化学工学論文集
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19 巻, 5 号
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  • 野口 嘉一, 田崎 義行, 飯島 正樹, 伊藤 和逸, 進藤 勇治, 小出 仁
    1993 年 19 巻 5 号 p. 705-713
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    地中には種々の形でCO2が存在しており, CO2を地中に処理することは海中処理に比べ周辺への環境影響はより少ない方法であると考えられる.本論では, 処理容量を大きくするため水相へCO2を溶解させる形で地中に貯留する技術について, 現在利用されていない帯水層を対象に, 貯留可能性量, コスト等のフィージビリティ・スタディを行い, 世界全体での貯留量3,200億トン, コスト3,000円/トン-CO2, 所要動力73kWb/トン-CO2と技術的, 経済的に十分に実現可能な技術であることを明らかにした.今後, 環境への影響評価を重点に, さらに検討する必要がある.
  • 原谷 賢治, 中岩 勝, 伊藤 直次, 神沢 千代志
    1993 年 19 巻 5 号 p. 714-721
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    燃焼排ガスの二酸化炭素除去への膜分離法の適用を, コンピューターシミュレーションにより検討した.操作方式として, 通常の1段分離 (SSP), 連続膜塔 (CMC) および単純2段カスケード (TSC) を選び, 膜分離の目標として, CO2純度90%, 回収率60%を設定した.分離膜に要求される選択性は, SSPでは210, 循環率 (RR) =2のCMCでは70, RR=3のCMCでは44, TSCでは24と算定された.検討した中で, TSC操作での所要動力が最も大きく石油発電力の15.6%に相当したが, SSP操作ではTSCでの所要動力の38%にすぎなかった。濃縮ガスをさらに液化するとした時の回収CO2量当たりの必要全エネルギー [kWh・kmol-1-CO2] は, TSCで28.0, CMC (RR=3) で 26.9, CMC (RR=2) で22.9そしてSSPで14.9と見積られた.3種の膜分離法と液化法の複合プロセスは, 化学吸収法と液化法の複合プロセスより運転エネルギー面で優位にある.
  • 坪井 泉, 橋本 卓司, 欅田 榮一, 駒沢 勲
    1993 年 19 巻 5 号 p. 722-728
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    使用済みの重油脱硫触媒にはNi, Mo, Vが含有されている.低温焙焼法およびアンモニア浸出法を採用することによって, Mo, V回収のための従来法 (ソーダ焙焼法) では回収することのできなかったNiを回収するプロセスを研究した.360℃, 5hr通気焙焼後, 粉砕した触媒を100g/dm3- (NH4) 2CO3溶液によって80℃, 固液比50g/dm3で浸出することにより, Ni, Mo, Vをそれぞれ54, 77, 65%の回収率で大量不純物AL, Feに対して選択的に溶出できた.浸出液を室温まで冷却し, 浸出液中75%のVをバナジン酸アンモニウム塩の形で沈澱して得た.純度は96%であった.冷却濾液からはアルキルモノチオリン酸を抽出剤とする溶媒抽出法でそれぞれの金属を精製分離した.単一抽出剤を用いてpH調整のみを行うことで, Ni, V, Moのそれぞれが順次, 精製できた.冷却炉液中のNi, Mo, Vのそれぞれ74, 58, 91%を99, 91, 91%の純度で回収した。
  • 種田 大介, 安富 勇, 柴田 節夫, 戸井田 努
    1993 年 19 巻 5 号 p. 729-735
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    2-プロパノール/アセトン/水素系ケミカルヒートポンプの解析を行い, 操作因子と性能との関係を明らかにした.そして実験により, 要素技術の性能を求め, システム解析結果と比較し, 実用性並びに今後の研究課題を検討した.その結果, 本ヒートポンプの熱効率は, 脱水素反応触媒活性に影響され, 成績係数は水素化反応器の圧力損失に影響されることが分った.現状の触媒活性から評価すると, 353Kの排熱を423Kに昇温する場合, 熱効率, エクセルギー効率はそれぞれ5~10%, 9~18%程度にとどまるものの, 圧力損失を0.01MPaレベルに押さえることができるならば, 成績係数は50に達することが明かとなった.実用化に向け, 触媒の性能向上, システム構成の改良等が課題となる.
