化学工学論文集
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40 巻, 5 号
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編集ノート
物性,物理化学
  • 栃木 勝己, 松田 弘幸, 栗原 清文, 児玉 大輔, 滝嶌 繁樹
    原稿種別: レビュー
    2014 年 40 巻 5 号 p. 347-365
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2014/09/20
    ジャーナル 認証あり
    イオン液体は揮発性が低く,難燃性で,幅広い温度で液体状態をとり,カチオンやアニオンの組み合わせで物質の物性が異なる特徴を有しており,特に蒸気圧が極めて低いために大気中への放散が少なく,環境に優しい溶剤として注目を浴びている.本レビューはイオン液体系の熱物性の文献調査を行い,まず文献検索データベースを作製した.次に純イオン液体とイオン液体+溶媒系の熱物性の相関,推算について記し,最後に化学工学的な逆設計,抽出蒸留,液液抽出の溶剤選定および分離膜,ヒートパイプの考察についてまとめたものである.
移動現象,流体工学
粉粒体工学
  • 吉田 幹生, 古江 奈々子, 押谷 潤, 後藤 邦彰
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 5 号 p. 376-381
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2014/09/20
    ジャーナル 認証あり
    著者らは難流動性の粒子に対しても適用可能な流動性評価装置を新規に開発した.本装置は粒子層に徐々に負荷を与えて粒子を排出する現象を利用した.試料として流動性が良いとされる粗大粒子(133, 158, 306 µm)と流動性が悪いとされる微小粒子(1.6, 4.5, 32.9 µm)を用いた.粗大粒子を新規装置で測定した排出角は,従来装置により得られた排出角とほぼ一致した.よって,粗大粒子に対して本装置は従来装置と同様に流動性評価装置として妥当であると考えられる.一方,微小粒子は従来装置では粒子の排出ができず,評価ができなかった.新規装置で4.5 µm以下の微小粒子を測定した結果,ある負荷で粒子層が急に崩壊する現象が観測された.このときの負荷を基に算出した1接触点あたりの粒子間の付着力の値は,従来のせん断試験から得られる値と一致した.このことから,本装置により難流動性粒子のせん断付着力を算出可能であることが示された.また,このような難流動性粒子に対しては新しい流動性評価値として見掛け排出角を提案した.これにより従来の測定法では評価できない難流動性粒子に対しても流動性の評価が可能になると考えられる.
分離工学
  • 大川 禎一郎, 牛田 吉彦, 島田 昌幸, 関 信夫, 渡井 直樹, 金原 彦克, 北川 重文, 大西 正俊, 豊田 素典, 田村 吉隆, ...
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 5 号 p. 382-395
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2014/09/20
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    先に循環ループを持たない単純な回分濃縮法に関するホエイのナノろ過(NF)における透過流束の理論的解析法について報告した.本研究では,当該方法を拡張し循環ループを持つ循環式回分濃縮法にも応用可能な,新しい解析方法について報告する.
    市販ホエイ粉末還元ホエイ液0.1 tを7.4 m2のスパイラルエレメントを持つNFモジュールに2.5 m3/hの流量で通液し,得られたリテンテートの一部を供給タンクに,残りを循環ループを通してNFモジュールに戻す循環式回分濃縮法にて約2.2倍まで濃縮し,透過流束の測定を行った.操作圧力は1.2 MPaならびに1.7 MPaの2条件とした.また,循環ループを持たない回分濃縮法にて循環流量1.0 m3/h,操作圧力1.2 MPaで濃縮実験を行い,計3条件で実験を実施した.
    循環ループを設置した実験におけるNFモジュール入口ホエイ液の特性値は,本解析に必須であるがサンプリングができないため,リテンテートおよび供給タンク液の各種測定値,流量,マスバランス等を基に求める新たな方法を導入した.解析に当り,輸送方程式ならびに濃度分極式を用い,また,供試ホエイ中の溶質量Aを,ナノろ過膜を透過する透過溶質量Apとナノろ過膜を透過しない非透過溶質量Arに分けられるものとした.
    その結果,いずれの実験条件においても供試ホエイ中の全溶質に占める透過溶質比率が一定の値を示し,非透過溶質の物質移動係数はNFモジュール入口流量の0.7–0.8乗に比例した.これらホエイ特性値を用い計算して得た透過流束値と実験より得た測定値とはよく一致した.これらのことから,処理するホエイの特性値を予め解析することで,運転条件を変更した際の透過流束の変化を予測できることを見出した.
    本解析方法は,工業規模で用いられることの多い循環ループを持つ循環式回分濃縮法において透過流束変化の予測に有用であると考える.
