数種のカイガラムシが分泌したロウ質物の外観構造を走査電子顕微鏡により観察した。また一部,そのロウ質物の構成成分を検討して,下記の結果を得た。
1) モミジワタカイガラムシ,イセリヤカイガラムシ,クワシロカイガラムシのそれぞれの卵の表面には,白色のコイル状ロウ質物(直径約1μ)が全面に分布していた。
2) モミジワタカイガラムシ,イセリヤカイガラムシ,オオワタコナカイガラムシのそれぞれの卵のうは,中空の長いチューブ状の白色ロウ質物(直径約1∼2μ)が単位となって形成された網状構造であった。
3) イボタロウムシ1令幼虫の体表面に分泌された白色ロウ質物は,コイル状のもの(直径約1μ)と中空の長いチューブ状のもの(直径約5μ)の二型があった。雌成虫の体表面の全面に分布している白色ロウ質物は,チューブ状(直径約2μ)であった。
4) ツノロウムシ,カメノコロウムシ,ルビーロウムシの各2令幼虫の背面に分泌されたロウ質物は,積みかさなって層を形成していた。体周縁部には繊維状のロウ質物が規則正しく配列され,網目状を形成していた。ただしルビーロウムシではそれはみられなかった。
5) クワシロカイガラムシ1令幼虫の背面には頭部付近に一対の角状のロウ質物(直径約5μ長さ約180μ)が存在した。
6) モミジワタカイガラムシとオオワタコナカイガラムシの卵のロウ質物は,wax esterで構成され,その主体は前者ではC
46, C
48,後者ではC
46∼C
52であった。
7) モミジワタカイガラムシの卵の表面のロウ質物は,wax ester(主体はC
46, C
48)と炭化水素(主体はC
27, C
29, C
37)などから構成された。
8) イボタロウムシの体表面のロウ質物もwax ester(主体は,雄1令:C
52∼C
58,雌成虫:C
46∼C
52)と炭化水素(主体は雄,1令:C
29, C
31, C
33,雌成虫:C
27, C
29)などであった。
抄録全体を表示