化学工学論文集
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37 巻, 6 号
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編集ノ-ト
移動現象,流体工学
  • 谷田 雅洋, 川口 泰広, 藤本 照雄, 加計 博志, 大石 勉
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2011 年 37 巻 6 号 p. 473-478
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
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    熱膨張性マイクロカプセルの重合データに関し,粒径制御の最も安定する操作条件を明確にするため,多変量解析の手法を適用した.
    その結果,熱膨張性マイクロカプセルの粒径制御因子のうち,分散剤量と予備混合槽および重合槽の撹拌動力,重合処方による液物性により統計モデルを作成した.
    熱膨張性マイクロカプセルの重合後の平均粒子径を小さくするには,分散剤増量とともにプロセス因子である重合槽および予備混合槽の撹拌動力を大きくすることで実施できる.また,静止型分散機の通過直後の液滴径は原材料物性値の影響を受けるが,重合においては分散剤および重合槽の撹拌動力が支配的になることが示された.
  • 高橋 幸司, 高畑 保之, 今井 敏彦, 志斎 金一
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2011 年 37 巻 6 号 p. 479-482
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル 認証あり
    持続可能な開発が望まれている近年,バイオマスエネルギーはカーボンニュートラルであるため環境負荷が少なく,注目を集めている.その中で最も実社会への普及が進んでいるのがBDF(バイオディーゼル燃料)であろう.BDFは植物油を原料として製造され,廃棄の面倒な廃食油からも製造可能である.加えて軽油に比べ硫黄酸化物の排出が少なく,環境に優しい.このようにさまざまなメリットを有することからも,より一層の利用の拡大が望まれている.日本では近年小型のBDF製造装置が開発され,企業だけではなく自治体や学校,福祉介護施設などで導入され,BDFがその団体のバスやトラック,公用車などに使用されている.しかしながら市販されている装置は液体混合に基づいた最適化が成されているとはいえず,操作性が悪いことに加え価格が高く,普及のための大きな障害となっている.
    本研究ではBDF製造工程に配慮して装置を見直し,すでに市販されているものよりも高性能な装置の開発を目的に種々の検討を加えた.実験結果よりBDF製造においては円錐底円筒槽よりも四角錐底角型槽の方が撹拌状態において有効であることを明らかにし,このことにより操作時間の大幅な軽減と,装置の小型化に成功し,低価格の実現を可能とした.さらに,本研究成果に基づきBDF製造装置を開発し市販するに至った.
  • 大平 勇一, 永野 久雄, 島津 昌光, 小幡 英二, 安藤 公二
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2011 年 37 巻 6 号 p. 483-489
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
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    6枚羽根タービンと多孔板型仕切板を備えた6段縦型撹拌槽の液混合特性について,逆混合モデルを適用して逆流量および交換流量におよぼす多孔板型仕切板の開孔率,撹拌速度の影響を実験的に検討した.槽径DTは0.10 m,翼径Diは槽径DTの1/2とした.6段縦型撹拌槽の逆流量f,供給流量q,交換流量Qの間にf=Qq/2の関係が成立した.交換流量Qは撹拌速度nと開孔率Arに比例して大きくなった.撹拌レイノルズ数が4×103よりも大きい範囲では,修正無次元交換流量Q/(nDi3Ar)の値は0.20でほぼ一定となった.
  • 橋本 俊輔, 西川 達哉, 新野 純一, 西村 亮俊, 井上 義朗
    原稿種別: 報文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2011 年 37 巻 6 号 p. 490-495
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    撹拌槽内の層流による混合パターン形成は,撹拌翼の先端から伸びる流脈線によって規定され,混合パターンの輪郭は,時間とともに流脈線形状に近づくことが知られている.そのため,流脈線の正確な形状把握は,混合機構の解析に重要な手がかりを与える.良混合を生み出すカオス的な流れ場では,流体軌跡は特定の方向に指数関数的に広がる傾向がある.そのため,実験で可視化された流脈は,その方向に急速に面状に広がり,線としての流脈の可視化が困難となるため,流脈線に基づく混合解析を妨げる大きな要因となっていた.本研究では,撹拌槽内のような3次元流れ場においても,鮮明な流脈“線”を可視化することのできる新しい実験手法を開発した.その特徴は,流脈となる可視化液中に特殊な界面活性剤を添加することにより,流脈の広がりを抑制したことにある.これにより,撹拌翼の羽根先端から伸びる鮮明な流脈線の可視化が可能になった.本手法で形成された流脈線は,長時間にわたって線の形状を安定に保つだけでなく,分子拡散効果による流脈液からの着色成分の漏出も少ないことがわかった.
