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C.J. Rodgers, M.D. Furones
1998 年 33 巻 4 号 p.
157-164
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
地中海においては依然としてイガイやカキといった貝類の養殖生産量が大半を占めているが, 最近スズキやタイ類などの海産魚の養殖が盛んになり始め, それに伴い各種魚病による被害が問題になっている。 ビブリオ病およびパスツレラ症に代表される細菌病, ノダウイルス症, リンホシスチス病およびウイルス性赤血球症といったウイルス病, アミルウージニウム症, イクチオボド症, アイメリア症などの原虫症, ディプレクタナム症などの単生虫症, カリグス症やエルガシルス症などの寄生虫症, イクチオホヌス症といった真菌症が問題となっている。
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Donald V. Lightner, R. M. Redman
1998 年 33 巻 4 号 p.
165-180
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
ウイルス病は世界のエビ養殖産業に甚大な経済的被害をもたらしている。 アメリカにおいては Taura syndrome virus (TSV),Infectious hypodermal and hematopoietic necrosis virus (IHHNV) および Baculovirus penaei が重要な病原ウイルスとなっている。 これまでに多くのウイルス病対策が試みられてきたが, SPF (specific pathogen-free) あるいは SPR (specific pathogen resistant) の種または系統のエビを用いることが最良の防除対策であると考えられ, 最近アメリカでは TSV および IHHNV 耐性の Penaeus stylirostris の系統が養殖されている。
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中島 員洋, 井上 潔, 反町 稔
1998 年 33 巻 4 号 p.
181-188
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
海産魚類養殖において, 種々の病害が発生し, 大きな問題となっている。 本論文では, これらのうち我が国におけるウイルスに起因する主な疾病について紹介した。 DNA ウイルスに起因する疾病として, ウイルス性表皮増生症, “ヘルペスウイルス病”, リンホシスチス病, “イリドウイルス病”がある。 RNA ウイルスに起因する疾病として, ウイルス性腹水症, ウイルス性変形症, ヒラメラブトウイルス病, ウイルス性神経壊死症, 赤血球封入体症候群がある。 また, 原因ウイルスが未分類なものとして口白症がある。
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Sang-Gyu Sohn, Myoung-Ae Park
1998 年 33 巻 4 号 p.
189-192
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
韓国では海面養殖の発展に伴い, 病害問題が増加し深刻な被害をもたらしている。 被害の点ではウイルス病が最も重要であり, これまでに6つのウイルスが海産魚およびエビから報告されている。 本論文では以下の6つのウイルス病について簡潔に紹介した:ヒラメのウイルス性表皮増生症(ヘルペスウイルス), ヒラメ等のビルナウイルス病, マハタのウイルス性神経壊死症(ノダウイルス), 数種海産魚のリンホシスチス病(イリドウイルス), トラフグの口白症(不明ウイルス), コウライエビの white spot syndrome (バキュロウイルス様)。
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B.L. Munday, L. Owens
1998 年 33 巻 4 号 p.
193-200
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
オーストラリアにおける海面養殖の歴史は比較的浅いため, これまでに問題となったウイルス病はあまり多くない。 現時点における最大の脅威はバラマンディ仔魚におけるノダウイルスによる神経・網膜症である。 またヘルペスウイルスによると考えられる野生のピルチャード(イワシ類)の大量死は最近の大きな出来事である。 貝類には重要はウイルス病はないが, 養殖エビではパルボ様ウイルスおよびラブド様ウイルスなど4種のウイルスが観察されている。 mid-crop mortality syndrome (MCMS) が問題となっている。
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Hsin-Yiu Chou, Chung-Che Hsu, Tsui-Yi Peng
1998 年 33 巻 4 号 p.
