心電図
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10 巻, 2 号
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  • 臼井 支朗, 白川 正輝, 神山 斉己, 外山 淳治
    1990 年 10 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋細胞の興奮伝搬は, 致死性不整脈等の機構究明のために, 多くの電気生理実験により動的な特性を含めた詳細な解析が行われている.本研究は, こうした興奮伝搬過程の生理レベルのメカニズム解明を目的として, Beeler-Reuter単一心室筋モデル120個を1列に結合した興奮伝搬一次元モデルを構成し, 細胞間のgap conductanceおよび単一細胞の最大ナトリウムコンダクタンス (gNa) の変化に対するシミュレーションを行い, 興奮伝搬に関する特徴量の解析を行った.その結果, 1) 興奮伝搬速度θはgap conductanceの平方根に比例する, 2) gNaによりθを 増加させた場合, 活動電位の最大立ち上がり速度 (Vmax) は増加, 立ち上がり部分の時定数 (τfoot) は小さくなり, θ2に対してそれぞれ比例・反比例する, 3) 刺激位置から離れるに従って活動電位の持続時間 (APD-60) は減少する, 等の点で生理実験結果, あるいはケーブル理論に基づく理論解析と定性的に一致する関係が得られ, 本シミュレーションモデルの有効性を示した.
  • 岡本 良夫, 魏 大名, 武者 利光, 綱川 宏, 春見 建一
    1990 年 10 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心臓内の電気現象をシミュレートするため種々の計算機モデルが提案されてきたが, どのモデルも心臓を小さなユニットの集合として表わす点では共通している.我々も, 約5万個のユニットで構成され, 各ユニットに任意の活動電位波形を指定できる心臓モデルを開発し, 各種心疾患のシミュレーションに成功している.本稿の前半ではこのモデルの構成法を説明し, 正常心臓を例としてシミュレーションの結果を示す.後半では, 小さなユニットの集合として表わされた心臓モデルが持ついくつかの問題点を挙げ, これらを解決するための新しいモデルを提案する.
    このモデルでは, 心臓は四面体要素に分割され, 四面体の各頂点には心筋の特性を表わすいくつかのパラメータ (伝播速度の方向依存性, 活動電位波形の持続時間や振幅など) が指定される.線形補間で四面体内部のパラメータを決めれば, 心臓各部のあらゆる点で心筋特性が与えられ, 興奮伝播の非等方性・不均質性を始め, 活動電位波形の空間依存性などもシミュレートできる.
  • 綱川 宏, 兼坂 茂, 西山 玄洋, 日鼻 靖, 春見 建一, 岡本 良夫, 鎌倉 史郎, 下村 克朗
    1990 年 10 巻 2 号 p. 145-154
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 久保田 功
    1990 年 10 巻 2 号 p. 155-158
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    体表面心臓電位図は近年のコンピューターの発展により臨床応用が可能となった検査法の一つである.本稿では, 体表面心電図マッピングを臨床応用する上で重要と考えられるデータ表示法 (等電位図, 等積分値図, 等時線図, Departure map) について述べ, 次いで記録・処理法における最近の進歩 (省略誘導法, 加算平均体表面マッピング) を紹介する.
  • 平野 裕司, 沢登 徹
    1990 年 10 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Van Capelle and Durrer (Circ Res 47: 454, 1980) の興奮1生素子を用いて, 興奮伝導経路の固定されたリングモデルと興奮波に平面的な広がりを許されたシートモデルを作成し, ordered reentry (リングモデル) とrandom reentry (シートモデル) との相違点を検討した.いずれのモデノレにおいても各部位の電気生理学的特性が一様であっても興奮旋回波が誘発され得たが, モデルの一部に活動電位持続時間や細胞間結合の異なる部位を設定し, その境界部に期外刺激を与えることで旋回波の誘発はより容易となった.リングモデルでは一たび誘発された旋回波は同一周期で持続するのに対し, シートモデルでは各旋回毎にその経路が変動する場合があり, 興奮周期も記録部位により変動が認められときに自然停止する例も観察された.いずれのモデルにおいても期外刺激により旋回波の停止が可能であったが, シートモデルでは刺激により旋回パターンがより複雑化する例も認められ, 細動への移行と関連し興味ある所見と考えられた.
