日本応用動物昆虫学会誌
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38 巻, 2 号
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  • II. クズ葉上における産卵場所の選好性
    下田 武志, 真梶 徳純, 天野 洋
    1994 年 38 巻 2 号 p. 65-70
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1) ヒメハダニカブリケシハネカクシ雌成虫の産卵場所の決定に関する知見を得るために,クズ葉上における産卵状況に関する実態調査,ならびに室内条件下における産卵場所の選好性を調査した。
    2) 雌成虫は,ハダニが10個体未満の葉には産卵せず,これよりもハダニ密度が高い葉ほど産卵数が増加する傾向があった。また,卵はすべてハダニのコロニー内に産卵されていた。
    3) 雌成虫は,産卵に際してハダニおよびハダニの残渣(脱皮殻や排出物など)が豊富に存在する場所を最も選好した。
    4) このような行動は,孵化後の幼虫の餌を確保すると同時に,ハダニの残渣を用いた産下卵の被覆行動,すなわち捕食者による産下卵の捕食を防ぐための行動をも容易にしていることが推察された。
  • 国本 佳範, 真梶 徳純, 天野 洋
    1994 年 38 巻 2 号 p. 71-78
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    イヌツゲに寄生するミカンハダニの発生動態と,その発生消長の中で特徴のあった春の大きな発生ピークの生じる原因を調べた。
    1) イヌツゲに寄生するミカンハダニの発生消長は春と秋にピークを持つ2山型であるがイヌツゲ品種間で発生パターンが異なった。また,イヌツゲ品種間でミカンハダニの発育期間等に違いがあった。
    2) イヌツゲに寄生するミカンハダニの春の個体数増加は,3月から4月にかけて産下した卵が4月中旬に一斉にふ化すること,冬季に発育が停滞していた他のステージの発育が進み,4月下旬までに雌成虫が増加すること,及びその雌成虫の産卵によるものと考えられた。
    3) 4月下旬∼5月上旬に見られる個体数の増加に続く急激な減少は,4月下旬以降の雌成虫の分散と,5月上旬の幼虫の分散が主な原因であった。そして,分散の原因として高密度や葉の劣化などが考えられた。
    4) イヌツゲではミカンハダニの天敵として捕食性のナガヒシダニ類が認められたが,発生量が少なく,ミカンハダニの個体群に大きな影響を及ぼすとは考えられなかった。
  • 竹内 将俊, 田村 正人
    1994 年 38 巻 2 号 p. 79-84
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1) 東京都世田谷区の東京農業大学キャンパスと神奈川県秦野市のミカン畑跡地でトホシテントウの餌植物および各発育ステージの発生消長を調査するとともに,寄主植物ごとの室内飼育より幼虫期の発育期間を求めた。
    2) 寄主植物として世田谷ではキカラスウリなどが,秦野ではアマチャヅル,カラスウリなどが確認され,加害植物としてカボチャ,キュウリが確認された。また世田谷個体群では,羽化時期の餌不足から一部の新成虫がエノキワタアブラムシの分泌蜜およびエノキの葉を摂食した。
    3) 各発育段階の発生消長を調査地間で比較したところ,産卵ピークから4齢幼虫ピークまでの期間が異なり,産卵時期に対する4齢幼虫の出現は世田谷で早く,秦野で遅れる傾向にあった。また世田谷の幼虫の一部は年内に羽化し,成虫で越冬した。
    4) 室内飼育では,キカラスウリを与えた幼虫はカラスウリやアマチャヅルを与えた場合より速く成長する。このことから個体群の依存する寄主植物による発育速度の違いが両個体群の生活史の相違をもたらす主な要因と考えられる。
  • 吉田 忠晴
    1994 年 38 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    日本で同所的に生息している在来種ニホンミツバチと,導入種セイヨウミツバチについて,その交尾場所である雄蜂の集合場所の異同を調査した。
    1) 日本,あるいはアジアで最初に確認したセイヨウミツバチの雄蜂の集合場所は,東京都町田市玉川大学キャンパス内の蜂場から南へ300∼750mの林に囲まれた盆地状の場所であった。
    2) ニホンミツバチの雄蜂の集合場所は,クヌギの樹冠上10mの空間で,その高度は地上より約20mであった。国内他地域での調査結果も加味すると,ニホンミツバチは蜂場周辺の地形の中で目立つ木の樹冠上を集合場所にしていると考えられた。
    3) セイヨウミツバチ雄蜂が多数誘引・捕獲された集合場所では,ニホンミツバチ雄蜂の捕獲数は極めて少なく,2種間での集合場所の共有性は低いと考えられた。
  • 高田 肇, 杉本 直子
    1994 年 38 巻 2 号 p. 91-99
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    キョウチクトウアブラムシの京都における生活環およびその天敵昆虫群構成を明らかにするため,京都市内2か所のキョウチクトウで1990年から3年間サンプリングおよび発生状況調査をおこない,次の結果を得た。
