化学工学論文集
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36 巻, 5 号
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編集ノ-ト
物性,物理化学
  • 冨田 大輔, 小田島 毅, 横山 千昭
    原稿種別: 化工データ
    専門分野: 物性,物理化学
    2010 年 36 巻 5 号 p. 429-431
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    非定常短細線法により液体CO2の熱伝導率を273.8–294.5 K,4.0–15.0 MPaの範囲で測定した.熱伝導率の測定不確かさは±3.0%以内と見積った.実測値をREFPROP 8.0の計算値と比較したところ,平均偏差1.8%,最大偏差4.5%であった.2点を除いて平均2%低い値を示しており,さらなる相関精度向上のためには信頼性の高い実測値に基づき相関式を作成する必要がある.
  • 前田 光治, 倉持 秀敏, 大迫 政浩, 中川 究也, 朝熊 裕介, 福井 啓介
    原稿種別: ノート
    専門分野: 物性,物理化学
    2010 年 36 巻 5 号 p. 432-434
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    バイオディーゼルを本格的に普及させるためには,廃食用油に加えて低品質廃油脂類も原料として製造することが必要とされている.低品質の廃食用油は,植物油の主成分であるトリオレインに加えて,遊離した飽和脂肪酸や家庭用の固化剤を含んでおり,常温で完全な液体とならない.しかし,バイオディーゼルの製造過程では液体原料が望まれる.本研究では,廃油脂類として市販食用油と市販固化剤の系,廃食用油としてトリオレインとパルミチン酸2成分系の固化特性を測定し,それを簡単な熱力学関数で計算した.トリオレインとパルミチン酸2成分系の混合物は65℃以上ですべての組成で液化し,単純共晶系,あるいは固溶体系であることを前提とした計算値はうまく実験値を再現できた.一方,市販食用油と市販固化剤の系の混合物は,固化剤が低濃度でも凝固温度は80℃まで急激に上昇し,簡単な熱力学関数でうまく再現できなかった.
移動現象,流体工学
  • 岩田 修一, 大石 明香, 有竹 あゆ美, 森 秀樹, 高橋 勉
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2010 年 36 巻 5 号 p. 435-440
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    我々は,Shear-thinning性流体の粘度特性に着目した圧力振動脱泡法の開発を行っている.圧力振動により誘起される気泡の膨張・圧縮変形は気液境界面近傍の流体においては二軸伸長流動を,また気泡から離れるに従い振動の影響がなくなることから剪断流動を形成している.これらの流動により発生する応力を流動複屈折測定により評価することを試みた.光弾性則が成立し単一緩和Maxwellモデルとよく一致するCTAB/NaSal溶液を使用し,気泡表面からの距離と流動複屈折により生じる遅延の大きさを偏光解析により求めた.遅延は圧力振動の印加とともに気泡近傍で大きな値を示し,極大値を示した後次第に振動前の値に近づく.極大値の大きさと気泡からの距離の関係は非定常有限要素解析により求めた剪断応力分布と非常によく似た挙動であることを確認した.これをもとに光弾性則より推定した剪断応力との比較により応力が集中する範囲を予測した.
  • 岩田 修一, 鈴木 宏典, 森 秀樹
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2010 年 36 巻 5 号 p. 441-448
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    固体表面に設置された微小液滴形状,もしくは液中の固体面に付着した微小気泡形状の測定による表面張力と接触角の同時決定手法について,ニュートン流体を対象に検討を行った.静止系における気泡(液滴)形状は,表面張力や密度などの物性値,重力加速度を用いて,界面での力の釣り合い式から理論的に決定される.数値解析における3つの無次元数(ボンド数,3相接触円半径と気泡高さの比,原点シフト量)が,実測された界面形状と一致するように最適化される.得られた表面張力と接触角の値は文献値と良好に一致した.
粉粒体工学
  • 今駒 博信, 坪田 圭司, 堀江 孝史, 久保 和也
    原稿種別: 報文
    専門分野: 粉流体工学
    2010 年 36 巻 5 号 p. 449-456
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    バインダー溶液で湿った多孔球・円柱・平板を対流乾燥して得られた乾き材料内のバインダー飽和度分布推定モデルを提案した.このモデルは,機能性微粒子をバインダー溶液中に分散させたスラリーやペースト原料を乾燥固化させることで得られる各種製品の生産技術における基礎工学として重要である.このモデルは,筆者らが提案した既往の,バインダー溶液の初期溶剤濃度を固定した条件下での乾き平板に対する推定モデルを,球・円柱・平板に対して初期溶剤濃度の変化を考慮したモデルへと拡張したものである.
