日本消化器がん検診学会雑誌
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46 巻, 2 号
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会長講演
  • 渡邊 能行
    2008 年 46 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    最近のわが国におけるがん検診の評価の動向を背景として, 筆者が地域において24年間に亘って関与してきた大腸がん検診の経験に基づき, 消化器がん検診のこれからについて私見を述べた。がん検診がどのような場において応用されるのかという場のセッティングの条件によってがん検診の評価は異なっているが, 税金を投入する市町村におけるがん検診においては, 疫学研究に基づく死亡率減少効果を基礎とするという共通の立場に立つことが前提となるということを理解しておく必要がある。今後とも, 消化器がん検診の評価に寄与する研究を行い, 第三者の評価を得ていく努力を継続していく必要がある。
特別企画
  • 細井 董三
    2008 年 46 巻 2 号 p. 160-165
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    X線による胃がん検診は, 現在, 全国で1,500万人以上に実施されているものと推定されるが, その精度管理が今や重大な危機に直面している。近年のX線画像の質の荒廃と読影精度の低下にその原因があり, 早急な精度管理体制の再構築が必要である。2007年7月に発足したNPO法人「日本消化器がん検診精度管理評価機構」では胃X線検診従事者の養成とその資質向上のための教育・研修事業および検診精度の維持・向上のための撮影技術・読影力に関する個人・施設の評価・検定作業を日本消化器がん検診学会の受託事業として取り組みはじめた。本稿ではその現状を紹介したい。
  • 馬場 保昌, 吉田 諭史
    2008 年 46 巻 2 号 p. 166-176
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    X線的な胃癌の特徴は肉眼所見に求められ, その肉眼的特徴は組織学的所見に求められる。しかし, 胃癌の肉眼所見は多種多様であり, 胃癌に特有な所見を見いだすことは容易ではない。本問題を解決するには, 癌組織型を指標に胃癌の肉眼所見を系統的に整理する必要がある。癌組織型によって進展形式や進展部の組織所見など, 組織特性に差が見られるからである。一方, 胃癌臨床診断の目的や意義の観点からは, 胃癌個々に限らず, 転移様式や予後の判定など臨床病理学的な事柄まで広く関連した診断が求められる。すなわち, 中村の胃癌組織発生の概念を基盤とした胃癌臨床診断概念で, 癌発生の場と組織型と肉眼型の3つが作る関係(胃癌の三角)を考慮した診断である。本稿では, 早期胃癌のX線診断について, 癌組織特性ならびに中村が提唱する胃癌臨床診断の基本概念である“胃癌の三角”から検討した。
  • 木村 俊雄, 吉田 諭史, 馬場 保昌
    2008 年 46 巻 2 号 p. 177-188
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    現在, X線検査による胃がん検診は, 間接撮影, 直接撮影およびデジタル撮影のそれぞれの方式で検査が実施されている。日本消化器がん検診学会は胃X線画像精度の向上を目的に胃X線撮影法標準化委員会を設置し, 新しい胃X線撮影法(間接・直接)の基準を発表1)した。間接撮影は, 高濃度造影剤を用いた二重造影を中心とした撮影基準(8体位・8枚法)が広く普及しつつあり, 要精検率の低下や早期がん発見率向上などの成果を得ている。一方, 直接撮影およびデジタル撮影に関しては, 明確な基準撮影法が確立されておらず, 撮影者や施設間あるいは地域的な技術較差となって現れ, 全国的な画像精度の底上げを遅らせる要因となっている。こうした状況を改善するにはX線撮影法(直接撮影)についても基準撮影法を明瞭にすることが求められる。
