ヒトにおける心肺停止蘇生後(完全全脳虚血)の神経細胞障害の病態を検討するために,心肺停止蘇生後24時間以上生存した症例の剖検脳を組織学的・免疫組織化学的に検討した。対象は蘇生後1.5日,4日,6日,10日,14日,15日,4ヵ月,9ヵ月目に死亡した計8例,推定心停止時間は20&60分(平均34.4分)であるが,一次性脳病変を有するもの,脳死と判定された症例は除外している。剖検より得られた大脳皮質をhematoxylin eosin (HE)染色,さらに神経細胞のマーカーとして抗microtuble-associated protein 2 (MAP2), neurofilament (NF)抗体を用いた免疫染色により検討した。また海馬,基底核,小脳についてもHE染色にて検討した。大脳皮質において蘇生後4日目以降変化が出現し,経時的に障害が大きくなり,この結果は免疫染色においても裏付けられた。その他の部位においても脳局所間に差異なく,4日目以降経時的に障害度は増した。今回の検討では,蘇生後脳の病変部位は心停止の原因や心停止時間に関係なく,経時的に一定の傾向がうかがえた。低酸素状態と虚血状態が混在するヒトにおける蘇生後脳では,遅発性神経細胞死は明らかでなかった。
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