日本救急医学会雑誌
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18 巻, 2 号
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原著論文
  • 加藤 昇, 行岡 秀和
    2007 年 18 巻 2 号 p. 31-38
    発行日: 2007/02/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    対象と方法 : 2001年11月から2003年5月まで, 血中procalcitonin (PCT) 値とinterleukin-6 (IL-6) 値を同時に測定した重症急性膵炎13例を対象とした。厚生労働省基準の重症度スコアは9.5±4.7 (4~19), APACHE II scoreは13.2±6.7 (7~29) であった。入院早期 (7日以内) に4例に多臓器不全を伴い, total SOFA scoreは14.3±3.9 (10~17) で, この4例が死亡した。測定は入院後48時間以内 (発症後1~4日), 3~4日目と7日目を基本に2~5回 (0~20日目) 行った。PCTはimmunoluminometric assay法で, IL-6はELISA法で測定した。統計処理はMann-Whitney U検定やSpearman順位相関を用い, p<0.05を統計学的に有意とした。結果 : 入院後48時間以内の血中PCT値 (ng/ml) は2.83±3.92 (0.08-12.61), IL-6値 (×103pg/ml) は5.45±15.08 (0.05~54.87) であった。重症度スコアとPCT値の間には有意ではないが弱い相関を認めた。一方, IL-6値とは弱いが有意な相関を認めた。APACHE II scoreとは両者とも強く相関した (PCT; rs=0.735, p=0.0113) (IL-6; rs=0.663, p=0.0226)。転帰については, 入院後48時間以内のPCT値 (ng/ml) とIL-6値 (×103pg/ml) はそれぞれ生存0.70±0.61, 死亡7.63±4.01, 生存0.23±0.12, 死亡17.20±25.36で, いずれも有意差を認めた (ともにp=0.0055)。入院3~4日と7日目でも, 両者ともに死亡例に有意に高かった。死亡予測値として, 入院後48時間以内のPCT値2.0ng/mlとIL-6値1.0×103pg/mlのいずれも, 感度, 特異度ともに100%であった。なお, PCT値とIL-6値には強い相関を認めた (rs=0.741, p=0.0079)。結語 : 重症急性膵炎発症4日以内の血中PCT値とIL-6値はいずれも予後予測の早期指標として極めて有用である。
  • 中尾 博之, 吉田 剛, 長崎 靖, 有吉 孝一, 石井 昇, 佐藤 愼一, 星野 誠治
    2007 年 18 巻 2 号 p. 39-46
    発行日: 2007/02/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    死因不明症例の対処法は, 解剖による方法が推奨されているが, 必ずしも実施可能なわけではない。また, 医学的な側面からの対応策はマニュアルにはなされていない。われわれはウツタイン様式によるデータベースと監察医制度による検案から死因の推定を目指している。今回, 臨床上死因不明CPA症例について検案・解剖が行われた所見結果を参考にして, 解剖による検案が困難な地域における死因推定の助けのために臨床現場での死因検索チャートの作成を試みた。対象と方法 : 2001年1月1日から2003年12月31日までの3年間のウツタイン様式に基づいた2,606症例中, 内因性と判断されるが死因不詳で, かつ監察医制度によって死体検案・解剖が行われた症例226例について, 臨床所見等と比較検討した。結果 : 検案のみが76例, 解剖実施150例で, 死因が判明した内訳は, 虚血性心疾患31%, 脳血管障害7.1%, 心疾大血管疾患7.1%, 誤嚥・窒息8.4%, その他心疾患11.1%などとなった。また, 院外CPAに至る前に何らかの前駆症状の情報があった症例はたった20例であった。考察 : 大血管疾患, 消化管穿孔, 薬物中毒, 代謝異常などの特定の疾患による死亡例では検案のみでは判断が難しく, 解剖を必要とする場合が多かった。理学的所見や検案からCPAの死因を判断すること, 臨床上得られる検査結果なども種々の影響を受けてしまうために有用ではないことが多い。院外CPAの前駆症状は原因診断をする際の重要な情報であるが, その情報が入手されることは少ない。解剖が実施困難な地域で死因の推定が困難な院外CPAに遭遇した際にも活用できるように, 本研究結果で死因頻度が高い, (1) 虚血性心疾患, (2) 大血管疾患, (3) 脳血管疾患, (4) 窒息・誤嚥の順に死因推定を進めるためのフローチャートを作成した。
症例報告
  • Takeshi Ito, Masayoshi Komura, Satoru Miyatake, Hiroharu Shinozaki, Ku ...
