®(Bio-vascular社製、biosynthetic bovine artery graft)の2種類である。このgraftsを閉塞性動脈疾患26例と腎不全15例の合計41症例に使用した。閉塞性動脈疾患には血行再建用graftとして用い、腎不全患者には内シャント作製のためのgraftとして用いた。吻合の方法は従来の手縫い吻合、またはlaser吻合にて行った。その結果、術後のgraftの開存率は1年89%、2年85%、3年で82%とほぼ満足出来るもであった。またheparinized biological graftを使用しlaser吻合を行った群で最も良好で、bjoflowを使用し従来の手縫い吻合を行った群で劣っている傾向を示した。また2例に術後感染を生じたが、材料の劣化、瘤形成、出血等の合併症は認めなかった。
結語:小口径biological graft、特にheparinized graftは抗血栓性、吻合部過形成の面で優れており、有用なgraftであると考えられた。
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野尻 知里, 岡野 光夫, 小柳 仁, 竹村 直人, 阿久津 哲造
1992 年21 巻3 号 p.
1196-1198
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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我々の開発した2-ヒドロキシエチルメタクリレートとスチレンのABA型ブロック共重合体(HEMA-St)は、その表面にラメラ型の親水性、疎水性の微細相分離構造を取り、血小板の活性化を抑制し優れた抗血栓性を示すことが解かっている。その抗血栓性発現機序として、表面の微細構造に対応した組織構造を持つ吸着蛋白層が血小板活性化抑制、ひいては血栓形成抑制に大きく関与しており、さらにこの表面の薄い蛋白層がin vivo長期にわたり安定して存在し抗血栓性を保つことがすでに示されている。この組織構造を持つ安定した蛋白層を血管内皮細胞に匹敵する新しい抗血栓性材料として注目し、小口径人工血管に応用した。内径3mm、7cm長のダクロン製人工血管の内面をポリウレタンでコートし平滑にした後、HEMA-Stコートを施し内面平滑な人工血管を作成した。雑種成犬8頭の両側頚動脈に埋め込みその長期開存性を観察した。3頭をウイルス感染で失ったが、残り5頭の人工血管は埋め込み後14-92日で全例開存が確認され、現在さらに長期の経過を観察中である。以上のようにHEMA-Stを内面にコートした小口径人工血管は内皮細胞に匹敵する優れた抗血栓性を示し、さらに内皮細胞播種型人工血管、生体血管などで問題となる生体組織使用に伴う煩雑さ、不確実さ、特別な設備の必要性が無く、品質管理や滅菌も容易であり、今後の臨床応用が期待される。
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池下 正敏, 田中 茂夫, 浅野 哲雄, 寺田 功一, 山内 仁紫, 杉本 忠彦, 井村 肇, 庄司 佑
1992 年21 巻3 号 p.
1199-1201
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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本邦では致死性心室性不整脈に対するICD療法が臨床治験として行われている。臨床治験ガイドラインの患者選択にそった手術とICD合併療法3例について再検討を行った。症例1-薬剤抵抗性のarrhythmogenic right ventricular dysplasiaの23歳, 男性に対してright ventricular isolationを実施し, VTは誘発されないが左室起源のVTが残されているためpatchを植込んだ。術後極度の心不全にて死亡した。術後VTは誘発されず, 心不全を有する症例のpatch electrode植込み適応の問題点が提起される。症例2-VT, Vfによる心肺蘇生が行われたidiopathic VTの16歳, 女性に対して, 右室流出路起源のVTにcryosurgeryを行い, Vfに対してはICD療法を実施した。経過は順調である。術後Vfは誘発されずgenerator植込みの適応の問題点が提起される。症例3-心筋梗塞に伴うpleomorphic VTの60歳, 女性に対して留切除と心内膜切除術を行ったが, 再発を認めICD療法を併用した。術後頻回の再発性VTを起こし, バッテリーの消耗を来たした。generator植込みの適応の問題点が提起される。これらの検討により, 致死性心室性不整脈に対する直達手術とICD併用療法ではpatch electrodeのみを植込み, generatorは術後経過により検討すべきである。心内カテーテル電極やexernal patchの実用が可能となれば, この問題は解決される。
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小坂井 嘉夫, 鬼頭 義次, 川島 康生
1992 年21 巻3 号 p.