  • 円錐型ガス分散器による分解成績および操作条件
    富田 治, 〓 成根, 梶内 俊夫, 明畠 高司
    1993 年 19 巻 5 号 p. 736-744
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    廃プラスチック再資源化技術の実用化を目指した基礎研究として, 円錐型ガス分散器を取り付けた内径57.5mm, 高さ600mmの高温流動層装置を用いて, 部分轍による連続的なポリエチレン粒子の熱分解ガス化を行い, 熱分解成績, 操作条件および部分燃焼率について検討した.
    円錐型ガス分散器は多孔板型に比べて優れた熱分解成績を示した.円錐型ガス分散器を用いた流動層は, 濃厚層とフリーボード部の中間に独特の希薄層を形成し, 流動化ガスを低減しても高い流動層高を維持できる.これが流動層におけるガスの滞留時間を長くし, 反応管内の温度をガス化に適切な範囲に制御して, ガス化に効果的に作用していることがわかった.また効率的な熱分解ガス化を行うための適切な操作条件を探索すると, 流動化ガスである空気の最小供給量はU0/Umf (600℃) 値で約1.4, ポリエチレン粒子の最大負荷量は空気比で約0.23であった.このとき流動層内の温度は730℃に制御でき, 生成ガスの発熱量は約13.1MJ/Nm3に, 可燃性ガスへの転換率は約82wt%に達した.またこの条件での部分燃焼率は約6.5wt%, その熱分解への熱効率は約42%と推算された.
  • 佐治 明, 堺 松成, 野田 英智, 谷井 忠明, 川田 裕, 北村 光, 鎌田 敏弘
    1993 年 19 巻 5 号 p. 745-752
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    火力発電所等から回収した大量のCO2を水との反応生成物であるCO2クラスレートの形態で深海底に貯留するシステムの可能性を検討するため, 温度277~281K, 撹拌速度300~1600min-1, 塩濃度0~5.7% (NaCl換算) および圧力3.5~9.1MPaの範囲で実験を行い, さらにシミュレーションを実施した結果, 以下の知見を得た.
    (1) CO2クラスレートの生成速度は溶液温度におけるCO2のフガシティーと平衡フガシティーの差に比例し, CO2-水界面積に比例する.
    (2) 深海海水流中での拡散の影響を考慮しCO2クラスレートを所定位置に沈降させるためには大粒子で投入する必要がある.
  • 堀内 都雄, 小島 紀徳, 稲葉 敦, 上山 惟一
    1993 年 19 巻 5 号 p. 753-761
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    海洋を利用する二酸化炭素による地球温暖化問題の対策技術の一つとして施肥法がある。海洋に窒素, リンなどの栄養塩を添加することにより植物プランクトンの増殖を促進させ, 海洋表層の二酸化炭素分圧, ひいては大気中の二酸化炭素量を減少させるとのものである。
    本報では本対策を工学的に評価するために, 物質収支的考察, 海洋の炭素循環に基づく時間的応答と海洋中各炭素濃度への影響の考察, 肥料製造工程までを含めたエネルギー的評価, 検討を逐次行った.
    海洋プランクトン中のPNC比に基づき必要肥料量と撒き方を決め, そのときの応答を有機・無機炭素と窒素の非定常循環および光合成による炭素固定を組み入れたBoxモデルにより検討した。その結果, 本法は2, 3年の内に顕著な効果が現れるが, 一方表層の有機物量は百年間施肥をしても, 現在の貧栄養状態下での濃度の2倍程度となるにすぎない.肥料製造工程, 輸送までを含めたエネルギー的評価を行ったが, この過程でのエネルギー使用により放出される二酸化炭素量は施肥により海洋に取り込まれる二酸化炭素量の9%程度である。
  • 鈴木 基之, 迫田 章義, 藤原 健史, 渡辺 英雄, 佐々木 康之
    1993 年 19 巻 5 号 p. 762-770
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    CO2排出量を大幅に削減し人間と環境との調和を前提とする環境調和型の産業技術体系への移行の為の具体的な施策を明らかにしてゆく為には, まず現状の産業システムにおけるCO2の排出をミクロ的な観点で分析し, その積算として全体を把握する必要がある.そこで, 我が国における化石燃料の消費に伴うCO2排出量を, 8地域, 10部門, 3燃料種別に集計・積算し, このようにして得られた排出量と地域間産業連関分析から, 地域別・産業部門別の単位生産額当たりのCO2排出原単位を設定した.さらに, 廃棄物起源および石灰石起源のCO2排出量も考慮することにより, 産業連関分析と連動して我が国の総CO2排出量を算出するモデルを構築した.このモデルによって, CO2排出源のミクロな分析や各種施策の影響分析等が行われ, 環境調和型の産業技術体系の検討等が可能となると思われる.
