日本作物学会紀事
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58 巻, 4 号
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  • 沢畑 秀
    1989 年 58 巻 4 号 p. 495-501
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    異なる生育相を示す5品種を供試し, 窒素及びカリの供給量の差異に対する生育反応から塊根肥大特性の品種間差異を明らかにしようとした。培地は野外の群落条件下で栽培できる礫耕装置を用いた。(1) 窒素供給量を増すに従って地上部重は増加したが, その場合に地上部重が多い品種ほど葉身窒素含有率は低い傾向が認められた。(2) 窒素供給過剰によって生ずる減収がカリ多用によって軽減される効果に品種間差異が認められ, 塊根肥大能力の勝るコガネセンガンは高く, 塊根肥大能力の劣る他の品種は低い傾向が認められた。(3) 塊根乾物重と葉身窒素含有率との間に密接な関係のあることが認められ, 両者の関係曲線から各品種ごとの葉身窒素含有率の適値を推定することができた。この値は同様にして推定した地上部生体重の適値の品種間差異と比べると変動の幅が狭かった。また, 生育時期間の変動幅も狭かったことなどを勘案して, この適値は多収をえるための生育経過を示す一指標として利用できると推察した。(4) 窒素供給過剰によって減収するパターンの品種間差異を検討し, 農林1号のように繁茂量が過剰になって減収する型と, 九州65号のように葉身窒素含有率が過剰になって減収する型とに分類できた。また, コガネセンガンのように繁茂量が多くなっても減収しにくい品種があることを指摘した。
  • 福岡 忠彦, 堀野 俊郎
    1989 年 58 巻 4 号 p. 502-506
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    製パンに用いられる硬質小麦と, 麺用や菓子用として使われる軟質小麦の計21品種・銘柄について, 原麦とその60%粉に含まれるN, P, K, Mg, Ca, Zn, Mnを分析定量し, それらの含量およびそれら相互間のバランスと小麦の用途との関係を調べた。原麦, 60%粉ともN, Mg, Ca, Mn含量は硬質小麦の方が軟質小麦よりも有意に高かった。またK含量は原麦で軟質小麦の方が有意に高く, Zn含量は60%粉で硬質小麦の方が有意に高かった。1価アルカリ性ミネラルであるKと2価アルカリ性ミネラルであるMgとの化学当量比 (Mg/K) をみると, 原麦では硬質小麦が1.21±0.10, 軟質小麦が0.87±0.09, 60%粉では硬質小麦が0.87±0.21, 軟質小麦が0.43±0.06であり, いずれも硬質小麦の方が有意に高く, 小麦粉生地の粘弾性を反映していると考えられた。またMg/K値の原麦と60%粉間の相関も有意に高く (r=0.895), 原麦でもって小麦粉の特性を評価できる可能性が推察された。
  • 浜地 勇次, 古庄 雅彦, 吉田 智彦
    1989 年 58 巻 4 号 p. 507-512
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    近年, 暖地のビール大麦の品質低下の要因となっている被害粒の一つである側面裂皮粒 (収穫以前に内穎と外穎の包合部に沿って穎果が露出した粒) について, 1984~1987年 (播種年度) の4年間における発生実態を検討した。また, 側面裂皮粒の発生原因を解明する目的で, 穎の発育過程, 品種間差異およびいくつかの気象条件が穎の発育に及ぼす影響について検討した。側面裂皮粒の発生程度に品種間差異と年次間差異があった。供試したビール大麦8品種のうち, ニシノゴールド, にらさき二条, はるな二条, 吉系15および吉系16の5品種は側面裂皮粒の発生が多かった。これらの5品種はいずれも内外穎の長さ, 幅および重さが側面裂皮粒の発生が少なかった九州二条9号, あまぎ二条およびきぬゆたかの3品種より小さかった。内外穎の長さと幅は, 止葉展開期から出穂期にかけて急激に増加し, その後1週間頃までにほぼ決まった。いくつかの不良環境下での穎の発育を検討したところ, 分げつ期から出穂期までの過湿処理と, 出穂期2週間前から出穂期までのしゃ光処理は穎の発育を抑制した。また, 節間伸長期から出穂期までの過湿と出穂期3週間前から出穂期までのしゃ光および出穂期4週間前から1週間前までの低温を組み合わせた処理で側面裂皮粒の発生が多かった。以上の結果から, 側面裂皮粒は内外穎が小さい品種に多く, 内外穎の長さと幅が急激に増加する止葉展開期から出穂期にかけて, 湿害, 日照不足および低温の影響を受けて穎の発育が抑制された場合に発生が多いと考えられる。
  • 鳥越 洋一
    1989 年 58 巻 4 号 p. 513-519
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本研究は生態学的視点から耕地生産系のエネルギーの流れと利用可能資源の賦存量を茨城県八郷町を例として推定したものである。耕地生産系のモデルは各地帯区分を一つの単位とした。系の主な構成要素は一次生産系, 二次生産系, 土壌系とした。一次生産系におけるエネルギーの流れとしては総生産量, 農産物量, 副産物量, 土壌還元量, 二次生産に利用される量と人為的エネルギー投入量に着目した。また二次生産系におけるエネルギーの流れは総生産量, 畜産物量, 副産物量, 人為的なエネルギー投入量としては飼養に必要な補助的なエネルギー量と系外から搬入した飼料の量に着目して検討した。系外に搬出されるかまたは土壌に還元される副産物量は評価が困難なため検討項目から除外した。一次生産系では一年間に総生産量中に固定された太陽エネルギーは5.79×102 TJ, そのうち農産物量は1.93×102 TJ, 副産物量は2.21×102 TJ, 二次生産に利用された量は2.83×10 TJ, 土壌還元量は1.37×102 TJ, 人為的エネルギー投入量は2.44×102 TJと評価された。農作物の光合成有効放射エネルギーの利用効率は0.52%, 投入エネルギーに対する農産物エネルギー比 (産出/投入比) は0.79と推定された。二次生産系では一年間の総生産量は5.18×102 TJ, そのうち畜産物量は1.34×102 TJ, 副産物量は3.84×102 TJ, 人為的エネルギー投入量のうち, 飼養に要するものは3.49×l0 TJ, 系外から搬入された飼料のエネルギー量は1.03×103 TJと評価された。産出/投入比は0.12と推定された。
  • 後藤 雄佐, 星川 清親
    1989 年 58 巻 4 号 p. 520-529
