臨床神経学
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51 巻, 6 号
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総説
  • 小野寺 理
    2011 年 51 巻 6 号 p. 399-405
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/24
    ジャーナル フリー
    近年,脳小血管病という言葉が注目を集めている.脳小血管病は,脳梗塞の再発,認知機能の悪化,歩行障害などと関連し,その病態の解明が急務である.脳小血管は,構造,構成する細胞や分子がことなるいくつかの血管を指す.そのうち,毛細血管は周皮細胞という細胞を持ち,血液脳関門,血管壁による老廃物の排出という機構を担う.今まで判明した多くの遺伝性脳小血管病では,平滑筋細胞の脱落,中膜の変性をみとめる.これは,間質液の排出障害や,周皮細胞の障害による毛細血管の機能不全をひきおこす可能性もある.今後,小血管の機能解剖がより詳細に解明されるにつれて,本症が解明されることが期待される.
原著
  • 尾原 知行, 山本 康正, 永金 義成, 田中 瑛次郎, 森井 芙貴子, 小泉 崇
    2011 年 51 巻 6 号 p. 406-411
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/24
    ジャーナル フリー
    TIA連続105例をTOAST分類に準じて分類した.ラクナTIAの定義は,塞栓源性心疾患や主幹動脈狭窄をみとめない例で,画像上穿通枝梗塞をみとめた例または症候として皮質症状がなく,一側の顔面・上肢・下肢のうち2カ所以上の運動あるいは感覚障害を呈した例とした.分類の結果ラクナTIAは31%ともっとも多く,心原性TIA 27%,アテローム血栓性TIA 19%と続いた.ラクナTIAは入院時血圧が高値で,TIAをくりかえす特徴があった.105例中6例で入院中に脳梗塞を発症し,3例がラクナTIAの例であった.ラクナTIAは本邦では少なくない病態で,脳梗塞へ進展する例も存在することから,その早期診断は重要と考えられた.
症例報告
  • 稲葉 明子, 鳥居 孝子, 篠田 紘司, 山崎 亮, 大八木 保政, 吉良 潤一
    2011 年 51 巻 6 号 p. 412-416
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/24
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性である.37歳で胃癌のため胃全摘を施行.60歳より下肢異常感覚が出現,61歳より歩行時のふらつきを自覚.神経学的に左上下肢の腱反射亢進,両下肢の失調,両下肢の異常感覚,Th12以下の触覚低下,両下肢の全感覚低下をみとめた.ロンベルグ徴候は陰性.電気生理学的検査では両側錐体路・後索障害,両下肢末梢神経障害,潜在的視神経障害をみとめた.血清銅10μg/dl と著明な低下をみとめ,銅欠乏による末梢神経障害,脊髄症,視神経症と診断し,銅補充療法を開始後,症状は改善した.本例は胃全摘術後23年の経過でこれらの神経障害を発症しており,胃切除後長期経過における神経障害では銅欠乏も考慮すべきである.
  • 西原 秀昭, 小笠原 淳一, 古賀 道明, 尾本 雅俊, 川井 元晴, 神田 隆
    2011 年 51 巻 6 号 p. 417-421
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/24
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性である.皮膚病変,M蛋白血症,高VEGF血症,脱髄・軸索障害混在のニューロパチーをみとめPOEMS症候群と診断した.膵腫大があり,病理,画像,血清学所見から自己免疫性膵炎の合併と判断した.自己末梢血幹細胞移植をともなう大量化学療法をおこない,POEMS症候群の症候・検査異常は改善したが,膵腫大に変化はなかった.POEMS症候群はモノクローナルな形質細胞増殖が特徴である一方,自己免疫性膵炎はポリクローナルな増殖をきたす疾患と考えられており,本例でも両者が存在することを血清の蛋白電気泳動,生検膵の免疫染色をもちいて証明した.POEMS症候群で膵腫大をきたした報告例はなく,本症例は両者の病因を考える上で貴重である.
短報
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