    モデルの妥当性を検証する目的で,スチレンブタジエン系ゴムラテックスで湿ったガラス微粒子焼結球を用いて対流乾燥実験を行うことで,これまで多孔平板でしか実測されていなかった,乾き材料内のバインダー飽和度分布の実測値を多孔球に対して求めた.モデルによる推定値と実測値との一致は良好だった.また,球で得られた相関パラメータ値を用いた平板に対する推定値は,多孔平板に対する既往の実測値とも良好に一致した.モデルによる計算結果に依れば,乾き材料の(バインダー総量/表面積)の値の増加とともに,バインダー偏析の領域が材料内部に進行する傾向を示し,バインダー飽和度分布曲線が下に凸から上に凸へと変化することが示唆された.
分離工学
  • 平尾 真一, 松本 道明, 近藤 和生
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2010 年 36 巻 5 号 p. 457-465
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステルを含んだマイクロカプセルを用い,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛の吸着挙動を検討した.まず,マイクロカプセルの特性を評価するために粒子径分布,走査型電子顕微鏡による表面の撮影,抽出剤内包量の測定を行った.次に,吸着機構を検討するため,吸着平衡実験,吸着速度実験を行った.最終的に,カプセルを充填したカラムを用いて多成分金属系からのニッケルとコバルトの分離を試みた.調製したマイクロカプセルを観察した結果,白色球形のマイクロカプセルであることが分かった.各金属の吸着平衡はLangmuirの吸着等温式によく従った.総括の吸着速度には,錯体形成反応と細孔を通しての金属錯体の拡散の両者が関与していることが分かった.マイクロカプセル充填カラムによる各金属の分離を検討したところ,流速はより遅く,カラムの充填高さはより高い方が分離能は大きくなった.吸着段階による各金属の相互分離は困難であったが,脱着段階において,分離に最適な脱着液を選択することにより分離の可能性を見出した.
  • 佐藤 恵, 武田 圭右, 大田 昌樹, 佐藤 善之, 猪股 宏
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2010 年 36 巻 5 号 p. 466-471
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    溶解度パラメータ(SP値)に基づく希少天然成分の溶解度定量化を目的とし,flavone,6-methoxyflavoneの2種のフラボノイドを対象とした実験的検討を行った.まず,各種有機溶媒を用いた溶解度測定実験により,溶解度が最大となるSP値を求めたところ,いずれの溶質もSP値はおよそ19 MPa0.5と推定された.一方,Fedors法およびHansen法による推算値は22–25 MPa0.5と推定値より大きく偏倚することがわかった.次に,超臨界CO2中の溶解度測定実験を実施し,得られたデータに対して正則溶液論に基づく固液平衡モデルを適用した.その結果,溶質のSP値を温度,圧力(CO2密度)の関数として表現すると良い相関結果が得られた.この式をCO2密度ρ=0へと外挿し常温常圧下のSP値を17.6 MPa0.5と求めると,前述した有機溶媒中の溶解度から決定したSP値とほぼ一致した.以上よりSP値に基づく固体溶質の超臨界CO2に対する溶解度推算の可能性を示すことができた.
  • 金指 正言, 島田 千絵, 佐野 充典, 吉岡 朋久, 都留 稔了
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2010 年 36 巻 5 号 p. 472-479
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    ゾル–ゲル法によりPdドープシリカ膜を製膜し,水素透過特性,熱安定性,水素還元による気体透過特性の変化,耐水蒸気性について検討した.Pdドープシリカ膜のTEM観察より,Pdドープシリカ層の膜厚は80 nm程度であることが明らかになり,超薄膜形成が可能であった.また,Pdはシリカマトリックス中に,数nmから10 nm程度の大きさで分散していることが明らかになった.550℃空気雰囲気で製膜したPdドープシリカ膜(Si/Pd53/1)は,乾燥窒素雰囲気(500℃)で熱安定性を有するが,還元雰囲気(500℃, H2)でPdが凝集し,シリカネットワークの緻密化と粒界細孔を閉塞した.550℃水素雰囲気で製膜したPdドープシリカ膜(Si/Pd53/1)は,還元雰囲気(500℃, H2),水蒸気雰囲気(500℃, steam: 70 kPa)で高い安定性を有していた.
