日本救急医学会雑誌
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17 巻 , 2 号
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  • 稲垣 伸洋, 石川 雅健, 曽我 幸弘, 中川 隆雄, 鈴木 忠
    2006 年 17 巻 2 号 p. 39-44
    発行日: 2006/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    体内でのウリナスタチン(以下UTI)産生が生体侵襲時に増加することは知られている。そして侵襲の大きさと尿中UTIはよく相関するといわれている。そしてUTIは血中より尿中へ排泄されると考えられている。敗血症患者において,血中UTI値が不全臓器数を反映し敗血症時の重症度の指標と成り得るとの報告がある。今回我々は外傷患者の血中UTI値を経時的に測定し,外傷の侵襲の程度や他の炎症のパラメーターとの関係をみることで,外傷患者における血中UTI測定の有用性を検討した。既往症がなく,治療に外因性UTIを使用してない外傷患者17名を対象とし,ISS 25以上と未満の2群に分け,それぞれ48時間以内にSOFAスコアの改善した群と増悪した群に分けた。ISS 25以上で48時間以内にSOFAスコアの増悪した例は6例(A群),改善した例は5例(B群),ISS 25未満で48時間以内にSOFAスコアの改善した例は6例(C群),増悪した例はなかった。死亡率はA群で33%, B群で0%, C群で0%であった。血中UTI値は入院時,第1病日,第3病日,第5病日,第7病日に測定し,各群でその動向をそれぞれ検討した。入院時ISSでは各群間に血中UTI値の有意差は認めず,UTIは受傷時の解剖学的重症度は反映しなかった。A群で血中UTI値が上昇する傾向がみられ,他の2群と比しても有意に高かった。A群は解剖学的にも生理学的にも重症であり,持続的な侵襲が加わっていたものと考えられる。またと他のパラメーターとの関係はSOFAスコア(R=0.493, p<0.0001), CRP (R=0.388, p=0.0013), IL-6 (R=0.26, p=0.036)と,それぞれ正の相関関係を認めた。このように血中UTIの推移は生理学的重症度とよく相関した。外傷患者の血中UTI値の経時的上昇は外傷後の経過における多臓器不全発症の指標となり,その重症度,治療効果,予後を反映し変動する可能性が示唆された。
  • 岡田 見布江, 佐藤 守仁, 木村 昭夫, 岡田 一宏, 糟谷 周吾, 井上 雅人, 御川 安仁
    2006 年 17 巻 2 号 p. 45-52
    発行日: 2006/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    目的:高齢者腹痛症例の救急外来における診断とその正診率,緊急手術の予測因子について検討する。方法:2年間に救急搬送された65歳以上の腹痛患者を対象とし,後ろ向きに病歴を調査した。結果:189例が対象となった。初診時の正診率は79%であり,13例(7.1%)において,初診時診断と最終診断が大きく相違していた。開腹遅延例は6例で,入院と判断されたうちの6.3%であった。緊急手術を要した群と非手術群との比較では,単変量解析にて,頻呼吸,低体温,持続痛,発汗あり,高血糖,低アルブミン血症,低カルシウム血症,systemic inflammatory response syndromeの割合が緊急手術群に有意に多かったが,ロジスティック回帰分析では,持続痛のみが有意な予測因子であった。開腹遅延となった6例すべてにおいて,腹部CT検査が診断の鍵となっていた。結論:高齢者における腹痛は,所見に乏しく正診率は低い。持続痛は緊急手術の予測因子であると考えられ,持続痛を呈する例では,早期の腹部CTによる検索が開腹遅延回避に有用であると考えられた。
  • 境 雄大, 伊藤 博之, 八木橋 信夫, 大澤 忠治, 原田 治
    2006 年 17 巻 2 号 p. 53-56
    発行日: 2006/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    穿通性胸部外傷で手術を要する症例は多くはないが,致死的状況に陥る可能性がある。今回,われわれは胸部刺創による肺穿通性損傷の1救命例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。患者は52歳の女性。口論の末,右側胸部を包丁でさされた。包丁が右胸部に刺入された状態で当院救急外来へ搬入された。来院時,意識清明,右肺音減弱,右側胸部に包丁が刺入され,刺入部から気漏聴取した。周囲に皮下気腫を認めず。血圧142/68mmHg,脈拍94/min,酸素マスク5リットル投与下でSpO2 99%であった。来院時のヘモグロビン値は12.9g/dlであった。胸部X線及びCT検査にて包丁は肋骨を切離,右下葉を貫通し,胸椎近傍に達していたが,心大血管損傷は認められなかった。肺損傷の診断にて同日,緊急手術を施行した。分離肺換気下に後側方開胸を行った。包丁は第10肋骨を切離,左下葉を貫通し,第8肋骨の肋骨頚内に達していた。肺門部において血管・気管支を処理後に右下葉切除を行い,包丁を抜去した。術中出血量は1,110gであった。術中及び術後MAP血6単位を輸血したが,術後の病状は安定した。術後は創部の緑膿菌感染を認めた他は良好に経過し,第31病日に退院した。自験例においては心大血管損傷の有無を評価し,早朝に手術を開始する上でCTが有用であった。
