化学工学論文集
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29 巻, 2 号
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[特集] 新しい電池の開発および関連技術
  • 山口 猛央, 笠原 清司, 中尾 真一
    2003 年 29 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
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    本研究ではメタノール直接型燃料電池用の新規細孔フィリング型電解質膜の開発を目的として,多孔性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)基材細孔中にプラズマグラフト重合法を用いて,電解質グラフト鎖を充填した膜を開発した.電解質としてアクリル酸またはアクリル酸およびアリルスルホン酸の共重合体を用いた.本重合法により,膜厚方向および面方向に均一な,グラフト重合相分布を持つ膜の開発に成功した.また,スルホン酸基濃度が0.85mmol/g-grafted polymerを達成する細孔フィリング電解質膜の開発に成功した.
  • 渡利 竜也, 房 建華, 田中 一宏, 喜多 英敏, 岡本 健一, 平野 徹治
    2003 年 29 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    新規ジアミンモノマー4,4′-bis(4-aminophenoxy)biphenyl-3,3′-disulfonic acid(BAPBDS)を直接スルホン化法により合成した.スルホン化ポリイミドは1,4,5,8-naphthalenetetra-carboxylicdianhydride(NTDA),BAPBDSと非スルホン酸ジアミンtrifluoromethylbenzidine(TFMBz)から合成した.BAPBDS系スルホン化ポリイミド膜は,以前に報告した一連のスルホン化ポリイミドよりも優れた耐水性を示した.これはBAPBDSのフレキシブルな構造と高い塩基性に起因する.相対湿度100%のプロトン伝導度はNafion117と同程度と高く,構造の異なるスルホン化ジアミンによる大きな差違はみられなかったが,低湿度でのプロトン伝導度はBAPFDS> ODADS> BAPBDS系ポリイミドの順であった.それぞれのポリイミド膜の水収着量,膜のモルホロジーが密接に関係している.NTDA-BAPBDS/TFMBz(4/1)共重合ポリイミドの収着量はIECの低下により減少し,耐水性も向上した.さらに,プロトン伝導度はNTDA-BAPBDSポリイミドと同程度であり,固体高分子型燃料電池の固体電解質膜として期待できる.
  • 岡島 敬一, 古川 和良, 加賀 文規, 須藤 雅夫
    2003 年 29 巻 2 号 p. 170-173
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
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    メタノールクロスオーバーの抑制を目的として,対イオン導入によるイオンクラスター径を制御した修飾Nafion膜を作成し直接メタノール形燃料電池における発電特性について評価した.(CH3)4N+修飾膜ではイオンクラスター径は未修飾Nafion膜の4.80nmに対し4.44nmへと縮小し,メタノール透過流束は未修飾膜比較で44%抑制され,プロトン伝導度6.4S/mの荷電膜特性を得た.Nafion117膜を用いた発電試験より,加湿温度363K,単セル温度363KでVOCは0.658V,ISCは392mA/cm2を得た.383K以上のセル温度では膜内水分不足による膜のプロトン伝導度の低下に起因する直列抵抗成分増大が見られた.(CH3)4N+修飾Nafion膜ではプロトン伝導度低下によって電流密度は低下したが,開放起電力は363Kにおいて0.683V,383Kにおいて0.732Vへと増大した.プロトン伝導度減少のため電池特性の低下がみられたが,メタノール透過抑制について対イオンによる内部固定電荷修飾効果が得られた.
  • 修 軼鯤, 中川 紳好
    2003 年 29 巻 2 号 p. 174-178
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
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    DMFCの発電特性におよぼす物質移動の影響を調べるための基礎検討として,液供給のDMFCを作製し,アノードおよびカソードそれぞれにおけるメタノール水溶液および酸化剤ガスの流速や濃度などの供給条件が動作特性におよぼす影響を調べた.常圧下,353Kにおいて,これらの操作因子が開回路電圧,電流-電圧曲線および電極インピーダンスにおよぼす影響を示した.アノード-カソード間で測定した電極インピーダンスは二連円弧の形状であった.そして,高周波側の円弧の大きさはメタノール濃度の増大と共に減少し,また低周波側の円弧の大きさはカソードガスの酸素分圧の増大と共に減少することが分かった.アノード,カソードそれぞれにおいて反応関与物質の物質移動プロセスが電池の放電特性に大きく影響していることが示唆された.
