心筋細胞の興奮伝搬は, 致死性不整脈等の機構究明のために, 多くの電気生理実験により動的な特性を含めた詳細な解析が行われている.本研究は, こうした興奮伝搬過程の生理レベルのメカニズム解明を目的として, Beeler-Reuter単一心室筋モデル120個を1列に結合した興奮伝搬一次元モデルを構成し, 細胞間のgap conductanceおよび単一細胞の最大ナトリウムコンダクタンス (g
Na) の変化に対するシミュレーションを行い, 興奮伝搬に関する特徴量の解析を行った.その結果, 1) 興奮伝搬速度θはgap conductanceの平方根に比例する, 2) g
Naによりθを 増加させた場合, 活動電位の最大立ち上がり速度 (V
max) は増加, 立ち上がり部分の時定数 (τ
foot) は小さくなり, θ
2に対してそれぞれ比例・反比例する, 3) 刺激位置から離れるに従って活動電位の持続時間 (APD
-60) は減少する, 等の点で生理実験結果, あるいはケーブル理論に基づく理論解析と定性的に一致する関係が得られ, 本シミュレーションモデルの有効性を示した.
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