  • 後藤 尚弘, 迫田 章義, 鈴木 基之
    1993 年 19 巻 5 号 p. 771-780
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    大気中の炭酸ガス濃度上昇による気候変動が陸上生態系に与える影響が懸念されている.このような影響を定量的に把握するためには地球の炭素循環を記述するモデルが必要である.著者らはこれまでに植生の成長や土壌内の炭素循環を記述するモデルを構築した.本報ではこれらのモデルを用い, 陸上生態系と大気間の炭素循環を試算し, 地球温暖化による影響を予測した.本モデルにより気温の上昇によって陸上生態系から大気中へ炭素ガスが放出されることが予測できた.
  • 非定常Box Diffusionモデル
    細川 雅洋, 長本 英俊
    1993 年 19 巻 5 号 p. 781-788
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    海洋中の無機炭素類の移動と植物プランクトンによる炭素の固定および固定物の移動を考慮し, 上昇流の流れる大洋域と下降流の流れる極地域とに水平方向を分けたモデル, 6BDモデルを提案, これに基づき産業革命以降現在までの海中炭素濃度の経時変化の計算を行った.植物プランクトンの炭素固定による海洋への二酸化炭素の吸収量増加は小さいことが明らかになった.下降流の存在する極地域では大洋域よりも炭素濃度増加が大きくなり, 海洋を大洋域だけと考えるよりも大気残存率は小さくなった.また循環速度が速いほど小さくなった.海中炭素モデルを構築する上で, 下降流域の存在および循環速度を評価することの重要性が示された.
    海洋表層の境界条件として二酸化炭素の溶解平衡を用いることにより, 本モデルによる放出炭素量は実測値とほぼ一致した.この境界条件について既往のモデルとの比較, および妥当性の検討を行った.
  • 数理モデルによる陸上生態系から海洋への窒素負荷量の予測
    川島 博之, M. J. Bazin, J. M. Lynch
    1993 年 19 巻 5 号 p. 789-794
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    工業的空中窒素の固定量は陸上生態系における窒素固定量の1/2程度にまで増加しており, 今後も増加すると予測される.海洋への無機窒素の供給は, 海洋における窒素固定と陸上にて発生したものが河川を通じて運ばれるものとに依るが, 陸上よりの窒素の供給量が増加するため海洋中の無機窒素濃度が上昇することが予想される.
    簡易な数理モデルを用い, 工業的窒素固定量の増加に伴う陸上生態系の窒素循環過程の変化と今後の海洋へ放出される窒素量の予測を行ったが, 今後窒素循環過程は大きく変化することが予測され, また河川を通じての海洋への窒素放出量も, 来世紀において顕著に上昇することが予想された.
  • 丁子 哲治, 中川 千枝, 平井 英二
    1993 年 19 巻 5 号 p. 795-802
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    地球環境問題の一つとなっている, 酸性降水による陸水の酸性化現象を定量的に把握することを目的に, 土壌の中和機構の定量的解析を試みた.土壌の中和反応は多成分系であるが, 中和反応に直接関与する金属成分について水素イオン濃度の増減から総括的に表示する関係式を求めた.さらに, いくつかの反応が同時に起こる複雑な反応系であるが, 化学平衡論的に整理し, 陽イオン交換反応, アルミニウムの溶解および二酸化炭素の溶解反応が主反応であるとして土壌の中和反応に関する関係式を提出した.これらの関係式を用いて, 石川県付近の4カ所で採取した土壌を用いた酸溶液の中和実験について検討した.さらに, 種々の条件で関係式による解析を行ったところ, 土壌粒子間隙中の二酸化炭素, 土壌や酸性降水に含まれる中性塩の中和反応に対する寄与が中和反応に対してきわめて大きいことがわかった.
  • 須藤 義孝, 山本 琢二, 鈴木 基之
    1993 年 19 巻 5 号 p. 803-808
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    最近, ゴルフ場等での農薬による環境汚染が問題になっている.そこで, これらの農薬を活性炭等で吸着除去する必要がある.