  • 神谷 香一郎, 加藤 秀平, 児玉 逸雄, 外山 淳治, 横地 裕, 山田 和生
    1990 年 10 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    第I群抗不整脈薬とNaチャネルの薬物受容体反応に関するモデルを考案し, モルモット単離心室筋細胞の電気生理学的実験よりmexiletine, aprindine, flecainideの結合解離定数を算出して, 心室期外収縮発生時のNaチャネルブロックの程度が, 基本調律のRR間隔と期外収縮の連結期によってどのように修飾されるかを推定した.Mexiletineは基本調律間隔に影響されることなく連結期の短い期外収縮を抑制するのに対し, Flecainideは連結期に影響されることなく基本調律間隔の短い期外収縮を抑制すること, Aprindineは両者の中間的な作用を持つことが推定された.これらの推定は, RR間隔二次元表示法によるホルター心電図解析の結果とよく一致していた.
  • ―ランダム運動負荷と心電図ST解析―
    陶山 晶子, 砂川 賢二, 杉町 勝, 戸高 浩司, 板谷 良一, 中村 元臣
    1990 年 10 巻 2 号 p. 168-172
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Computer scienceの発達により可能となったランダム雑音法を用いて運動に対するシステム自体のST変化の特性を求め, 虚血性心疾患の診断を検討した.対象は労作性狭心症170例, 左室肥大72例, 非定型胸痛症37例, PTCA/CABG後の59例および正常39例であった.運動は軽微な歩行 (Bruce法stage I) を20分間反復し, 運動強度と各心拍毎のST偏位を記録し, 両者を周波数解析後, STインパルス応答というシステムのST変化の特性を表わす関数を求めた.STインパルス応答は, 初期一過性低下後, 基線に復する.この低下時間は正常9秒, 左室肥大11秒, 非定型胸痛症10秒, 労作性狭心症25秒であり, 労作性狭心症は他群に比し有意に延長していた.ST低下時間12秒以上を虚血陽性の診断基準とするとsensitivity81%, specificity86%と従来法より優れていた.本法は極めて軽微な負荷で虚血を診断でき, その診断精度も優れていた.
  • 石井 博之, 田村 康二
    1990 年 10 巻 2 号 p. 173-185
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    循環生理情報処理システムに基づいて, 各種心電図情報と心エコー図の情報を集約し, 大きなデータベースを構築した.さらに情報の速やかな検索を時系列ならびに水平面の両方で行い, 各種疾患での指標となるデータを一つのファイルベースとして管理し, 各種分析に応用できるようにした.現在, このような疾患別ファイルベースのうち, 左室肥大および心筋梗塞症に関するデータを集約したものを主体に分析を行っている.多変量解析などにより, 個々のデータの分析を行い, 基本的な相関関係から因子分析を行って総合的な判断を行っている.
    本システムによって患者情報の有効な臨床応用および評価が可能となっており, さらに個々の病態に応じた総合的な診断支援が行えるようになったことを示した.
  • 高田 英臣, 長嶋 淳三, 藤巻 力也, 桝井 良裕, 武者 春樹, 三川 武彦, 村山 正博, 須階 二朗
    1990 年 10 巻 2 号 p. 186-191
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    健常者における2連発以上の連発型心室期外収縮 (VPC) の発生要因を推定することを目的として, 約1年間隔で2回のHolter心電図を記録し得た健常者のうち, 連発型VPCを認めた24例につき分析した.
    24例延べ48件のHolter心電図中, 2連発VPC: 22件, 3連発VPC: 4件, 4連発VPC: 2件であり, 連発型VPCの長期再現性は3/24例と低率であった.連発型VPCは日中活動時で, VPCの多い時間帯, VPCの多い日に発生する傾向がみられた.健常者における連発型VPCは長期再現性に乏しく偶発的現象と考えられるが, その発生予測にはVPCの増加を知ることが有用と思われた.
  • ―T isointegral mapを用いて―
    松井 幹之, 八巻 通安, 池田 こずえ, 安井 昭二
    1990 年 10 巻 2 号 p. 192-200
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    労作狭心症例34例についてトレッドミル負荷前後で体表面電位図を記録した.J点よりT波の終了点までの前3/8をST部, 後5/8をT部とし, STおよびTisointegral mapを作成し, area-ST, area-Tの変化と運動負荷心筋シンチグラム上の心筋虚血領域との関連について検討した.Tisointegral map上, 運動負荷により左前胸部でarea-Tの増加を示す「増加型」8例中5例に前壁中隔虚血を認め, 左前胸部上方でarea-Tの減少を示す「減少/上型」19例中15例に後下壁虚血を認めた.area-ST減少領域よりarea-T減少領域が上方に偏位していた17例中13例に後下壁虚血を認めた.運動負荷による左前胸部でのarea-Tの増加は前壁中隔虚血を表し, 左前胸部上方でのarea-Tの減少は, 後下壁虚血に伴う体幹下部でのarea-T増加の対側性変化と考えられた.判別関数を用いて体表面電位図所見より判別式を作成することにより, 心筋虚血領域が良好に推測できた.
