化学工学論文集
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31 巻, 6 号
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移動現象,流体工学
分離工学
  • 金子 四郎, 平沢 泉
    2005 年 31 巻 6 号 p. 399-403
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/20
    ジャーナル 認証あり
    フッ素イオンを晶析法により分離除去する方法において,晶析に適用できるフッ素イオン濃度とカルシウムイオン濃度の範囲を検討した.まず,種晶を添加しない実験で,初期フッ素イオン濃度とカルシウムイオン濃度を変えて,撹拌後のフッ素イオン濃度を検討して,フッ素イオンがカルシウムイオンと反応してフッ化カルシウムの沈殿を生成してフッ素イオン濃度が低下しはじめるときの初期フッ素イオン濃度とカルシウムイオン濃度の関係を求めた.次に,種晶を添加した実験を,種晶を添加しない実験と同一条件で行って,フッ素イオンがカルシウムイオンと反応してフッ化カルシウム結晶を種晶上に析出してフッ素イオン濃度が低下しはじめるときの初期フッ素イオン濃度とカルシウムイオン濃度の関係を求めた.この両者の実験結果から,フッ化カルシウムの過溶解度線を作成して,溶解度線と過溶解度線の間の準安定域を明らかにした.この結果から,晶析可能なフッ素イオン濃度は,3 mmol/l以下であることがわかった.
    実験後のフッ化カルシウム結晶のXRDを測定した.その測定結果から,実験後のフッ化カルシウム結晶のメインピーク値が文献値と一致し,フッ化カルシウムであることが確認できた.
熱工学
  • 後藤 晃権, 萩谷 秀人, 両角 仁夫, 青木 秀之, 三浦 隆利
    2005 年 31 巻 6 号 p. 404-410
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/20
    ジャーナル 認証あり
    実用燃焼炉の数値解析においてすすの濃度が炉内伝熱に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,すすを含むメタン-空気拡散燃焼炉内の複合伝熱解析を行った.燃焼ガスのふく射物性値をExponential Wide-Band Modelを用いて評価し,これを灰色バンドモデルに展開してDiscrete-Ordinates法を用いて非灰色解析を行った.すすの濃度が高くなると燃焼炉壁面へのふく射熱流束は増大し,燃焼ガス温度は低下し,対流熱流束は減少する.またそれに伴い炉内の温度ピーク,壁面全熱流束のピークともに上流側にシフトする.これはすす濃度の上昇により,燃焼ガス-すす混合媒体からのふく射エネルギーの正味の放射量が増えるためである.下流域ではすす濃度の上昇に伴う温度低下により媒体の放射能が低下するために壁面ふく射熱流束が減少する.
反応工学
  • 後藤 敏晴, 山崎 孝則, 菅田 孟, 岡島 いづみ, 岩本 圭彦, 柿崎 淳, 大竹 勝人, 佐古 猛
    2005 年 31 巻 6 号 p. 411-416
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/20
    ジャーナル 認証あり
    電力ケーブルの絶縁材料などに使用されている.架橋ポリエチレン(架橋 PE)は分子間に架橋結合が導入されているので,廃棄物を再び溶融成形することが困難である.そのため現状ではマテリアルリサイクルが進んでいない.
    ここでは,超臨界アルコールで,シラン架橋ポリエチレン(シラン架橋 PE)を連続的に処理し,再生ポリエチレン(再生 PE)を得る方法を検討した.
    始めにバッチ式の装置でシラン架橋 PE の分解条件を検討した.この結果,アルコールを超臨界状態にした場合に架橋を形成するシロキサン結合を分解する反応が進み,架橋前の PE に近い構造の再生 PE を得られることがわかった.
    さらに,シラン架橋 PE を二軸押出機で押し出しながら押出機のシリンダーに超臨界アルコールを注入し,バッチ処理で得た最適条件と同様の条件を押出機の中で作ることを試みた.その結果,押出機中でアルコールの臨界点を超える 10 MPa 以上,320°Cの条件を達成し,連続的に再生 PE を得ることができた.押出機を用いて得られた再生 PE は,バッチ式で得た再生 PE と同等以上の特性を持つことがわかった.すなわち,超臨界流体中でのみ起こるシロキサン結合の分解反応が二軸押出機の中で再現できたと考えられる.
    これらの実験結果は,超臨界流体によって流動性の低いポリマーなどを化学的に処理するための連続式反応装置として,押出機が利用できる可能性を示している.
  • 菅原 靖, 難波 幸司, 菅原 勝康, 菅原 拓男
    2005 年 31 巻 6 号 p. 417-420
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/20
    ジャーナル 認証あり
    二酸化チタン光触媒を組み込んだ高効率なガス分解用反応装置の設計指針を得ることを目的として,らせん状に形状制御した金網光触媒を設置した小型光化学反応装置を用い,エチレン分解に及ぼす湿度の影響について検討した.