    活性炭による有機物水溶液の吸着速度はほとんど粒子内拡散が支配的になっている.そこで, 吸着平衡関係と粒子内拡散係数を測定するために4種類の農薬水溶液について活性炭による回分吸着を初濃度と吸着温度を変えて行った.
    その結果として, ここで測定した濃度範囲ではフロインドリッヒ型の吸着平衡により整理ができた.そして, この吸着平衡の温度変化から吸着熱を算出した.また, 表面拡散係数を求め, その温度変化から活性化エネルギーを算出し, 活性化エネルギーが吸着量に関係していることから, 表面拡散係数が吸着量に依存していることを明かにした.
  • 稲葉 敦, 島谷 哲, 田畑 総一, 河村 真一, 渋谷 尚, 岩瀬 嘉男, 加藤 和彦, 角本 輝充, 小島 紀徳, 山田 興一, 小宮山 ...
    1993 年 19 巻 5 号 p. 809-817
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    太陽光発電の大規模導入を前提として, 多結晶シリコンとアモルファスシリコンの太陽光発電システムのエネルギー収支を検討した.本試算には, 開発中の技術の導入, 太陽電池セル製造プロセスの効率向上が仮定されている.
    系統連系することを仮定し, 蓄電設備を持たない集中配置型の発電所を建設する場合のエネルギーペイバックタイムは, 年間10MWの生産規模で, 多結晶では5.7年, アモルファスでは6.3年となった.100GWの場合は, さらに技術開発が進行すること, およびスケールアップ効果により, 多結晶で3.3年, アモルファスで3.0年となる.
    集中配置による太陽光発電システムでは, 発電所を建設するためのエネルギー投入量が大きく, 生産規模に応じた発電システムを構築することが重要である.
  • 小宮山 宏, 藤谷 義
    1993 年 19 巻 5 号 p. 818-828
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    化石燃料の燃焼から発生する, 煙道ガスからのCO2の分離回収は, CO2放出抑制のための対策技術として有効な可能性を有する.本論文では, 分離のためのエネルギー消費の理論的限界について論じた.また, 吸収, 吸着, 蒸留および晶析と, 異なる原理の分離プロセスを取り上げ, エネルギー消費の観点から比較した.先ず各プロセスの現状の技術レベルに基づき, 物質およびエネルギー収支計算を行い, エネルギー効率の比較を行った.次いで可能な省エネルギー策を導入した場合のケース・スタディを行い, 各プロセスのエネルギー低減の可能性を探った.この結果からプロセスによっては可逆分離プロセスの2.6倍にまで, エネルギー消費を低減できることが解った.また, 理想的には, 発電プラントの発電効率を減少させずに, CO2の分離回収を行うことも不可能ではない.
  • 亀山 秀雄, David L. Block, James E. Funk
    1993 年 19 巻 5 号 p. 829-834
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    地球環境問題の解決の一つに太陽エネルギーの効率的な利用が挙げられる.日照量の変化に伴う熱源の負荷変動を前提にしてエネルギー変換のための反応サイクルを運転する場合, 反応器の熱応答と制御の問題が重要となる.本研究は, アメリカのGAテクノロジー社が太陽熱利用模擬反応試験装置として製作したSO3の分解実験システムをモデルに, 太陽熱利用反応装置シミュレーターを作成し, そのシミュレーターの妥当性と負荷変動時の反応制御の方法を論じている.作成したシミュレーターは, 彼らの実験により得られた定常状態および非定常状態における反応装置内の温度分布とその経時変化の実験値を良く再現している.さらに, 反応サイクルの運転で, 反応管出口温度一定の条件を設定した場合に熱源の負荷変動がある場合でもその条件を満たすための制御方法を検討し, 温度変動を表す式と同様の式を用いて, 反応気体流量を制御することを提案した.