粉粒体工学
分離工学
  • 若林 敏祐, 長谷部 伸治
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2011 年 37 巻 6 号 p. 499-505
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
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    これまで提案されてきた内部熱交換型蒸留塔(HIDiC)は,二重管を単位モジュールとする構造やプレートフィン型熱交換器を用いるもので,従来の蒸留塔よりも構造が複雑になり,またサイドカットによる製品取り出しが困難など,プロセススキームを制約する問題を有している.本研究では,よりシンプルなHIDiCの構造開発の基盤研究として,内部熱交換量分布と省エネルギー特性の関係をシミュレーションにより検討した.これまで提案されているHIDiCでは,塔内各部の伝熱面積は装置構造によりあらかじめ与えられることから,塔内各部の内部熱交換量は濃縮部と回収部の温度差により定まり,意図的にこれを与えることができない.内部熱交換がリボイラー負荷低減に及ぼす効果は,熱交換を行う箇所に大きく依存する.まず,段数一定のもとではCGCC解析を用いてHIDiCを解析することが不適切であることを指摘し,そのうえで濃縮部と回収部各1段のみの熱交換を考え,熱交換段の組合せがリボイラー負荷削減に与える影響を求めた.その結果,塔段数と圧縮機動力を固定した条件下では,リボイラー負荷の削減量を最大とする熱交換段の組み合わせが存在することを明らかにした.この結果を踏まえ,総伝熱面積一定の制約下で,複数の段への最適な伝熱面積の配分(内部熱交換量の配分)を求めた.そして,一つの段間の熱交換の結果から求められる「省エネルギー性指標」をもとに内部熱交換量を配分することにより,リボイラー負荷を大きく削減できること,および一部の段間のみで選択的に熱交換することで,大きなリボイラー負荷の削減が可能であることを明らかにした.さらに,「省エネルギー性指標」をもとに定めた内部熱交換量配分が,最適化手法により数理的に算出した最適な内部熱交換量配分にほぼ一致することを示した.
  • 黒川 麻美, 外川 純也, 鍋島 佑基, 長野 克則
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2011 年 37 巻 6 号 p. 506-511
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル 認証あり
    メソ孔やミクロ孔を有する多孔質材料は吸湿性能を示すことが知られている.その評価手法として,絶乾試料を用いた水蒸気吸着等温線測定や窒素吸着法による細孔分布解析が一般に行われている.しかし,実際に吸着剤が利用される環境では,吸着剤は絶乾状態ではなく,環境条件に応じた水蒸気吸着が起こっている.そこで相対湿度の変化に対する水蒸気吸着により,窒素吸着法で求まる細孔分布がどのように変化するかを評価するため,種々相対湿度環境下で吸湿平衡状態に達した試料を液体窒素で瞬間凍結させた後,乾燥操作を行わずに,窒素吸着測定を試みた.その結果,いずれの場合も,小さな径の細孔から順に水分子の吸着が始まり,相対湿度の増大とともに大きい細孔径の細孔にも水分子の吸着が進み,ある相対湿度以上では細孔内が吸着した水分子によって完全に占領される様子を細孔分布ヒストグラムで視覚的に示すことができた.