  • 福長 博, 寺西 望, 山田 興一
    2003 年 29 巻 2 号 p. 179-183
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    直接メタノール形燃料電池における気相供給の利点を明らかにするために,触媒量の異なるMEAを作製し,発電時における交流インピーダンスの測定を行った.電極反応における素過程は3つに分離することができ,その界面抵抗は異なる印加電圧に対する依存性を示した.低印加電圧では中間周波数域の過程が大きく,これはメタノールの酸化に関与する過程であると思われた.低周波数域に観測された過程は燃料の供給が不足したときにのみ生じ,反応生成物による反応の阻害はなく,物質移動における気相供給の利点が示された.
  • 野中 寛, 糟谷 州彦, 松村 幸彦
    2003 年 29 巻 2 号 p. 184-187
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    高温高圧環境下での電気化学測定を可能とした測定セルを用いて,メタノール濃度0.001–1mol kg−1,温度343–523Kの高温水中で,メタノール電極酸化反応の定常的な分極特性を測定し,反応の活性化エネルギーやメタノールについての総括の反応次数を求めた.0.4V vs. RHE以下の低電位において,活性化エネルギーは,メタノール濃度0.1mol kg−1のとき60kJmol−1であったのに対し,1mol kg−1のときは30kJmol−1台の小さい値をとった.一方,0.5V vs. RHE以上の電位では,本実験の測定濃度において,活性化エネルギーは60kJmol−1で一致し,メタノールについての総括の反応次数は0.4と算出された.
  • 野中 寛, 片山 幸祐, 松村 幸彦
    2003 年 29 巻 2 号 p. 188-190
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    高温高圧環境下での電気化学測定を可能とした測定セルを用いて,523Kの高温水中,白金電極上,0.8V vs. RHEで,濃度0.01mol kg−1のグルコ-ス溶液の定電位電解を行い,電解電流を得ることに成功した.電解を行わないときの生成物およびグルコース分解率との比較より,523Kでのグルコース電極酸化反応は2–13電子反応と推定された.一方で,内容積の大きい測定セルでは昇温降温を含めた反応時間の制御が困難でグルコースの熱分解が支配的となるため,電極酸化反応の詳細な検討には滞留時間の短いフロー式の測定セルの製作が必要であることも示唆された.
  • 井上 元, 下村 洋生, 松隈 洋介, 峯元 雅樹
    2003 年 29 巻 2 号 p. 191-196
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    操作温度および供給水素,酸素ガス濃度を変化させて小型PEFCの発電実験を行い,出力特性に対する影響について検討した.その結果水素,酸素の濃度が低い程濃度過電圧は大きくなり,その影響は酸素の方が大きいことが,またアノード側およびカソード側共に供給ガスの相対湿度が100%の場合,操作温度の影響はほとんど無いことが明らかになった.さらにこれらの影響を表現できるPEFC反応モデルを作成した.本研究で得られた反応解析モデルをPEFC内のガス流動解析と達成させて解くことにより,実機規模のPEFC内の反応特性についてより詳細な検討を行うことが可能となった.
  • 井上 元, 下村 洋生, 松隈 洋介, 峯元 雅樹
    2003 年 29 巻 2 号 p. 197-203
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    実験で測定が困難な電流密度分布の推測を行うため,PEFC発電実験により求めた反応モデルを熱・流動解析と達成させてPEFC反応流動連成解析を行った.その結果,セパレーター内にはガス流量分布が存在し,アノード側よりカソード側の方が流量不均一になりやすいことが,また流量不均一により濃度分布が生じることが明らかになり,それにより電流密度分布が生じていることがわかった.供給ガスとして水素99%と窒素1%のアノードガスと,酸素21%と窒素79%のカソードガスを対象とした場合,電流密度分布は酸素濃度過電圧の影響が最も大きく,そのためガス流れ方向による出力性能の違いはほとんど無いことがわかった.本研究で作成したモデルを用い多種の条件下で解析を行うことで,最適操作条件,最適形状に関して詳細な検討を行うことが可能となった.
  • 福井 武久, 大川 元, 大原 智, 内藤 牧男, 野城 清
    2003 年 29 巻 2 号 p. 204-207
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    新規な溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC: Molten Carbonate Fuel Cell)用CoO-NiO系複合カソードの細孔構造制御と導電率改善を行った.まず,機械的手法により合成したCoO被覆Ni粒子を原料(被覆原料)とし,MgCO3を添加することにより導電率の改善を図った.その結果,10mol%の添加にて,従来カソード(NiO)材料と同等な導電特性が得られた.さらに,同じ被覆原料とMgCO3添加を用いたテープ成形法にて,複合カソードを作製した.その結果,成形条件と焼成条件を調整して気孔率約70%,平均細孔径約6µmの細孔構造を持ち,ハンドリング性の良好な複合カソードを作製することができた.また,MCFCカソードは,細孔構造と共に,細孔中への溶融炭酸塩電解質の充填量がその性能を左右する.そのため,複合カソード細孔中への溶融炭酸塩充填量の制御を行い,50%の電解質充填量にて,従来カソードとほぼ同様なカソード分極値(電流密度150mA/cm2にて約100mV)を得ることができた.以上から,このCoO-NiO系複合カソードの有効性を明らかにした.
