硬質金属や超硬合金の放電加工において問題となっている仕上げ領域における放電加工用電極の消耗の問題を解決する手段として,多結晶ダイヤモンド焼結体(PCD)を電極として適用した.本報告では,原料粒径の2μm~30μmのダイヤモンド粒子から製造された各種PCD素材(コバルト含有量=7.9~15.2vol%)の電極材料としての適性をSKD11材および超硬合金に対して,PCD素材のコバルト含有率や熱伝導性との関係で調べた.その結果,被加工物がSKD11の場合,放電持続時間
teが1μs~30μsの仕上げ放電加工領域においても,各種PCD電極は極低消耗であった.また被加工物が超硬合金の場合でも,放電持続時間teが5μs以上では極低消耗を示すとともに,1μsのように短い放電持続時間のときでも3%以内の消耗に抑制できた.超硬合金の極短放電持続時間に生じた電極消耗は,ダイヤモンド粒径が大きいほど小さく,コバルト含有量が多いほど増大した.物性値との関連では,熱伝導率が高いPCD素材ほど電極消耗は減少した.続いて,5μs以上の放電持続時間において極低消耗加工が実現できた原因を調べた結果,電極表面にグラフィティックカーボン層が付着していることを見いだした.
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