日本応用動物昆虫学会誌
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26 巻, 1 号
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  • 潮 新一郎, 吉岡 謙吾, 中須 和俊, 脇 慶三
    1982 年 26 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    奄美群島のミカンコミバエの防除は,メチルオイゲノールを利用した雄除去法により,1968年に開始され,1974年から同群島全域の一斉防除を行った。
    防除は,テックス板,木綿ロープ,綿棒の素材にメチルオイゲノールと殺虫剤の混合剤をしみ込ませて,航空散布および地上吊り下げにより定期的に実施した。
    その結果,1976年以降発生はほとんど認められなくなったので,1977年から1979年まで根絶確認のための調査を実施した。本調査は,寄主果実に対する調査を主体とし,トラップ調査を補助的手段として行った。
    1977年には,喜界島および奄美大島について実施したが,わずかながら本種の発生が認められ,まだ根絶されていないことが判明した。
    1978年には,喜界島,奄美大島および徳之島について,30万個以上の果実調査と,118個のモニタリング・トラップによる14回の成虫回収調査を実施し,1979年には,沖永良部島および与論島について,83,000個の果実調査と,30個のトラップによる17回の成虫回収調査を実施した結果,ミカンコミバエは全く認められず,根絶を確認した。
  • 猪子 英俊
    1982 年 26 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    カイコ蛾の交尾行動についての行動学的な解析の結果,次のような知見が得られた。
    1) 性フェロモンを触角で感知した雄蛾が羽ばたきをしながら雌蛾に接近すると,主に前胸脚をつかって雌蛾の腹部,特に後部3体節付近に接触する。このとき鱗粉より受ける触覚刺激が解発因となって腹部を曲げて交尾を試みる行動を開始する。雄蛾は胸脚のみならず,触角でもこの鱗粉による触覚刺激を受容し,腹曲げ行動を解発することができる。
    2) 雌蛾は雄蛾の翅または胸脚で腹部や翅に接触刺激を受けると誘引腺を収縮させて閉じ,雄蛾の交尾を可能にする態勢をとるとともに翅を垂直に揚げて,雄蛾の接近を可能にする。
    3) 雌蛾の誘引腺を閉じる行動と翅を揚げる行動は非特異的な接触刺激でも触発される。
    以上の結果をもとにカイコ蛾の交尾行動の一連のプロセスを推定,検討した。
  • 芦原 亘
    1982 年 26 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ブドウトラカミキリの生活環と環境要因の関係を明らかにするため,発育と温度ならびに光周期との関係について調べた。
    孵化後の幼虫発育は温度と光周期の影響を受け,長日型の反応を示した。光周反応を示す温度範囲は比較的高く,27.5°Cと30°Cの長日条件下(16L:8D)でのみ蛹化率は高く,短期間で蛹化した。短日条件(11L:13D)での蛹化率は低く,30°Cでも蛹化する個体はほとんどなかった。25°Cの長日では約25%が蛹化した。20°Cでは長日条件下でも蛹化個体は極めて少なかった。27.5±3°Cにおける光周反応の臨界日長は約13.5時間であった。
    越冬幼虫の加温試験から,本種の幼虫は10, 11月には発育適温に移しても蛹化できない1種の休眠状態にあり,12月以降に休眠覚醒がおこると考えられた。越冬後の4月に採集した幼虫の発育への光周期の強い影響は認められなかった。
    蛹化後の発育や卵期間への光周期の影響はほとんど認められなかった。蛹期間,未成熟成虫期間(成虫が羽化して脱出するまでの期間),卵期間に関する発育零点はそれぞれ10.5, 3.8, 9.7°Cで,有効積算温度は187.5, 224.0, 114.1日度であった。
  • III. 幼虫集団の空間分布様式
    中村 寛志
    1982 年 26 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    集合性昆虫であるマツノキハバチの3齢中期の幼虫集団について,木当たりの集団数を全数調査し,幼虫数の空間分布構造を*m-m回帰分析法を用いて解析し,さらに樹高と集団数,幼虫数との関係を調査した。
