従来,ショックパンツは骨盤骨折による出血性ショック患者の搬送時などに使用されてきた。今回,われわれは外傷患者に対する生命予後改善効果を検討した文献の批判的吟味を行い,複数のrandomized controlled study (RCT)に対してはメタアナリシスを行った。対象と方法:1966年から1997年までのmedlineで“G Suits”, “military antishock trouser”または“shock garment”のexplodeおよびkey wordで得られた英語および日本語文献,または,1987年から1997年までの医学中央雑誌CDで,「ショックパンツ」,または「出血性ショック」で得られた英語および日本語文献,およびその他入手可能であった英語および日本語文献のうち,外傷患者に対するショックパンツの生命予後改善効果について記載のある文献の批判的吟味を行った。結果:得られた文献は,対照が設定されていない使用例のみの報告,いわゆる症例報告は20件以上存在した。無作為化はされていないが,対照を設定したcontrolled studyは4件であり,RCTは2件あった。controlled studyおよびRCTはすべて海外での研究であった。外傷患者に対するショックパンツの生命予後改善効果に関しては症例報告では多数が有効例を報告しているが,controlled studyでは1件が有効,2件が不変,1件が無効であり,RCTでは2件とも不変であり,RCTのメタアナリシスでもその有用性は証明されなかった。また,損傷部位,鋭的・鈍的外傷,搬送時間によるsubgroup解析でも使用の有無で有効性に差がなく,またICU入室期間,入院期間でも差は認められなかった。結論:外傷患者に対するショックパンツの生命予後改善効果は明らかではなかった。新しい治療法のみならず,従来から有効と考えられている治療法もRCTなど質の高い臨床疫学的研究を行い,その臨床的有用性を再検討する必要がある。
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