種々の植生環境をもつ北海道内の15ヵ所において,はじきわなによる採集を行ない,4種類の野ネズミを採集した。すなわちエゾヤチネズミ277,ミカドネズミ10,ヒメネズミ224,エゾアカネズミ51(第1表)。
ネズミの捕獲された各地点を,その周囲の環境を次の3事項について記録した。すなわち被度,密度,および落葉層の厚さの各事項について大中小という3段階の判定を行なった(第2表)。この方法によって4種のネズミの生息環境について分析を行ない次のような結果を得た。
エゾヤチネズミは草原的景観をもつ環境において最もおおく,被度,密度および落葉層の厚さの大きいところを最も好適な生息場所とする。しかし喬木林における場合のように地表での植生密度が小さくなるにしたがって,あるいは落葉層がうすくなるにしたがって生息数も少なくなる。
ミカドネズミは喬木林,灌木林等の中でやはり被度,密度および落葉層の厚さの大きいところにすむが,生息数は非常に少ない。
ヒメネズミは森林的景観をもつ植生において最も多く,低木層の被度,落葉層の厚さ等にはあまり影響されないが,密度に関してはそれの小さい部分に集まる傾向がある。一方エゾヤチネズミとは逆で,草原的植生に移るにしたがい生息数は少なくなる。
エゾアカネズミも一般に生息数は多くなく,その生息場所の植生の種類には特別な傾向がみられない。しかし,生息場所の構造的な面では,ヤチネズミ類のそれとヒメネズミのそれの中間にあり,やや前者に近い傾向を示す。
この研究をすすめるにあたって,種々ご指導をいただいた犬飼哲夫北大名誉教授をはじめ太田嘉四夫講師,帯広畜大芳賀良一教授に対し深く感謝の意を表する。
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