    (1) 木当たりの平均集団数は1.64,平均幼虫数は55.57頭で,いずれも*m/mの値は1より大きかった。
    (2) 木当たりの幼虫の分布構造をみると1枝当たり平均30∼40頭の幼虫集団が分布の基本単位となり,これらが負の二項分布に適合する集中分布をしていた。
    (3) 集団サイズ,集団数,幼虫数はいずれも樹高が2∼2.9mの木に多く,これより樹高が低くなっても高くなっても減少した。
    (4) 幼虫集団の密度は同じ調査地域内でも,特定の林縁部で高かった。
  • 3. Milbemycins・有機りん剤複合抵抗性ナミハダニに対するmilbemycinsと有機りん剤の連合作用
    山本 慎二郎, 石川 加寿江, 西田 〓
    1982 年 26 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    有機りん剤抵抗性雌にmilbemycins抵抗性雄を交配して得た個体群の子孫をmilbemycins (BOM)とphenkaptonで交互に淘汰して複合抵抗性系が得られた。
    この系統の雌成虫に対する室内実験でisoxathion (ISX)とBOMとの混用で高い共力作用が認められた。この作用は鉢植インゲンに寄生させたハダニの防除試験でも実証された。
    この共力作用はりん剤抵抗性系でも認められた。
    著者らは次の3点からこの共力作用機構をISXのmilbemycins解毒分解阻害によるものと推論した。1.死亡状態がISXとの混用においてもBOM様であった。2.蘇生反応がBOM単用で大きいが,混用では小さく感受性系と同じ程度になり,殺ダニ活性が感受性系に対する効力なみに戻った。3.複合抵抗性系に対してISXとBOMを2日間隔で交互処理した実験で,ISX-BOM処理は逆のBOM-ISX処理に比べて効果が高かった。
    共力作用は他の多くの有機りん殺虫剤でも認められたが,特に効果の高いりん剤群はO, O-diethylphosphorothioateおよびO-ethylphenylphosphonothioateであった。
  • 矢野 宏二, 三宅 敏郎, 浜崎 詔三郎
    1982 年 26 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1. 1980年6月山口市でコメツブウマゴヤシ上で発生増殖しているTherioaphis trifolii (MONELL)s. lat.アルファルファアブラムシ個体群を採集,続いて山口県美東町ですくい取りにより有翅胎生雌虫1個体を採集した。翌1981年6月には山口県下各地および福岡市郊外における分布が判明,寄主植物としてさらにウマゴヤシとアルファルファ(ムラサキウマゴヤシ)が確認された。一方,1944年5月福岡市でMedicago sp.から採集された標本も調査し,日本での発生を確認した。日本の個体群は既知の2型,trifolii s. str.とmaculataの中間的な形態を示すが,maculataにやや近い。
    2. 山口市では6月にのみ発生がみられ,現在判明した主要寄主植物コメツブウマゴヤシの地上部の消滅に応じてみられなくなり,その前後の生態はわかっていない。予想される生活環の内,寄主植物上での通年増殖ないし胎生雌虫あるいは卵による越冬の可能性は少ない。暖地からの飛来有翅虫による1年毎の発生をすることも考えられるが,ウマゴヤシ類より移動した他の植物上における胎生雌虫,あるいは卵による越冬が可能性としては大である。
    3. 山口市における発生期間が限られている原因は上記とも関連するが明らかでない。多雨など物理的要因以外に寄主植物の適否も含めた生物的要因の存在が考えられる。
  • 河野 義明, 河部 暹, 坂井 道彦, 佐藤 安夫, 鈴木 忠夫
    1982 年 26 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    パラフィルム法によって,カルタップ水溶液を直接ツマグロヨコバイに吸わせると,2.8ppmで50%, 5ppmで80%の死亡率が得られた。また,イネの根を40ppmカルタップ水溶液に漬けると,導管液のカルタップ濃度は10時間後から平均約5ppmとなり,そこにツマグロヨコバイを放飼すると4時間で95%が仰転した。
    浸根法40ppmおよびパラフィルム法5ppmのカルタップ濃度において,ツマグロヨコバイの吸汁行動を電気的測定装置を使って測定すると,外見上の中毒症状が現れる前から,活動性の低下により,吸汁が抑制されることが明らかになった。さらに低濃度のカルタップ(パラフィルム法1ppm)においても,吸汁はしばしば阻害された。
