伊豆諸島のフクトコブシから検出されたキセノハリオチス症原因菌(以下,キセノハリオチス)のクロアワビおよびメガイアワビへの感染性を同居攻撃試験で調べるとともに,感染率が大きく異なるフクトコブシ2群を長期飼育し,本菌のフクトコブシへの病原性を検討した。15ヶ月間のフクトコブシ感染貝との同居試験では,クロアワビおよびメガイアワビへの感染は認められなかった。また,感染率の異なるフクトコブシ2群を24か月間飼育した結果,累積死亡率は50%と53%であり,統計学的有意差は認められず,病原性も軽微であると考えられた。さらに,供試フクトコブシから検出されたキセノハリオチス 16S rRNA遺伝子の部分塩基配列は全て同一で,カリフォルニアのアワビ類から報告されているキセノハリオチスの塩基配列と一塩基異なっていた。
我が国の水産業に大きな被害を与えるおそれのある疾病の侵入を未然に防ぐとともに,万が一,国内に侵入した場合,迅速かつ効果的な措置を講じ,被害を最小限に止めるため,水産防疫専門家会議を設置し,リスク評価を行いました。その評価結果を踏まえて管理措置を検討し,水産資源保護法施行規則及び持続的養殖生産確保法施行規則の一部を改正し,水産防疫体制を強化しました。輸入防疫及び国内防疫の対象疾病は,省令改正前の11疾病に新たに貝類等の13疾病を追加し24疾病に拡大しました。その防疫対象動物として,アワビ,カキ,ホタテガイ等を新たに追加しました。対象動物のうち,生きているものは稚魚や発眼卵だけではなく,全ての成長段階のものが対象になり,そのうち,食用に供するものについては,輸入後,公共用水面やこれに直接排水する施設で保管するもののみが対象となりました。さらに,生きていないものは,対象動物を原料として養殖の用に供するものが対象となりました(魚粉,魚油は除く)。