近年,加工性能向上を目的として,ウルトラファインバブル(UFB)を加工液中に混入して使用する報告例が多くなってきている.しかしUFB自身の詳細な性質や挙動自体が十分に解明されていない.そこで本研究では,金属イオンを含む陽イオンがUFBの長期安定性に及ぼす影響とその効果を検証し,陽イオンによりUFBの電荷が中和され,その粒径が増大するとともに,密度も低下することを確認した.さらにこの現象は,加工液の腐敗原因となる細菌の温床となっているバイオフィルム(ぬめり)の剥離に効果的であった.UFBとバイオフィルムは共に負に帯電しているが,カルシウムイオン(Ca2+)存在下では共に電荷が中和し合うことで,同極性による斥力を失い,バイオフィルムの近くで圧壊しやすくなると考えられる.すなわち,金属陽イオンを添加することでUFBを圧壊させた場合,UFB単独の場合よりも高いバイオフィルム剥離効果が得られることを明らかにした.
本研究は,三角錐ダイヤモンド圧子工具の切込み深さ方向(工作物表面に対し垂直な方向)への微小振動による振動援用切削を用いて,深さ数μm規模の圧痕状のパタ-ンを数十μmという短い面内周期で配置したテクスチャ表面を開発することと,開発したテクスチャ表面による表面機能向上への有用性を解明することを目的としている.開発したテクスチャ表面の製造手法によると,製造時に各圧痕状パタ-ンの周囲に生じたバリ(塑性盛上り)をオンマシンで鏡面切削することによって除去し,平坦部と圧痕状パタ-ンにより構成されるプラト-構造表面を取得可能である.本論文では,トライボロジ-特性の向上を目指し,黄銅試料上に面積密度の異なる複数のテクスチャ表面を製造し,その乾式すべり特性を評価した.その結果,オンマシンでバリを除去した面積密度が高いテクスチャ表面は,摩擦・摩耗の低減およびなじみの早期化に有効であることが明らかになった.