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    第1から3報で得られた知見および解析法を用いて, 水稲の品種特性としての茎数の多少について検討した。本報では, 特に少げつ性品種を用いて, 茎数が相対的に少なくなる要因を解析した。供試品種は, 偏穂重型とされるアキヒカリ (AK) と, 一般的な栽培条件下では茎数が少ないと考えられる合川1号 (A1), Khao Keo (KK), Dawn (DW), North Rose (NR), Palmyra (PL) との6品種で, 1/2000 aワグネルポットに1個体植えとした。今回, 検討対象としたのは, 茎数の指数的増加期である。これは, 穂数が決定するまでの茎数の推移を, 増加期, 停滞期, 減少期に分けると, 増加期の前, 中期に当たる。そこで, この場合の少げつ性とは, 茎数増加速度が遅いこととし, 茎数の増加速度が相対的に遅くなる要因として次の3つを想定し, 解析の結果それらを確認できた。すなわち, (1) 主茎葉齢の増加速度が遅い場合 (AKと比較してA1で顕著であった), (2) 分げつ位ごとの出現率が低い場含 (AKと比較してDWで認められた), (3) 実測値の茎数増加曲線と同周期生長曲線上の差が小さい場合, 特に (3) については, 差の生じる主な原因として, 相対葉齢差の存在が考えられた。それが直接確認できる組合せ, すなわち品種間で主茎葉齢の増加速度と分げつ位ごとの出現率とに差がなく, 相対葉齢差だけが異なる組合せはなかった。しかし, 間接的にはPLがKK, NRに比べて, 分げつ位ごとの出現率が低いのに, 相対葉齢差が大きく, 3品種でほぼ同様の茎数増加曲線となったことが挙げられた。
  • 中元 朋実, 坂本 晴一, 下田 和雄, 松崎 昭夫
    1989 年 58 巻 4 号 p. 530-534
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アワとキビ, およびトウジンビエとトウモロコシを圃場に栽培し, 出穂期の根系を比較観察した。うねに垂直な土壌断面から試料を採取し, パーソナルコンピュータによる画像解析によって直径別の根長を求めた。キビはアワに, トウモロコシはトウジンビエに比べ, それぞれ土壌の深層にいたるまで根長密度が高く, またうねとうね間での根長密度の差が小さかった。すなわちキビとトウモロコシの根系は土壌中に比較的均一に発達していた。単位土地面積当りの根長は種によって5.5~11.1 km/m2の変異を示したが, 1茎当りの根長は, 分げつをまったく発生しないトウモロコシを除けば, アワ, キビ, トウジンビエの3者は類似した値 (90~111 m) を示し, 根長と茎数との間の密接な関係が示唆された。キビはアワより, トウモロコシはトウジンビエより, 直径が0.17 mm以上の根長の割合が高く, 根系が相対的に太い根で構成されていた。
  • 山本 由徳
    1989 年 58 巻 4 号 p. 535-540
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲苗 (成苗) の根をできるだけ切らないで苗をとり, そのまま移植する区 (無剪根区) と全ての根を基部より剪除して移植する区 (剪根区) を設けて, 活着期を中心に移植後2週間にわたっての器官別の体内成分含有量と生育に及ぼす苗の剪根の有無の影響について検討した。1) 移植に伴い剪根区では葉身が著しく萎凋し, さらに一部が枯死して, 無剪根区にくらべて植傷みが大きくなった。剪根区の地上部各器官の乾物重は, 無剪根区にくらべて移植後1日目で既に10~15%低下し, 葉身では14日目にかけて, また葉鞘と茎では8日目にかけて35~40%低下した。しかし, 移植直後の発根数には無剪根区との間に差異はみられず, 活着への影響は小さいものと考えられた。そして, 根の乾物重は移植後14日目までに無剪根区の37%まで回復した。2) 移植後の体内成分含有量に及ぼす苗の根の有無の影響は, 移植後約3日間に最も顕著にみられ, 無剪根区では地上部各器官の炭水化物含有量が増大した。他方, 剪根区では移植直後に地上部各器官の蛋白および澱粉の分解が急速に進み, 非蛋白態窒素および全糖含有量が増加した。そして, この期間における無剪根区の炭水化物の蓄積は器官別には茎>葉鞘>葉身の順に, また剪根区の非蛋白態窒素および全糖含有量の増加は茎で著しかった。剪根区の可溶性物質の増加が全ての器官の原基形成部位である茎において最も顕著に認められたことは, 移植後の発根数には無剪根区との間に差異が認められなかったことと関連して注目された。
  • 江幡 守衛, 尾関 毅, 井上 和雄, 石川 雅士, 田代 亨
    1989 年 58 巻 4 号 p. 541-548
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    米粒の発育に対する短波長光の影響を検討するため, 開花直後に花穎の上部1/3を剪除し, 透光性の異なる6種類のビニールフイルム製袋で穂を被覆した。切穎米粒の発育は自然光の曝光を受けた無被覆区で最も著しく阻害された。光によるこの阻害は光質によって異なり, 紫外線が米粒の発育に有害であることがわかった。とくに短波長紫外線の曝光は阻害効果が著しかった。しかし長波長紫外線では阻害程度は軽減し, 可視光の阻害は軽微であった。暗黒フイルム被覆では反って無処理を上廻る発育量を示した。紫外線の曝光により粒形は尖頭型の奇形米となり粒色も褐色化した。また粒の奇形化や着色の程度も短波長紫外線の曝光ほど強かった。切穎強度を1/3, 1/2, 3/4の3段階としたとき, 無被覆の自然曝光下では切穎強度の高いほど発育阻害が著しくなる傾向であった。しかし暗黒条件下では切穎強度の影響は比較的軽微であった。イネの花穎は短波長光ほど強く遮断する性質をもち, この遮光性は組織の充実に伴って強まった。開花期以後の花穎は紫外線を殆ど完全に遮断した。以上の結果, イネの花穎は米粒の発育に有害な短波長光とくに短波長紫外線を遮断して発育中の米粒を防護する役割を果していることが明らかにされた。また米粒は花穎の枠によってその発育量が規制されるが, 花穎の容量を越えて発育しうる潜在的能力をもっていることも立証された。
  • 加藤 泰正, 武田 正男
    1989 年 58 巻 4 号 p. 549-554
