Enterobacteriaceaeに属する魚類病原歯として知名のものは保科が養殖ウナギの鰭赤病の原因の一つとして報告したParacolobactrum anguillimortiferum HOSHINA,1962である。また,最近ROSSらはニジマスの口赤病(redmouth disease)よりEnterobacteriaceaeに属する菌を分離し,それについて詳細な細菌学的研究を報告している。やや古く,GRIFFINらは熱帯魚から鞭毛は極毛一本であるが生化学的性状ではParacolobactrum aerugenoidesに似た病原菌を分離した。しかし,その後それはAeromonas liquefaciensと見做されると述べている。これらのほか,この科に属する魚類病原菌の記述はないようである。著者らは先に,最近流行し始めて問題になっている鰓病に罹った養殖ウナギかとしばしばAeromonas liquefaciensとEnterobacteriaceaeに属する一種の菌が分離されることを報告した。その後,東京都下のキンギョ養殖場でよく発生する軽度の腹水と立鱗症状を示す魚の腹水や臓器からEnterobacteriaceaeのものがしばしば分離されることを知った。但しそれらの病魚からは例外なくAeromonas属の細菌が分離され,その病態はこの菌に因るものと考えられた。これらのEnterobacteriaceaeの菌はいずれもP.anguillimortiferumと同じと見做しうるものであるが,病原性はかなり弱いようで,一次病因としての役割りにはなお検討すべき点が残されているように思えた。以下に著者らがウナギ及びキンギョより分離した菌株について調べた結果の一部を述べ参考に供したい。
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