  • 中林 沙耶, 長野 克則, 外川 純也, 中村 真人, 黒川 麻美
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2010 年 36 巻 5 号 p. 480-485
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    稚内層珪質頁岩は北海道宗谷地方に豊富に賦存する天然のメソポーラス材料であり,特に相対湿度70%以上で大きな吸放湿量が得られ,最大吸着量は270 mg/gに達する.その吸湿能力の向上を目的として塩化物の水溶液に含浸させ細孔内に担持させた場合,担持量が過剰だと高湿度下で吸着水,担持物質が潮解して生じた水溶液が細孔から溶出し,表面が濡れた状態になってしまうという問題がある.そこで高湿環境曝露後の試料表面のRGB色調解析により求める濡れ度合いの評価により,表面濡れを生じない担持量となる上限含浸水溶液濃度を定めた.塩化リチウムの上限濃度は4 wt%,塩化カルシウムは5 wt%となった.また,上限含浸水溶液濃度でそれぞれの塩化物を担持させた珪質頁岩の最大吸湿量は,窒素ガス吸着法で求められるメソ孔の容積から仮定する保持可能な吸湿量とほぼ一致していることがわかった.試料表面の濡れを生じさせないためには,最大吸湿時の吸着水体積を細孔直径50 nm以下のメソ孔容積以下に留めることが効果的であることが示された.
  • 岡部 和弘, 湯塩 泰久, 細谷 俊史, 金澤 進一, 柏原 秀樹, 中井 龍資
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2010 年 36 巻 5 号 p. 486-493
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    バイオエタノールの脱水にはPSA法が用いられ省エネルギー化が図られているが,PSA法はプロセス上の制約があるためこれ以上の低コスト化が難しい.一方,ゼオライト素材の膜分離法は一層の省エネルギー化の可能性があり,弱点であった耐水性・耐酸性素材の開発も進められている.本研究では,バイオエタノールの蒸留・膜脱水プロセスについてシミュレーション計算を行い,膜分離法が経済的に優位となる膜特性及び濃縮プロセスについて検討した.
    透過速度の向上は,真空ポンプに負荷をかけない低エネルギーモード運転を可能にするため消費エネルギーの低減に有効であるが,蒸留塔の消費エネルギーが大きいためその低減比率は微小である.一方,透過速度の向上は膜モジュール本数を削減できるため設備コストの低減が可能になる.分離係数の向上は消費エネルギー,コストにほとんど影響しないが,分離係数の低下によるエタノールの損失を考慮すると10,000程度以上は必要と思われる.蒸留の負荷を下げるため蒸留塔出口濃度を下げると,消費エネルギーを大きく低減できコストも下がる.さらに,蒸留法とPSA法をQ=36 kg·m−2·h−1, α=10,000程度の膜で置き換えればおよそ6 JPY·kg-EtOH−1のコスト削減が可能となる.また,含水エタノール製造においても同様におよそ6 JPY·kg-EtOH−1のコスト削減が可能となる.これらの検討結果から,膜分離法をPSA法のみでなく蒸留法に置き換えることにより経済性に優れたプロセスを構築できることがわかった.
  • 吉田 政晴, 谷口 正之, 田中 孝明
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2010 年 36 巻 5 号 p. 494-500
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    非対称型デプスフィルターSE20(公称孔径0.2 μm)について,2種類の細菌Lactobacillus plantarumおよびBacillus amyloliquefaciensの懸濁液を用いて,種々の濾過圧力,濃度にて濾過実験を行い,その濾過特性を検討した.L. plantarum懸濁液では濾過圧力10–150 kPaの範囲で,スクリーンフィルターの場合と比較して3–8倍の高い濾過速度が得られた.見かけの比抵抗が10–100分の1程度に低下することも示された.走査型電子顕微鏡にて濾過後のデプスフィルター断面を観察すると,L. plantarum菌体はフィルターの深さ方向に3分の2程度侵入した付近から分散して捕捉されていたため,濾過抵抗の増加が低かったと考えられた.一方,B. amyloliquefaciens懸濁液の濾過では10–50 kPaではデプスフィルターとスクリーンフィルターのいずれを用いた場合もほぼ同じ濾過速度であった.しかし,濾過圧力を100–150 kPaに高めると濾過速度はデプスフィルターの10倍に増加した.スクリーンフィルター上の菌体層は高い圧縮性を示したが,デプスフィルターに捕捉された菌体層の見かけの比抵抗は50–150 kPaにおいて濾過圧力の増加とともに減少した.電子顕微鏡で観察すると,濾過圧力が10 kPaの場合はデプスフィルター表面に菌体層が生じていたが,100 kPaに高めると菌体がデプスフィルター内部に分散して捕捉されていた.非対称型デプスフィルターを用いてB. amyloliquefaciensのような集塊状に連鎖した菌体の懸濁液の濾過を行うときには,フィルター内部に捕捉されるように濾過圧力を高めることが有効なことが示された.