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    根粒着生の有無について性質の異なる3組の同質遺伝子系統大豆 (農林2号-東山89号, T 202-T 201, フジミジロ-東山90号, いずれも前者が根粒着生系) を硝酸態重窒素 (15N) を含む培養液で水耕栽培し, 植物体内の15N蓄積量より硝酸態窒素吸収量を求めて根粒着生系, 非着生系大豆間で比較を行なった。いずれの系統も開花期までは着生系と非着生系のNO3-N吸収量に差は認められなかったが, 開花期以降成熟期にいたる間の吸収量は例外なく着生系が非着生系を下まわり, T 202-T 201を除く他の2系統では有意差が認められた。その結果この2系統については着生系と非着生系の全窒素量の差から求めた固定窒素量の推定値 (Nバランス法による推定値) と, 15N同位体稀釈法から求めた推定値との間に著しい差異を生じ, 前者の推定値は後者の32~54%にすぎなかった。以上の結果から根粒着生系大豆のNO3-N吸収量は非着生系大豆より低い傾向が認められ, したがって両者の吸収量を等しいと仮定して固定窒素量を計算するNバランス法は再検討を要するものと思われる。
  • 江幡 守衛, 石川 雅士
    1989 年 58 巻 4 号 p. 555-561
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    開放型実験風洞を用い, 15 m/sまで7段階の風速の風を出穂後1, 7, 14, 21, 29, 36日のイネに1時間処理した。また同時に散水を伴う風雨処理も行い稔実と米質への影響を調査した。不稔および発育停止粒の発生は花期とくに出穂直後の風で多発した。降雨を伴う風ではこの障害は極く軽微であった。風による主な障害米は茶米と乳白米であり, 障害は12 m/sまで風速とともに増大した。茶米は出穂直後ほど発生が多いが, 乳白米は出穂後14~21日頃の風で増加した。これらの障害は出穂後29日以後次第に減少した。降雨を伴う風では障害米の発生は1/2程度に軽減され, 粒重の減少も軽微であった。もみの蒸散速度は出穂直後に最も高く, 7日目頃やや減少したのち登熟盛期には再び高まり以後成熟期まで減少を続けた。また蒸散速度は風速の増大に伴い初期ほど顕著に高まった。もみの蒸散速度の高い時期の風は障害を増加させることから, 風害は水分要求度の高い時期の穂の一時的な水分ストレスが引き金となって起こるものと考えられた。降雨はもみ擦れのような機械的損傷や穂の脱水を防止することにより, 障害を緩和する働きをすることが示唆された。
  • 田中 重行, 伊藤 浩司, 宮城 悦生, 稲永 忍
    1989 年 58 巻 4 号 p. 562-568
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ネピアグラス (Pennisetum purpureum Schumach) を那覇, 宮崎及び東京にて, 2段階の刈り取り間隔のもとで栽培し, 葉身及び稈の乾物収量とin vitro-可消化乾物収量との関係を調べた。葉身, 稈ともに, 消化率とリグニン含有率との間には1次回帰で示される有意の負の相関があり, リグニン含有率と収量との関係は双曲線回帰の関係であった。従って, 収量と消化率との間の関係は双曲線回帰の関係であらわされた。しかし, 両回帰式とも曲率は小さく, 直線回帰としても有意であった。消化率は葉身に比べて稈の方が低く, 稈では下部ほど消化率が低かった。稈の各部位とも, 高温であること, 刈り取り間隔が長いこと, 出穂期に近いことにより消化率は低下し, その低下は稈の下位ほど強い傾向があった。しかしこれらの変化は比較的小さいので茎葉の全乾物収量に対する可消化全乾物収量の回帰は正の直線回帰であり, 両収量のこの関係には, 地域, 季節及び刈り取り間隔による変動はあまりなかった。全乾物収量が10 t/haから30 t/haに増大するに伴い乾物消化率は74.3%から60.0%に低下した。平均的な乾物消化率は約65%であり, 暖地型牧草の中では中庸の消化率と推察された。
  • 江幡 守衛, 山田 勉, 石川 雅士
    1989 年 58 巻 4 号 p. 569-575
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    米飯のテクスチャーの品種間差異を明らかにするため, 日本型水稲, 陸稲, インド型水稲およびこれらのもち品種を含めた97品種を用いて検討した。うるち米飯の硬さ的要素を代表するそしゃく性はインド型長粒種>同中粒種>日印交雑インド型短稈種>日本型水稲>日本型陸稲の順であり, 粘着性は日本型水稲>日本型陸稲>日印交雑インド型短稈種>インド型中粒種>同長粒種の順であった。もち米はうるち米より粘着性が著しく高く, そしゃく性が劣り, 日本型とインド型, 水稲と陸稲の差はうるち米より僅少である。うるち米の食味指数は日本型水稲>日本型陸稲>日印交雑種>中粒インド稲>長粒インド稲の順であった。また日本型水稲の中では食味指数の高いものは中晩生種に比べて明らかに早生種に多い傾向であった。一般に米飯のテクスチャーのうち硬さ的要素を示すそしゃく性と粘り的要素を示す粘着性との間には負の相関関係がみられた。テクスチャーは白米の粒形との間にも相関関係が見られ, 粒形が細長いものほどそしゃく性が大きく, 粘着性や食味指数が劣る傾向であった。また粒重との関係はもち品種では余り明瞭でないが, うるち種では小粒種ほどそしゃく性が高く, 粘着性や食味指数の劣る傾向もみられた。
  • 後藤 雄佐, 星川 清親
    1989 年 58 巻 4 号 p. 576-584
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    孤独状態で育てた水稲の, 分げつ期終期の分げつ性について検討した。まず, 個体内全茎で葉齢の進み方が同調している生長 (同周期生長) を仮定して再構築した茎数増加曲線 (同周期生長曲線) と, 実測値の茎数増加曲線との増加停止パターンを比較し, 両曲線の性質を検討した。解析には, 典型的なシグモイド曲線を示したササニシキの茎数増加曲線と, 第2報で全茎が出現すると仮定してシミュレートした茎数増加曲線とを用いた。現実には茎数増加が急激に停止する場合でも, それまでに蓄積した相対葉齢差 (主茎と各分げつとの葉齢の速度の差) により, 同周期生長曲線では緩やかな停止となった。また, ササニシキの同周期生長曲線の終期は2次曲線で, その相対分げつ増加率 (Rt) は直線で近似できた。次に, ある母茎から出現した最後の嬢分げつ (最終分げつ) について, 分げつ期後期の成長と関連させて調べた。最終分げつの分げつ次位が高いほど, 相対分げつ位 (個体内で, 分げつを同伸分げつごとにまとめて, 出現順に位置付けた分げつ位は大きかった。これは最終分げつ出現時の相対葉齢差に基づくものであった。Rt算出の対象茎を, 分げつ生産能力を持つ茎だけに絞る方法が提案されているが, 最終分げつの出現時期や, 3葉を持たない分げつには分げつ生産能力がないことなどから, 分げつ生産能力を持つ茎の特定は困難で, この方法は現実的でないと考えた。従って, Rtは全生存茎を対象とし, 各茎の分げつ生産能力の変動をも含めて考えることが, 水稲の生長解析上有効と考察した。
