日本救急医学会雑誌
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17 巻, 3 号
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  • 海老原 貴之, 木下 浩作, 野田 彰浩, 石井 充, 北畑 有司, 雅楽川 聡, 丹正 勝久
    2006 年 17 巻 3 号 p. 83-91
    発行日: 2006/03/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    背景・目的:脳卒中患者におけるimmuno-enhancing diet (IED)の効果は未確定である。本研究の目的は,重症脳卒中患者において,IEDを用いた早期経腸栄養が免疫機能に及ぼす影響を明らかにすることである。方法: Glasgow Coma Scale (GCS) score 8以下の脳卒中患者18例を,無作為にIED投与群(n=8)とcontrol群(non-IEDを用いた経腸栄養剤投与群:n=10)に分け,以下の前向き検討を行った。間接熱量測定計でresting energy expenditureを測定し,目標投与カロリーを設定した。経腸栄養開始し,目標投与カロリーに到達した日を維持投与1日目(day 1)とした。その後,14日間経腸栄養を施行した(維持投与14日目;day 14)。入院時,day 14に採血し,リンパ球数,natural killer (NK)細胞活性(% cytotoxicity; cytotoxicity test), cluster of differentiation (CD) 4数,CD8数や,血清エイコサペンタエン酸(EPA)値,血清アラキドン酸(AA)値を測定した。結果: Acute physiology and chronic health evaluation (APACHE) II score, GCS scoreは両群ともに有意差を認めなかった。IED群では,入院時と比較してday 14でリンパ球数(p<0.05), NK細胞活性(p<0.05), CD4値(p<0.01)が有意に増加した。またIED群で,脂肪酸の代謝産物であるEPA値はday 14で有意に増加(p<0.01)し,AA値は減少(p<0.05)した。Control群では,リンパ球数,NK細胞活性,CD4値やEPA値,AA値において,入院時とday 14との間で有意な変化を認めなかった。考察・結語:脳卒中患者に対するIEDを用いた早期経腸栄養により,リンパ球数,NK細胞活性,CD4値及びEPA値はIED投与前と比較して有意に増加,AAは減少した。このことから,重症脳卒中患者においても早期IED投与は,細胞性免疫増強作用を有すると考えられる。
  • 鮎川 勝彦, 前原 潤一, 上津原 甲一, 島 弘志, 有村 敏明, 高山 隼人, 藤本 昭
    2006 年 17 巻 3 号 p. 92-98
    発行日: 2006/03/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    はじめに:救急患者の予後を左右する因子として,患者要因,病院前救護体制,病院の機能がある。緊急を要する疾患において,発症から治療までの時間を短縮できれば,救命率があがると思われる。本研究では救急車搬送時間が短ければ,予後が改善するという作業仮説を立てた。この仮説を立証するために,九州の6病院に救急車で収容された患者データを検討した。方法:6病院に救急車搬送された急性心筋梗塞(AMI)及び不安定狭心症(UAP),くも膜下出血(SAH),脳梗塞(CI),脳出血(CH),消化管出血(GIB),大動脈解離(AD)の7疾患について,retrospectiveに集計し,救急車搬送時間と予後との関連を統計解析した。結果:これらの疾患5,247症例のうち,入院後30日目の生存,自宅退院が確認でき,現場から直接搬送された患者で重症度分類できたものは1,057例(AMI201例,UAP49例,SAH217例,CI405例,CH114例,GIB45例,AD26例)であった。各疾患を重症度分類し,搬送時間との関連を調べた。AMI重症例(Forrester分類IV群)においては,搬送時間と入院後30日目の自宅退院率との比率の検定で,搬送時間が短ければ自宅退院率が高いことが推測できた。搬送時間を10分刻みにして,30日目自宅退院率を解析した結果,y=2.9619e-0.07x (R2=0.9962)の指数関数曲線に高い相関で回帰した。考察:AMI重症例では入院30日目の自宅退院率と搬送時間との間に,指数関数曲線に高い相関で回帰する関係があった。搬送時間を短縮できれば,自宅退院率をあげることができることを証明できた。搬送時間短縮による自宅退院率改善を数値化できることになる。AMI軽症及び中等症,その他の疾患では,搬送時間との間に明らかな関係はみられなかった。覚知時間の遅れなどが影響した可能性が考えられた。結論:AMI重症例に於いては,救急車搬送時間が短ければ,入院後30日目の自宅退院率を改善する,という仮説が証明できた。
  • 緒方 さつき, 森松 嘉孝, 幸崎 弥之助, 工藤 昌尚, 田尻 守拡, 井 賢治, 渡邉 健次郎
    2006 年 17 巻 3 号 p. 99-103