  • 澁川 卓実, 大平 勇一, 小幡 英二
    原稿種別: ノート
    専門分野: 分離工学
    2010 年 36 巻 5 号 p. 501-504
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    アスコルビン酸水溶液へのNO2吸収におよぼすアスコルビン酸濃度の影響を実験的に検討した.気泡塔型の回分式吸収装置に二酸化窒素を含む混合ガスを通気し,吸収液中の亜硝酸イオン濃度および硝酸イオン濃度を測定した.アスコルビン酸水溶液は亜硝酸イオンを選択的に生成し,硝酸イオン生成を抑制することができる.還元剤としてアスコルビン酸を用いた場合,亜硫酸塩濃度の1/10程度で亜硫酸塩吸収液と同等のヒドロキシラジカル除去性能を示す.
熱工学
  • 板谷 義紀, 市橋 伸久, 小林 信介
    原稿種別: 報文
    専門分野: 熱工学
    2010 年 36 巻 5 号 p. 505-511
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    臭化リチウム/水系吸収式ヒートポンプの性能向上を目指して,吸収液に吸着剤微粒子を分散するスラリー化方式を提案した.LiBr水溶液に吸着剤を分散させたとき,吸収器および再生器内で伝熱面上をスラリーが液膜として流下する場合を想定して,熱・物質同時移動解析を行い,ヒートポンプ性能に与える吸着剤分散効果を検討した.吸収器と再生器それぞれを個別に解析するオープン系解析では,吸収液温度が吸収器入口直後で著しく昇温して水蒸気吸収に比べて伝熱が律速されることと,吸着剤を分散した吸収液スラリーのLiBr濃度が吸収液単独に比べ吸収器内では高濃度,再生器内では低濃度で伝熱面を流下することを確認した.吸収器と再生器を吸収液が閉ループで循環する閉ループ系解析では,熱源に360 Kの比較的低温度排熱を用い,冷却水温度290 Kとしたとき,280 Kの冷熱生成出力が,吸収液単独の場合に比べて条件によっては10%増大する結果が得られた.以上の結果より,吸着剤に吸着されたLiBrが吸収器内で水蒸気吸収に伴い脱着されて,吸収液濃度の低下を抑制するバッファー効果として作用することで,吸収性能が向上することを明らかにした.さらに,吸着剤の一例として100 μmアンダーの活性炭微粒子をLiBr水溶液に分散させた場合,平衡吸着量は溶液濃度にほぼ比例し,吸着平衡パラメーターは温度にほとんど依存せず1.5程度となり,解析で用いた値が妥当であることを確認した.
プロセスシステム工学,安全
  • 若原 達朗, 野田 賢, 西谷 紘一
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム工学,安全
    2010 年 36 巻 5 号 p. 512-518
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    化学プロセスの最適化問題は一般に非線形計画問題として定式化されるが,問題の評価関数や制約式に含まれる変数は大部分が線形であり,非線形変数はわずかである場合が少なくない.本論文では,非線形変数に比べて線形変数の数が多いという化学プロセスの最適化問題の特徴に着目して,問題を線形部分と非線形部分に分解して効率的に最適解を求める新しい分解法を提案する.提案手法では,原問題を非線形変数からなる親問題と線形変数からなる子問題に分けて解くため,非線形変数に比べて線形変数の次元が非常に大きい問題を効率的に解くことができる.提案手法をRosen-Suzukiのテスト問題に適用した結果,原問題を分解せずにそのまま非線形計画手法によって解く非分解法に比べ,提案手法は大幅に計算時間を短縮できることを確認した.