  • 田中 重行, 伊藤 浩司, 梅津 頼三郎, 宮城 悦生, 川村 修, 三秋 尚
    1989 年 58 巻 4 号 p. 585-591
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    キクユグラス (Rennisetum clandestinum Hochst ex. Chiov.), バヒアグラス (Paspalum notatum Flugge) 及びローズグラス (Chloris gayana Kunth) の粗蛋白質含有率 (CP) 及び粗繊維含有率 (CF) からみた家畜飼料としての栄養価値の地域差を検討するため, 3草種を, 大分県久住町, 宮崎市及び那覇市で2年間にわたり栽培し, 20日刈り区と40日刈り区とを設け, 各刈り取り時の乾物収量, CP及びCFを調べた。各草種の両刈り取り区とも, 夏季はCPが低く, CFは高い傾向があり, 再生期間の日平均気温との間にCPは負, CFは正の相関関係を示した。気温の変化に伴うCP及びCFの変化率は, 20日刈り区では特定傾向の地域間差を示さなかったが, 40日刈り区では北の地域ほど大きい傾向があった。これは, 乾物生産速度の季節的変化の地域間差と関連すると推察された。しかし, 生産期間中の気温は北の地域ほど低いために, 40日刈り区においても20日刈り区とともに, CP及びCFの生産期間中の平均値には地域間差は殆どなく, 各草種の両刈り取り区とも, 粗蛋白質の年間収量は乾物の年間収量にほぼ比例し, CFの平均値は乾物収量に関係なくほぼ一定であった。キクユグラスは他の2草種に比べて, CPが高いとともにCFが低く, 北の地域における乾物収量の低下は小さいことから, 本実験の範囲では, 暖地型牧草の生産可能地帯における北部への導入草種として, 最も適していると推察された。
  • 続 栄治, 脇山 恭行, 江藤 博六, 半田 弘
    1989 年 58 巻 4 号 p. 592-597
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    木酢液ならびに木酢液と木炭の混合物 (木酢液1:木炭4; 以下, サンネッカEと略称) のイネの生育および収量に及ぼす影響を1987, 1988年の両年圃場ならびに室内実験で検討した。サンネッカEの基肥施用によって1987年実験では, 穂数が増え, 玄米収量が増収 (17%) したが, 1988年においてはサンネッカE施用によって, 穂数の増加はみられたものの, 玄米収量においては施用区と無施用区間に差異は認められなかった。しかし, 両年の実験とも, サンネッカEはイネの地下部乾物重を増加させ, 根の呼吸速度を促進することが認められた。サンネッカEのイネ幼苗の生長に対する影響を育苗箱および水耕実験で検討したところ, サンネッカE施用によって草丈および根の伸長が促進され, 特に根数が著しく増加することが認められた。サンネッカEの作用は砂耕および水耕実験から木酢液による効果が大きいものと推察された。無菌的に行った根端培養実験から, 木酢液は分枝根の発生を促し, 根の伸長を促進することが認められた。また, 木酢液の作用には最適濃度が存在し, その作用はホルモン的であることが示唆された。以上の結果, サンネッカEおよび木酢液のイネの生育に対する作用は, 根の発達を通して根を活性化させ, これによって地上部の生長が促進されるものと推察された。
  • 津野 幸人, 山口 武視, [カナ]口 浩之
    1989 年 58 巻 4 号 p. 598-604
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲5品種 (日本型3, 日印交雑型2) をポットで土耕栽培し, 穂首分化期より登熟中期に至る期間に, 夜間10℃, 12時間の低夜温処理を行い, それが翌朝の光合成・蒸散作用に及ぼす影響と, 根の呼吸速度ならびに地上部の形質との関連について解析した。処理翌朝に蒸散速度は抑制されたが, 6時間後に無処理の約90%まで回復し, その後はこの値を維持した。処理翌朝の光合成速度と蒸散速度はともに全ての品種および処理時期で無処理の値より低下し, なかでも日印交雑品種の低下度は大であった。また, 相対蒸散速度 (処理/無処理) と相対総光合成速度 (処理後/処理前) とは比例関係が成立し, さらに処理葉の気孔開度は無処理葉より狭搾されていることを認めた。低夜温は翌朝の気孔抵抗を増大させて光合成・蒸散を抑制したと考えられる。相対総光合成速度 (Pg) について, 根の呼吸速度 (R) と比葉面積 (SLA) を説明変数として, 重回帰分析を行なったところ, 重相関係数は0.880であり, Rが大でSLAが小である個体ほどPgは高い値を示した。同様の分析で, 相対蒸散速度はRとSLAならびに1茎当り葉面積の3要因で高い重相関係数0.861が得られた。根部のN含有率および全糖含有率の高いものほど根の呼吸速度は高く (重相関係数0.897), また, 純光合成速度と根の全糖含有率との間には比例関係が成立した。SLAと葉身暗呼吸速度とは負の相関関係があることより, 葉の呼吸活性, 根の呼吸活性がともに高い個体ほど, 低夜温による光合成・蒸散の抑制は軽度であるといえる。
  • 杉本 秀樹, 佐藤 亨, 西原 定照, 成松 克史
    1989 年 58 巻 4 号 p. 605-610
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本実験は, 尿素の葉面散布がダイズの湿害軽減に有効か否かを明らかにするために行ったものである。ポット栽培したダイズ (タマホマレ) を供試し, 開花期に湿潤 (地下水位5~7 cm), 湛水 (地上水位2~3 cm) ならびに適湿の各区を設け, 1%尿素液を葉面散布した。土壌の過湿処理は7日間, 葉面散布は14日間それぞれ継続した。湿潤ならびに湛水区では, 散布により葉身の窒素含有率が増加して光合成速度が高まり, 乾物生産が増大した。また, 莢数と百粒重が増加して子実収量も増大した。特に, 湿潤区では散布により, これらは対照区 (適湿・無散布) とほぼ同様の値となった。一方, 適湿区では散布効果は小さかった。以上の結果, 開花期のダイズは地下水位が5~7 cm程度の過湿条件におかれても, 尿素の葉面散布により障害をほぼ回避でき, また7日間湛水条件におかれたような場合でも, 散布により障害がある程度軽減されることが示唆された。
  • 中條 博良, 紅谷 文夫, 三本 弘乗
    1989 年 58 巻 4 号 p. 611-616
