集合性昆虫の室内飼育においてみられる集団サイズと若令期の死亡率の関係を,孵化直後の幼虫の食草への食いつきの機構に関する単純な仮説によってモデル化した。
(1) 1個体が一定時間内にたまたま食草へ食いつく確率を
pとすると,n頭区の飼育区の死亡率(M
n)はM
n=(1-
p)nで与えられる。このモデルを適用するにあたっては,死亡要因と死亡のおこり方を検討しなければならない。
(2) 3種の集合性昆虫(クワゴマダラヒトリ,マツノキハバチ,ナガメ)を使って集団サイズ別分離飼育をおこない,その死亡率とモデル式からの理論値を比較した。その結果,クワゴマダラヒトリについては,若令期の死亡要因はほとんど食草への食いつき不可能によると推測され,各飼育区の死亡率もモデルとよく一致した。
(3) 集合性昆虫の幼虫には,単独でも食草へ食いつける個体Aと,食いつけない個体Dのあることを仮定しても,同一のモデル式を導くことができた。
(4) 卵期に死亡が働き,それに伴っておこる孵化幼虫の2次的死亡に関して,このモデルを応用することによって集団サイズが小さい程不利になることが示唆された。
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