201-206
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
1995年以来台湾では養殖ハタ(Epinephelus sp.)に新しいウイルス病が流行し被害をもたらしている。 病魚の脾臓に直径230nmの正20面体ウイルスが観察され, KRE 細胞を用いて分離された。 本ウイルスを健康なハタに接種したところ, 死亡率は100%に達し, それらから同様のウイルスが再分離された。 これらの結果から, 本ウイルスが問題となっている病気の原因体であると判断された。 本ウイルスはその形態および核酸の種類などからイリドウイルス科に分類され, 台湾ハタ・イリドウイルス(RGIV)と命名された。
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西田 弘子, 吉水 守, 江面 良男
1998 年 33 巻 4 号 p.
207-211
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
精製リンホシスチス病(LCD)ウイルスを ELISA 抗原として, ヒラメ健康魚, 発病魚および感染耐過魚の血中抗体検出を試みたところ, 群れごとに ELISA 吸光値に差が認められ, 値は上記の順に高かった。 感染耐過魚の血清を用い, 抗原および各抗血清の最適濃度ならびに ELISA のベースラインを決定した。 健康魚に不活化ウイルスを接種し, 最適 ELISA 条件下で血中抗体価を測定したところ, 接種1~3か月後に抗体価の上昇が観察され, 本 ELISA は免疫後の血中抗体価を測定するのに有効であると考えられた。
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Hsin-Yiu Chou, Su-Jung Chang, Hsin-Yu Lee, Yih-Chy Chiou
1998 年 33 巻 4 号 p.
213-219
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
台湾では1969年以来養殖ハマグリの大量死が発生しているが, その原因は明らかにされていない。 本研究ではハマグリのビルナウイルス感染に及ぼす4種の金属イオン(Zn++, Cd++, Cu++, Hg++)の影響について検討した。 金属イオンもしくはウイルスだけを作用させたハマグリの死亡率は10%であったが, ウイルス感染後致死濃度以下の金属イオンに暴露したハマグリの死亡率は20~52%, 金属イオンに暴露した後ウイルスを感染させた貝の死亡率は65~90%と, それぞれ高かった。
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楠田 理一, 川合 研児
1998 年 33 巻 4 号 p.
221-227
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
海産養殖魚に対する魚病細菌として, Edwardsiella tarda, Flexibacter maritimus, Lactococcus garvieae (= Enterococcus seriolicida) Mycobacterium sp., Nocardia kampachi (= N. seriolae), Photobacterium damsela subsp. piscicida (= Pasteurella piscicida), Streptococcus iniae, Listonella anguillarum (= Vibrio anguillarum) などが報告されている。 これまでに報告された海産魚の魚病細菌を表に示すとともに, 主要な細菌による病気の特徴および対策等について概説した。
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J.-F. Bernardet
1998 年 33 巻 4 号 p.
229-238
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
尾腐れや潰瘍を特徴とする Flavobacterium-Cytophaga, グループの細菌による海産魚の疾病はかなり前から知られているが, 詳しく研究されている病原菌は次の3種しかない。 Flexibacter maritimus は日本で最初に発見され, その後欧米でも報告され, 分類学的位置やその病原構造などについてもよく研究さらている。 Flexibacter ovolyticus はノルウェーのハリバットの卵に付着する病原菌であり, Chryseobacterium scophthalmus はスコットランドのターボットの病原菌として報告されている。
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R.J. Collighan, A.J. Bennett, G. Coleman
1998 年 33 巻 4 号 p.
239-246
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
Aeromonas salmonicida の3つの鉄調節外膜タンパク質(iromp:86,82および74kDa)をそれぞれの抗体を用いたサザンハイブリダイゼーションおよびそれらの遺伝子の塩基配列の一部を決定することにより, 同定した。 それらの結果およびデーターベースを利用した塩基配列のホモロジー検索の結果, 3つの iromps は以下のように同定された。 ;86 kDa iromp (FstA)=Vibrio anguillarum FatA, 82 kDa iromp (FepA) Escherichia coli FepA,74 kDa iromp (IrpA) =E. coli Cir
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Md. Bazlur Rashid Chowdhury
1998 年 33 巻 4 号 p.