1202-1206
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
心室頻拍(VT), 心室細動(VF)の治療法の一つとして植込み型除細動器(ICD)があり、この第1世代のAIDを3例、第2世代のAICDを4例植え込んだ。主にAICDについて報告する。症例は42~64歳の男性で、拡張型心筋症を合併し駆出率は20~37%と低下していた。全て薬剤抵抗性で、体外式直流除細動を必要とした。2例はカテーテル焼灼不成功例で、他の2例は多原性のVTでカテーテル焼灼の適応ないと考えられた。術前薬剤を中止して手術を行った3症例のVT停止閾値は1 J (joule), VF停止閾値は10~20Jであった。術後急性期にVTが頻発し電池の浪費が生じた。この経験から薬剤を継続して手術を施行した症例は、VT停止閾値が5J, VF停止閾値が20Jと少し高かったが、術後多発性VTは認めなかった。全例退院し日常生活に復帰した。しかし1例が6ケ月後に頻発するVTのため突然死した。ICDは不整脈停止療法であり、植え込み後も不整脈の予防として内科的治療を厳重に行う必要がある。
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野一色 泰晴, 山根 義久, 梶原 博一, 星野 和実, 市川 由紀夫, 石井 正徳, 鈴木 伸一, 小菅 宇之, 孟 真, 井元 清隆, ...
1992 年21 巻3 号 p.
1207-1211
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
In vivoにおける組織培養では、In vitroにおいては予測のつかなかった様な細胞の活性、細胞特有の働き、さらに細胞相互の関係がみらる。これらの作用を利用すれば、新しい人工臓器を作らせる可能性があることを人工血管の例を用いて説明したい。具体的な参考例としては、自家静脈片を細切し、布製人工血管壁に播種したところ、In vitroでは線維芽細胞のみが増殖し、内皮細胞や平滑筋細胞等の増殖が抑制されるはずであるのに、In vivoではこれらの諸細胞がすべて同時に活発に増殖し、それぞれの住み分けをした結果、新しい血管壁を作ることができた。異種細胞が共存すると、互いに特殊な関係をもち、影響を及ぼしあって独自の機能を発揮することが知られているが、本実験ではIn vivoにおいて、この現象を容易に得られることから、新しい人工臓器をIn vivo培養することで形成させることが可能となることを示していると思われる。
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菊池 明彦, 唐沢 真美, 片岡 一則, 鶴田 禎二
1992 年21 巻3 号 p.
1212-1216
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
アミノ基導入高分子材料表面とラットリンパ球亜集団との相互作用を、新たに開発したハイブリッド型作用場流動分画/細胞吸着クロマトグラフィー(FFF/AC)法により定量的に解析した. ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)にごく少量のカチオン性のアミノ基を導入したHAV3ではリンパ球の吸着は著しく低下することが見いだされているが、FFF/AC法によりHAV3ではリンパ球の吸着力が、PHEMAやアミノ基をより多く導入した材料(HAV7)と比べて著しく小さくなっていることが明らかとなった。さらに、吸着力の小さいHAV3において、B細胞とT細胞では吸着力に差があり、適当な接触時間と勇断応力を作用させることによりB細胞とT細胞との識別が可能となることが判明した。これは、B細胞とT細胞とでHAV3表面との静電相互作用の寄与が異なるためと考えられた。
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鈴木 嘉昭, 日下部 正宏, 秋庭 弘道, 日下部 きよ子
1992 年21 巻3 号 p.