    これらの結果は,これまでも明らかにされている致死量以下のカルタップによるhoney dew量や口針挿入頻度の減少とよく一致するとともに,カルタップのもつ,ツマグロヨコバイによるイネ萎縮病媒介に対する抑制作用をも説明すると考えられる。
  • 井口 民夫, 中村 晃三
    1982 年 26 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    家蚕幼虫を桑葉または桑葉粉末を含む人工飼料およびそれを含まない準合成飼料でそれぞれ飼育し,産下した卵の卵殻について,X線マイクロアナライザーによって元素分析を行い,大略下記の結果を得た。
    (1) 卵殻に検出される元素は硫黄が大部分を占め,カルシウム,燐およびカリウムもわずかに検出された。
    (2) 硫黄およびカルシウムの卵殻面での分布はスポット分析,ライン分析または面分析のいずれも均一であった。
    (3) 準合成飼料で飼育して得られる卵殻は桑葉育に比較して硫黄およびカルシウムの検出量が明らかに低かった。しかしシスチンとメチオニンを補足した準合成飼料育の場合には硫黄の検出量は桑葉育と大差がみられなかった。
    (4) 桑葉粉末を含む人工飼料育で得られた卵殻のX線マイクロアナリシス像は桑葉育で得られる卵殻とほとんど違いがみられなかった。
    (5) 卵殻のDSC曲線についても準合成飼料育で得られた卵殻と桑葉育のそれとの間には違いがみられた。
    (6) 以上のことから家蚕卵殻の無機成分は飼料条件に影響を受けることを知った。
  • 安田 誠
    1982 年 26 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    12, 16, 20, 24, 28, 32°Cの各恒温条件下(50∼80% R.H., 16時間照明)における,ミカンハダニの卵期間,全発育期間,平均世代時間(T),孵化率,平均総産卵数,純繁殖率(R0),内的自然増加率(rm)を求めた。同時に卵期間および全発育期間における発育零点と有効積算温度を求めた。
    1) 卵期間,全発育期間およびTは32°Cの条件下で,それぞれ5.3日,9.1日,11.7日であったが,12°Cとなると6∼7倍ほどに遅延された。
    2) 孵化率,平均総産卵数,R0, rmはいずれも24°Cで最大値を示し,その値はそれぞれ95%, 42.6卵,28.3(性比が雌:雄=7:3の場合),0.171(同上)であった。このことから本種の増殖にとって24°C付近が好適な温度条件であると推測された。
    3) 卵期間および全発育期間の発育零点は7.4°Cと8.2°Cであり,それぞれの有効積算温度は123日度と217日度であった。
  • 水谷 光良
    1982 年 26 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    植生とライト・トラップとの位置関係から蛾の飛来の規則性を調査し,蛾類群集の研究のためのライト・トラップ最適設置場所について考察した。総個体数と総種数では林縁或いは林縁から約30mはなして設置したトラップで最も多く採集された。一方個々の種においては全体と同様に林縁付近に飛来のピークを持つものと,ピークを持たずほぼ一様に採集されるものの2つの飛来パターンが見られた。そしてこれらはそれぞれ木本食の種と草本食の種にほぼ対応していることが明らかになった。したがって全体での林縁付近のピークは森林からの飛来によって形成されているものと考えられる。また林内に設置したトラップでは個体数,種類数ともに極端に少なかったが,これはライト・トラップの光が林にさえぎられて狭い範囲にしか広がらない為と考えられる。そして林内のみで採集された種が皆無であった点を考え合わせると森林の蛾,或いは森林と草原両方の蛾を最も効率的に集めるためのライト・トラップの設置場所としては林縁付近30m以内が最適と考えられる。
  • 野里 和雄
    1982 年 26 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    第2世代孵化幼虫が出現する時期に種々の生育段階の稲を栽培して,集団の大きさの異なる幼虫をそれぞれの稲に接種して食入させた。大きな稲においては,幼虫集団が大きくなるほど,孵化1日後の生存率は漸次減少したが,小さな稲においては生存率と幼虫集団の大きさとの関係は認められなかった。幼虫の生存率は稲の生育段階によって異なっていた。すなわち,小さな幼虫集団の生存率が稲の生育にともなって減少したのに対し,大きな集団の場合は,穂ばらみ期まで増加した。孵化1日後から5日後までの期間においては幼虫の低死亡率が一般的傾向として確認された。