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    西日本早生コムギ品種である農林26号, 農林61号, オマセコムギを秋季に播種し, 個々の分げつについてその消長を比較検討した。出現分げつ数における3品種間の差は小さかったが, 出穂分げつ数には明らかな品種間差があり, 農林26号が最も少なく, オマセコムギが最も多かった。この差は, 分げつの出現率の差によるのではなく, 出現した分げつ, とくに第二次分げつの出穂率の差に基づいていた。第二次分げつの出現日と出穂率との間に負の相関関係が認められる時期があり, 出穂率が80%または50%になる第二次分げつの出現日は農林26号と農林61号では早く, これらの品種に比べてオマセコムギでは10日内外遅かった。しかも, これらの時期までに出現した第二次分げつ数は, 農林26号と農林61号では少なく, オマセコムギでは多かったので, その結果, 出穂分げつ数に品種間差が生じた。分げつの有効, 無効が明瞭に現れる時期の前25日間 (3月) における第二次分げつの乾物重増加量と出穂率との関係には品種間差が小さかったが, この期間における第二次分げつの乾物重増加量および稗長増加量には品種間差があり, これらの差が第二次分げつの出穂率における品種間差をもたらしたと考えられる。
  • 黒田 栄喜, 玖村 敦彦
    1989 年 58 巻 4 号 p. 617-622
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    圃場条件下において, 水稲個葉の光合成速度 (CER) は, 葉面光強度が光合成の光飽和点を越えている場合にも, 時刻のすすみに伴い低下する。この現象をCERの時刻による変動と名付け, その特徴と生理的基礎につき検討した。(1) さまざまな年度, 生育時期, 天候, 葉位において, 9-10時および15-16時の2つの時間帯のCERを比較した。46例の平均で, 前者に対する後者の低下率は19%であった。(2) 時刻のすすみに伴うCERの低下は, 気孔伝導度 (gs) の低下と関連していることが認められた。(3) 日中におけるgsの低下は, 葉群上で測定された蒸発計蒸発速度が大きい日ほど大であった。(4) 日中におけるCERの低下は上位葉よりも下位葉において大であった。この傾向は, 日中におけるgsの低下が上位葉よりも下位葉で大きいことにもとづくものと考えられた。
  • 黒田 栄喜, 玖村 敦彦
    1989 年 58 巻 4 号 p. 623-627
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    近接した日の間にみられる水稲個葉の光合成速度 (CER) の変動とその生理的基礎, 並びに, 葉面光強度および気孔伝導度 (gs) の2要因がCERに及ぼす効果の相互関係について検討した。(1) CERの日による変動; (i) 圃場条件下で, 数日間連続して, 午前のほぼ同じ時刻に, 飽和光下で同一葉のCERを測定したところ, その値は日によって異なり, この期間の最大値と最小値の開きは5~10 mg CO2 dm-2h-1に達することが認められた。(ii) CERの日による変動はgsのそれと並行的であった。(iii) gsの日による変動は蒸発計蒸発速度と密接な関連を示し, この値が大きい日にはgsが小さいという傾向がみられた。(2) 葉面光強度とgsのCERに及ぼす効果の相互関係; (i) 連続した数日間においていろいろな時刻に測定した同一葉位の葉のCERと葉面光強度およびgsとの関係を検討したところ, 両要因の効果には相互作用が存在することがわかった。すなわち, (ii) 弱光下ではCERはgsに無関係に, ひとつの光-光合成曲線であらわされた。(iii) 光飽和点はgsが大きいほど高かった。(iv) 強光下ではCERは光強度に影響されずgsの増大に伴い増加した。
  • 三本 弘乗, 築瀬 雅則, 中條 博良
    1989 年 58 巻 4 号 p. 628-634
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    北海道から九州にわたる各地域の代表的な奨励品種11と, 幼若期が極く短いと考えられる坊主愛国ならびに極く長いと考えられるフジヒカリの計13品種について, 幼若期と日長感応性を比較検討した。幼若期は, 出芽後長日条件で生育させた後, 短日条件に次々に移した場合の幼穂分化期の推移から, 短日に感応しない期間を求めて決定した。日長感応性は, 上記と同じ方法で得られた, 幼若期後の回帰直線の勾配によって表わした。得られた結果は次のとおりである。(1) 28℃条件における幼若期は, 短い品種では4.3日 (葉齢2.8), 長い品種では19.0日 (葉齢6.3) であった。(2) 品種の幼若期を, 栽培地域ごとにみると, 北海道で幼若期の長い品種が存在しなかったほかは, いずれの地域でも短, 中, 長の品種が存在し, 緯度的な勾配を示す一定の分布傾向は認められなかった。(3) 品種の日長感応性は, 暖地の短期栽培用品種フジヒカリを除き, これまでに明らかにされているように, 緯度的な勾配による一定の分布傾向を示し, 北海道から暖地に向かうにつれて大きくなることが確認された。(4) 幼穂分化期から出穂期までの日数は, 品種によっては大きな差異が認めらたので, 出穂期までの日数からすべての品種に共通な一定日数を差し引いて幼穂分化期を推定すると, 各生育相を正しく把握していない場合がある。
  • 遠山 益, 加藤 久明, 今井 豊彦
    1989 年 58 巻 4 号 p. 635-640
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    新細胞壁溶解酵素の1%ファンセラーゼと1%セルラーゼ"オノヅカ"R-10とを併用して, イネの葉肉プロトプラストを容易にしかも多量に単離できた。本研究に用いた植物材料は, 滅菌した種子をビタミン及び無機塩を含む寒天板上に播き, 23℃, 16.5 W/m2, 明暗14 h/10 hの条件下で25日間培養したイネの第2葉及び第3葉である。それらの葉身の長さは20~30 cmであった。従来の方法では, 展開したイネの葉肉からプロトプラストを単離することは極めて困難であった。本実験では, イネの展開葉の1g生重量あたり104~106個のプロトプラストが得られた。単離直後のプロトプラストの生存数は, 全単離プロトプラストの80~90%であった。セルラーゼ"オノヅカ"R-10の代りにRSを用いると, より短時間の処理によって, プロトプラストの収率と生存率とを増大させることができる。酵素処理時間は, その後のプロトプラストの培養にとって4h以内が適当であった。本法を用いる限り, マセロザイムあるいはペクチナーゼを用いる必要はない。本実験に於ても, 酵素液と培養液に1%ウシ血清アルブミン (BSA) を添加することは有効であった。イネの葉肉プロトプラストの単離は, ファンセラーゼ中に含まれるラミナリナーゼによるβ(1-3) グルカンの分解に負うところが大きいと考えられる。
  • オボンナ J.C., アブラハム P.G.