  • 入谷 英司, 片桐 誠之, 鷲津 拓也, 黄 國楨, 鄭 東文
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 5 号 p. 396-403
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2014/09/20
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    無機凝集剤のポリ塩化アルミニウム(PACl)と有機高分子凝集剤のクリフィックスを用いて,余剰活性汚泥の高度脱水を行った.脱水は,凝集スラリーの濾過,濾過ケークへの透水によるケーク内の凝集フロックの再分散化,超高圧圧搾の一連のプロセスから構成される.クリフィックスの使用は,PAClの場合に比べ濾過速度を著しく増加させたが,逆に圧搾速度は減少し,特に低圧搾圧力の場合に,その傾向は顕著であった.圧搾圧力の増加によるケーク含水率の低下は,クリフィックスよりPAClの場合の方がより顕著であった.注目すべきは,50 MPaの超高圧を作用させると,ケーク含水率は圧搾終了時に23.7 wt%まで減じたことである.Terzaghi型の一次圧密とそれに続く主に二段階のクリープ現象を考えることにより,平均圧密比や圧縮ケークの平均含水率の経時変化などの超高圧圧搾過程の動特性を良好に記述できた.その結果,クリフィックスの場合に,特に低い圧搾圧力においてクリープ効果が著しいことがわかった.また,修正圧密係数は圧搾圧力の増加とともに増大したが,ある限界圧搾圧以上では圧搾圧によらず一定値を示し,その値は,PACl,クリフィックスの場合にそれぞれ5, 10 MPa程度であった.
  • 佐々木 貴明, 内山 翔一朗, 藤原 邦夫, 須郷 高信, 梅野 太輔, 斎藤 恭一
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 5 号 p. 404-409
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2014/09/20
    ジャーナル 認証あり
    6-ナイロン繊維上にグラフトした高分子鎖のドデシルアミノ基上にリン酸ビス(2-エチルヘキシル)(HDEHP)を担持した.この繊維でのネオジムおよびジスプロシウムイオンの分配係数は,ドデカンに溶解したHDEHPのそれとほぼ一致した.疎水性グラフト鎖上に担持されたHDEHPは,有機溶媒中に溶解しているHDEHPのような挙動を示すことがわかった.HDEHP担持繊維を充填したカラムを使って,ネオジムおよびジスプロシウムイオンを,溶出クロマトグラフィーによって分離した.このとき,グラフト鎖上に担持されているHDEHPの液中への漏出は無視できることがわかった.
熱工学
反応工学
  • 吉井 泰雄, 菅野 周一, 松原 宏文, 川嵜 透, 原 賢二, 福岡 淳
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 5 号 p. 420-424
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2014/09/20
    ジャーナル 認証あり
    沸騰水型原子力発電システム用の再結合触媒を環状シロキサン(D類)被毒から保護するために,再結合触媒の上流に設置する規則メソ多孔体(Zr-SBA15およびTi-SBA15)を担持したハニカム触媒のD5加水分解性能におよぼす諸因子の影響を評価した.D5加水分解反応の除去率は,滞留時間に大きく依存し,反応温度,触媒担持量(50–150 g/L)の影響はほとんどなかった.線速度2.9 m/s,ハニカム高さ120 mmでは423–523 Kの温度領域でD5除去率は0.95という高い値を示した.本反応系でのD5除去率は1次反応式と頻度因子を線速度の関数としたアレニウスプロットから予測可能である.DSS連続試験での性能低下はTi-SBA15はZr-SBA15に比べて低く,耐久性の点からはTi-SBA15が有望である.
  • 羽鳥 祐耶, 山本 浩輝, 田之上 健一郎, 西村 龍夫
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 5 号 p. 425-431
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2014/09/20
    ジャーナル 認証あり
    水平管型反応装置中において熱化学蒸着法を用いた窒化チタン(TiN)フィルムの成膜速度を実験および数値解析を行い検証した.原料として四塩化チタン(TiCl4)を選択し,TiCl4の蒸気はリアクター中で窒素および水素と混合させた.TiCl4の初期モル分率は約0.0003とし,リアクター出口での圧力は約50700 Paとした.管型反応装置内の軸に沿った成膜速度分布は2つの領域が存在した.第1番目の領域では,成膜速度が反応器の内壁温度TIWの上昇とともに増加した.この領域における成膜過程は,TiCl4の表面反応律速と予測された.この領域において微分反応器を仮定した解析により,表面反応速度定数を算出した.その結果,TIW<1163 Kにおいて,表面反応速度定数は増加した.一方,TIW>1163 Kでは,みかけの表面反応速度定数は一定となることがわかった.第2番目領域では,成膜速度が管軸方向距離に対して指数関数的に減少することがわかった.したがって,この領域での成膜過程は未反応のTiCl4の拡散律速であると予測された.熱物質移動解析と非線型最小2乗法とを組み合わせることにより,数値解析からTiNの成膜速度分布を予測し,実験結果をおおむね再現できることがわかった.本解析によって得られた表面反応速度定数の活性化エネルギーは,201.9 kJ/molとなった.
