旭川(43°40′N),須坂(36°40′N),浜松(34°34′N)新見(34°59′N),および甘木(33°26′N)産のキンモンホソガを用いて,休眠誘起に対する光周反応の地理的変異を調べた。
1) 臨界日長は緯度が高いほど長くなり,甘木:12.5時間,浜松:12.5時間強,須坂:13時間,旭川:14時間であった。既知の盛岡(13.5時間)を加えて,緯度差3.5度に対して約30分の割合で変化した。
2) 標高約400mの新見個体群の臨界日長は約13時間で,同緯度で平地の浜松より約30分長く,気温的に類似する須坂のそれとほぼ等しかった。臨界日長が標高によっても変化することが示された。
3) 臨界日長への到達日は,旭川:8月27日,須坂:9月14日,浜松:9月20日,新見:9月13日,および甘木:9月27日と推定された。
4) 須坂個体群において,日長が臨界点に達する以前に有脚幼虫以上のステージになっていたものは大部分非休眠蛹に,無脚幼虫以下のステージのものの約70%は休眠蛹になった。この指標は休眠の判定に使用可能であるが,盛岡個体群に比較して日長感受性の個体変異の幅の広いことが示唆された。
5) 臨界日長および年平均気温から,旭川および甘木での年間世代数は,それぞれ3世代および6∼7世代と推定された。また甘木の場合,世代数は一定しているのではなく,気温の年次変動に応じて変動している可能性が指摘された。
抄録全体を表示