ナミハダニの卵,幼虫,若虫および成虫に対するcycloprateの生理活性をインゲン葉を用いた室内試験で調べた。
ナミハダニの卵期間は4.9日で,卵から成虫までの期間は10.5日であった。雌雄間での発育の差はほとんどないが,卵期間は雄の方が長く,幼虫から成虫までの期間は逆に雌の方が長い傾向がみられた。
卵に対するcycloprateの生理活性は,ふ化阻害の他にふ化直後の幼虫致死にもみられた。また,発育後期の卵に対しては活性が低かった。幼・若虫に対しては,いずれも活動期に対する致死作用はないが,静止期あるいは静止期からの脱皮途中や直後に致死がみられ,発育に伴う阻害作用のあることがわかった。成虫に対しては高濃度で致死作用がみられたものの,その作用は高くなかった。しかし,産下卵のふ化が著しく阻害された。その作用の一部は,成虫に対する直接の不妊作用によることがわかったが,それは一時的なもので後に回復し,大半は葉面に残留する薬剤に産下卵が接触したことによるふ化阻害にもとづくものであった。
室内試験の結果から,cycloprateの野外におけるナミハダニの密度抑制効果は,成虫に対する致死活性は低く,主に,卵に対するふ化阻害と幼・若虫に対する発育阻害による所が大きく,中でも卵に対する活性が最も大きく関与していると推察された。
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