  • 中野 勝之, 小川 哲功
    1993 年 19 巻 5 号 p. 835-839
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    アルコール蒸気を低濃度で含む排ガスの完全酸化に有効な触媒コンバーターの試作を目的として, チタニウムテトライソプロポキシドを用いるゾルーゲル法によりシリカビーズの表面に薄くチタニアを吸着させた担体を調製した.これに白金を担持した触媒はシリカやアルミナ単味の担体を用いたものより高活性で, 低濃度エタノール蒸気の完全酸化反応速度はエタノール濃度に1次であった.速度定数の温度依存性より見かけの活性化エネルギーは粉末状触媒では約70kJ/molとなった.3mm径のビーズ状触媒を用いた結果は細孔内拡散律速となり見かけの活性化エネルギーは上の値の約1/2となった.チタニアを担体にした白金系触媒を高温で還元するとSMSI状態になるが, エタノールの完全酸化反応の活性はこのような状態で高まることがわかった.
  • 小林 義雄
    1993 年 19 巻 5 号 p. 840-848
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    石灰エアロゾル-SO2/HCl反応系に殻状モデルを適用して導いた反応速度式とガス濃度指数の理論式に実験データをあてはめて次の知見をえた.
    (1) 当量比, ガス濃度, 反応時間の変化に対しては生成物層内拡散支配の理論式が実験値とよく一致する.
    (2) ガス濃度指数の理論解析によると, 石灰エアロゾルによるSO2除去反応とHCl除去反応はともに律速段階は生成物層内拡散過程である.
    この生成物層内拡散律速の反応機構は従来から経験的に言われて来たことであり, 理論式からえられた以上の2点との一致によって理論式の妥当性が証明された.
    また粒子径指数の理論解析の結果によると通常のSO2除去反応条件のもとでは粒子径指数は0.85~0.97となるが, 多くの実験値は約0.35以下であり, そのために石灰反応率に対する粒子径依存性が小さいと言われている.
    理論値と実験値のこの差はエアロゾル中で石灰微粒子が凝集するために生じるものと思われる.
  • ベンゼン/水素/シクロヘキサン系ケミカルヒートポンプ用吸熱反応器について
    村田 究, 山本 協子, 亀山 秀雄
    1993 年 19 巻 5 号 p. 849-855
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    排熱の有効利用を目指したケミカルヒートポンプ用反応器として管壁型反応器の有効性を検討した.アルミニウム上に触媒層を形成したPt/Al2O3/Al触媒の473K, 0.1atmにおけるシクロヘキサン脱水素反応はシクロヘキサンの活性点への吸着律速で表現される速度式で整理された.
    充填層型反応器, 管壁型反応器をモデル化し, 反応管内部の温度分布, 転化率分布を有限差分法で解析した.充填層型反応器は触媒の熱伝導度が小さいため反応管内部で温度降下が大きく, 中心部分の触媒が有効に利用されていない.一方, 管壁型反応器は反応管外部の熱媒との熱交換に適しており, 触媒層内の温度降下が小さい.管壁型反応器では管径を小さく, また触媒層を厚くして触媒充填密度を上げることで, 伝熱性を損なわずにコンパクトな吸熱反応器の設計が可能であることを示した.
  • 永瀬 裕康, 広野 鉄生, 岡本 康昭, 今中 利信
    1993 年 19 巻 5 号 p. 856-862
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    NOxは酸性雨の原因の一つであり, その排出量削減のため燃焼機器の改良や, 脱硝触媒の研究が行われている.NOx排出量のモニターや, 燃焼機器のフィードバック制御のため, NOxの濃度を測定する簡便な方法の開発が望まれている.本研究では, テトラメチルスズを原料として, マイクロ波プラズマCVD法により酸化スズ薄膜を調製した.薄膜の抵抗変化を測定することにより, ガス応答を調べた.NO2に対しては抵抗が増加し, 250℃以上で可逆的な応答がみられた.感度・応答速度から判断して, NO2検出の最適動作温度は300℃付近であり, この温度において, 20ppmのNO2に対し抵抗は約10倍に増加し, 応答時間は約60sであった.NOに対する感度はNO2の場合の約1/5で, 水素, 一酸化炭素, 炭化水素などの可燃性ガスに対しては, 非常に低い感度しか示さなかった.NO2に対して高い感度・選択性を持ち, 燃焼排気ガス中のNO2濃度を測定するNOxセンサーとして有望であることがわかった.