247-254
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
バングラディシュの淡水養殖魚には皮膚の潰瘍や尾ぐされを呈する病気が多発し, Aeromonas や Pseudomonas が多数分離される。 本研究ではそれらの分離株の性状を調べるとともに, 薬剤感受性, 水中での生存能および病原性について調べた。 その結果, A.hydrophila に同定された1株および種名不明の Pseudomonas 1株がキャットフィッシュあるいはコイに病原性を示し, 病気に関与していることが分かった。 分離株の多くは薬剤耐性を示し, 池水中で長期間生存しうることが判明した。
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M.M. Iqbal, 田島 研一, 澤辺 智雄, 中野 一晃, 絵面 良男
1998 年 33 巻 4 号 p.
255-263
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
タイ, マレーシアおよびバングラデッシュで魚病から分離された計44株の Aeromonas 属細菌の分類学的検討を行った。 表現型から A. hydrophila に同定された13株は, DNA 相同性から A. hydrophila (9株)と A. veronii biotype sobria (4株)に同定された。 しかし, 表現型で A. veronii biotype sobria に同定された6株を除く A.jandaei (12株)および Aeromonasspp. (13株)に同定された菌株は, DNA 相同性を調べたところ表現型に基づく同定とは異なる結果が得られ, 表現型にのみ基づく分類には問題があることがわかった。
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Andrea Belem Costa, 金井 欣也, 吉越 一馬
1998 年 33 巻 4 号 p.
265-274
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
加熱およびホルマリン死菌を用いた凝集試験ならびに菌体の60℃加熱抽出抗原を用いた免疫電気泳動によって, 他魚種由来株を対照にマダイおよびチダイから分離された非運動性 Edwardsiella tarda の血清学的症状を調べた。 凝集試験の結果から, タイ類由来株はウナギおよびヒラメ由来の対照株と同じ O 血清型に属することが判明した。 また, 菌体表面には O 抗原のほかに易熱性抗原の存在が示唆された。 免疫電気泳動では, 耐熱性抗原と複数の易熱性表在抗原の存在が示され, タイ類由来株と他魚種由来株は類似の泳動パターンを示した。
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M.Habibur Rahman, 鈴木 聡, 楠田 理一, 川合 研児
1998 年 33 巻 4 号 p.
275-279
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
飢餓状態においた A.hydrophila は培養菌よりも病原性が高いことが明らかにされている。 本研究では飢餓菌と培養菌の外膜タンパクと S 層タンパクの違い, およびフナのマクロファージの貧食に対する両菌の抵抗性を比較した。 その結果, 飢餓菌には培養菌とは明らかに異なる外膜タンパクが認められ, S 層タンパクが消失した。 マクロファージの貧食率は飢餓菌に対して低かったことから, 外膜および S 層タンパクの変化が食細胞に対する抵抗性の向上をもたらしたものと考えられる。
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河原 栄二郎, 福田 譲, 楠田 理一
1998 年 33 巻 4 号 p.
281-285
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
1995年に大分県の養殖場で類結節羅病ブリから分離された菌株と同時期に同養殖場のブリから得た血清との凝集試験を行った。 その結果, 分離菌株は凝集抗体価の高さによって高中低の3つの型(ABC)に大別された。 つぎに, ABC 型の代表菌株に対するブリ抗血清を作製し, 吸収試験を実施したところ, いずれの型の代表菌株も他の型の抗血清の抗体を完全に吸収できず, 3つの血清型の存在が裏付けられた。 更に, 代表菌株に対する抗血清とそれぞれの株の粗リポ多糖を用いて沈降反応を行った結果, 代表菌株に共通および特異的な抗原の存在が確認された。
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川上 秀昌, 篠原 信之, 酒井 正博
1998 年 33 巻 4 号 p.
287-292
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
ブリ類結節症ワクチンにビブリオワクチン(VAB), M-グルカン, キチンあるいはフロインド完全アジュバント(FCA)を混合し, 感染実験を行った。 最も高いアジュバント効果を示したのは FCA であった。 他の VAB, M-グルカンあるいはキチンと本ワクチンを混合投与した場合のワクチン有効率は, 本ワクチン単独接種区と比較して低かった。 従って, これら免疫賦活剤は本ワクチンの有効なアジュバントではないと考えられた。
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L. Ruangpan, P. Na-anan, S. Direkbusarakom
1998 年 33 巻 4 号 p.