1217-1221
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
99mTcによって標識された抗フィブリン抗体(
99mTc-T2G1s)を用いて人工材料表面に形成した血栓の検出法を検討した。試料はシリコーンにタングステンカーバイド微粉末を混合したカテーテルを用いた。ラットの総頸静脈、鎖骨下静脈合流部より心臓部まで評価試料を一定期間留置した後、抗フィブリン抗体を尾静脈より投与した。投与後3, 6, 24時間後、試料および主臓器を採取し、シンチレーションカウンターにてカウントし、血液との比を求め集積比とした。またオートラジオグラフィーにより全身分布像の観察を行った。血小板、フィブリノーゲンでは特に血栓成長期間の長い血栓の検出は不可能であるが抗フィブリン抗体によって検出することが可能であった. 血小板、フィブリノーゲンを用いた場合、インキュベーション時間は2日以上必要であるが、抗フィブリン抗体を用いた場合、24時間で検出可能な集積量を示した。
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田村 康一, 人見 滋樹, 夏目 徹, 小林 智和, 桑原 脩, 南部 昌生, 大西 忠之, 中村 幸一
1992 年21 巻3 号 p.
1222-1226
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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ポリビニルアルコール(以下PVAと略)水溶液の新しいゲル化法を開発した。この方法では化学試薬や放射線照射装置などは用いず凍結解凍を繰り返すことにより作製でき, PVAと水以外のものは含まれていない。さらに水分量が80~90wt%とすることができ, このような高含水性であるにもかかわらず, ゴム状弾性を有し機械的強度にすぐれている。高含水性を有し弾性体である生体組織に類似している。以前よりこのPVA Hydrogelを生体内に埋植しinertであり生体組織との癒着がみられないことから, 医用材料としての検討を加えてきた. 特に癒着防止膜としての応用を考え実験を重ねてきた。今回は25ヵ月間の長期にわたり, 成犬の心膜欠損部に縫着し実験をおこなった。その結果, 周囲の心外膜や肺組織との癒着はみとめられず, また周囲組織に炎症反応, 異物反応などはみられなかった。
生体内埋植用の医用材料として, 特に癒着防止膜として有用であり, 臨床応用可能であると考えられた。
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小菅 宇之, 野一色 泰晴, 孟 真, 石井 正徳, 市川 由紀夫, 星野 和実, 梶原 博一, 富山 泉, 近藤 治郎, 松本 昭彦
1992 年21 巻3 号 p.
1227-1230
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
自家組織が人工臓器素材として最適であるが、人工血管の場合その作成にはSparkesの方法
1)で6週間余り、佐藤らの方法
2)でも3週間必要である。我々は静脈片を用いる人工血管への組織片移植法を開発した
3)が、この原法を用い, 治癒力の強い大網を組織片として用いて術中に行う方法を新たに開発した。具体的方法としては成犬の開腹下に大網を3g採取し、剪刀にて細切し、生理的食塩水中にいれて大網組織細切片浮遊液を作成する。次に内径6~7mm・長さ5.7cmの高有孔性ポリエステル布製人工血管に圧力をかけて浮遊液を通過させて、組織片を絡ませた後、それを裏返した。成犬腹部大動脈に植え込んだ結果, 全例開存していた。大網には強い特有の修復再生能があり、この大網を用いた方法は治癒力の低下した高齢患者においても急速な治癒を期待できる方法と思われ、また臨床応用即可能であると考えられる。
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吉田 博希, 笹嶋 唯博, 稲葉 雅史, 森本 典雄, 大谷 則史, 久保 良彦
1992 年21 巻3 号 p.
