日本救急医学会雑誌
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23 巻 , 5 号
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原著論文
  • 当麻 美樹, 佐野 秀, 塩野 茂, 田伏 久之
    2012 年 23 巻 5 号 p. 183-191
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】サイトメガロウイルス(cytomegalovirus: CMV)は,免疫抑制下で生じる致死的感染症のみならず,免疫応答下の患者に対しても敗血症や重症外傷などを契機に活動的CMV感染やCMV肺炎を惹起することが近年報告されている。しかしながら本邦では,これら集中治療領域での活動的CMV感染やCMV肺炎に関する報告は少ない。急性呼吸不全に続発する活動的CMV感染およびCMV肺炎の臨床的特徴を検討したので報告する。【対象】ICU入室時ないしその治療経過中に急性呼吸不全を呈した35症例を対象とした後ろ向き研究である。CMV肺炎の診断は,1)肺炎の臨床症状,2)CMV pp65抗原血症(活動的CMV感染),3)気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid: BALF)ないし気管内吸引痰(transtracheal aspiration: TTA)を検体としたPCR法によるCMV DNAの検出の各項目を満たした場合とした。【方法】35症例をCMV肺炎合併の有無により2群に分け,年齢,性別,背景疾患,ステロイド投与の有無,lung injury score,sepsis-related organ failure assessment score(SOFAスコア),BALF総細胞数・細胞分画,治療,予後に関して検討した。【結果】活動的CMV感染,CMV肺炎の合併率は各々20.0%(7/35症例),17.1%(6/35症例)であった。背景病態として,ステロイドが投与された敗血症性急性呼吸促迫症候群(septic acute respiratory distress syndrome: septic ARDS)がCMV肺炎合併の危険因子として有意であった(p=0.0073,オッズ比=90.9)。またCMV肺炎発症は,ステロイド投与後29.0(19.0-31.0)日を経過していた。BALF細胞分画は,CMV肺炎発症時にリンパ球優位を示した。治療は,全例にガンシクロビルと高力価免疫グロブリンの投与が行われ,5例でCMV肺炎の寛解を得た。【結論】急性呼吸不全に続発する活動的CMV感染・CMV肺炎は決して稀ではない。とくにseptic ARDSに対してステロイド投与を行った症例では,数週間を経てCMV肺炎を発症することがあるため,経時的なCMV抗原血症検査とBALFやTTAを用いたPCR法によるCMV DNAの検出により活動的CMV感染,CMV肺炎の有無を検討すべきである。
  • 伊中 愛貴, 木村 昭夫, 萩原 章嘉, 佐々木 亮, 小林 憲太郎, 井上 雅人, 新保 卓郎
    2012 年 23 巻 5 号 p. 192-198
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    【目的】入院経過観察あるいは外科的治療を必要とするような頭蓋内出血性病変を有する軽症頭部外傷患者を見逃すことなく(感度100%を保ち),なおかつ可及的に特異度の高い頭部CT撮影の判断基準を作成すること。【方法】2006年1月1日から2010年3月31日までに当病院救急科を受診した軽症頭部外傷患者(来院時GCSスコア15を満たす)を対象に予測因子候補11項目を設定し後方視的に調査した。対象を16歳以上60歳未満の若年群と60歳以上の高年齢群の2群に分けて解析を行った。2006年1月1日から2007年12月31日をDerivation期間とし,この11項目に関し頭部CT陽性例と陰性例にて単変量解析を行った。有意差が認められた項目のみを選択し,これらを候補とし2進再帰分割法を行い,予測因子を決定し頭部CT撮影の必要性に重点を置いた臨床判断基準を作成した。2008年2月1日から2010年3月31日をValidation 期間とし,Derivation dataで導き出された予測因子について2進再帰分割法を行い,その妥当性を検証した。【結果】若年群では抗凝固薬あるいは抗血小板薬の内服歴,一過性意識消失あるいは健忘,鎖骨より頭側の創傷の3項目のどれかを有すれば頭部CT所見陽性に対する感度が100%となった。高年齢群では抗凝固薬あるいは抗血小板薬の内服歴,全汎性頭痛,一過性意識消失あるいは健忘の3項目のどれかを有すれば頭部CT所見陽性に対する感度が100%になった。【考察】このように年齢別の判断基準を作成することで,これまでの研究より少ない項目数の予測因子で臨床的に重要な頭蓋内損傷を有する軽症頭部外傷患者を見逃すことなく頭部CT撮影数を減少させうる。