  • 岡本 康昭, 大戸 慶治, 今中 利信
    1993 年 19 巻 5 号 p. 863-869
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    NOのCOによる還元反応に高活性を示す担持金属酸化物触媒の探索を行い, その触媒特性を明らかにしようとした.種々の金属酸化物一担体系について検討したところ, 3-5wt%Fe/ZrO2触媒が高い反応活性を示し, また反応中 (250-350℃) の劣化も見られなかった.さらに高い熱安定性も示すことが明らかとなった.Fe/ZrO2触媒の金属原子当りのターンオーバー数はFe担持量1wt%で最大となった.Cu/ZrO2触媒は低温 (150-200℃) で高活性を示し, N2への選択性は高いが, 活性の劣化が見られた.両触媒系においてCO酸化反応との比較より, NO-CO反応は酸化還元機構で進行しているものと推定した.2wt%Fe-0.5wt%Cu/ZrO2二元系触媒は, Fe/ZrO2あるいはCu/ZrO2触媒いずれよりもかなり高い活性を示し, さらに低温においてN2への選択性の高い触媒であることを見出した.二元系触媒は, Fe/ZrO2と同様な安定性を示すことが分かった.
  • 飯塚 秀宏, 市川 伸一, 安藤 英児, 長谷 良悦
    1993 年 19 巻 5 号 p. 870-877
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    CO2による大気温暖化問題に関連して, CO2とH2を触媒上で反応させCH4などの有効物質に変換する接触水素化法について検討した.本研究ではアルミナ担持第田族金属 (Rh, Pd, Pt, Ni) 触媒を試作し, (1) 活性評価, (2) 透過型電子顕微鏡による触媒観察, (3) 吸着水素およびCOの昇温脱離測定, (4) 反応機構等の検討を行った.その結果, Rh触媒は大気圧下, 比較的低い反応温度 (300℃) においてCO2転換率は80%以上, CH4への選択率は90%以上と高い活性を示した.また, Rh触媒のCH4への選択性は広い範囲で空間速度などの反応条件の影響を受けにくいこと, またCH4生成機構はCOを経由する逐次反応であることがわかった.さらに, Rh触媒はRh (III) 面が露出した粒径2~7nmの超微粒子担持触媒であること, また触媒の高活性化にはRhの分散およびH2とCOの触媒表面での吸着状態が重要であることが示唆された.更に, メタンの有用性とメタン化プロセスのエネルギー収支についても検討した.
  • 猪俣 靖, 中司 孝之, 梅田 賢治, 緒方 純俊
    1993 年 19 巻 5 号 p. 878-884
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    多重分光リモートセンシング画像データを高速に, かつ, 少ないメモリー数で分類処理するための新しい手法を開発した.本方法では数十ないし数百の画素を一まとめにしてセルとし, セルを基準として分類を行っている.二つのセルのヒストグラムの類似性を比較することで, 全てのセルは一度に簡単に分類される.本方法の妥当性と実用性を検証する目的で, 本方法を関門水域および豊後水道の水質汚濁調査に適用した.関門を境として, 周防灘の濁度は響灘の濁度よりも高いことが確かめられた.また豊後水道の観測から, 水質汚濁と混同され易い小波の強い影響を本方法によって明らかにした.
  • 福間 三喜, 武貞 健太郎, 安西 晟
    1993 年 19 巻 5 号 p. 885-892
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    澱粉およびグルコースの易分解性有機物の混入した高濃度セルロース廃水の2相連続式嫌気性処理を, 充填層型, 空塔型および撹拌槽型の3種類の酸生成相反応器と, 槽型および充填層型からなる4種類のメタン生成相反応器をそれぞれ組み合わせた系において行い, その処理性能に及ほす基質組成, 特に分解しやすい有機物が混入した場合の影響を調べた.
    その結果, 易分解性有機物の含有率が大きい場合でも, 第1相目の酸生成相においてメタン菌を共生させることによってセルロースの可溶化が促進された.このような酸生成相のメタン菌の活性を維持するためには, ポリペプトンのような菌体の生育因子が必要であり, 最適な炭素/窒素比は約10であることがわかった.さらに2相全系でのガス化率は酸生成相でのガス化率の大きさに大きく依存することがわかった.