    1989 年 58 巻 4 号 p. 641-647
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ササゲ (Vigna sinensis Endl.) の種子にインドール3酢酸またはインドール酪酸の前処理を施したところ, 乾物生産性, 種子収量, および発芽や花成の割合と時期などに対して有益な効果が見られた。ジベリン処理により発芽速度と主茎長が増加した。また, 蒸留水を用いて同様に処理してもその効果は見られなかった。マレイン酸ヒドラジドは乾物生産性, 収量, および発芽や花成の割合や時期などに対して阻害作用を示した。マレイン酸ヒドラジド処理と同時にインドール3酢酸やジベレリン処理を行っても, その阻害作用は消去されなかった。
  • 中元 朋実
    1989 年 58 巻 4 号 p. 648-652
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    トウモロコシ孤立個体の根系領域の発達過程を経時的に観察した。個体の周辺から採取した土壌に含まれる根の長さをパーソナルコンピュータによる画像解析によって測定した。根長密度の高い領域 (>5000 m/m3) は, 生育の初期には株基部から水平方向に急速に拡大し長方形状の外形を呈していたが, 播種後10週目以降には株直下方向へ拡大した。深さ約0.3 m, 株からの水平距離約0.3 mの地点の土壌領域では, 根長密度の増加が遅く, 生育の終期においても根長密度は比較的低いままであった。平均根直径の値を求めたところ, 株直下の根系領域は比較的太い根で構成されているのに対し, 地表に近い領域では細い根が優勢であることが明らかになった。個体の総根長は生育の全期を通じて直線的に増加し最終的に157 kmに達すると見積られたが, 深さ0.1 mまでの土壌層には出穂後根長の若干の減少が認められた。
  • 玉置 雅彦, 江幡 守衛, 田代 亨, 石川 雅士
    1989 年 58 巻 4 号 p. 653-658
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    穂揃期窒素追肥ならびに登熟温度が米質に及ぼす影響について, 米飯のテクスチャー, タンパク質, アミロース, 結合脂質 (fat-by-hydrolysis) 含有率の点から検討した。窒素追肥により, 白米タンパク質含有率は増加した。米飯のテクスチャーのうち, そしゃく性値は, タンパク質含有率の増加にともない増加した。粘着性および食味指数値は, タンパク質含有率が8.5%のときに最も高くなった。アミロースおよび結合脂質含有率は, タンパク質含有率と関係が見られなかった。以上から, アミロースおよび結合脂質含有率の変化が小さいときには, 米飯のテクスチャーは, タンパク質, 特に難溶性タンパク質に強く影響されることが示唆された。一方登熟温度処理により, うるち米は低温ではそしゃく性値が顕著に大きく, 粘着性および食味指数値は顕著に小さくなった。もち米では, これらの傾向はみられなかった。アミロースおよび結合脂質含有率は, うるち米では低温ほど高まったが, もち米では変化が見られなかった。タンパク質含有率は, うるち米, もち米とも低温では減少した。登熟温度がうるち米米飯のテクスチャーに及ぼす影響は, アミロースおよび結合脂質含有率の変化によるものであり, タンパク質含有率には影響されなかった。しかしながら, もち米米飯のテクスチャーは, 登熟温度に影響されなかった。
  • 玉置 雅彦, 江幡 守衛, 田代 亨, 石川 雅士
    1989 年 58 巻 4 号 p. 659-663
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    うるち米, もち米における登熟にともなう米質の変化を, 米質のテクスチャー, タンパク質, アミロース, 結合脂質 (fat-by-hydrolysis) 含有率の点から検討した。登熟にともないテクスチャーのそしゃく性値は減少し, 粘着性および食味指数値は増加し, 出穂後30-40日目以降一定となった。登熟過程におけるテクスチャーの形成機構には, うるち米ともち米の間に明らかな差異は認められなかった。登熟にともないタンパク質, アミロース, 結合脂質含有率は, そしゃく性の変化と同様に変化した。登熟初期は, 米粒中のタンパク質含有率は大変高いことから, タンパク質によりデンプンの膨潤が阻害され, 末熟粒の米飯は硬く粘りがないものになると考えられた。アミロースも, 登熟にともなうテクスチャーの変化要因として考えられた。しかしもち米では, 登熟中アミロースは認められないにもかかわらず, テクスチャーは変化することから, アミロースはテクスチャーの変化を支配する唯一の要因ではなかった。未熟期には結合脂質含有率が高いことから, 結合脂質もデンプンの膨潤を妨げて米飯を硬く粘りがないものにすると考えられた。以上から, タンパク質, とくに難溶性タンパク質, アミロースおよび結合脂質がデンプンの膨潤を阻害する上で, 重要な役割を果たしているものと思われた。
  • 遠山 益, 吉田 みどり, 仁木 輝緒, 大橋 毅, 小山 功
    1989 年 58 巻 4 号 p. 664-672
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの種子を鉢中の土壌にまき, 27-28℃で自然光の下で育てた。4週間後の若いイネを0.1 ppmのオゾンに1日4時間 (AM 10-14) 暴露し, これを4日間繰り返した。このような処置をしたイネの葉緑体の微細構造の経日的変化を電子顕微鏡で試験した。1日間暴露では, イネの葉に可視症状は現われなかったが, 2日間暴露すると, 葉の背面に赤紫色の斑点が現われた。3日間またはそれ以上暴露すると, 斑点の大きさも数も増加した。しかし, 葉の緑色は僅かの減少にとどまった。オゾン暴露を終了したイネを温室内に移した後でも, その成長はやや抑えられた。電子顕微鏡による観察では, オゾンによる被害の最初の徴候は, 2日間暴露した背面葉細胞における葉緑体のチラコイド膜系の膨潤であった。膨潤はまずグラナスタックの最外部のチラコイドで始まり, 次第に内部のチラコイドへ波及した。3日間またはそれ以上の暴露後には, チラコイド膜系の膨潤と配列の乱れはさらに激しくなり, ストロマ部には空胞化が生じた。4日間暴露し, 翌日1日間暴露チャンバー内に置いたイネでは, 葉緑体包膜の破壊が観察された。オゾン被害は細胞のエイジングと密接に関係し, 4日間暴露した葉の先端部では葉緑体の構造破壊が顕著であったが, 基部ではそれはほとんど観察されなかった。また, 葉の背面における細胞では被害は大きかったが, 腹面では軽微であった。この暴露実験を通して, 葉緑体内の好オスミウム果粒の大きさも数も増加しないことが特徴的であった。
  • ウィーガンド クレイグ, 芝山 道郎, 山形 与志樹, 秋山 侃
    1989 年 58 巻 4 号 p. 673-683