293-296
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
ウシエビ孵化場の飼育水から分離された細菌の中から Vibrio harveyi の発育を阻害する細菌として1株(NICA1031)の V. alginolyticus を選んだ。 この NICA 1031株と V. alginolyticus (5株)を塩分, 温度, pH を変化させた人工海水培地中で一緒に培養し, NICA1031の阻害作用を調べた。 その結果, 塩分20あるいは30 ppt の時より10 ppt の時の方がより強い阻害作用が発揮された。 また, 25℃の場合より30~37℃で培養した場合の方が, pH7.5あるいは9.0の場合の場合より pH8.5の場合の方が, それぞれより強い阻害作用が認められた。
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上野 隆二
1998 年 33 巻 4 号 p.
297-301
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
スルファモノメトキシンを投与し, 得られた血清濃度データからコンパートモデルの当てはめを行った結果, 血管内投与(200mg/kg)では2_コンパーメント, 経口投与(400mg/kg)では1_コンパーメントに適合した。 モーメント解析による AUC 血管内投与では59,100μg・h/ml, 経口投与では 28,400μg・h/mlであった。 なお, スルファモノメトキシンの生体利用率および血管内投与でのアセチル化率はそれぞれ24および3.1%であった。
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小川 和夫, 横山 博
1998 年 33 巻 4 号 p.
303-309
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
近年, 日本の海産魚養殖では寄生虫症による被害が大きい。 網生け簀養殖では単生類の虫卵の網地への付着が避けられず, 単生類が安易に増殖する。 また, 粘液胞子虫, 微胞子虫, 血管内吸虫といった海産養殖魚の主要な寄生虫の生活環が不明である。 こうした現状では, これらの寄生虫症に対する根本的な対策をたてることは困難であり, 単一の手段による対策は有効ではない。 今後は薬剤などによる駆虫のみでなく, 個々の寄生虫の生物学的な特徴を利用した寄生の軽減, 予防, 早期診断などによって総合的に対策を組み立てる必要がある。
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浦和 茂彦, 植木 範行, Egil Karlsbakk
1998 年 33 巻 4 号 p.
311-320
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
外部寄生性鞭毛虫 Ichthyobodo は南北半球の亜寒帯から熱帯域の海洋に広く分布し, 海産魚24種と遡河性サケ科魚類3種より記録されている。 海産魚に寄生する Ichthyobodo は淡水魚に寄生する I.necator と形態的に類似するが, 交互感染実験により別種と判断されている。 本虫は宿主の体表や鰓に寄生し, 表皮層の激しい肥厚と壊死を起こし, ヒラメ, トラフグ, クロソイなど養殖魚の死亡原因となる。 特に飼育魚の初期生活期に大量死を起こし易い。 ホルマリンが駆虫剤として有効であるが, 新たな防除方法を確立する必要がある。
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Supranee Chinabut
1998 年 33 巻 4 号 p.
321-326
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
流行性潰瘍症候群(EUS)は1980年頃からアジアおよびインド太平洋地域で流行している。 本病は大雨の後のやや涼しい時期に種々の魚種に発生し, 初期には体表の点状出血を特徴とし, それが後期には潰瘍へと発達する。 患部には真菌性肉芽腫が観察され, これが本病の診断のための鍵となる。 本病の原因についてはいろいろ論争があったが, 本病は伝染病であり, 真菌 Aphanamycesinvadans が第一次原因体であり, 魚病からしばしば分離あるいは観察される各種ウイルス, 細菌および寄生虫は第二次感染体であると考えられる。
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Elena S. Catap, Barry L. Munday
1998 年 33 巻 4 号 p.