  • 三木 功, 川竹 景子, 重本 直也
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム工学,安全
    2010 年 36 巻 5 号 p. 519-525
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    香川県さぬき市で生産された砂を使用して製造したモルタルの表面に白華が起きた.このような骨材に起因するモルタルの白華挙動を考察するために,白華を起こした砂と参照用としてそうでない砂について,バルクおよび表面組成を分析した.さらに,これらの砂を水やモルタル中を模擬したCa(OH)2懸濁溶液,アルカリ性のKOH溶液に浸漬し,白華に関連する成分の溶出挙動を調べた.その結果,白華を起こした砂では水中で可溶性のNa2SO4が溶出し,Ca(OH)2溶液やKOH溶液への浸漬ではNa2SO4以外にケイ酸中のケイ酸ナトリウムに由来するNa塩の溶出が起きた.このようなNa塩はモルタル中でCa(OH)2と反応して強アルカリのNaOHを生成し,それが大気中のCO2の吸収を促進してNa2CO3,NaHCO3,CaCO3などの炭酸塩を生じ,白華現象が促進されるものと推定される.白華を生じなかった砂では水やアルカリ溶液に浸漬することにより,モルタルブロックの白華物中では検出されなかった石膏(CaSO4)の溶出が起きた.
材料工学,界面現象
  • 安田 昌弘, 渡邊 真司, 合田 昇史, 荻野 博康
    原稿種別: 報文
    専門分野: 材料工学,界面現象
    2010 年 36 巻 5 号 p. 526-531
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    種々の有機溶媒や油を広範にまた多量に吸収することのできる新規吸油性高分子材料を合成した.アクリル酸2-ヒドロキシエチルと種々の架橋剤の懸濁共重合法により得られる平均粒径282 μmの高分子粒子に,親油性の高級脂肪酸由来のアシル基を導入して,その吸油量を評価したところ,種々の有機溶媒や油に対して高い吸油性を示した.2,2′-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]を用いたシード重合により,アゾ基を有する単分散高分子粒子をまず合成し,次いで疎水基を導入してグラフト状の親油性官能基を高分子側鎖として有するグラフト吸油性粒子を合成した.この粒子の種々の有機溶媒や油に対する吸油量は,懸濁重合により合成した粒子の吸油量の1.2–3.7倍となった.
環境
  • 小島 紀徳, 小柳 卓, 田渕 宏典, 菅沼 秀樹, 黒澤 勝彦, 高橋 伸英, 濱野 裕之
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2010 年 36 巻 5 号 p. 532-538
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    近年の地球温暖化の対策技術の一つとして,乾燥地大規模植林による大気中CO2固定システムの構築が試みられている.乾燥地・半乾燥地は,地球上の陸地の約1/3に相当し,絶対的に雨水が不足しているために土地生産性が極端に低い.しかし,乾燥地では,多くの雨水が土壌に浸透せずに表面流出し,流れ込んだ集水池で無駄に蒸発している.表面流出水は,集めて植物の根域に浸透させることで植物成長に利用可能な水となる.それゆえ,乾燥地植林を行うには,植物利用可能な雨水(表面流出水)を有効利用できる適切な植林地選定が必要とされる.
    本報告では,西豪州乾燥地に設定した数km程度の流域内での水挙動を表現することを目的とした独自の表面流出モデルの構築を行った.10 mメッシュでの数値計算を行うにあたり,計算誤差を無視するのに必要とされる時間差分値の限界値を策定した.ついで,乾燥地での降雨時の流出挙動の実測値を計算結果と比較することにより,本モデルの二つのフィッティングパラメータを決定した.以上により,流域内の水挙動を表現するモデルを構築できた.
  • 野中 潔, 飯塚 淳, 山崎 章弘, 柳沢 幸雄
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2010 年 36 巻 5 号 p. 539-544
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/09/20
    ジャーナル 認証あり
    コンクリートスラッジとリン酸二水素カリウムを反応させることで,コンクリートスラッジの固形分表面にヒドロキシアパタイトが析出した材料(スラッジHAP)を作製した.スラッジHAPはカドミウム,銅,フッ化物イオンの除去性能を示した.これらのイオンに対するHAPの除去性能は,既存のHAPのそれと同程度かあるいは優れた値であった.さらに,スラッジHAPによって除去された各イオンはpH54の酸性条件下で溶出がほとんど起こらなかった.以上の結果から,廃棄物から生成されるスラッジHAPが安価な排水処理材料として利用可能であることが示された.
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