悪性症候群は,抗精神病薬や抗パーキンソン病薬の開始,変更,中断により発症するとされている。今回,われわれは抗精神病薬増量が原因と考えられる悪性症候群の1例を経験したので報告する。患者は54歳,女性。3年前から精神科通院歴があり,抗精神病薬の投与を受けていた。薬剤増量の約1週間後に,40℃を超える発熱,意識障害にて発症。全身冷却及びdantroleneの投与を行ったが,全身状態の悪化に従い,人工呼吸管理,血液透析等の集中治療を行った。Max CPKは42,550U/lであった。第10病日に人工呼吸管理から離脱し,第28病日には血液透析からも離脱した。第57病日,全身状態及び意識レベルが安定したため,当院精神科へ転科となった。悪性症候群は,精神科領域のみならず,救急医療の分野でも忘れてはならない重篤な疾患である。精神疾患治療の有無,治療薬歴,現症及び血液検査所見等より本疾患を疑った場合,血液透析等を含めた治療及び厳重な全身管理を早期より開始することが必要と考える。
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