魚病研究
Online ISSN : 1881-7335
Print ISSN : 0388-788X
ISSN-L : 0388-788X
11 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 新種の提案
    高橋 誓, 江草 周三
    1977 年 11 巻 4 号 p. 175-182
    発行日: 1977/03/30
    公開日: 2009/10/26
    ジャーナル フリー
     (1) アユ寄生微胞子虫の生鮮胞子は長楕円形で,大きさ5.1~6.2×2.0~2.5μ,平均5.8×2.1μである。(2) 感染実験により,感染後6日目に腸粘膜固有層にシゾント1個と宿主細胞核1個を持つキセノマが,つづいて6~9日目に腸粘膜下組織から筋肉層に数個のシゾントと数個の宿主細胞核を持つキセノマが観察され,本種が細胞内寄生性であることが分かった。(3) キセノマ内における増員生殖と胞子形成の過程を記載した。(4) 本種は1個のスポロントから2個の胞子を作るものであり,Glugea属に分類される。(5) 感染実験によリアユのほかにニジマスも本微胞子虫に対し感受性を持つこと,しかしGasterosteus aculeatus microcephalusは感受性を持たないことが分った。(6) 既報のGlugea属の種と比較し,胞子の大きさ,宿主範囲の特性から本種を新種と認めGlugea plecoglossi n. sp.を提案した。
  • 病理組織
    宮崎 照雄, 窪田 三朗, 田代 文男
    1977 年 11 巻 4 号 p. 183-186
    発行日: 1977/03/30
    公開日: 2009/10/26
    ジャーナル フリー
     1.サケ科魚類稚魚の内臓真菌症を病理組織学的に検討した。2.その結果2種の真菌感染が認められた。S. diclina感染症ではカビ菌糸は胃幽門部の胃壁から侵入し,その周囲の内臓諸器や腹腔内に伸長していた。未同定糸状真菌感染症ではカビ菌糸は鰾内で多量に発育し,鰾壁から侵入して周囲の内臓諸器官に伸長していた。
  • アマゴ稚魚の腹腔内より分離された真菌の性状
    畑井 喜司雄, 江草 周三
    1977 年 11 巻 4 号 p. 187-193
    発行日: 1977/03/30
    公開日: 2009/10/26
    ジャーナル フリー
     1.内臓真菌症を呈するアマゴ稚魚の腹腔内より分離されたGFA 7501株およびGFA 7502株の性状について検討した。2.GFA 7501株はSPARROWおよびDICKの分類体系に従いSaprolegnia属に,またSEYMOURの種の同定基準に従いS.diclinaに同定された。本真菌の初期感染部位は胃の幽門部と推定された。3.GFA 7502株は同定し得ず,一応隔壁を有する未同定糸状真菌と仮称した。本真菌の初期盛染部位は胃の噴門部と推定された。4.組織学的検査の結果,7例中5例がS. diclinaの単一感染症で,2例がS.diclinaと未同定糸状真菌との混合感染症であった。5.各真菌の発育適温はGFA 7501株が15℃, GFA 7502株が10℃であった。 GFA 7501株はpH 3.5で,GFA 7502株はpH 3.0以上で発育がみられた。マラカイトグリーンおよびメチレンブルーの発育阻止濃度はGFA 7501株で0.2 μg/mlおよび100 μg/ml, GFA 7502株で1.6 μg/mlおよび>100 μg/mlであった。
  • グルギア症と水温の関係
    高橋 誓, 江草 周三
    1977 年 11 巻 4 号 p. 195-200
    発行日: 1977/03/30
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
     アュのグルギア症が水温の影響をうけることは疫学的調査でも明らかであるが,どのように影響をうけるかを明らかにするため,水温の異なる二水系(地下水とびわ湖水)を用いて人工感染による実験を行った。その結果G.plecoglossiの感染は水温に影響なく成立するが,その後のシゾゴニーは大きく影響をうけ,16℃以下であると消化器管の粘膜下組織や筋層にシゾゴニーを停止して位置している。水温が18℃以上になるとシゾゴニーは活発になり, キセノマは肥大しつつ,腹腔内へ移行し,スポロゴニーの開始,宿主反応の出現と“シスト”形成が進行する。しかしこの過程も18℃以下の水温に移すと直ちに停止する。以上のことより,アュのグルギア症は17℃に水温を制御することにより防止することが可能である。
  • 畑井 喜司雄, 江草 周三, 野村 哲一
    1977 年 11 巻 4 号 p. 201-206
    発行日: 1977/03/30
    公開日: 2009/10/26
    ジャーナル フリー
     1.ニジマス稚魚に発生した水生菌症に関し,その発生概要および体表患部より分離された真菌について記載した。2.供試6株のムーンフィッシュに対する寄生性は株により異なったが,その中でN7619株にもっとも強い寄生性がみられた。3.供試6株はすべてSaprolegnia sp.に同定されたが,このうちN7619株だけに有性器官が形成され,S.australisに同定された。4.N7619株の有性生殖器官の特徴は造精枝がdiclinousタイプ,卵胞子の内部構造が亜中心性型,また造卵器壁に孔絞がみられる点であった。5.S.australisが水生菌症の患部から分離され,さらにそれがムーンフィッシュに寄生性を示した報告はこれが初めてである。6.本症はヒレグサレに起因し,二次的にそれらの部位にSaprolegniaが寄生したミズカビ病と診断された。
