1) アズキゾウムシの成虫に,hempaとthiohempaを処理することによって,それらの産下する卵のふ化を,いちじるしく低下させることがあきらかにされたが,それぞれの中央ふ化阻害濃度と,95%信頼限界は,12.582μg/♀, ♂ (10.999∼14.394μg/♀, ♂)および3.347μg/♀, ♂ (2.884∼3.884μg/♀, ♂)であった。すなわちthiohempaのふ化を阻害する効力は,hempaの3.759倍(2.240∼6.310倍)であった。
2) 薬量-ふ化阻害率回帰直線の方程式の計算は,FINNEY (1944, 1949b)の自然の斃死率Cを暫定的にきめておこなう最尤法にしたがい,hempa, thiohempaおよびそれらの等量混合物の3回帰直線を同時に算定する方法をとった。
3) えられた平行な3回帰直線の方程式から,synergismの尺度Δ
sをもとめ,その分散とから,χ
2試験をおこなって,hempaとthiohempaの等量混合物におけるふ化阻害に関する連合作用は,similarであることをたしかめた。
4) アズキゾウムシの産卵は,hempaおよびENT-51008の処理によって阻害されるが,WADLEY (1949), FINNEY (1949a)の方法によって解析したそれぞれの薬量-産卵阻害率回帰直線の傾きはことなっていた。しかしそれらの等量混合物の連合作用はsimple similarであることが証明された。
5) HempaとENT-51008の等量混合物のふ化と羽化におよぼす連合作用は,WADLEY (1949), FINNEY (1949a)の方法によってそれぞれの平行な薬量-反応率回帰直線群からΔ
sをもとめ,その
V(Δ
s)とからχ
2-検定をおこなった結果,いづれもsimilarであった。
6) Hempa, ENT-51008およびその等量混合物の産卵を阻害する中央薬量と95%の信頼限界は,それぞれ57.076 (43.325∼68.053), 66.314 (37.110∼88.204), 68.881 (52.573∼82.414)μg/♀, ♂で,ふ化阻害のそれは12.765 (8.692∼18.746), 51.029 (28.865∼90.213), 19.500 (13.148∼28.921)μg/♀, ♂,羽化のそれは13.046 (9.462∼17.989), 61.289 (43.976∼85.416), 20.332 (14.700∼28.122)μg/♀, ♂であった。これらの数値から推定して,ENT-51008はアズキゾウムシの産卵を阻害し,産下卵のふ化,あるいは次代成虫の羽化には影響をおよぼさない。一方hempaの作用性は,産卵阻害にもあらわれるが,大きな生理作用はふ化阻害であると結論された。
7) Hempaがアズキゾウムシのふ化および羽化を阻害する効力はENT-51008にくらべてそれぞれ4.011倍(2.298∼7.001倍),4.651倍(2.807∼7.708倍)で,ほとんどひとしく,幼虫期,蛹期における薬物の影響はまったくないものと考えられる。
抄録全体を表示