  • 関 実, 重松 邦彦, 重田 健太郎, 古崎 新太郎
    1993 年 19 巻 5 号 p. 893-900
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    地球規模の炭素循環に重要な役割を担っている海洋の微細藻類の中で石灰藻に注目し, その挙動を明らかにするために, 代表的な石灰藻Cricosphaera carteraeの培養を行い, その増殖および炭素固定速度を実験的に検討した.まず, 栄養塩の取り込み速度が, 分裂の起きない明期に高く, 暗期の増殖期には低下することを明らかにした.また, 硝酸イオン濃度に対する増殖速度の依存性を半連続培養により実測し, 2種類の定式化を行った.海洋表層の平均窒素濃度15mg/m3では, 比増殖速度は, 0.53d-1であった.最大比増殖速度は0.9d-1であり, 有機炭素に対する無機炭素の固定比はおおむね0.1であった.さらに, 通気ガス中のCO2濃度を約2倍 (715ppm) に増加させて培養を行ったが, 増殖速度および細胞あたりの無機炭素の固定量には大きな差が見られなかった.これらの知見を用いて, 地球全体での石灰藻による炭素固定量を概算した.
  • 引馬 基彦, 松岡 浩, 武田 穣, 殿岡 康彦
    1993 年 19 巻 5 号 p. 901-907
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    アンモニア計測用の微生物電極は, 硝化細菌を固定化した微生物膜と酸素電極を組み合わせて作製した.BOD (Biochemical oxygen demand) 計測用の微生物電極は, 硝化細菌に代えて酵母Trichospron cutaneumを用い同様に作製した.これらの電極をフローシステムに装着して, 試料液をそれぞれ30分ごとに自動計測できる測定システムを構成した.このシステムで, アミノ酸発酵工場廃水のアンモニアとBODの自動計測を行い, 廃水をアンモニア態窒素0.42-0.48kg・m-3, BOD 1.7~3.0kg・m-3になるよう希釈調整して, 脱窒処理プロセスに供給した.また, 脱窒槽 (液量0.07m3) と硝化槽 (液量0.17m3) 中のアンモニアのオンライン計測などを行い, 硝化機能のモニター等が可能で, 運転管理に役立つことを示した.アンモニア態窒素, キエルダール法全窒素の除去率として, それぞれ96, 89%を得た.
  • 小嶋 英一
    1993 年 19 巻 5 号 p. 908-913
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    微細藻Chlorellaによる光水素発生において, 酸素吸収剤であるハイドロサルファイトナトリウムに加え, 無機塩類を添加し, 光水素発生の持続時間に対する影響を検討した.
    Na2S2O4に加えて亜硫酸ナトリウムを添加した場合, 藻懸濁液がアルカリ性となることでNa2S2O4の分解が防止されて長時間作用することにより, 水素発生量は無添加の場合に比べて2倍に増加した.ピロリン酸ナトリウムを添加した場合, 光水素発生持続時間は無添加の場合に比べて6-8倍, 水素発生量は約5倍と大幅に増加した.この場合も藻懸濁液がアルカリ性となって, Na2S2O4が分解せず長時間作用したことによると考えられる.またピロリン酸塩が光合成電子伝達系を安定化させること, 或いはフェレドキシン-NaDP+レダクターゼを阻害して, 電子が光水素発生経路に流れる割合を増加させること, などの可能性が考えられ, このことを蛍光誘導曲線の測定により検討した.
  • CO2溶解特性について
    飯島 正樹, 伊藤 和逸, 堀添 浩俊, 野口 嘉一, 田崎 義行, 進藤 勇治, 小出 仁
    1993 年 19 巻 5 号 p. 914-918
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    CO2を帯水層へ固定化する場合の基礎データを得る目的で, 各種パラメータ変化に伴うCO2の水への溶解度を測定し, 以下の結果を得た.
    (1) CO2-H2O系での測定を行い, 文献値とよく一致し, 測定値の信頼性を確認した.
    (2) 温度 : 30~70℃, 圧力 : 25~200ata.におけるCO2の水への溶解度について, 塩分 (0~2.7wt.%) および気相のメタン濃度 (0~75mol%) の影響を測定し, 塩分によりCO2の水への溶解度は減少し, 気相CO2分圧にほぼ比例して, CO2の水への溶解度は変化することを定量的に把握した.
    引き続き広範囲の試験を継続する予定.
