臨床神経学
Online ISSN : 1882-0654
Print ISSN : 0009-918X
ISSN-L : 0009-918X
54 巻, 9 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
会告
症例報告
  • 前川 理沙, 澁谷 英樹, 日出山 拓人, 椎尾 康
    2014 年 54 巻 9 号 p. 703-708
    発行日: 2014/09/01
    公開日: 2014/10/03
    ジャーナル フリー
    症例は死亡時58歳の男性である.40歳時に複視が出現し,43歳時に浸潤性胸腺腫・重症筋無力症と診断された.ステロイド治療を開始し拡大胸腺摘出術と放射線治療を施行したが,53歳時に胸腺腫が再発した.55歳時に喘鳴と慢性副鼻腔炎が出現し,びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis; DPB)と診断した.56歳時に脱毛症,57歳時に味覚障害と胆管炎,筋炎を発症した.ステロイド増量により脱毛症,味覚障害,胆管炎,筋炎は改善したが,DPBにともなう呼吸不全により58歳で死亡した.本例は,胸腺腫関連重症筋無力症に多彩な自己免疫性の合併症を呈し,抗Kv1.4抗体が陽性であった.またHLA-B54陽性でDPBをともなった点が特異であった.
  • 奥宮 太郎, 景山 卓, 田中 寛大, 神辺 大輔, 新出 明代, 末長 敏彦
    2014 年 54 巻 9 号 p. 709-714
    発行日: 2014/09/01
    公開日: 2014/10/03
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性である.進行する認知機能障害と手指の震えを主訴に来院した.診察にて前行性健忘を主体とする認知機能障害と両手指に姿勢時振戦をみとめた.頭部MRIにて大脳白質から側脳室に集束する扇状の線状造影効果をみとめた.脳生検にて血管周囲に肉芽腫をともなわないリンパ球浸潤をみとめ,lymphocytic primary angiitis of the central nervous system(PACNS)と診断した.副腎皮質ステロイド投与により症状と画像所見は改善した.亜急性の認知機能障害を呈する患者に本MRI所見をみたばあいは,鑑別診断にlymphocytic PACNSをふくむべきであると思われた.
  • 山本 大介, 内山 剛, 武内 智康, 佐藤 慶史郎, 清水 貴子, 田中 惠子, 大橋 寿彦
    2014 年 54 巻 9 号 p. 715-720
    発行日: 2014/09/01
    公開日: 2014/10/03
    ジャーナル フリー
    症例は35歳男性である.発熱をともなう上気道炎の罹患1週間後に間代性痙攣で発症した.入院後複雑部分発作をくりかえし,複数の抗てんかん薬投与に抵抗性であった.ステロイドパルス療法,ガンマグロブリン静注療法にも反応なく第8病日から痙攣重積にいたった.経静脈麻酔による痙攣重積治療とともに血漿交換療法を施行し,発作は漸く抑制された.本症例の急性期の発症様式はNORSE(new-onset refractory status epilepticus)に合致すると考えられた.抗NMDA受容体抗体以外の抗神経抗体は未評価で診断は明らかでなかったが,発症早期からの一連の免疫療法が有効であった可能性が考えられた.
  • 関谷 博顕, 川本 未知, 十河 正弥, 吉村 元, 今井 幸弘, 幸原 伸夫
    2014 年 54 巻 9 号 p. 721-725
    発行日: 2014/09/01
    公開日: 2014/10/03
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性である.HIV(human immunodeficiency virus)に対するcART(combination antiretroviral therapy)中に認知機能低下が出現し,頭部MRIで両側大脳白質や脳幹部に病変をみとめた.髄液中HIV-RNAが血中HIV-RNAよりも高値を示し,薬剤耐性検査で抗HIV薬への耐性が判明.薬剤耐性と中枢神経移行性を考慮して抗HIV薬を変更し,認知機能の改善と髄液中HIV-RNAの陰性化がえられた.抗HIV薬の選択にあたっては,中枢神経移行性を考慮することが重要である.
  • 四條 友望, 菅野 重範, 澁谷 聡, 及川 祟紀, 大沼 歩, 望月 廣
    2014 年 54 巻 9 号 p. 726-731
    発行日: 2014/09/01
    公開日: 2014/10/03
    ジャーナル フリー
    症例は31歳の男性である.急に話し言葉が聞き取れなくなった.言語所見では話し言葉の聞き取りのみが困難であり,純粋語聾の臨床像を呈していた.頭部MRIでは左上側頭回後方から左縁上回にかけての皮質と皮質下に異常信号をみとめ,脳血流シンチグラフィーでは同部位に限局した血流増加をみとめた.脳波では左側頭部全体に波及する多棘徐波複合をみとめた.ミタゾラムの投与直後に脳波上てんかん波が消失し,話し言葉が聞き取れるようになり,てんかん部分発作によって純粋語聾を呈したものと考えられた.本例は左半球の機能低下のみで純粋語聾が生じえる可能性を支持するもので,言語音認知における左上側頭回後方領域と左縁上回の重要性を示唆した.
  • 畠山 公大, 金澤 雅人, 石原 彩子, 田邊 嘉也, 下畑 享良, 西澤 正豊
    2014 年 54 巻 9 号 p. 732-737
    発行日: 2014/09/01
    公開日: 2014/10/03
    ジャーナル フリー
    頭部MRIで特徴的な液面形成(fluid-fluid level)をみとめた化膿性脳室炎の2症例を報告する.両症例とも,側脳室後角に液面形成をともなう,拡散強調像画像高信号,T2強調画像低信号の貯留性病変をみとめた.画像所見より化膿性脳室炎と診断し,高用量メロペネムによる治療を開始した.治療開始後,画像上の異常病変は消失し,臨床症状は完全に寛解した.側脳室における液面形成をともなう貯留性病変は,他疾患では報告がなく化膿性脳室炎に特徴的といえる.化膿性脳室炎は,臨床症状が非特異的であり,診断の遅れから予後が不良になることがあるため,その特徴的な画像所見を認識し,かつ早期から適切な広域スペクトラムの抗菌薬を高用量選択することが予後改善に重要である.
  • 濵内 朗子, 阿部 剛典, 仁平 敦子, 溝渕 雅広, 佐光 一也, 伊東 民雄
    2014 年 54 巻 9 号 p. 738-742
    発行日: 2014/09/01
    公開日: 2014/10/03
    ジャーナル フリー
    症例は23歳の女性である.当初はMRI所見から脳腫瘍をうたがったが,血清,髄液とも梅毒反応陽性を示し,ベンジルペニシリンカリウム(PCG)の投与にて寛解したことから中枢神経ゴム腫と確定診断した1例を経験した.Treponema pallidumは感染早期から中枢浸潤することが知られており,本症例も感染から約6ヵ月で病変形成がみられた.しかし,本症例のように感染早期から症候を呈する頻度は低く,その中でも多くは髄膜炎であり,中枢神経ゴム腫はまれである.梅毒血清反応陽性患者に頭蓋内病変をみとめた際には中枢神経ゴム腫も鑑別に挙げ,精査する必要がある.
短報
地方会抄録
編集後記
feedback
Top