  • 荒井 敏, 富田 恒一, 長嶋 淳三, 高田 英臣, 武者 春樹, 三宅 良彦, 佐藤 忠一, 村山 正博, 須階 二朗
    1990 年 10 巻 2 号 p. 201-207
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    2源性VPC患者13人についてHolter心電図を用い, 総VPC, A型 (右脚ブロック類似型) , B型 (左脚ブロック類似型) の日差変動, 日内変動および抗不整脈薬の効果について検討した. (1) 無投薬下では, 1日総VPC数, A型, B型の出現数の再現性は乏しかったが, いずれも出現数の多い例で再現性が高い傾向を認めた. (2) A型, B型いずれかが優位であることには高い再現性を認めた. (3) 日内変動はA型がB型より再現性が高かった. (4) 抗不整脈薬 (Disopyramide) は, A型よりもB型に有効である例が多く, 2源1生VPCの日内変動パターンに影響を及ぼすことが推定された.以上より, 2源1生VPCがその発生源により各々異なった日差および日内変動を示し, また薬剤効果も両者に同一でなく, その起源により異なる可能性が示唆された.特に, 左室起源と考えられるA型が治療抵抗性であることは, 治療方針を決定する上に重要であると思われた.
  • ―特に心房刺激による房室ブロックの発現部位と頻拍依存型発作性房室ブロックならびに第II度房室ブロックのパターンとの関係について―
    田嶋 経躬, 斉藤 淳一, 荻野 達夫, 金子 敬子, 土肥 豊
    1990 年 10 巻 2 号 p. 208-218
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    AHブロック5例, His束内ブロック12例, Hvブロック13例に対して心房ペーシングを施行し, それぞれのブロック部位における最小房室伝導比と房室ブロックのパターンを比較検討した.AH, HVブロック例に比しHis束内ブロック例の房室伝導比は多様1生を示し, 特に頻拍依存型発作性房室ブロックはHis束内のみに4例みられた.この特殊な房室ブロックの症例を呈示し, 発現機序や臨床について考察を加えた.またこの特殊房室ブロックには, 従来いわれてきたMobitzII型房室ブロックに加えて, Wenckebach型房室ブロックも先行しうることが示された.今回の症例の心房ペーシングの成績から, これまで報告されてきた以上に, 一般的にHis束以下のWenckebach型房室ブロックが存在しうる可能性が示された.
  • ―方法論を中心として―
    渡辺 俊夫, 山口 一郎, 加賀谷 茂, 宮沢 光瑞
    1990 年 10 巻 2 号 p. 219-225
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    マイクロコンピュータを利用して, 運動負荷テストにおける心電図, 動脈圧波形のオンラインリアルタイム処理システムを開発した.テスト中は, 心電図と上腕動脈圧を連続的にA/D変換し, DMAバッファに格納しつつ, 15秒毎にDMAバッファからデータを取り出し, 1心拍毎の瞬時心拍数, ST偏位, 最大, 最小および平均動脈圧を求め平均化した.これらの各計測値から以下の成績が得られた. (1) 運動負荷時の心拍-血圧応答が, 容易に把握された. (2) HR-STループは, 運動負荷時と回復期の心拍とST下降度関係の把握に, またLorenz plotは, 運動負荷テスト時の不整脈の検出に有用と考えられた. (3) 心電図の重畳波形表示は, STスロープの診断に効果的であった. (4) 実時間分析の精度向上のため自動分析値の再確認操作を行うことで, 精度の高い安価な自動化システムを構築できた.
  • ―Subtraction法による検討―
    杼木 秀高, 須階 二朗, 原 正寿, 宗 武彦, 中村 俊香, 中沢 潔, 三宅 良彦, 佐藤 忠一, 村山 正博
    1990 年 10 巻 2 号 p. 226-235
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    微弱高周波成分である心室遅延電位 (LP) は, 一般に加算平均法による検出が行なわれているが, 加算に伴う位相ずれや, 濾波に伴うtransientの影響により, LPの検出を不明瞭とする可能性がある.本研究では心電信号中の原波形から強度の大きい低周波成分を除去し, さらにsmoothingを加えることにより, 微弱高周波成分であるLPを検出する新しい記録方法 (subtraction法) を開発し, 加算平均法と比較検討した.両者の方法とも, 健常群6例はLP陰性で, ARVD群3例はLP陽性であった.DCM群では, LP陽性はともに8例中5例 (62.5%) であったが, 両者の一致率は75%であった.Subtraction法は原理的にtransientや位相ずれの影響が極めて少なく, 雑音が少なければ加算なしか, 少数回の加算で微弱高周波成分の検出が可能であった.さらに, 本法によりQRS波内部の高周波成分も検出され, 今後の発展が期待された.
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