327-335
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
流行性潰瘍症候群(EUS)における水温および餌料脂質の影響を調べるため, キス(Sillago ciliata)の飼育温度を26℃から17℃に下げ, Aphanomyces sp.の遊走子を接種した。 一部の魚には不飽和脂肪酸を投与し, 同様の実験を行った。 実験魚を径時的に取り上げ病理組織学的に検討したところ, 低水温下の魚では炎症反応および回復の遅れが見られた。 これは低水温により魚の免疫反応が抑制されたためと考えられた。 不飽和脂肪酸添加餌料の投与によりこの免疫抑制を緩和することはできなかった。
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Edward J. Noga
1998 年 33 巻 4 号 p.
337-342
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
有毒藻類は海産哺乳類から魚介類に至るあらゆる水生生物に影響をもたらし, 世界的に水産養殖ならびに天然資源に対する重要な問題となっている。 さらに, 新規の有毒藻類やこれまで毒を産生することが知られていなかった藻類についての報告も増加している。 これまでは, 有毒藻類による急性の致死的影響に焦点が絞られてきたが, 毒を産生する藻類への暴露は感染症誘発を含め, 非致死的であっても重大な影響をもたらすことが明らかになっている。 ここでは, 鞭毛藻の一種である Pfiesteria piscicida を例にしてこれらの点について説明する。
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Barry L. Munday, Gustaaf M. Hallegraeff
1998 年 33 巻 4 号 p.
343-350
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
南オーストラリアのボストン湾において生簀中で飼育されていたミナミマグロ(Thunnus maccoyii)に1996年4月~5月に大量死(死亡率約75%)が発生した。 死亡は主に4月15, 16日に集中しており, その直後の4月11~14日に嵐による大波が記録されているが, 大量死発生前の性格な環境因子に関するデーターは無い。 微小藻類による中毒が疑われ, 低酸素症, 懸濁粒子による窒素, 硫化水素中毒なども考えられたが, 結論は得られなかった。
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片桐 孝之, 廣野 育生, 青木 宙
1998 年 33 巻 4 号 p.
351-355
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
ヒラメの補体制御タンパク質 cDNA (HCRF-2)をクローン化し, 構造解析を行った。 HCRF-2は737アミノ酸をコードしていた。 また, 疎水性のシグナルペプチドに続いて, 連続した12個のショートコンセンサスリピート(SCR)から構成されていた。 HCRF-2と, すでに報告されているヒラメ(HCRF)およびサンドバス(SBP1)の補体制御タンパク質 cDNA と比較したところ, HCRF, HCRF-2および SBP1は, 同一の祖先遺伝子から分岐したことが強く示唆された。
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高橋 幸則, 伊丹 利明, 前田 稔, 近藤 昌和
1998 年 33 巻 4 号 p.
357-364
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
日本の養殖クルマエビに発生するビブリオ病, クルマエビ急性ウイルス血症(PAV)およびバキュロウイルス性中腸腺壊死症について, 症状, 病理組織, 原因微生物の性状, 診断法, 予防法等について総説した。 とくに, 現在甚大な被害を与えている PAV の原因ウイルスについては, 海外で発生している white spot syndrome baculovirus との性状の比較を行うとともに, PCR 法による潜伏感染ウイルスの検出と検出ウイルスの病原性, さらに免疫賦活剤の有効性について論じた。
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羅 竹芳, 郭 光雄
1998 年 33 巻 4 号 p.
365-371
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
White spot syndrome(WSS)は台湾のみならず世界中で猛威を振るっているエビのウイルス病である。 原因ウイルス(WSSV)は外見的に健康なエビや養殖池に生息する他の甲殻類からも検出され, それらが感染源の一つになっている。 WSSV はウシエビ(Penaeus monodon)の生殖腺にも存在するが, 感染した卵母細胞は壊死するかあるいは成熟しないので, 経卵巣伝播は成立しないと考えられる。 しかし経卵巣伝播はあり得るのでノープリウスの洗浄や消毒は有効な防除対策になると考えられる。
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前田 稔, 伊丹 利明, 古本 篤士, Oscar Hennig, Tomohiro Imamura, 近藤 昌和, 廣野 育生, 青木 宙 ...