症例報告
  • 長野 修, 多田 圭太郎, 芝 直基, 平山 敬浩, 黒田 博光, 寺戸 道久, 氏家 良人
    2012 年 23 巻 5 号 p. 199-204
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    ビタミンC(vitamin C: VC)投与が腎障害に関与した可能性があると考えられた広範囲熱傷の2例を経験した。【症例】症例1:70歳の男性(体重77 kg),熱傷面積45%,Burn Index(BI)41。急性期にVC補充(2.5-4 g/day)を行い,腎機能の悪化を認めた。第4病日(来院日を第1病日とする)にVC補充を中止して持続血液濾過透析(continuous hemodiafiltration: CHDF)を開始した。第21病日まで血液浄化を施行して腎機能は回復した。症例2:68歳の男性(体重89 kg),熱傷面積63%,BI 41。急性期にVC大量投与(25 g/初期24時間)を行ったが腎機能は維持された。第9病日よりVC補充(0.6-1.2 g/day)を再開し,その後徐々に腎機能が悪化した。VC補充(0.3-0.5 g/day)を継続したまま第12病日よりCHDFを施行したが,腎機能は回復しなかった。【考察】広範囲熱傷では創傷治癒促進や初期輸液量軽減を目的としてVC投与が併用されることが多い。一般にVC投与の安全性は高いと考えられているが,代謝産物である蓚酸の蓄積によって腎障害を来す可能性があることや腎不全の回復を妨げることが指摘されている。2症例とも腎生検を施行していないため,腎障害とVCの因果関係は明確ではない。しかし,どちらも経過中に尿沈査で蓚酸カルシウム結晶を認め,症例1ではCHDF排液中の蓚酸濃度測定によって高蓚酸血症の存在が確認された。広範囲熱傷では種々の原因から急性腎不全をしばしば合併するが,これらの2症例ではVC投与の関与を否定できないと考えられた。また,症例1では蓚酸除去におけるCHDFの有用性が示唆された。【結語】VC投与中は腎機能に注意が必要であり,腎機能が悪化する場合はVC投与を中止して積極的な血液浄化を施行すべきであると考えられた。
  • 齋藤 伸行, 八木 貴典, 林田 和之, 原 義明, 松本 尚, 益子 邦洋, 横田 裕行
    2012 年 23 巻 5 号 p. 205-210
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    症例は80歳の女性。自宅内で意識障害を認めたため家人が救急要請した。1週間前の転倒で骨盤骨折を受傷し寝たきりの状態であった。来院時,意識レベルJCS 200であったが,呼吸循環動態は安定していた。頭部CTおよびMRIでは異常所見を認めなかったが,検査所見で血中アンモニア値が500μg/dl以上と異常高値であった。尿道バルーン挿入により大量の血尿を認めた。尿のグラム染色で赤血球とともに無数のグラム陽性球菌とグラム陰性桿菌を認めたことから尿路感染症による敗血症ならびに高アンモニア血症と診断しICUへ入院となった。ICU入室後は,気道閉塞の危険性があったため人工呼吸を行った。来院後6時間経過した段階で血中アンモニア値は91μg/dlまで低下した。この時点で十分な輸液負荷にもかかわらず無尿状態は継続していたことから,持続血液濾過透析(以下,CHDF)を開始した。20時間後,尿量が十分得られるようになり,CHDFを中止した。意識状態は徐々に改善し,第5病日に人工呼吸器から離脱抜管した。尿培養検査でウレアーゼ産生菌のStaphylococcus intermediusが検出され,血中アンモニア高値の原因と考えられた。意識障害を呈する尿路感染症では,起因菌により高アンモニア血症を認めることがあり注意しなければならない。
学会通信
  • 日本救急医学会 熱中症に関する委員会
    2012 年 23 巻 5 号 p. 211-230
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    日本救急医学会「熱中症に関する委員会」では,2010年6~8月に3回目の全国調査を行った。94施設(2006年の第1回調査では66施設)から収集した1,781例(同525例)の分析からは,日常生活中の高齢者の増加とその重症化が顕著であった。一方で,労作性熱中症患者は重症化が抑制された。スポーツ,労働における熱中症対策が進んでいるのに対し,温暖化,高齢化,不景気,孤立化などが進行しつつあり,高齢者の日常生活における熱中症の予防が重点課題といえる。今後も節電の夏が予想される中,今回の調査結果を生かし,家族,地域社会,行政などが協力して効果的な対策を立てる必要がある。また,熱中症の国際的な基準として使用できる診断基準,重症度分類,ガイドラインなどの策定を急ぐ必要がある。
Letter to the Editor
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