ウリミバエの大量増殖系統と野生系統の繁殖と生存にかかわる諸形質の変異性を比較した。大量増殖系統は1979年12月に野外より採集し,羽化後3週目の卵のみを次世代虫とする方法で,産卵効率の高い個体を選択し,育成したものである。実験に供するまでに約20世代累代飼育されている。野生系統はニガウリの寄生果を採集し,羽化させた直後の成虫である。比較の対象にした形質は産卵前期間,生存期間中の総産卵数,産卵回数,産卵個体率,産卵後期間,交尾前期間,交尾回数,および雌雄の生存日数である。
1) 大量増殖系統の産卵前期間,産卵後期間,および雌雄の生存日数はいずれも野生系統よりも短かかった。
2) 大量増殖系統の総産卵数は野生系統よりも多く,また産卵個体率も高かった。
3) 産卵回数および交尾回数はいずれも大量増殖系統において野生系統よりも多かった。
4) 野生系統の産卵前期間,総産卵数,産卵回数,産卵個体率,産卵後期間および交尾回数の変動係数は大量増殖系統よりも高かった。
5) 交尾前期間,および雌雄の寿命の変動係数は両系統とも近似していた。
以上の結果,大量増殖系統は野生系統に比べて早熟,多産,早死であり,一般に繁殖と生存にかかわる形質の変異性の低いことが示唆された。
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