    2007 年 18 巻 2 号 p. 47-50
    発行日: 2007/02/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    We report the case of a 17-year-old female first presenting as circadian rhythm sleep disorder, then later diagnosed as insulinoma. The patient demonstrated severe deterioration of academic performance in high school classes six months prior to examination. She also had disordered dietary habits, including copious late-night consumption progressing to reversal of daytime and nighttime activities. The patient was examined by a psychiatrist and diagnosed with circadian rhythm sleep disorder. Somnolence developed and worsened thereafter, and the patient was transported by ambulance to our facility. The patient was silent and almost non-verbal at admission, suggesting a mental disorder. However, hypoglycemia persisted despite the opportunity for adequate food intake after admission. Additional investigation and extensive test results showed an insulin/glucose ratio of 0.64 (17.8 μU/ml/28 mg/dl). Abdominal magnetic resonance imaging (MRI) demonstrated a 15 × 10 mm tumor at the border of the pancreatic head and body. Insulinoma was diagnosed, and the tumor was excised. Hypoglycemia and circadian rhythm sleep disorder disappeared completely after surgery, and the patient was discharged. The Japanese literature shows that approximately 10% of insulinomas present various mental symptoms. Chronic hypoglycemia symptoms are also sometimes difficult to differentiate from mental disorders, and careful observation is required in emergency room settings.
  • 横江 正道, 稲田 眞治, 白子 隆志, 塚川 敏行, 石川 清
    2007 年 18 巻 2 号 p. 51-57
    発行日: 2007/02/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは胸痛を訴えて119番通報され, 救急隊現着時に頸動脈触知せず, あえぎ呼吸で心電図モニター上flatであった症例に対し, 当院搬送後, 蘇生術を試み, 心静止確認から24分後に心拍再開, 入院治療後社会復帰を遂げた1例を経験したので報告する。症例は89歳, 男性。主訴は胸痛。既往歴に急性心筋梗塞 (72歳時) と心不全・腎機能低下 (87歳時) がある。内服薬にカンデサルタンカリウムとカルベジロールなどがある。午前7時頃, 発汗と悪心あり, しばらくして軽快。12時頃口渇を訴え, 牛乳とお茶を飲むも嘔吐。12時30分頃, 胸痛を訴えニトロスプレーを口腔内噴霧したが改善しないため13時11分, 119番通報。13時21分救急隊現着したところ, 瞳孔は左右ともに4mmで対光反射なく頸動脈触知せず, あえぎ呼吸で冷汗があった。CPAと判断し心臓マッサージ, Mask換気を開始。AED装着し, asystole確認。当院へ13時36分搬入。病着時, あえぎ呼吸を認めるのみでモニター上, asystole変わらず。直ちに気管挿管, ルートを確保しエピネフリン1mg投与するもasystole変わらず, CPRを継続。3分後, エピネフリン1mg再投与するも変わらず, さらに3分後エピネフリン1mg投与したところ, 心拍が再開。HR80台, 血圧も触知できるようになった。その後も血圧160mmHg台を維持されCCUへ入院。心筋梗塞, 高カリウム血症, 心不全増悪などが心静止の原因と考えた。心筋酵素の上昇はなく, 翌日には意識も回復した。グルコース-インスリン療法などを行い高カリウム血症の改善とともに心拍は安定し, 翌々日には呼吸状態も改善したため抜管。第34日に退院社会復帰となった。病院搬入時に心静止であった症例での心拍再開社会復帰例は少なく, 心肺停止から長時間経過した症例での救命例も少ない。本症例のように, 高カリウム血症が, 高齢者の心静止の原因であった場合には, 適切なBLS, ACLSを行うことで心拍再開そして社会復帰をもたらす可能性があると考えられた。
  • 井上 文隆, 当麻 美樹, 塩野 茂, 田伏 久之, 斎藤 能彦
    2007 年 18 巻 2 号 p. 58-64
    発行日: 2007/02/15
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性。既往歴は特記事項なし。左上肢・右下肢の疼痛および紫斑出現したため近医を受診後に紹介された。来院時の血圧は138/100mmHg。体温35.5度。血液検査ではCRP 16.5mg/dl, CK 4,268U/lを示した。右下肢動脈造影像は, 膝窩動脈より末梢部の高度血管攣縮を示した。Swan-Ganzカテーテルによる血行動態は心係数低下・末梢血管抵抗上昇を示した。プロスタグランデインE1持続静注, 抗生物質投与, 持続的血液濾過透析などを施行したが効果なく, 四肢の紫斑および横紋筋融解は進行し, 来院約18時間後に死亡した。血液培養からVibrio vulnificus (V. vulnificus) が検出されたため, 本症例はV. vulnificus 感染による死亡と診断された。本症例は血管造影所見および経時的な血行動態から通常の敗血症性ショックとは異なり, 末梢動脈の高度血管攣縮による末梢循環不全が激烈な経過に関与したと推察された。
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