鉄系金属は産業的に広く用いられている材料であり,その表面にマイクロ溝などを加工することでさまざまな表面機能が付与できる.しかし,従来のダイヤモンドVバイトによる溝切削では工具摩耗が激しく,加工能率が低い問題もあった.そこで本研究では,フェムト秒パルスレ-ザを用いて刃先に溝加工を施したcBN工具を用いる,鉄系金属へのマイクロ溝の一括転写切削法を提案した.本手法を用いることで,大量なマイクロ溝を短時間で切削することに成功した.また,加工を急停止させることで切りくず生成現象を直接観察し,切削メカニズムの解明を試みた.
ダイヤモンドは優れた物性を有しているため広く利用されているが,難加工材料であり,効率的な加工手法は確立されていない.本研究はダイヤモンドの成形加工を目的として,超短パルスレ-ザをダイヤモンド内部で集光することで生成される黒色の変質と周囲の亀裂を利用したスライス加工手法を開発した.具体的にはダイヤモンド内部にピコ秒レ-ザを集光し照射することで,焦点近傍が黒色に変質する.この変質ではダイヤモンドが一部アモルファスカ-ボンに変化している.さまざまな加工条件で変質させ,安定して亀裂を生成できる条件を明らかにした.また,試料走査方向をレ-ザ光軸に対してレ-ザの広がり角程度傾けることで,すでに形成した変質による吸収を防ぐことができ安定して変質をおこせること,さらに適切な間隔で変質させることで,変質の間に亀裂が進展,面状に広がることを明らかにした.これらの結果をもとに剥離を試みた結果, 300×400 μm2の大きさで剥離に成功し,その面の最大粗さSzは30 μm程度であった.