1998 年 33 巻 4 号 p.
373-380
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
PAV の原因ウイルスである PRDV が2段階 PCR によって天然クルマエビから検出された。 この PCR 陽性個体の心臓から調整した無菌ろ液をクルマエビに接種したところ, エビは PRDV によって死亡した。 養殖場に棲息する甲殻類11種から PRDV が検出された。 PCR 陽性のアシハラガニと同居させた健康なクルマエビは, PRDV に感染して死亡した。 以上の結果から, 天然の甲殻類や親エビが PRDV の感染源となりうることが示唆された。
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前田 稔, Jiraporn Kasornchandra, 伊丹 利明, 鈴木 喜隆, Oscar Hennig, 近藤 昌和, Juan ...
1998 年 33 巻 4 号 p.
381-387
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
PRDV と SEMBV は, 塩素処理によってそれぞれ5ppm・10分間, 10ppm・30分間で, またヨードによっては, いずれも10ppm・30分で不活化された。 PRDV は60分間(30℃)の乾燥や50℃(20分間)の熱処理および一重項酸素によって不活化された。 PRDV と SEMBV は12.5%および15%以上の塩化ナトリウムで不活化され, 海水中では, それぞれ5および7日間感染力を維持した。
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Oscar Hennig, 伊丹 利明, 前田 稔, 近藤 昌和, 夏苅 豊, 高橋 幸則
1998 年 33 巻 4 号 p.
389-393
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
PRDV に感染させたクルマエビの血リンパ成分の変化を経時的に調べるとともに, Bifidabacterium thermophilum 由来ペプチドグリカン(PG)投与の影響を調べた。 その結果, PRDV 感染によって血球数の減少と血漿中の Mg イオン濃度の上昇がみられた。 しかし, これらの変化には PG 投与によって緩和される傾向がみられ, このことが PG 投与による PRDV に対するエビの抵抗性の向上に関与していると考えられた。 さらに血球数と血漿 Mg イオン濃度は病状の軽重を知る指標になることが示唆された。
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Shao-En Peng, Chu-Fang Lo, Kuan-Fu Liu, Guang-Hsiung Kou
1998 年 33 巻 4 号 p.
395-400
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
ウシエビ(Penaeus monodon)の WSSV 感染症(white spot syndrome)において, 発症前期(Pre-patent stage)は時に数か月も持続し, ストレスが加わると数時間以内に顕性感染期(Patent stage)に移行する。 本研究では2-step PCR でのみウイルス陽性を示す発症前期のエビの歩脚を切除したところ, 1ないし2日以内に1-step PCR 陽性に転じ, in situ ハイブリダイゼイション法により胃, 心臓, リンパ様器官などでウイルスが検出されるようになり, 顕性感染期に移行したことが確かめられた。
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S. Direkbusarakom, L. Ruangpan, 絵面 良男, 吉永 守
1998 年 33 巻 4 号 p.
401-404
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
ジャーナル
フリー
タイ国の伝統的な薬草ハーブ Clinacanthus nutans エタノール抽出物の坑ウイルス効果を調べた。 抽出物を希釈後, イエローヘッドウイルス(YRV)と25℃で2時間混合した。 この混合液をウシエビ(Penaus monodon)に注射し調べたところ, 供試した C.nutans の抽出液は YRV に対し坑ウイルス効果を示し, その効果は1μg/mlの濃度から認められた。 抽出物の坑 YRV 効果は経口投与においても得られ, C.nutans 抽出液は本病の制御に有効であることが示された。
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C.R. Lavilla-Pitogo, L.D. de la Pena
1998 年 33 巻 4 号 p.