  • 原田 浩幸, 中島 重旗, 田中 一彦, 酒井 正治
    1993 年 19 巻 5 号 p. 919-923
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    Sulfate leaching was studied in the laboratory in undistributed Ando soil cores comprising I A, I B, and II A horizons that were taken in a Japanese cedar forest. The soil cores were watered with 0.4 me.l-1 sulfuric acid solution having pH 3.0. The sulfate concentration of the leachate remained at about 0.05 me.l-1 at pH 4.1 to 4.2, but after 15l sulfuric acid solution was applied, SO42- leaching was accelerated at pH 3.9 to 4.0. The stability diagram showed a better fit with gibbsite. In the I A horizon, which did not accumulate SO42, the soil pH was 3.1. SO42- accumulation had occurred in both the I B and II A horizons. The adsorption maximum was about 4.0 me · 0.1 kg-1.
  • 多賀谷 英幸, 佐藤 重光, 千葉 耕司, 高橋 幸司, 横山 孝男, 遠藤 昌敏
    1993 年 19 巻 5 号 p. 923-925
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    二酸化炭素は地球温暖化の主原因とされ, その環境への排出抑制が叫ばれているが, 遠隔地からのエネルギー輸送システムにおいて, 二酸化炭素を水素化したメタノールなどを輸送する方法が, 二酸化炭素の排出抑制と資源としての有効利用の両面を有しているとして注目を集めている.この二酸化炭素有効利用プロセスの第一段階は二酸化炭素の回収であり, 火力発電所等の固定大量発生源を念頭に置いた二酸化炭素の回収法が色々と提案されている.
    一方, カチオン性の無機層状化合物であるハイドロタルサイト型化合物は, アニオン化合物をインターカレートすることのできるホストであり, その内部に炭酸イオンを挿入しうることが知られている.このような層状化合物による二酸化炭素回収の実用化においては, その繰り返し使用が前提となる.本研究では, 層状化合物による効率的な二酸化炭素回収を目的とし, 繰り返し使用を前提とした原料元素比やインターカレート・脱インターカレート条件の影響を検討した.
  • 水を添加剤とした場合
    関口 秀俊, 神沢 淳
    1993 年 19 巻 5 号 p. 925-928
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    The decomposition of dichlorodifluoromethane was carried out using the thermal argon plasma generated by DC arc discharge, where water was added to react with CCl2F2. Complete decompositions of CCl2F2 were observed in all experimental conditions and the product gases consisted of CO2 and CO in regard to carbon, which agreed with the results obtained by numerical calculations. The numerical analyses indicated the following results. Only hydrogen fluoride was formed from fluorine, while HCl and Cl were produced from chlorine. The formation of Cl2 was suppressed by the addition of H2, the amount of which was reduced when the ratio of H2O to CCl2F2 was increased. The suppression of Cl formation was also observed in the experiments.
  • 白井 義人, 河瀬 元明, 橋本 健治
    1993 年 19 巻 5 号 p. 928-931
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    The plant factory system is an environmentally friendly food production system. However, it requires much electric power, resulting in indirect exhaustion of greenhouse gases. Here, it was calculated how large an area is needed for providing electric power to a plant factory by solar batteries. Simulations indicated that an area for solar batteries approximately ten times as large as the cultivated area in the plant factory is required for its operation in many parts of the world.
  • 河辺 豊太郎
    1993 年 19 巻 5 号 p. 932-936
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    This paper describes the potential use of CO2 at its triple point as a thermal energy storage medium. Because CO2 has both a nominal triple point and a relatively high latent heat of fusion, it can be used as an attractive thermal energy-storage medium. Solid phase is formed with a conventional cascade chiller and accumulated in a storage vessel which initially contains CO2 as liquid. On demand, CO2 liquid from the vessel is circulated through a process heat exchanger. The vaporized CO2 returns to the vessel and condenses directly against the solid/ liquid slush, thereby melting the solid.
  • 福間 三喜, 武貞 健太郎, 安西 晟
    1993 年 19 巻 5 号 p. 936-939
    発行日: 1993/09/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    Performances of two-phase anaerobic treatments of wastewater containing cellulose using acidogenic-phase reactors combined with various membrane separation units was compared with those without membrane.
    By using a ceramic membrane module (pore size = 0.1 μm) submerged in a stirredtank reactor, almost all the cellulose and microbial cells could be retained in the reactor. The gas yield in this system was considerably greater than that in a stirred tank without membrane unit, even when treating a high C/N-ratio cellulose-waste-water.
    On the contrary, by using the membrane module immersed in a empty tube the accumulation of cellulose occured in the case of treating a high C/N-ratio wastewater. This low digestibility of cellulose was, however, improved by using a packed bedcolumn.
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