  • 池田 敏
    2008 年 46 巻 2 号 p. 189-197
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    わが国の肝がんによる死亡は1975年頃より急激に増加し, 悪性新生物による死亡の第四位を占めているが, 2000年頃より頭打ちとなり2002年をピークに僅かに減少傾向にある。肝がんの予防には肝炎ウイルス陽性者を拾い上げてインターフェロン治療等を行い, 発がんを予防するという1.5次予防が有効とされている。2002年より肝炎ウイルス検診が実施され, 2006年までの5年間にC型肝炎検査は863万人が受診し陽性者は99,950人(1.2%), B型肝炎検査は870万人が受診し陽性者は100,983人(1.2%)であった。検診の効果を上げるためには肝炎ウイルス陽性者の事後管理が重要であり, 肝炎に対する正しい知識の普及を図るとともに, 精密検査・特殊治療を受け持つ基幹病院と日常診療を行う地域の医療機関, 受診勧奨, 精検未受診者対策を担う行政・保健師の三者が密接に連携して, 個々に対し適切な事後管理を行っていくことが重要である。
  • 乾 和郎
    2008 年 46 巻 2 号 p. 198-201
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    当科ならびに関連施設における膵・胆道がんに対する超音波検診の現状分析を行うとともに文献的考察を加え報告した。胆嚢がん98例のうち検診で発見されたのは11例(11.2%)であった。進行度はStageI5例(45.4%)と半数近くを占めていた。それに比べて膵がんと胆管がんでは検診で発見された症例は極めてわずかであった。関連施設における超音波検診受診者は4年間で91,803名あり, 膵がんは2例(0.002%), 胆管がんは1例(0.001%)にすぎなかった。一方, 胆嚢がんは別の期間ではあるが0.01%と比較的高率で, 検診が早期発見に貢献していると考えられた。膵がんの危険因子としIPMNと膵石症が考えられ, 今後, 定期的な経過観察を行っていく必要がある。胆管がんには未だ有効な危険因子は見つかっていないことから, 肝機能検査異常や超音波検査による胆管拡張を丹念に拾い上げていく必要がある。
原著
  • 満崎 克彦, 福永 久美, 采田 憲昭, 藤本 貴久, 工藤 康一, 多田 修治, 須古 博信, 浦田 譲治
    2008 年 46 巻 2 号 p. 202-209
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    逐年受診発見胃癌を偽陰性例と定義し, 1)逐年受診発見胃癌の臨床病理学的検討, 2)前年度画像の見直しによる偽陰性例の内容, 3)前年度および発見時検査における検査条件と内視鏡経験年数を比較検討した。逐年受診発見胃癌は, 早期癌率100%, 59%に内視鏡的治療が行われた。分化型ではM, L領域の小弯側, 未分化型ではM領域の大弯に見逃しが多い。見逃し例の半数近くが注意深く観察すれば指摘できた可能性がある。検査時間, 撮影・記録および検査内容からみた「検査の質」の点においては発見時の方が, 質の高い検査が提供され, 内視鏡経験数も豊富な担当医が施行していた。逐年受診発見胃癌‘すべて’を偽陰性例と定義した場合の偽陰性率は33.9%であり, 画像の見直しにより病変を認識できる例のみを偽陰性例と定義した場合の偽陰性率は15.7%であった。胃内視鏡検査において相当数の偽陰性例があることを念頭において質の高い検査を行う必要がある。
  • 中野 真, 須田 健夫, 三吉 博, 田畑 育男, 鈴木 佑典, 野中 達也, 松本 雅彦, 吉川 廣和, 三好 和夫, 井上 幸万, 渕上 ...