1231-1235
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/12/02
ジャーナル
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小口径代用血管として開発されたポリエステルメッシュ補強ヒツジコラーゲン代用血管であるBIONOVA社製Omniflow®(OF)について基礎的、臨床的に検討した。基礎検討では雑種成犬14頭の腹部大動脈に移植し、最長観察期間32か月で11頭が開存し、開存率78.6%であった。グラフト内面には血球成分の多いフィブリンの付着を認めたが、中枢、末梢両吻合部から延びたパンヌスはグラフトに良く着床し、先進部の剥離は来さなかった。臨床的には下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)24例24肢に大腿-膝上膝窩動脈(FPAK)バイパス術を行った。最長観察期間17か月で、1年累積開存率は94.7%であった。重症糖尿病を合併した1例にグラフト感染を認めたが、グラフト拡張、瘤形成などの合併症は認められなかった。OFはpreclottingが必要なく、縫合も容易で、扱いやすく、十分な血流の得られるFPAKには使用可能な材料と考えられた。
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劉 輝, 阿岸 鉄三, 河合 達郎, 中川 芳彦, 高橋 徹, 早坂 勇太郎, 高橋 公太, 寺岡 慧, 野沢 真澄, 太田 和夫
1992 年21 巻3 号 p.
1236-1239
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
代用血液として研究開発された安定化ヘモグロビン(PHP)溶液は、固形成分を含まずその分子サイズが赤血球に較べ著しく小さい酸素運搬体である。PHP投与により虚血後の末梢循環や臓器障害が改善されると報告されている。今回我々はPHP溶液を置換液体に用いて、ラット全身血液交換実験を行い、IgG、IgA、IgM濃度の変化を検討したので報告する。
Lewisラット(n=8)を用い、常温下で血液ポンプを用いて全血交換を行った。全血交換後体重が一時的に減少したが、その後徐々に回復し、3週間後正常ラットと同等の体重となった。血中IgG、IgAおよびIgMのレベルは全血交換後、前値の10%以下へと減少を示したが、体重の変化と平行して回復した。
安定化ヘモグロビン溶液による全血交換は異種移植における異種抗体の術前除去に応用される可能性のあることが示唆された。
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村上 泰治, 中山 裕宣, 紀 幸一, 中山 頼和, 山本 典良, 久持 邦和, 妹尾 嘉昌, 寺本 滋
1992 年21 巻3 号 p.
1240-1244
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
過去4年間に開心術後心原性ショック10例に対し、補助人工心臓(VAD)を用いた。年齢は22から64才(平均51才)、男5例、女5例である。10例の内訳は弁膜症8例、心筋梗塞2例で、弁置換8例、冠動脈バイパス術2例を行った。補助循環は6時間から9日(平均4.8日)行った。9例がVADから離脱し、5例が生存、退院した。5例の追跡期間は、10から31ヵ月(平均19.2ヵ月)である。術前すべてNYHAW度であったが、術後はI度4例、II度1例であった。心エコーより算出したLVDs(左室収縮期径)、EF(左室駆出率)、mVcf(平均左室内周短縮速度)をみると、術後6ヵ月以降に改善傾向を示した。術後の心機能をみると、LVDs、EF、mVcfが有意に改善した。運動負荷では、12ヵ月経過した4例で、'安静時に比して心筋収縮能の増加がみられた。
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井上 龍也, 長谷川 隆光, 塩野 元美, 折目 由紀彦, 山本 知則, 鈴木 修, 塚本 三重生, 中沢 直, 佐久間 佳規, 三室 治久 ...
1992 年21 巻3 号 p.
1245-1250
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
今回我々は、右心補助人工心臓(Right Ventricular Assist Device: RVAD)の補助流量を変化させた場合の血行動態の変化と肺への影警について、ブタを用いて急性実験を行った。容量40mlの空気駆動式サック型補助人工心臓ポンプを装着し、次いで肺動脈幹を絞扼し右心不全モデルとし、RVADのflowをコントロールのAo flowの約30%としたもの(低流量補助群)、約60%としたもの(高流量補助群)とを比較したところ、RVAD駆動後、右室前負荷軽減効果は著明であったが、高流量補助群において、左心系の機能低下が進行する傾向が見られ、肺の形態的変化では肺浮腫の状態となり低流量補助群との間に相違が見られた。また、肺血管外水分量の変化を見てもRVAD駆動後は高流量補助群では更に上昇し両群間に有意差を認めた。以上より、RVADの補助流量の設定は左心及び肺機能に留意しながら慎重に決定する必要があると思われた。
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吉澤 誠, 蔵本 健一, 小林 英樹, 竹田 宏, 三浦 誠, 山家 智之, 片平 美明, 仁田 新一
1992 年21 巻3 号 p.
