半導体ウェ-ハの製造工程において,半導体インゴットからウェ-ハ状に切断する工程にワイヤ-ソ-が広く用いられている.一方,近年の省エネルギ-化のためにSiCやGaN,サファイアなど,Siよりも高硬度な材料が基板材料として用いられてきているが,切断加工に多くの時間を要し,加工コストも高くなっている.本研究では,切断用ワイヤ-工具に電界で砥粒を集めることによって,高い切断速度と良好な表面品位の両立化を狙う「電界スライシング技術」を提案する.本論では,原理検証実験をとおして電界スライシング技術の基礎特性を明らかにしたうえで,市販ワイヤ-ソ-への実装を試み,切断速度向上効果が得られたので,その結果について報告する.
放電加工後の金型の表面には放電痕や熱影響層が存在し,金型成形品の表面性状や金型寿命に悪影響を与える.したがってそれらを除去するための研磨加工が必要である.形状が複雑な小型金型の研磨は一般に手作業で行われているが,手作業による研磨には熟練技能が必要であることに加え,多大な労力と時間を要するため,研磨加工の自動化が強く求められている.本研究では放電加工後の歯車成形用金型の表面を高精度かつ高効率に仕上げることが可能な自動研磨システムの開発を目標とし,ダイヤモンドペ-ストと低周波(数百ヘルツ)の楕円形工具振動を用いる研磨方法の有効性について調べた.実験では,工具の振動形態は固定し,工具と工作物間の相対揺動運動,工具振動周波数,研磨トルクが研磨ムラや研磨効率に与える影響を調べた.その結果,工具と工作物間の相対揺動運動と研磨トルクを適切に設定することで,3μmのダイヤモンドペ-ストを用いたときにRa0.05μm程度の表面粗さを被研磨面全体に一様に与えることができることがわかった.また,本実験で設定した工具振動周波数範囲においては周波数にほぼ比例して研磨効率が高くなることが明らかになった.