405-411
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
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フィリピンのウシエビ (Penaeus monodon) 養殖における細菌病について概説した。 孵化場においては数種のビブリオ属細菌が病気に関与しているが, 発行性の Vibrio harveyi が最も重要である。 使用海水の消毒, 卵の衛生的管理, 飼育施設における生態系の維持, あるいは科学療法により V.harveyi 感染症対策がなされている。 養成課程においては消化管における細菌感染が問題となり始め, 飼育成績と池水中のビブリオ属細菌(特に発行性ビブリオ)の量との関係が調べられ, それらに基づいた総合的な対策が検討されている。
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Iddya Karunasagar, S.K. Otta, Indrani Karunasagar
1998 年 33 巻 4 号 p.
413-419
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
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インドの養殖エビにおける病害問題について概説した。 孵化場においてはビブリオ属細菌(代表種 Vibrio harveyi)による感染症が問題となっている。 ウシエビ(Penaeus monodon)の幼生には monodon baculovirus (MBV)の包埋体がしばしば認められるが, MBV による大量死はほとんど起こらない。 養成過程においては white spot syndrome が大きな問題となっている。 MBV 感染も認められるが幼生期と同様, 深刻な問題にはなっていない。 飼育管理に問題がある場合やウイルス感染を受けているエビでは寄生虫症が発生することもある。
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近藤 昌和, 伊丹 利明, 高橋 幸則, 藤井 玲子, 友永 進
1998 年 33 巻 4 号 p.
421-427
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
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クルマエビの血球とリンパ様器官および心臓に見られる定着型食細胞の構造を透過型電子顕微鏡で調べた。 3種類の血球のうち, 透明細胞は細胞質内に多量の沈着物を有していた。 小顆粒細胞は小型の, 大顆粒細胞は大型の顆粒を持っていた。 リンパ様器官の職細胞では細胞質突起が多発しており, 心臓の食細胞では小型のライソゾームが多数観察された。 各種ライソゾーム酵素はいずれの血球および定着型食細胞にも認められたが, プロフェノールオキシダーゼは小顆粒細胞と大顆粒細胞にのみ検出された。
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近藤 昌和, 伊丹 利明, 高橋 幸則
1998 年 33 巻 4 号 p.
429-435
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
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クルマエビ血リンパの各種赤血球に対する凝集活性を調べた結果, 血リンパ中に二価金属イオン要求性の凝集素と非要求性の凝集素が存在することが分かった。 前者はウシ, ウマ, ブタ, ヒツジおよびウサギ赤血球を凝集したのに対し, 後者はヒツジおよびウサギ赤血球を凝集した。 また, 糖阻害試験から, これらの凝集素はレクチンであることが明らかとなった。 交差吸収試験の結果, 血リンパ中には多様なレクチンが存在し, それらのいくつかは, ある種の赤血球には結合するものの, 凝集活性を示さないことが明らかとなった。
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S. Direkbusarakom, 絵面 良男, 吉永 守, A. Herunsalee
1998 年 33 巻 4 号 p.
437-441
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
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Psidium guajava などタイ国の伝統的な薬草ハーブ16種を対象に Vibrio harveyi(9株), V.parahaemolyticus (以下各1株), Aeromonas hydrophila および Streptococcus sp. に対する抗菌活性をプレート希釈法で検討した。 供試したハーブのうち11種が抗菌活性を有し, P. guajava および Momordica charantia に V. harveyi および V.parahaemolyticus に対する強い抗菌活性が認められた。 調べた4菌種に対する最小抗菌濃度は M.charantia で1.25mg/ml, P. guajava で0.63mg/mlであった。
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森 広一郎, 虫明 敬一, 有元 操
1998 年 33 巻 4 号 p.
443-444
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
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ウイルス性神経壊死症(VNN)は各種海産魚の種苗生産現場において深刻は問題となっている。 日本栽培漁業協会の事業場においては1989年に初めてシマアジ仔魚に VNN が確認され, 原因ウイルスが親魚の卵巣より高率に検出されることなどから産卵親魚が本病の主たる感染源と考えられた。 これまでに得られた成果に基づき, 1)血中の抗ウイルス抗体および生殖腺からの PCR によるウイルス検出に基づく親魚選別および, 2)受精卵のオゾン消毒(0.5ppm, 1分間)等の防除対策を講じた結果, 現在せは本病の発生件数が著しく減少している。
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渡辺 研一, 鈴木 重則, 西澤 豊彦, 鈴木 香代, 吉永 守, 絵面 良男
1998 年 33 巻 4 号 p.