1251-1259
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
左心用補助人工心臓(LVAD)の動作を常に監視していなければならないオペレータの負担を軽減するために, LVAD駆動下の血行動態を, 自動的にオンライン・リアルタイムで推定監視するためのシステム(TOTOMES)を開発した. TOTOMESは, 空気圧駆動装置, 制御装置, および生体循環系に発生する異常の有無と発生源を検出する機能を有する. TOTOMESにおいては, 時系列モデルに基づいて, 末梢血管抵抗などの血行力学的パラメータが同定されるとともに, 自然心臓の心拍出量が推定される. また, 最適動作点制御の原理に基づき, 流入・流出路抵抗が各拍毎に計算される. 異常の検出はファジィ推論によって実現されており, ルールの前件部に含まれる計測量と推定量の組み合わせにより, 異常の発生源を区別することが可能となっている.
成山羊を用いた動物実験において, 流入路抵抗を突然増加させた場合や, 脱血を行った場合に対して, 提案したシステムが正しく機能することが確かめられた.
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赤崎 満, 古謝 景春, 国吉 幸男, 伊波 潔, 宮城 和史, 下地 光好, 島袋 正勝, 喜名 盛夫, 茸場 昭, 神里 隆
1992 年21 巻3 号 p.
1260-1263
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
Budd-Chiari症候群23例に対し、下大静脈遮断の補助手段として、F-Fバイパスを用い、直視下パッチ拡大術を施行した。使用した人工肺は、前期10例には気泡型肺を、後期の13例には膜型肺を用い、充填液量は21例で1200ml、2例で1600mlであった。血液希釈率は10~22.1%(平均15.2%)で、F-Fバイパスの平均流量は42.5ml/kg/minであった。下大静脈血流遮断時間は平均26分であった。手術時間は、3時間から9時間27分、平均5時間7分であった。術中出血量は600mlから4300ml、平均1830mlであった。また、閉塞肝静脈の再建を可及的行うようにしており、23例中14例に主要3分枝を開存させ、2分枝開存は9例であった。手術死亡はなく、全例症状の著しい改善を得、軽快退院した。以上、Budd-Chiari症候群に対する直視下根治術におけるF-Fバイパスの使用は、肝静脈血の返血が容易で、肝部下大静脈の病変部の確実な修復が可能であり、極めて有用な補助手段であると考えている。
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永田 昌久, 塩井 健介, 加藤 真司, 上床 邦彦, 間瀬 武則, 土岡 弘通
1992 年21 巻3 号 p.
1264-1266
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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開心術にさいしての体外循環によりトキシカラー法で測定されてくるいわゆるエンドトキシン様物質が高値を示すことは知られている。しかし, その原因ならびに臨床的意義については明らかにされていない。そこでCABG症例30例を対象として, 術前から術後にかけてのExならびにα2プラスミンインヒビター・プラスミン複合体(α2PIC)の測定をおこなった。手術開始直前のEx値は5.3±4.5pg/mlであったが, 術中のExは次第に上昇し体外循環(ECG)終了時に最高値をしめし, 248.1±103.6pg/mlであり, その後第一病日には急速に低下したが第七病日でも術前値までは戻らなかった。またα2PICの変化もECC終了時に12.3±9.4μg/mlと最高値を示し, その後急速に低下してExの変動と同じ傾向を示した。Ex, α2PIC値のpeak値と体外循環時間, 大動脈遮断時間とは必ずしも相関を示さなかった。とくに長時間大動脈遮断, 体外循環例のなかにはEx, α2PIC値が低値例から高値例までかなりのばらつきがみられた。これら高値例のなかには術後まったく問題なく経過したものもあるが, 逆に術後管理に難渋しICU滞在期間が長期化した例をみると, そのほとんどがEx, α2PIC高値例であり, これらは多臓器不全の原因ではないにしても助長因子の一つではないかと推察された。
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国吉 幸男, 古謝 景春, 伊波 潔, 赤崎 満, 宮城 和史, 下地 光好, 草場 昭, 島袋 正勝
1992 年21 巻3 号 p.