  • 村山 良太, 長嶺 義哲, 伊志嶺 朝成
    2006 年 17 巻 2 号 p. 57-61
    発行日: 2006/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    Temporary wound closureには様々な方法が報告されている。しかし,silo closureにおいては開閉腹に時間がかかったり,繰り返す開閉腹で筋膜を傷めたりすることがある。zipperを用いたtemporary wound closureの報告はわが国ではほとんどない。われわれは,zipperつき人工腹壁被覆材を使用した閉腹を4症例に行ったので報告する。その1例は49歳の男性の小腸穿孔に対する腹膜炎症例で,ACS (abdominal compartment syndrome)の予防とsecond look operation,術後に腹腔内の処置を容易に行うためにzipperつき人工腹壁被覆材を用いて閉腹した。術後,連日にわたり腸管の確認,腹腔内洗浄をベッドサイドで行うことができた。この症例では早期に筋膜の全縫合が可能となり,早期退院が可能となった。その他の3症例についてもzipperを用いた閉腹は有用であった。当科においては,高度の腹膜炎症例で洗浄などの繰り返す開腹処置が必要な症例や,壊死性膵炎,ACSなどを使用適応の対象にしている。海外ではzipper systemはtemporary wound closureのひとつとして確立されているが,本邦での報告はほとんどないため,その有用性を症例を提示して報告した。
  • 柳川 洋一, 杉浦 崇夫, 阪本 敏久, 岡田 芳明
    2006 年 17 巻 2 号 p. 62-66
    発行日: 2006/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は33歳の男性。重症破傷風に罹患し,筋弛緩剤と併用でデクスメデトミジンやプロポフォールで治療を行っていたが,副作用や強直抑制効果が乏しかったなどの理由で,21日間のマグネシウム大量投与療法を行った。同療法を施行中はある程度意思疎通を保つことができ,適当な筋弛緩作用と交感神経抑制作用も得ることができた。リハビリテーション後,第88日に退院となった。マグネシウム大量投与療法による破傷風の治療報告は本邦では初めてであるが,廉価で意思疎通がある程度保て,筋弛緩,交感神経抑制作用を有し,破傷風治療に有用と考えられた。
  • 岩村 高志, 北原 雅徳, 中島 厚士, 大串 和久, 平原 健司, 瀧 健治, 山元 章生
    2006 年 17 巻 2 号 p. 67-73
    発行日: 2006/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    われわれは,スズメバチに多数箇所を刺され多臓器不全により死亡した1例を報告する。80歳の男性が,畑でスズメバチの群れに襲われ,全身78箇所を刺されて約1時間後に搬送されてきた。来院時,ショック状態であったが,輸液付加及びエピネフリン0.1mgの静脈内投与により循環動態は速やかに安定した。しかし,受傷時の血液検査にて,すでに肝機能異常・横紋筋融解・凝固異常等を認めた。輸液・新鮮凍結血漿(FFP)投与・ステロイド投与等にて対応したが,血液検査及び全身状態の増悪を認めたため,人工呼吸器管理の上,受傷約13時間で血漿交換・持続血液濾過透析を開始した。しかし,受傷51時間後,多臓器不全にて死亡した。わが国の文献報告においては,スズメバチによる多数箇所刺傷例もしくは臓器不全例は25例あり,このうち8例の死亡が報告されている。これらはアナフィラキシーではなくハチ毒による臓器障害例で,死亡例のほとんどは50箇所以上の刺傷数を持つ例であることがわかった。50箇所以上の刺傷数もしくは全身状態が悪いと判断される場合,迅速に血漿交換(PE)を施行し,その後継続してCH(D)Fを施行すべきである。
  • 2006 年 17 巻 2 号 p. 79
    発行日: 2006/02/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
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