  • 若林 久嗣, 豊田 宏, 江草 周三
    1977 年 11 巻 4 号 p. 207-211
    発行日: 1977/03/30
    公開日: 2009/10/26
    ジャーナル フリー
    It was found that yellowtails were readily infected with Pasteurella piscicida through the digestive tracts under an experimental condition. Healthy jevenile cultured yellowtails were used for experimentation. Newly isolated P.piscicida culture was stocked in a liquid nitrogen. container and was subcultivated just befboe use. A given quantity of the cells was put in a gelatin capsule together with some diets. The capsules were then administered directly to the stomack of the fish by means of a vinyle tube and piston rod. Groups of two or three fish were held in each 280 liter concrete tank with recircling and filtrating water system.
    All of the experimental fish were infected with the bacteria and died by the third to seventh day after administering the cells. Formation of white spots in the internal organs was observed in some victimes (Table 1 and 2). Recovery of P. piscicida from the blood of infected fish was investigated. Blood samples were serially taken from the fish by means of a syringe, introduced in Cuvier's tube, and living bacteria in the samples were counted by the plate method(Table 3). Recovery of P. piscicida from the digestive tracts of infected fish also was examined. The data obtained indicated that orally introduced bacteria were maintained in the intestine for long time(Table 4).
    Challenge of vaccinated yellowtail with a gastral administration of P. piscicida was tried. Experimental fish used were orally vaccinated with formalin-killed bacterin prepared from virulent P.piscicida broth-culture.The bacterin was given in a dose of 50 mg per fish per day for 21 days.The result suggested that oral vaccination with the killed bacterin was ineffective in the control of Pasteurelosis (Table 5).
  • 田代 文男, 森川 進, 荒井 真
    1977 年 11 巻 4 号 p. 213-215
    発行日: 1977/03/30
    公開日: 2010/02/10
    ジャーナル フリー
     1.1974年12月から岐阜県内の養魚場でニジマス・アマゴ・ヤマメ稚魚に新しいカビ病が8例発生したので発病状況と病魚の肉眼観察を行った。2.本症は餌付後1~2週令で発病し,斃死率は10~20%がほとんどである。3.病魚は外観的には躯幹の胃部付近の膨張と膨張部位の体表にぼやけた出血斑をともなう。胃,幽門垂,前腸部,脾臓は発育した菌糸で包まれ,胃,前腸部の出血と腹水をもたらし,時には菌糸が白塊状となることもある。
feedback
Top