  • 宇敷 育男, 寺谷 彰悟, 大田 昌樹, 佐藤 善之, 猪股 宏
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2011 年 37 巻 6 号 p. 512-517
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル 認証あり
    超臨界CO2-エントレーナー法による多孔性シリカからのテンプレート剤抽出について,操作因子やエントレーナー種の最適化および抽出メカニズムの解明を目的とし,温度80℃,圧力8–14 MPa,エントレーナーとしてメタノール,エタノール,1-プロパノールを用いて抽出時間1–7 hの条件下で実験を行った.その結果,2種のテンプレート剤のうちEO20–PO70–EO20トリブロックコポリマー(EPE)が先に抽出された後,Cetyltrimethylammonium hydroxide(CTAH)が抽出されるメカニズムを明らかにした.続いて抽出圧力の影響の検討から,ある圧力で除去率が極大値を示すことがわかり,これは系内の相状態から説明可能であった.また,エントレーナー種の影響を検討した結果,メタノール>エタノール>1-プロパノールの順に除去率が増加し,この傾向はエントレーナー分子のサイズ,そして極性の傾向と矛盾しなかった.さらに,有機溶媒抽出法による実験と比較した結果,除去率や表面物性値の観点で超臨界CO2-エントレーナー法の優位性が示された.最後に,抽出に与える細孔径の影響では,細孔径の大きさにより除去率の圧力依存性が変化することを確認した.以上より,適切な圧力条件やエントレーナー種を選定することでほぼ100%のテンプレート剤抽出を達成できた.また,抽出結果に系内の相状態やエントレーナー種の物性が大きく影響することが明らかになった.
  • 平野 博人, 佐藤 森, 小幡 英二
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2011 年 37 巻 6 号 p. 518-525
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル 認証あり
    垂直管内回分沈降および傾斜管内回分沈降実験から求められる垂直および傾斜固体流束曲線を用いて,定常状態での連続傾斜シックナー操作における槽内濃度分布の理論的解析を行った.理論的解析は,「溢流が清澄な臨界負荷操作」,「供給面下が均一濃度層となる未負荷操作」,ならびに,「供給面下に濃度不連続面をもつ未負荷操作」の三つの操作条件で行った.どの操作条件においても,図解法による解析法から予測される理論槽内濃度分布と炭酸カルシウムスラリーを用いた連続操作実験から求められる槽内濃度分布は,よい一致をみせた.したがって,傾斜角θ,側板間距離Bの傾斜シックナー内の沈降は,くさび形沈降モデルにより説明することができ,任意の沈降高さの連続傾斜シックナー槽内の濃度分布を図解法により理論的に求めることが可能となった.
  • 村山 憲弘, 後 裕之, 服部 誓哉, 三好 貴之, 芝田 隼次
    原稿種別: 報文
    専門分野: 分離工学
    2011 年 37 巻 6 号 p. 526-531
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル 認証あり
    陰イオン交換体の一つであるMg/Al系層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide,LDH)を用いて,いくつかのカルボン酸イオンやドデシル硫酸イオンなどイオンサイズや構造の異なる有機陰イオンのイオン交換特性を調べた.イオン交換前後のLDHの構造変化や,LDHの表面疎水性におよぼす有機陰イオンの種類および捕捉量の影響について検討を行った.
    C6H5COO,C2O42−,CH2(COO)22−およびC6H4(COO)22−のイオン交換等温線の形状はLangmuir型を示した.LDHのイオン交換容量の理論値に対して71–88%に相当する有機陰イオンを捕捉できた.LDH層間への有機陰イオンの取り込み量の差は,主に有機陰イオンの価数や大きさの違いに起因すると考えられる.同様に,C12H25OSO3のイオン交換等温線はLangmuir型であり,イオン交換容量とほぼ同量のC12H25OSO3がLDHに捕捉された.有機陰イオンを取り込んだLDHは,LDH層間での有機陰イオンの配向性に応じてその層間距離が変化することがわかった.ジカルボン酸イオンを捕捉したLDHの接触角は出発原料であるNO3型LDHの接触角と大きな差はなく,LDH表面は親水性を示した.本研究で用いた有機陰イオンではC12H25OSO3をLDHに捕捉させたときに最も大きい接触角,すなわち疎水性表面が得られた.