    湿度調整したエチレンの分解特性を調べたところ,エチレンは絶対湿度が低い程,短時間で分解されることがわかった.分解データに対し,エチレン分子と水蒸気分子が同一活性点に競争吸着し,吸着エチレン分子の表面反応過程が反応を支配すると仮定して速度解析を行った.水蒸気濃度CH2O10,200–28,300 ppmの下,エチレン初濃度CC2H4,0 30–100 ppmの範囲で,反応速度式は,

    と表され,実測値と計算値はほぼ一致した.ここで,rおよびCC2H4,CH2Oの単位はそれぞれ ppm·min−1, ppmである.
プロセスシステム工学,安全
  • 小野 仁意, 宮本 均, 西浦 雅則, 野田 賢, 長谷部 伸治
    2005 年 31 巻 6 号 p. 421-434
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/20
    ジャーナル 認証あり
    固体酸化物形燃料電池(SOFC)を用いた発電システムは,作動温度が高くシステム全体の熱容量が大きいうえに,電池に関する温度,圧力などの運転上の制約を有している.そのため,実用化には起動,停止時間などの運転・制御性に関する検討が要求される.本研究では,SOFC発電システム全体の動特性モデルを構築し,実機の起動・停止時のデータを用いてモデルの妥当性を検証するとともに,動的最適化手法を用いてシステムを最短時間で起動,停止する操作方法について検討した.その結果,動特性モデルは,系外への放熱,機器間での輻射伝熱などを考慮することで,起動・停止操作時におけるシステム各部の温度がセンサーレンジの5%以内で一致し,運転・制御性の検討に適用可能なモデルを構築した.最適操作については,検証後のモデルに動的最適化手法を適用することで,機器保護のための制約を満たしながら従来操作比で起動時間を28%,停止時間を67%に短縮する操作プロファイルを得た.さらに,SOFC発電システムの特徴を活かしたWSS(Weekly Start Stop)運転について,エネルギー消費量を最小にする操作指針も得た.
  • 鈴木 勝幸, 花島 勝美, 榎 敏之, 倉本 孝政
    2005 年 31 巻 6 号 p. 435-440
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/20
    ジャーナル 認証あり
    石油化学分野では,高度制御導入により,製品品質と生産効率の向上が進められているが,バッチプロセスでは,処方が複雑,かつ多品種少量生産が求められ,高度制御導入が困難である.本論文では,バッチ式反応器温度制御を対象とし,モデルベース制御の一手法であるGeneric Model Control(GMC)に基づく反応温度制御系の設計方法を示した.もともとGMCは位置型制御系であったが,実装を考慮しプロセス制御に好適な速度型制御則へ変換した.またジャケット温度計の位置を考慮した新たな補償項を導出し,既設制御系がPIDの場合のGMC調整係数との対応式を導出した.本論文で示す制御系の有効性を検証するために,特殊樹脂の重合反応プラントにおいて実液試験を実施し,既設のPID制御と比較した.その結果,GMC方式は反応温度偏差のばらつき抑制に好適であり,バッチ進行に伴うプロセス特性変化にも対応できることを検証した.
  • 吉田 雅俊, Pathiphon Koompai, 山下 善之, 松本 繁
    2005 年 31 巻 6 号 p. 441-449
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/20
    ジャーナル 認証あり
    圧力スウィング吸着プロセス(PSA)を設計および運転するには,循環定常状態における操作条件の最適化が非常に重要である.このような運転条件の最適化のためには,プロセスの数学モデルを構築してシミュレーションにより行うのが望ましい.本研究では,数学モデルからPSAの循環定常状態を計算する直接法とPSAプロセスの最適化法を提案し,空気分離を行う実験室規模のPSAプロセスに適用して検証を行った.その結果本手法は,比較的短時間に最適運転条件を決定できることが確認された.
生物化学工学,食品工学,医用工学
マイクロシステム,ナノシステム
  • 大川 和男, 中元 崇, 井上 義朗, 平田 雄志
    2005 年 31 巻 6 号 p. 457-465
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/20
    ジャーナル フリー
    流れを分割・並べ替え整列・再合流し,流体層を系統的に多層化して混合するσ型平板静止マイクロミキサーを開発した.このミキサーを用いてヨウ素とチオ硫酸ナトリウムの脱色実験を行い,レイノルズ数Reや2液の流量比を変化させて混合完了に必要なエレメント数nを測定した.Reが低い場合,nReの増加とともに増加し,単位エレメント通過ごとに厚さが1/2となる流体層内の拡散過程をモデル化した関数関係を用いて,その操作変数や装置の次元と良好に関係づけられた.Reが10を超えると,nReの増加とともに逆に減少した.CFD解析の結果,σ型エレメントの屈曲したチャネル構造のために流体界面が大きく変形・伸長し,その変形・伸長した流体界面によって混合が加速される.この場合のnは,上記のモデルから導出されるReとシュミット数Scに相当する変数を用いて実験的に相関できた.さらにチャネルのアスペクト比の影響を調べ,理想的な分割・再合流による混合を促進し,ミキサーで生じる反応熱を効率的に除くためには,チャネル断面のアスペクト比ができるだけ正方形に近いミキサーが望ましいことがわかった.