445-446
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
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マツカワにウイルス性神経壊死症(VNN)が発生し, その防除策を検討した。 まず採卵3ヶ月前に原因ウイルスに対する抗体検査を行い, ELISA 抗体価1:10以下の魚を親魚候補とした。 次いで産卵期に卵および精液を PCR で検査し, 陰性個体間で人工授精を行った。 受精卵をモラル期にオキシダント海水で消毒し, 孵化仔魚を由来親魚ごとに隔離してオゾン殺菌した海水で飼育した。 以上の防御策が効を奏しVNN は発生しなくなった。
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May Chew-Lim, Seo Yen Chong, 吉水 守
1998 年 33 巻 4 号 p.
447-448
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
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1986から1991年にかけて, シンガポールの海面養殖グルーパーとシーバスの稚魚(2~4cm)に大量死が見られた。シーバス由来SB細胞を用いた検査でウイルスが分離され, 同様のウイルスは市場サイズのグルーパーからも分離された。分離ウイルスの大きさは20~34nmであり, 抗SJNNV(striped jack nervous necrosis virus)家兎血清で中和され, SJNNVのT4領域を増幅するRT-PCRで陽性となったことから, 本ウイルスはノダウイルスと同定された。
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Zafran, Fris Johnny, Des Roza, Isti Koesharyani, 畑井 喜司雄
1998 年 33 巻 4 号 p.
449-450
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
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孵化場でのウシエビ幼生のVibrio harveyi感染症は深刻な問題である。死菌液への浸漬による予防法を検討するためウシエビのノープリウス幼生を用いて実験を行った。死菌液にノープリウス幼生を0, 2, 3, 4, 5時間浸漬した後, ポストラーバ(PL-1)まで飼育し, その後, V.harveyiで攻撃し, 5日後に生存率を求めた。攻撃前の飼育期間および攻撃後の生存率は対照群よりも死菌処理群の方が高く, 浸漬時間が長い程高い生存率を示した。
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野村 節三, 河原 栄二郎, 岸田 佳則, 加藤 良明
1998 年 33 巻 4 号 p.
451-452
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
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Vibrio anguillarum の生産する2種の菌体外溶血毒素を培養上清から塩析法, イオン交換法およびゲル濾過法によって精製した。 本毒素は100℃でも安定で, 低温での失活毒素はフェノールによって回復した。 α-溶血毒素のサブユニットの分子量は79,60,21 KDa,β-溶血毒素のそれは50 KDa であった。 α-溶血毒素は糖質とリン酸を含み, 鉄イオンや酸性ホスファターゼなどによってもある程度阻害され, 耐熱性の酸性物質であることが示唆された。 また, 両毒素の魚類に対する溶血性と致死毒性が確認された。
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S.M.A. Mobin, 金井 欣也, 吉越 一馬
1998 年 33 巻 4 号 p.
453-454
発行日: 1998/10/20
公開日: 2009/10/26
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広範な内蔵癒着を伴うマダイの仔魚の大量死の1事例を病理組織学的に検討した。 大量死は孵化後20―30日の間に発生し, 死亡率は90%以上に達した。 羅病魚では腸上皮におけるブレッブ形成と萎縮, 肝臓および膵臓の萎縮, 内蔵癒着に伴う腹腔の消失など, 顕著な病変が観察されたが, 内蔵諸器官, 皮膚, 鰓, 心臓および神経組織にはバクテリアやウイルス侵襲像は認められず, 真菌や寄生虫も観察されなかった。 近年, 上記のそれと類似の病理像を呈するマダイ仔魚の大量死は種苗生産現場で時折発生しており, 原因の究明が求められている。
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