プロセスシステム工学,安全
  • 江口 元
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム工学,安全
    2011 年 37 巻 6 号 p. 532-538
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル 認証あり
    製造工場においては,労働災害をなくすために労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)が導入されているが,その中では工場内に潜在する危険源を抽出し,リスクアセスメントを行い,その結果を用いて,リスク低減をはかる.しかし危険源がすべて抽出されているとは限らず,隠れた危険源が誘因となり労働災害が発生することがある.その原因の一つとして,工場における作業を単位動作まで分解したのちに,さらに危険源の抽出を行うにあたって,危険源の見落としが出てしまうことである.本論文では,リスクアセスメントにおいて,人の行う作業の中に潜在し,トラブルとして顕在化しうる危険源の見落としを減らす方法を提案する.そこでは,まず熟練作業者が作業手順を記述し,それをもとに1)熟練作業者が自身の知識に基づいて作業動作に潜在する危険源を抽出すること,2)作業手順の記述を文脈解析し,事故・災害が潜在するかどうかを調べて,作業動作から事故・災害に至るプロセスにおける危険源を抽出すること,さらに3)実作業における事故・災害の発生,あるいは職場での想定ヒヤリ・ハットによるリスクの発掘の結果から危険源を抽出することという3段階の方法をとる.
  • 高井 努, 野田 賢
    原稿種別: 報文
    専門分野: プロセスシステム工学,安全
    2011 年 37 巻 6 号 p. 539-545
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル 認証あり
    プラントアラームシステムの性能評価指標として,個々のアラーム発生頻度などのKPIs(Key Performance Indicators)が広く運転現場で用いられている.しかし,KPIsはアラームシステムの量的な適正評価には有効であるものの,アラームシステムがオペレータの気づきとプラントの状況認識を助け,正しい対応操作へと導けるかというアラームシステムの本質的な評価には不十分であるとの指摘がある.本論文では,プラントアラームシステムの特性である操作相関性,一意性,適時性を,プラント運転ログデータのデータ解析により定量的に評価する方法を提案する.提案法では,プラント運転ログデータに含まれるアラームイベントや操作イベントの発生系列間の類似度とタイムラグをイベント相関解析により求め,アラームシステム全体の操作相関性,一意性,適時性を評価する.提案法により共沸蒸留プロセスの運転ログデータを評価した結果,KPIsでは適正化の対象と判定されなかったアラームイベントや操作イベントの問題点を抽出できた.この方法は,プラント運転ログデータさえあればよく,評価者の知識や経験に左右されない.今後,さまざまな化学プラントへの適用が進み,プラントアラームシステムの質的な改善に役立つことが期待される.
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 片山 真, 杉田 智哉, 加藤 竜司, 大河内 美奈, 松島 充代子, 川部 勤, 高瀬 智和, 吉田 安子, 川瀬 三雄, 本多 裕之
    原稿種別: 報文
    専門分野: 生物化学工学,食品工学,医用工学
    2011 年 37 巻 6 号 p. 546-550
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル 認証あり
    IgGの新規精製用リガンドの開発を目的に,ペプチドアレイを用いてIgG–Fc高結合ペプチドの探索を行った.ミルクタンパク質全網羅ペプチドアレイにアレルギー患者の血清を反応させることで,陽性患者にも陰性患者にも結合しやすいミルクタンパク質由来の結合領域を見出した.さらにセルロースメンブレン型ペプチドアレイを用いて,結合配列を探索することで,LLRLKKYKというアミノ酸8残基からなるオクタマーの配列が,Mouse IgGに対して非常に強く結合することがわかった.この配列はIgAには弱いことからIgG–Fc特異的結合配列であることが示唆された.さらに,このペプチドを用いて,アフィニティカラムを作製したところ,IgG–Fcの精製が可能であることがわかった.