  • 小林 勝
    1982 年 26 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    カイコの除殻した培養卵を用い,核多角体病ウイルスに対する休眠卵胚子と非休眠卵胚子における感受性の差異および感受性に関与する要因について調べた。培養は高見らによる懸滴培養法を用い,ウイルスに対し感染抵抗性の異なる大造と欧16号を供試した。結果の比較は所定濃度のウイルス液を培養卵胚子に接種して,一定期間培養したのちの感染率によって行い,t検定で有意差を確めた。
    (1) 休眠卵胚子のウイルスに対する感受性は,非休眠卵胚子よりかなり低く,品種間差異は僅少であった。
    (2) 休眠卵胚子をテスターにして,培養液にecdysteroneを添加すると,ウイルスに対する感受性が増大した。
    (3) 培養卵の胚子発育を遅滞させる眠蚕体液の抽出液を培養液に添加すると,摂食蚕の体液添加の場合より培養卵胚子のウイルス感染率を低下させた。
  • 松浦 博一, 石崎 久次, 織田 秀晴
    1982 年 26 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    田面水の表層に殺虫成分を展開させるイソキサチオン水面展開剤は,イネゾウムシ成虫に対して処理3日後まで高い殺虫力を発揮することがわかった。そこで,本剤をイネゾウムシ成虫の水田侵入初期から3日間隔で連続的に処理し,処理回数をいろいろに変えた試験区での食害葉の発生防止効果を検討した。その結果,食害葉の発生を効率的に抑えるためには,水面展開剤を少なくとも2回処理しなければならないことがわかった。イソキサチオンの残留分析から,水面展開剤2回処理区の殺虫効力持続期間すなわち50%以上の成虫を殺す期間は1週間と想定された。したがって,イネゾウムシ成虫の水田侵入が1ヵ月余りの長期に及んでも,食害葉の発生を効率的に抑えるための防除期間は1週間と考えられた。1週間の要防除期間を設定する時期は水田内の生息虫数や食害葉数がピーク時の6∼7割に達する直前1週間と想定された。
  • 長巓 将昭, 伊藤 嘉昭
    1982 年 26 巻 1 号 p. 80-83
    発行日: 1982/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    The incidence of Platypleura kuroiwae MATSUMURA, which originally inhabited the forests and bushes of the northern Ryukyus, has increased in the sugarcane fields of some areas of the main island of Okinawa and Okinoerabu-island since 1973. The density of nymphs per sugarcane stool sometimes exceeded 100 resulting in the decrease of the number of newly sprouted stalks. Adults laid eggs only on dead sugarcane leaves, and when many dead leaves remained in the sugarcane field the insect was able to repeat generations within the field. It is suggested that the density of the cicada could be reduced below the economic injury level by removing dead leaves along with regular ploughing of the sugarcane fields.
  • 1982 年 26 巻 1 号 p. 83
    発行日: 1982年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
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