臨床神経学
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49 巻, 4 号
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総説
  • 安田 斎
    2009 年 49 巻 4 号 p. 149-157
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/13
    ジャーナル フリー
    糖尿病性ニューロパチーはもっとも頻度の高いニューロパチーである.しかしながら,その病態は複雑であり病型分類や治療法は確立していない.糖尿病多発ニューロパチーが主要病型であるが,多くの患者は他病型,他疾患に起因する疾患を併発することが多い.治療に当たっては正確な病態把握をおこなう必要がある.発症予防には,血糖管理以外に禁煙,禁酒,血圧管理が有効である.治療に際して,至適レベルのHbA1c 6.5%以下に管理することは難しい.唯一の治療薬,アルドース還元酵素阻害薬を使用するに際しては評価に神経機能検査を実施するべきである.今後,成因仮説に立脚した薬物開発を推進すると共に神経組織への効率の良い標的化を目指し,より強力な治療法の開発が望まれる.
  • 加藤 裕司, 武田 英孝, 古屋 大典, 出口 一郎, 棚橋 紀夫
    2009 年 49 巻 4 号 p. 158-166
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/13
    ジャーナル 認証あり
    たこつぼ型心筋症は,急性心筋梗塞と類似した臨床症状,心電図所見を呈し,心尖部の無収縮と心基部の過収縮にともない,左室造影所見でたこつぼ状の形態をとることを特徴とする.これまで,たこつぼ型心筋症と急性期脳梗塞の合併例は,国内外で30例の報告がある.これらの報告例は,(1)脳梗塞発症により中枢自律神経線維網が障害され,カテコラミンの産生が亢進し,たこつぼ型心筋症にいたる病態と(2)たこつぼ型心筋症にともなう壁運動異常により左室内血栓が形成され,心原性脳塞栓をきたす病態に加え,(3)両者の因果関係の判別困難な病態の3つに大別される.いずれも高齢女性に多い点は共通する.(1)の病態では,中大脳動脈領域と脳底動脈領域の梗塞が多く,たこつぼ型心筋症は無症候性が多かった.(2)の病態では,胸部症状で発症する症例が多かったが,塞栓症を契機にたこつぼ型心筋症の診断にいたる症例もみられた.たこつぼ型心筋症は,急性心筋梗塞との鑑別を要し,脳卒中の原因にも結果にも成りえることから,脳卒中診療の際には留意しなければならない疾患である.
症例報告
  • 中尾 紘一, 矢澤 省吾, 林 由起子, 西野 一三, 塩見 一剛, 中里 雅光
    2009 年 49 巻 4 号 p. 167-171
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/13
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の男性である.職業は林業.生来健康でとくに問題なし.59歳頃より労作後に両上肢のこむら返り,脱力・しびれ感と筋の把握痛をくりかえし,CKの上昇からその度に横紋筋融解症と診断され治療されていた.しかし,下肢筋MRIでの両側の長内転筋,大腿二頭筋,半腱様筋の異常信号から肢帯型筋ジストロフィーをうたがって筋生検をおこない,α-sarcoglycanの欠損からsarcoglycanopathyと診断にいたった.本症の成人例の報告はまれである.また,本例では他に原因の説明ができない末梢神経障害をみとめた.高齢者でも労作後にこむら返りをくりかえす症例では本症の可能性も念頭におき,確定診断には筋生検をおこなう必要があると考えられた.
  • 今村 栄次, 山下 拓史, 福原 敏行, 長嶋 和郎, 郡山 達男, 時信 弘
    2009 年 49 巻 4 号 p. 172-178
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/13
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性である.発語の減少,意欲低下で発症し,意識障害の進行と平行して両側耳介腫脹が出現した.発熱,項部硬直をみとめ,髄液細胞数,蛋白,IgG indexの上昇,頭部MRIで進行性の大脳白質病変と脳萎縮をみとめた.耳介軟骨生検の病理所見から再発性多発軟骨炎(RP)と診断した.意識障害と炎症所見は,ステロイド治療にて一時的に改善したが,ふたたび増悪し,多剤による免疫抑制療法をおこなったが改善しなかった.剖検脳では,軟膜および脳実質の血管周囲にびまん性のリンパ球浸潤と炎症性髄鞘破壊をみとめた.RPに関連した髄膜脳炎の剖検例はきわめてまれであるが,病変の主座は炎症性血管周囲炎であることが示唆された.
  • 松本 有史, 志賀 裕正, 清水 洋, 木村 格, 久永 欣哉
    2009 年 49 巻 4 号 p. 179-185
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/13
    ジャーナル フリー
    39歳男性例を報告した.視覚異常を自覚し,1カ月後に全身痙攣発作が出現して当科に入院した.頭部MRIにて右前頭葉内側,中脳,視床,大脳皮質に異常信号が多発したが,痙攣発作のコントロールとともに右前頭葉内側を除いて異常所見はおおむね消失した.その後,失調性歩行,四肢しびれが顕著となり,大球性貧血,血清ビタミンB12値低下,抗胃壁細胞抗体陽性,抗内因子抗体陽性が確認された.MRIにて脊髄後索,延髄,小脳,視床間橋,前頭葉に異常信号の出現をみとめ,ビタミンB12欠乏性脳脊髄症と診断した.ビタミンB12の投与により症状は軽減し,新たなMRI異常所見は消失した.てんかんの原因検索の際には当疾患も念頭におく必要がある.
  • 藤田 祐之, 池田 昭夫, 門野 賢太郎, 川又 純, 冨本 秀和, 福山 秀直, 高橋 良輔
    2009 年 49 巻 4 号 p. 186-190
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/13
    ジャーナル 認証あり
    Leucine-rich glioma-inactivated 1(LGI1)変異をともなう常染色体優性外側側頭葉てんかん(ADLTE)の1例を報告した.症例は27歳女性で,初回発作は睡眠中の全身けいれんであった.以後の発作は耳鳴りなどの聴覚症状が特徴的であった.またパニック発作などの精神症状,視覚症状,自律神経症状をともなった.母系家系の常染色体優性遺伝と考えられる家族歴がみられた.発作間欠期の脳波ではてんかん性放電をみとめず,頭部MRIで左上側頭回の低形成,FDG-PETでは左側頭葉外側での糖代謝低下をみとめた.LGI1遺伝子解析によってミスセンス変異(1642C→T;Ser473Leu)が確認された.本邦ではLGI1変異をみとめたADLTEの報告は今だ希有である.
  • 古田 夏海, 藤田 行雄, 関根 彰子, 池田 将樹, 岡本 幸市
    2009 年 49 巻 4 号 p. 191-193
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/13
    ジャーナル フリー
    症例は右特発性三叉神経痛の21歳の男性である.カルバマゼピン(CBZ)の内服開始後にすみやかに痛みは軽減したが,急激に血圧が上昇し,意識障害を発症した.頭部MRIで両側の後頭葉,頭頂葉および前頭葉に血管原性浮腫をみとめ,高血圧にともなうreversible posterior leukoencephalopathy syndrome(RPLS)と診断した.降圧療法およびステロイド投与で意識障害は改善したが,降圧剤への反応は不十分であり,CBZ内服中止にて血圧は正常化した.CBZ単剤で高血圧をきたした報告はまれであり,これまでにRPLSをおこした報告例はないが,血圧上昇の原因薬剤としてCBZも考慮する必要がある.
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