環境
  • 森川 豊, 近藤 徹弥, 林 直宏, 伊藤 睦弘, 高井 健次
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 5 号 p. 432-437
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2014/09/20
    ジャーナル 認証あり
    ホルムアルデヒドの分解除去を目的に,ホルムアルデヒドを酸化するアルコール酸化酵素(AOX)を平均細孔径10–100 nmのシリカゲル(SG)に固定化して固定化酵素(AOX-SG)を開発した.AOXは土壌から新規に取得したホルムアルデヒド分解微生物Paecillomyces variotii IRI017株から抽出した.また,シリカゲルには,未処理のシリカゲル(SG)と3-アミノプロピルエトキシシランをカップリング処理したシリカゲル(aminoSG)を用いた.酵素固定化シリカゲル(AOX-SG, AOX-aminoSG)に,0.4–0.5 ppmのホルムアルデヒドガスを連続的に通気しホルムアルデヒド分解除去性能を調べた.酵素を固定化していないシリカゲルは,カップリング処理の有無に依らず,20 d以内で飽和吸着を示し,全くホルムアルデヒドを除去できなくなった.一方で酵素固定化シリカゲル(AOX-aminoSG)は,90 d以上飽和吸着に達することなくホルムアルデヒドを90%以上除去し続けた.これにより,開発したAOX-aminoSGはガス中のホルムアルデヒドをSGに吸着し,酵素で分解していることが示唆された.さらに室内使用を目指し,ペーパーハニカムコアにシリカゲル(AOX-SG, AOX-aminoSG)を挿入し,不織布でサンドしたフィルタを試作した.1 m3のチャンバー内で3 h空気清浄機の試験を行ったところ,AOX-aminoSGの試作フィルタは1–3 L/minの風量で,市販の活性炭フィルタと同程度のホルムアルデヒド除去率を示した.
  • 古水 雄志, 上岡 利子, 後藤 浩一, 上岡 龍一
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 5 号 p. 438-442
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2014/09/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,バイオマスとして廃棄処分されている焼酎粕の有効利用の一環として,麦焼酎粕から得られた抽出物(麦焼酎粕パウダー)の免疫賦活効果についてin vitroで検討した.麦焼酎粕パウダーは,ヒトナチュラルキラー(NK)株化KHYG-1細胞に対して,活性型のNKレセプター(NKG2D)の発現を誘導することが明確になった.さらに,麦焼酎粕パウダーは,NK株化細胞に対して,白血病細胞および肝臓がん細胞に対するNK活性を有意に高めた.一方,麦焼酎粕パウダーを白血病細胞に加えて72 h培養したところ,NKG2Dリガンドの発現の誘導が認められ,NK活性の感受性を有意に増大させることを示した.これらの結果から,麦焼酎粕パウダーによるNK活性増強効果およびNK感受性の増強効果がin vitroで明らかになった.
  • 佐々木 猛, 飯塚 淳, 本間 雅人, 吉田 浩之, 早川 康之, 柳沢 幸雄, 山崎 章弘
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 5 号 p. 443-448
    発行日: 2014/09/20
    公開日: 2014/09/20
    ジャーナル 認証あり
    余剰の生コンクリートとして発生する産業廃棄物であるコンクリートスラッジを原料として製造した脱リン材(PAdeCS®)を実験室スケールのアクリル製カラムに充填した装置にリン含有模擬排水を通じることによって流通系におけるリンの回収性能を評価した.模擬下水は,リン濃度100 mg-P/Lとし,初期pHを7とした.PAdeCS充填層への通水により,リン除去が行われ,流出液中のリン濃度は0.1 mg-P/L程度まで低下した.一定時間後に破過が見られ,破過までに処理可能な模擬排水の量は,PAdeCS充填層の層高が高いほど大きくなった.PAdeCSによる脱リンは溶出したカルシウムイオン,水酸化物イオンとリン酸イオンの反応によるヒドロキシアパタイト(HAP)の生成によるものと考えられた.充填層の場合,HAP生成はPAdeCS層への析出とバルク水中での結晶生成の二種類のメカニズムで起こることがわかった.これらのメカニズムによるリンの回収割合はPAdeCS層の層高,流量によって変化することがわかった.
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