    発行日: 2006/03/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は42歳の男性。400ccの自動二輪車運転中に左側の駐車場から無灯火で出てきた普通車の右側面に衝突し,当院へ搬送された。来院時,呼吸は腹式呼吸で,両上下肢の知覚が消失し,両上下肢で徒手筋力テスト0であった。病的反射の出現は認めなかったが,肛門反射が完全に消失していた。重症の下位頸髄損傷を疑うも,頸椎単純X線,頭部CT,頸髄・胸髄・腰髄MRI検査にて異常所見は認めなかった。その後,6年前の急性一過性精神病性障害の既往が判明し,転換性障害の診断にて入院となった。徐々に症状の改善がみられ,リハビリテーション目的にて第13病日に他院へ転院となった。救急の現場において,症状と検査所見が一致しない事例をみた場合,精神病性障害である可能性に留意すべきである。
  • 卯津羅 雅彦, 内田 一好, 松澤 源志, 橋本 卓雄, 箕輪 良行, 明石 勝也
    2006 年 17 巻 3 号 p. 104-108
    発行日: 2006/03/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は6歳の女児で,交通事故にて受傷。他医に搬送され,意識障害はないがCTにて急性硬膜外血腫がみられたため,加療目的で当院に来院した。来院時意識レベルは清明で,神経学的に明らかな異常はみられなかった。血液検査上も貧血はみられなかった。CTでは右後頭蓋窩に,一部内側に高吸収域成分をもつが大部分は等吸収域の硬膜外血腫がみられた。以後症状の悪化はなく保存的に加療した。受傷5日後のCTでも血腫増大はなく,等吸収域が主体であった。受傷後12日目にMRIを施行したが,T1及びT2強調画像ともに血腫はほぼ均一の高信号域を示した。血腫がCT上等吸収域を示すことは通常受傷後超急性期にみられ,血腫が凝固していない状態を反映すると考えられている。本例のように急性期に等吸収域を示すことはまれで,原因として貧血の存在や低蛋白成分の血液が血管外漏出することでみられる可能性が推測されているが,そのメカニズムは不明である。本例のMRI所見では亜急性期で遊離メトヘモグロビンによる血腫の存在が考えられたが,血腫が全体的に均一な高信号であったことから通常の血腫に髄液の混入が推測された。
  • 高松 純平, 伊藤 岳, 西村 哲郎, 岸 正司
    2006 年 17 巻 3 号 p. 109-114
    発行日: 2006/03/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性。原発性マクログロブリン血症にて近医で内服加療中であった。来院3週間前から両下肢の浮腫を認めた。左下腿・右側腹部に疼痛,腫脹,出血斑を認め,増悪してきたため近医を受診した。全身管理目的に当院に搬送された。著明なアシドーシスを呈し,ショック状態であったため,気管挿管し人工呼吸管理とした。壊死性筋膜炎と診断したが,すでに広範囲に及んでおり,外科的治療は断念した。抗生剤投与を開始したが,治療に反応せず経時的に局所の壊死は進行し循環維持が困難となり,搬入30時間後に死亡した。病理解剖にて縦隔に著明な炎症像を認めた。下腿の浸出液の培養検査でペニシリン耐性肺炎球菌が検出された。今回,われわれはペニシリン耐性肺炎球菌感染による壊死性筋膜炎の極めてまれな1例を経験した。本例のような易感染状態では,重症化する可能性を前提に厳重に経過観察する必要がある。
  • 加藤 丈典, 福井 一裕, 若林 健一, 種井 隆文, 井上 憲夫, 渡辺 正男, 鈴木 伸行
    2006 年 17 巻 3 号 p. 115-119
    発行日: 2006/03/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    浅側頭動脈の仮性動脈瘤はまれではあるが頭部外傷後に留意すべき合併症である。今回,われわれは頭部外傷後に発生し,感染の関与によって急速に増大した浅側頭動脈仮性動脈瘤を経験したので報告する。症例は46歳の男性。交通外傷による左前額部から頭頂部に渡る広範な挫創に対して縫合処置を受けた3週後より側頭部皮下腫脹を生じ,その後も大きさと痛みが増強し来院した。血管撮影において浅側頭動脈前頭枝より発生する5cm程の巨大動脈瘤を認め,浅側頭動脈の結紮と動脈瘤の摘出を行った。病理所見上,動脈瘤壁は線維性結合織より成り好中球の浸潤を認め,周辺の組織には微小膿瘍がみられた。これより本症例は鈍的外傷により発生し,感染の関与により増大した仮性動脈瘤と診断した。術後,創部感染のため治癒遷延したが後遺症なく退院した。仮性動脈瘤の発生や創部感染,創離開,二次的な瘤の増大などの危険性を低減するには初期救急処置として確実な創の止血及び洗浄消毒が重要である。
  • 土肥 謙二, 初見 俊明, 新藤 正輝, 田中 啓司, 林 宗貴, 有賀 徹, 佐藤 和恵
    2006 年 17 巻 3 号 p. 120-122
    発行日: 2006/03/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
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