    1) キョウチクトウアブラムシは,京都において不完全生活環を全うできる。有翅虫は5月上旬に分散をはじめ,その後6月上旬,8月上旬,9月にそれぞれ発生のピークがみられた。秋にキョウチクトウが剪定され,新梢が伸長した場合にはその個体群は冬期にも高密度で推移したが,新梢が伸長しない場合には低密度で推移し,死滅することもあった。2月から3月の厳寒期には,胎生雌は増殖を停止し,その体色は鮮やかな黄色から乳濁色に変化した。越冬虫は3月末から増殖を再開し,4月末に最初の有翅虫が出現した。
    2) 本種の天敵昆虫として,次の15種を確認した。テントウムシ3種,ヒラタアブ4種,アブラコバエ1種,クサカゲロウ3種,ヒメカゲロウ1種,アブラバチ2種,ツヤコバチ1種。5月下旬から9月中旬までは,ダンダラテントウ(幼虫・成虫)の個体数が最も多く,その捕食が,アブラムシ個体群に対する重要な抑制要因であると考えられた。9月下旬以降はヒラタアブ(幼虫)や捕食寄生バチ類が活動したが,アブラムシの発生量を低下させることはできなかった。キョウチクトウアブラムシの毒性が,その天敵昆虫に及ぼす影響について考察した。
  • 宮園 稔, 山本 牧子, 稲垣 秀一郎, 大羽 克明, 石黒 丈雄, 林 幸之, 武田 禮二
    1994 年 38 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    BT剤の殺虫活性成分であるδ-内毒素と胞子をそれぞれに分けて精製し,コナガ幼虫に対する両成分の殺虫性について検討した結果,δ-内毒素にのみ高い殺虫活性を確認した。しかし,全く殺虫活性のない胞子をδ-内毒素に混合する事で,殺虫活性を顕著に高めることを発見した。この現象を他の微生物(酵母,乳酸菌,枯草菌)の胞子および菌体について調べた結果,菌種間に違いがあるものの明らかにδ-内毒素の殺虫活性を増強する傾向をとらえることができた。さらにその活性増強の強弱は,コナガ幼虫の体液性抗菌作用に対する供試菌株の感受性差異と考えられる相関性が見られた。その中でも,B. thuringiensis serovar kurstaki HD-1とaizawaiは最も強い活性増強を示した。
  • 単離と同定
    平野 千里, 八隅 慶一郎, 伊藤 栄治, 金 哲史, 堀池 道郎
    1994 年 38 巻 2 号 p. 109-120
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ミナミキイロアザミウマに対して強力な摂食阻害作用をもつ成分をトマト葉からメタノールで抽出し,水/ブタノール分配で部分的に精製した後,シリカゲルカラムクロマトグラフィおよび高速液体クロマトグラフィによって白色の結晶として単離した。
    呈色/沈澱テストの結果から,この結晶はアルカロイド配糖体と推定された。融点および比旋光度の測定結果は,いずれもα-トマチンのそれと一致した。加水分解物の糖成分はグルコース,ガラクトースおよびキシロース(2:1:1)で,α-トマチンを構成する糖成分と定性的定量的に一致した。結晶本体およびその酸加水分解物のアグリコン部分について,各種スペクトルを測定したところ,すべてα-トマチン標準物あるいはそのアグリコンであるトマチジンのスペクトルと一致した。
    α-トマチン標準物およびトマト葉から単離した結晶は,いずれも水に溶解せず,摂食阻害作用を示さない。しかしトマト葉汁液に存在するクエン酸,リンゴ酸,コハク酸の水溶液中ではイオンペアーを形成してよく溶解し,いずれも強い摂食阻害活性を発揮した。
    以上の結果から,ミナミキイロアザミウマに対して強力な摂食阻害活性をもつトマト葉起源の結晶を,α-トマチンと同定した。トマトの示す強力なミナミキイロアザミウマ抵抗性はα-トマチンの摂食阻害作用のみによってよく説明される。
  • 渋谷 俊一
    1994 年 38 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Populations of the green rice leafhopper, Nephotettix cincticeps, sampled from five regions in Miyagi Prefecture in 1988 and 1989 were less susceptible to malathion, fenobucarb, carbaryl and propoxure than populations collected in 1971. The population at Rokugou, Sendai sampled in 1989 was 161-times less sensitive to malathion than the 1971 population. Despite fewer insecticide applications, susceptibility to malathion, fenobucarb and carbaryl decreased in populations of two regions. Resistance to these insecticides may be related to the extent of control by propoxure and carbosulfan used as systemic insecticides.
  • 5. 大卵の卵細胞質が次代の幼虫発育に及ぼす影響
    河口 豊, 伴野 豊, 古賀 克己, 土井良 宏, 藤井 博
    1994 年 38 巻 2 号 p. 124-127
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
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