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    作物の生育と収量に関する新しい推定手法として野外での分光反射測定がある。この測定により得られた作物の波長別反射係数間の相互演算結果 (VI) が, 葉面積指数, 光合成有効放射 (PAR) および同吸収率 (Fp), PAR日吸収量 (Sp), 地上部乾物量 (DM) および収量とどのように関係づけられるかを数式で提示し, これらを茨城県つくば市での実測データに適用してその有効性を検証した。植物材料としては, 15aの水田を13区に分割し, 2移植期 (5月21日, 6月11日), 6窒素施肥水準 (0, 2, 4, 6, 8, 12 g/m2) を設けて3品種のイネ (日本晴, コシヒカリ, シナノモチ) を栽培したものを供し, 10日ないし2週間隔で分光反射測定を行った。移植期から登熟期において, 収量ならびに積算Sp (ΣSp) はともに積算PVI (ΣPVI) の1次式で推定されることがわかった。PVIは赤および近赤外反射係数から算出されるVIである。またΣSpからDMへの転換効率 (ec) は移植期から出穂期20日までの期間で2.9 g DM/MJ, 移植期から収獲期までは2.5 g DM/MJだった。一方収量と出穂期のDM (DMh) とはr2=0.92の高い相関関係を示した。DMhと1100, 1650 nm反射係数間の差との相関関係は, PVIとのそれよりも密接であった。(r2=0.82および0.6 g) 。
  • 小池 説夫, 佐竹 徹夫
    1989 年 58 巻 4 号 p. 684-688
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    冷温処理開始時刻及び処理終了後の水温と明暗処理が稔実に及ぼす影響を調べた。冷温処理開始時の穎花の熟度が同じ (開花までの時間が同じ) ならば, 夕 (照明終了時) に冷温処理を開始した場合の方が朝 (照明開始時) に冷温処理を開始した場合よりも稔実率が20%高かった (図3, 4) 。冷温処理終了後の水温処理 (25℃と: 15℃) 及び明暗処理は, 処理開始時刻にかかわらず稔実に影響がなかった (図2, 4) 。以上のことから, 朝 (照明開始時) 処理と夕 (照明終了時) 処理の不稔発生率の差は, 処理開始時の頴花の生理的特性によって決定されることが推測された。
  • 稲田 勝美, 薮本 陽一
    1989 年 58 巻 4 号 p. 689-694
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    制御環境下での植物生産に好適な環境条件を明らかにするため, 連続照明下での光質, 恒温下での日長, および連続照明下での変温の影響を調べた。光質については, 赤色光/遠赤色光 (R/F) 比が著しく高い場合を除けば, 赤色光の光量子量が多いほど, また赤色光/青色光 (R/B) 比が大きいほど生長は促進された。日長は長いほど生長は旺盛となり24 h日長 (連続照明) で最大となったが, 乾物生産に対する照明効率は20 h日長で最も高かった。連続照明下で, 日平均20℃, 高低差5℃とした変温を与えると, 恒温下に比べて生長は促進され, レタスでは21.7℃, 16 hと16.7℃, 8 h (16 H/8 L), ハツカダイコンでは20.8℃, 20 hと15.8℃, 4 h (20 H/4 L) または16 H/8 Lの変温下で最も効率が高かった。ハツカダイコンでは, 変温によって増大した乾物はもっばら貯蔵根に分配された。本研究から, R/B比10またはそれ以上, R/F比1~2の光質をもつランプで日長を20 h前後とし, これに変温を組合せた条件が植物の栄養生長の促進に有効であろうと結論した。
  • 玉置 雅彦, 江幡 守衛, 田代 亨, 石川 雅士
    1989 年 58 巻 4 号 p. 695-703
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    米飯付着および白米中の遊離アミノ酸を, 味の観点から検討し, 生育にともなう米飯付着遊離アミノ酸含量と組成割合を, 白米の場合と比較した。さらに穂揃期窒素追肥, 登熟温度および品種の違いが遊離アミノ酸に及ぼす影響についても検討した。遊離アミノ酸含量は未熟米では多かったが, 登熟にともない減少した。とくに米飯付着では過熟期まで減少し続けた。人が感じ得る呈味は, 未熟米で濃く過熟米では薄れることが示唆された。米飯付着遊離アミノ酸の組成割合は, 登熟にともないかなり変化したが, 白米ではほとんど変化しなかった。著しい低たんぱく米や高たんぱく米でも, 遊離アミノ酸含量は少なくなった。また低温下では, 遊離アミノ酸含量は未熟米の場合と同様に多くなった。良食味品種の米は遊離アミノ酸含量は多かったが, 白米よりも米飯付着においてこの傾向は顕著であった。良食味米は炊飯時に遊離アミノ酸, とくにグルタミン酸が米飯から溶出しやすかった。
  • フランシスコ P.B. Jr., 前田 和美
    1989 年 58 巻 4 号 p. 704-711
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    リョクトウの"Ideo-type"の特性を知るためにインド産1を含むアジア各地域産の在来及び育成品種計83を5月中旬に播種し, 開花の早晩によりI~IIIの3群に分け, 高知での採種が可能な弱感光性品種群 (lI) の24品種について2ヵ年にわたり圃場条件で栄養生長, 生殖生長諸特性, 子実収量などと開花の早晩性との関係を調べた。播種後開花始迄日数 (DFF) は, 両年で46~63, 43~65日, 平均約52日で変異係数は約10%と小さく, 草丈, 1次分枝数, 主茎の栄養節数, 生殖節数及び総節数とは高い有意な正の相関を示した。DFFはまた生殖節数/主茎総節数割合, 莢実成熟始迄日数 (播種後), 生殖生長期間および子実収量とは負の相関を示し, 開花の早い品種では栄養生長の期間が抑えられて生殖生長期間が長くなり, 子実収量が増加したが, 開花の遅い品種では栄養節と生殖節数の増加が多収化に寄与しなかった。子実収量は多くの栄養生長指標形質とは負の相関を示したが, 両年とも最高収量 (平均191 gm-2) を示したインドの在来品種起源の系統KUS (高知大学選抜系1-19) を含む開花の早い高収量の数品種は慨して栄養生長量が優れた。この系統KUSは温暖な温帯地域の環境条件に適したリョクトウの"Ideo-type"の特性を具えていることが示唆された。
  • フランシスコ P.B. Jr., 前田 和美
    1989 年 58 巻 4 号 p. 712-719