1267-1270
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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新しい小児用外部灌流型膜型人工肺、D705MIDIFLO(膜面積0.9m
2)について, その臨床使用症例32例について、積層型膜型人工肺VP-CML使用症例30例を対照に比較検討を行った。(1)充填量は平均821.7±35.4mlとVP-CMLの膜面積0.4m
2使用時の818.1±31.1m
2どほぼ同様であり, 膜面積0.84m
2, 1.25m
2使用時と比較して有意に少量であった。(2)O2添加能: 平均直腸温26.0度, 平均灌流量1,021ml/minの条件で28.9±12.8ml/min/m
2であり、VP-CML群の35.4±14.9ml/min/m
2と同様良好であった。(3)体外循環中に計測した肺内圧損(以下dp(mmHg))は送血流量(Blood Flow, 以下B.F.,l/min)に相関し, dp=29.8±B.F.+2.9で示され, VP-CML群と比較して有意に低値を示した。(4)free-Hb増加率; 0.84±0.47mg/dl/minでありVP-CML群の0.79±0.51mg/dl/minと有意差なく術後肉眼的血色素尿も認めなかった。以上より、D705 MIDIFLOは充分満足できる人工肺の一つと考えられた。
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冨澤 康子, 野一色 泰晴, 大越 隆文, 小柳 仁
1992 年21 巻3 号 p.
1271-1274
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
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動物の血管から得られた膠原線維および弾性線維からなる天然のマトリックスは人工的に作り得ない微細構築や特殊物性をもっている。我々はこの優れた特性を生かすためエポキシ化合物による架橋処理を代用血管に導入したところ器官の再構築が観察された。ヒツジ頸動脈を架橋処理し代用血管とし異種動物である犬の胸部大動脈を置換した。術後早期より宿主細胞の血管壁への侵入を認め、2か月後には血管壁の中膜の外膜よりに宿主細胞の侵入を認め、透過電顕によりマクロファージおよび平滑筋細胞であることが確認された。化学処理された異種組織内への宿主細胞、特に平滑筋細胞の中膜侵入の電顕的証明は今までなされたことがない。この成果は異種動物由来臓器の構築およびその特性を生かし宿主細胞の侵入を容易にすると宿主細胞がその部位に合わせて器官を再構築し新しい臓器を生体内で作り上げるという、新しい型の人工臓器の可能性を示唆している。
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城山 友廣, 赤松 映明, 池田 博之, 下村 泰志, 武内 俊史, 伴敏 彦
1992 年21 巻3 号 p.
1275-1279
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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歳差式遠心血液ポンプ(TSポンプ)の溶血特性を評価するために, In vitro実験ならびに動物実験を行った。また, 現在, 臨床使用されている遠心血液ポンプとの比較実驗を行った。In vitro溶血試験の結果は, ポンプ回転数が2500rpm以下の動作条件(C. 08.0L/min. 65mmHg)では, 血奬遊離ヘモグロビン(ΔHb)は10mg/dl/hr以下の低い値を示した。動物実験では, 循環開始後の一時期ΔHb値は50mg/dlと高値を示したが時間経過と共に20mg/dl程度の値に降下し, ほぼ正常な範囲内に収束した。さらに, 現在, 臨床使用されている遠心血液ポンプとの比較においても, 同程度のポンプ拍出条件下では, 血液のポンプ通過回数に対してΔHb値に有意差を認めなかった。以上のことから, 本TSポンプの溶血特性は臨床使用においても許容範囲であると云える。また, 血液の代用としてマイクロカプセル液を用いた模擬溶血試験を行った結果, 血液と類似した溶血特性曲線を示すことがわかった。
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深町 清孝, 秋保 洋
1992 年21 巻3 号 p.
1280-1282
発行日: 1992/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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