    2008 年 46 巻 2 号 p. 210-220
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    大宮地区の胃がん個別検診は平成8~17年度まで総発見がん385例, がん発見率0.29%, 早期がん比率67.3%と, 先進地区に引けをとらない成績を上げているが, 要精検率が高いこと(平成15年度14.8%)が大きな問題点であった。この主要因は全例に一次読影と二次読影を実施し, そのどちらかで要精検となっても精査を行うという大宮独自の方法をとっているためと考えられた。そこで, 我々は適正な要精検率を10%以下と考え, 平成16年度の検診開始前に次の二点を徹底実施した。1)読影基準(Grade分類)を作成し, さらに読影結果にこの併記を義務付けた。2)一次医療機関毎の要精検率を調査し, 平均の要精検率と併記連絡し, 突出した施設に読影の再考をお願いした。これにより, 要精検率は平成17年度9.1%, 平成18年度8.1%と目標を達成することができた。がん発見率は平成17年度0.31%であり, 質の低下をきたすことなく要精検率の適正化が達成できたと考えられた。
  • 齋藤 洋子, 中原 朗, 松本 尚志, 福富 久之
    2008 年 46 巻 2 号 p. 221-232
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    2000-2004年度に対策型検診として免疫学的便潜血反応2日法(栄研化学ラテックス凝集法, カットオフ値100ng/ml)で実施された大腸がん検診受診者631,906人を対象に, 要精検率, 精検受診率, 癌発見率, 0期以外の癌発見率, 精検受診者からの陽性反応適中度を男女別, カットオフ値別に分析し, 5年間の実績と比較検討した。比較検討のための検定はカイ二乗検定を用いた。
    1)対象年齢は現行のままで実施しながら効率化を図る場合, 要精検率を低下させて癌発見率を維持するためには, 男女共カットオフ値を130ng/mlに設定し, 精検受診率を現在よりも10%向上させることである。2)0期以外の癌発見率を維持するためにはカットオフ値を150ng/mlに設定できた。3)カットオフ値を150ng/ml, 200ng/mlと設定しても, 癌発見率, 0期以外の癌発見率は男女共に年齢調整罹患率を上回っていた。
  • 若林 泰文, 折原 正周, 濱名 俊泰, 前田 昭治
    2008 年 46 巻 2 号 p. 233-246
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    2001年度から2005年度までの5年間に免疫便潜血検査(カットオフ値40ng/ml)151,839件(要精検率7.6%, 精検受診率66.2%)から発見された332件の大腸がん(早期235件, 進行66件, 不明31件)を対象とし, カットオフ値を変動して要精検率と偽陰性率がどのように変わるかを検討した。ROC分析ではカットオフ値110ng/ml(要精検率3.1%)が最適であったが, この時の偽陰性率は36.7%(早期がん101, 進行がん10, 深達度不明11)であった。一方, カットオフ値を60ng/mlとした場合の要精検率は5.2%で, 偽陰性率は16.6%(早期45件, 進行6件, 不明4件)であった。カットオフ値60ng/mlで偽陰性となる進行がん例は全て60歳以上であり, また50歳未満での検診を契機に発見された大腸がん27件中24件(88.9%)は早期がんであった。40歳代からの逐年検診を前提とするのであれば, 要精検率は5%程度(カットオフ値60ng/ml)が妥当と思われた。
症例報告
  • 伊藤 高広, 中西 攝子, 吉川 公彦, 大石 元
    2008 年 46 巻 2 号 p. 247-252
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代, 男性。主訴:胸焼け。既往歴・家族歴:特記事項なし。現病歴:糖尿病コントロール目的で近医通院中, 胸焼けを主訴に経鼻内視鏡検査が施行された。ECJ2時方向に不整形発赤調びらん性病変を認め, 視診上GERD(LA-B)を疑ったが, 生検で高分化型管状腺癌と診断された。PPI投与4週後, 発赤部は微細な血管増生像をみるも, 著明に縮小し, 大部分が健常な扁平上皮に覆われていたが, 同部の生検で再度高分化型管状腺癌の診断が得られ, 当院へ紹介となった。PPI投与終了4週後, 病変部は初回と同様の大きさに復し, 白色調のびらん状上皮と微細血管の増生を示す発赤部が混在していた。EMR-C法で切除し, 長径7mm大の高分化型管状腺癌(pT1a-MM, INFa, ly0, v0, Cur A)と診断された。本例は受容性の高い経鼻内視鏡によるスクリーニングで発見し得た早期食道腺癌であり, GERDを背景に病変の消長をみたが, EMRで治療が可能であった。
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