エネルギー
  • 小島 紀徳, 鈴木 亨, 金子 昌弘, 加藤 茂, Hao Liu, 上宮 成之
    2005 年 31 巻 6 号 p. 466-469
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/20
    ジャーナル 認証あり
    小型バッチ流動層を圧力容器内に格納することにより,現在日本で開発されている噴流層石炭ガス化炉と類似の条件で石炭チャーのCO2ガス化速度を測定した.本装置を用いることにより,高昇温速度の下で得られたチャーを冷やすことなく用い,様々な濃度,1773 Kまでの温度,0.8 MPaまでの圧力条件下で,ガス化速度を測定することが可能となった.ガス化速度は,CO2濃度を変えずに圧力を上げると上昇し,圧力(総圧)を変えずに濃度を変えた場合と同様の影響を示した.以上,本研究で用いた石炭から高速昇温下で得られたチャーについては,ある一定温度でのガス化速度は,総圧,CO2濃度を種々変えた場合でも,CO2分圧のみで相関されることが明らかとなった.
環境
  • 河口 祐輝, 小島 義弘, 松田 仁樹
    2005 年 31 巻 6 号 p. 470-475
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/20
    ジャーナル 認証あり
    都市ごみ溶融処理過程から排出される溶融スラグ中の重金属含有量の低減を目的として,都市ごみ溶融模擬スラグからの鉛の揮発挙動を調べた.本研究では,1673 Kおよび1773 Kにおいて都市ごみ溶融スラグを模擬したCaO–SiO2–Al2O3系溶融スラグからの鉛の見かけの揮発速度を求めた.具体的には溶融スラグからの鉛の揮発速度に及ぼすスラグ組成(CaO/SiO2/Al2O3組成比),溶融温度,雰囲気(O2–N2またはCO–CO2–N2雰囲気)の影響について検討を行った.
    本研究結果より,酸化雰囲気においては,CaO含有量が多く,SiO2ならびにAl2O3含有量が少ないスラグほど鉛の揮発速度は大きくなった.溶融スラグからの見かけの鉛の揮発速度定数はスラグ組成に基づく溶融スラグの粘度と相関があることが明らかとなった.さらに,温度上昇による溶融スラグの粘度の低下によって鉛の揮発速度は増大することがわかった.また,還元雰囲気においては酸化雰囲気に比較して鉛の揮発速度は著しく増加し,CO/CO2濃度比の増加に伴って鉛の揮発は促進されることが認められた.
  • 小林 史尚, 淺田 元子, 中村 嘉利
    2005 年 31 巻 6 号 p. 476-480
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/20
    ジャーナル 認証あり
    ファイトレメディエーションは土壌から有毒な汚染物を回収するための植物を利用した技術であり,新規な環境保全型浄化方法として期待されている.本研究では,重金属汚染土壌のファイトレメディエーションと有価金属の新規回収法について検討した.ヘビノネゴザ(Athyrium yokoscense)を重金属蓄積植物として用いた.植物体は水蒸気爆砕とWaymanの抽出法によって水可溶性物質,メタノール可溶性リグニン(低分子リグニン),ホロセルロース,Klasonリグニン(高分子リグニン)に分離され,銅と鉄の重金属濃度が測定された.15 mgの銅と2.6 mgの鉄が葉身や葉柄などの地上部分における水可溶性物質成分1 g, 41 mg銅と4.2 mg鉄が根茎や根などの地下部分におけるKlasonリグニン(高分子リグニン)成分1 gに存在した.これらの成分は重金属の回収に用いることができることがわかった.汚染土壌と植物中の重金属(銅と鉄)の存在量を推算した.銅1 gと鉄0.1 gが汚染土壌500 gから回収され,土壌中の銅と鉄の除去率はそれぞれ82と95%であった.
  • 鈴木 和義, 大川 清和, 武下 俊宏, 中野 勝之, 横幕 豊一
    2005 年 31 巻 6 号 p. 481-484
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,ポリ塩化ビフェニル(PCBs)によって汚染された土壌の浄化技術を構築することを目的として,加温・加圧下(150°C, 0.5 MPa–2.5 MPa)における水中での過酸化水素を用いた湿式酸化処理(H2O2添加湿式酸化法)による土壌中PCBsの除去について検討した.その結果,H2O2添加湿式酸化法により土壌中のPCBsを分解させることができ,PCBs含有量が高い土壌も処理を繰り返すことにより環境基準値未満までPCBsを除去できた.H2O2添加湿式酸化法によるPCBs分解能はPCB同族体間で差はないことがわかった.有機物含有量が高い黒土(有機物含有量:26%)は72.6%のPCBs除去率しか得られなかったが,黒土よりも有機物含有量の低い土壌(有機物含有量:4–16%)はいずれも90%以上のPCBs除去率が得られた.これらの結果から,H2O2添加湿式酸化法は土壌中のPCBs<の除去に有効であることが示された.
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