材料工学,界面現象
  • 竹田 依加, 岡本 尚樹, 齊藤 丈靖, 近藤 和夫
    原稿種別: 報文
    専門分野: 材料工学,界面現象
    2011 年 37 巻 6 号 p. 551-555
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル 認証あり
    電解銅めっきの添加剤である3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム(MPS),ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体(DDAC),Cl2を適宜組み合わせて,電解銅箔を作製し,レーザー顕微鏡,電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM),X線回折(XRD)を用いて表面粗さ,表面形態,結晶配向を評価した.MPS(6 ppm),DDAC(4 ppm),Cl2(10 ppm)を含む場合,最も平滑で結晶粒が微細化した電解銅箔が得られた.このとき(111)配向強度が上昇し,(111)優先配向に近づくことが平滑な電解銅箔の作製を可能にする一つの要因であると考えられる.
    また,結晶発振子マイクロバランス測定法(QCM)とカソード分極測定からめっき浴中での添加剤の挙動を検討した.MPSとDDACを含む電解液でQCM測定を行うと質量増加が確認できた.カソード分極測定より,DDACによる電析の抑制効果が示唆された.これはQCM測定でも見られたDDACの吸着によるものと考えられる.
環境
  • 張 文卿, 石原 雅典, 小島 紀徳
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2011 年 37 巻 6 号 p. 556-562
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル 認証あり
    1983年に日本の都市ごみ焼却炉フライアッシュからダイオキシン類が検出されて以来,ダイオキシンの問題が注目されるようになった.一方,最終処分場用地はますます限定されるようになった.これらの点から,武蔵野市では2002年と2003年に廃プラスチック類の混合焼却試験を行い,ダイオキシン類排出濃度の測定結果に基づき,2003年10月から廃プラの可燃ごみとしての混合収集とその焼却を開始した.
    本研究では,混合焼却開始後のダイオキシン濃度の変化を継続的に測定した結果を報告するとともに,1999–2000年のバグフィルタへの改修以前の1996年から蓄積されていたそれらのデータとの比較を行った.その結果,混合焼却試験時にみられた煙突からの排出濃度が集塵器出口より高いとの現象はその後も観測されたが,煙突からの排ガス中のダイオキシン濃度は徐々に下がり,最新の2009年の測定平均濃度は0.011 ng–TEQ/m3N(酸素12%換算,3炉平均)と,廃プラスチック類を焼却する前の2000年の0.97 ng–TEQ/m3Nと比べて2桁程度小さく,集塵器出口濃度とほぼ同一の値にまで至った.過去の高濃度ダイオキシンが集塵器から煙突に至る煙道の停滞部に蓄積し,これが徐々に再放出されたが,十年を経過しようやく煙突からの排出ダイオキシン濃度が集塵器出口の濃度程度まで減少してきたものと推察された.
  • 和田 洋六, 清水 健, 黒田 康弘, 石川 英一, 荒川 徹也, 荒川 徹
    原稿種別: 報文
    専門分野: 環境
    2011 年 37 巻 6 号 p. 563-569
    発行日: 2011/11/20
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル 認証あり
    表面処理排水の再利用を目的に凝集ろ過後,減圧蒸留した水をUF膜ろ過と2段RO膜処理により脱イオン処理してUVオゾン酸化した.減圧蒸留では重金属イオンと塩分が分離できたが蒸留水にはCOD成分が200 mg dm−3残った.蒸留水はUF膜ろ過と低圧RO膜処理によりCOD 40 mg dm−3,電気伝導率70 μS cm−1まで改善されたが蒸留装置の冷却水として再利用するには不十分な水質であった.低圧RO膜を透過したCOD成分はメタノールなどのアルコール類で活性炭やイオン交換樹脂で処理しても分離できなかった.そこで,高圧RO膜の高い分離率に着目して,低圧RO膜透過水を高圧RO膜で処理する2段RO膜分離を行うとCOD 3.8 mg dm−3,電気伝導率10 μS cm−1となった.2段RO膜処理水はUVオゾン酸化を2時間行うとCOD 1.2 mg dm−3,電気伝導率8 μS cm−1の処理水となり,減圧蒸留で使用していた水道水に代わる冷却水として再利用できた.本研究で得られた結果に基づき,これまで公共水域に排出していた表面処理排水を冷却水として再利用する実用規模のリサイクルシステムを実用化した.
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