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    インド (1品種) とアジア各地域産の弱感光性の計24品種を用い, 乾物生産とその器官別分配, 収量構成要素, 子実収量などと品種の開花の早晩性との関係について圃場条件で2カ年にわたり調べた。収穫時の個体全乾重 (TDM), 器官別乾重割合は品種間で有意な差異が見られたが, 両年ともほぼ同様の品種の特性が認められた。開花の早い品種では遅い品種よりもTDMと栄養器官乾重が小さく, 粒茎比と収穫指数 (HI) が大きい傾向が認められた。茎乾重は粒茎比及びHIとは高い負の相関を示し, 茎乾重を減らすことにより子実収量が高められる可能性が示唆された。子実収量は, 全品種ではTDMとの相関が見られなかったが, TDMの小さい品種では正の相関を示した。TDMが大きい品種は高収量・高HIと低収量・低HIの2群に分かれた。子実収量の主支配要因は1株莢数で, 1莢粒数, 100粒重及び莢長は莢数減少に対して補償的関係にあった。2ヵ年とも最高収量を示した品種KUSに代表される, 開花が早く, TDMは大きいが茎乾重割合が小さく, そしてHIが大で, 莢数が多い, 莢が長い, 1莢粒数が多い, より大粒などの特性は温暖な温帯地域に適したリョクトウの"Ideo-type"の特性を示唆するものと考えられる。
  • 山岸 順子, 石井 龍一, 玖村 敦彦
    1989 年 58 巻 4 号 p. 720-725
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    葉身および根の呼吸速度の経時変化を着生条件と切断条件において比較し, 異なる器官における呼吸に経時変化をもたらす体内要因について検討した。着生条件においては, 展開中の葉身の呼吸は深夜において顕著に上昇 (Midnight rise of respiration, MRR) したが, 展開終了した葉身においては顕著なMRRは見られず, 呼吸速度は深夜にはほぼ一定となり, その後急激に低下した。根については, 明らかなMRRが認められた。切断条件においては, 葉身の呼吸速度は着生条件において見られたものと同様のパターンを維持していたが, 根ではMRRが完全に消失した。したがって, 根の呼吸は地上部の有無によって著しく影響されるのに比べ, 葉身の呼吸は他の器官から独立した傾向を持つことがわかった。さらに, MRRをひきおこす体内要因は, 葉, 特に展開中の葉に顕著に存在することが示唆された。
  • 山岸 順子, 石井 龍一, 玖村 敦彦
    1989 年 58 巻 4 号 p. 726-731
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    葉における各種窒素化合物中の窒素含量の変化を経時的に調べ, それと呼吸速度の変化とを対比させることによって, 窒素代謝と呼吸との相互関係を検討した。タンパク中の窒素含量は, 暗期開始後12時間増加し続けたが, そのみかけの合成速度には経時変化がみられ, 0時から3時の間に最大となり, その後急激に低下した。この変化は, 特に展開中の葉において顕著であった。このタンパク合成速度にみられた経時変化は, 既報の呼吸の経時変化と非常によく一致することから, 呼吸の経時変化はタンパク合成速度の経時変化を反映しているものと考えられた。
  • 和田 源七, クルス ボンペサンタ
    1989 年 58 巻 4 号 p. 732-739
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    45 (1986年乾期) および62 (1986年雨期および1987年乾期) の改良品種/系統を用いてIRRIの水田で圃場試験を行った。分化Sink量は頴花分化終期および出穂期の稲体の窒素量および生育期間の両方と乾期, 雨期とも相関を示した。窒素吸収量の品種間差は分げつ期にのみ明らかであり, 出穂期での稲体窒素量は生育期間と相関を示した。Sinkの退化率および退化量は生育期間と相関を示した。これは生育期間の長い程幼穂の生長期の窒素含有率が低いことによる。Sinkの量は頴花分化終期および出穂期の稲体の窒素量と相関があるが, 窒素量のSinkに対する貢献度は異なる。Sink量と生育期間との間には二次の相関が認められ, Sinkに対する最適生育日数は本実験の栽植密度の下では127日前後であり, 栽培法とくに栽植密度が異なる場合には変動するものと考えられる。収量は両作期とも登熟歩合に大きな差がありながらSink量と相関を示す。収量は出穂期および成熟期の稲体の窒素量と相関を示すが, Sinkの場合と同様に生育期間と二次の相関を示し, 最適生育日数は122日前後となる。Sinkと収量とで最適生育日数に差を生ずるのは, 登熟歩合が生育期間が長くなるにつれて低下するためである。最適生育日数より生育日数が短い場合, 長い場合ともに収量は低下するが, それはSinkが少ないことによる。その原因は短い場合には吸収N量が少ないことおよび吸収NのSink分化に対する効率の低いことに, 長い場合はSinkの退化の多いことにある。
  • イワントアリ , 小合 龍夫, 高村 泰雄, 土屋 幹夫
    1989 年 58 巻 4 号 p. 740-747
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    栄養生長期におけるイネ品種の耐乾性を構成するイネの属性を明確にするため, 1986年には, 水稲3品種, 陸稲5品種を, 1987年には早晩性の異なる水稲6品種を用い, 土壌乾燥処理に対する生育反応の品種間差を, 乾物重および葉面積の増加量, 各生長パラメーター, 窒素吸収量, 分げつ数の対照区に対する変化割合に基づいて検討した。その結果, 処理による生育の変化には明確な品種間差異が認められ, 相対生長率 (RGR) の変化割合の品種間差は, 主に純同化率 (NAR) のそれに依存していること, 葉面積生長率の品種間差異は, RGR, NARと同じ傾向であることが明確になった。しかし, 窒素吸収量 (ΔN) については, NAR等の場合とは品種間差異の傾向が異なるとともに, 処理に対して, より早い時期から感受的であることが明確になり, 土壌乾燥下でNARおよびΔNを高く維持できる能力が, イネの耐乾性を構成する属性に係わっているものと考えられた。分げつの変化割合については, 分げつ性の高い, 早生の品種ほど耐乾性が小さい傾向にあったが, 例外も認められ, 耐乾性の評価にあたっては, 生長率の変化を基盤にしておくことの重要性が指摘された。また, イネの耐乾性の差異は, 水稲, 陸稲の別とは直接関連していないことが明らかになった。
  • 平井 源一, 中山 登, 北宅 善昭, 稲野 藤一郎, 中條 博良, 田中 修
    1989 年 58 巻 4 号 p. 748-749
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 芝山 道郎, 佐藤 恵一, 岡本 勝男, 秋山 侃
    1989 年 58 巻 4 号 p. 750-752
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 加藤 盛夫, インタボンサ ケオ, 今井 勝
    1989 年 58 巻 4 号 p. 753-754
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2008/02/14
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