  • 伊原 学, 松田 圭介, 横山 千昭
    2003 年 29 巻 2 号 p. 208-213
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    水蒸気改質を必要としない100%ドライメタン燃料で安定して発電する電極の開発が求められている.我々は100%ドライメタン燃料を用いて劣化がなく,少なくとも120時間の安定した連続発電が可能である燃料極の開発に成功した.開発した電極はニッケル/ガドリニアドープセリアのサーメット電極で最大出力は,900℃において170mW/cm2であった.また,アルゴンで4.5%に希釈したドライメタン燃料および水素燃料を用い,カレントインタラプション法を用いて直流分極特性を測定し,Ni/YSZサーメット電極,Pt/YSZサーメット電極,Pt電極と比較した.Ni/GDC燃料極では,酸素活量に対する見かけの反応次数はいずれの燃料においてもNi/YSZ燃料極,Ni/Pt燃料極,Pt燃料極に比べて小さかった.さらに,これまでに報告した4.5%ドライメタン燃料中でのNi/YSZ,Pt/YSZ燃料極における反応機構を参考にして,これまで困難であった100%ドライメタン燃料での発電がニッケル/ガドリニアドープセリアのサーメット電極を使うことで可能となった理由を検討した.その結果,Ni/GDC燃料極では三相界面表面の酸素とYSZ中の酸素との平衡反応の平衡定数が他の電極に比べて大きいことが理由の1つとして考えられることが分かった.
  • 古山 通久, 温 慶茄, 大友 順一郎, 谷口 昇, 山田 興一, 江口 浩一, 高橋 宏, 小宮山 宏
    2003 年 29 巻 2 号 p. 214-220
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    固体酸化物燃料電池用電解質材料の一つであるBaCeO3はH2+およびO2− の混合イオン伝導性を示すことが知られている.本報告では,電解質中の電荷担体がそれぞれO2− である系(02− 伝導系),H+およびO2−である系(H+/O2−伝導系),H+である系(H+伝導系)において燃料極の複素インピーダンス応答を測定した.測定した結果を等価回路に基づき解析し,それぞれの系において得られた知見の相互比較,検討を行いながら燃料極反応機構について考察を行い,電極反応を支配すると考えられる素過程を明らかにした.混合イオン伝導系における燃料極反応は電荷担体が単一である系と比較して,多くの素過程から成り立つ複雑な反応である.そのためBaCeO3を電解質に用いた際の電極性能向上のためにはそれら複数の過程を同時に促進する必要がある.本研究で得られた結果に基づき高性能燃料極設計指針を提案した.
  • 向井 紳, 山本 裕, 増田 隆夫, 田門 肇
    2003 年 29 巻 2 号 p. 221-225
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    主鎖がSiのみで形成されるSiポリマー(ポリシラン)と安価なフェノール樹脂とを共炭化し,Si/C複合材を作製した.得られた材料のLi+電池の負極材としての特性を測定したところ,Siの導入により材料のLi+可逆容量が大幅に増大することが確認できた.特にポリジフェニルシランをSi源に用いた場合には,複合材料中のSi原子1個あたり最大で2.4個ものLi+が吸蔵可能であることが明らかとなった.さらに,材料のLi+不可逆容量について詳細に検討したところ,不動態膜形成と酸化物形成によって生じていることが示唆され,材料のミクロ孔容積と酸素含有量によって不可逆容量が定量的に説明できることが分かった.
  • 谷口 泉, 西 埜太郎
    2003 年 29 巻 2 号 p. 226-231
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    静電噴霧沈着法によるニッケル基板上へのLiCoO2薄膜の沈着について研究を行った.酢酸リチウムと酢酸コバルトを50モル%エタノールと50モル%2-(2-ブトキシエトキシ)エタノールの混合溶液に溶解させることにより,プリカーサ一溶液を調整した.ノズルの先端に形成されるジェットに対する印加電圧の影響について検討し,基板上に噴霧された液滴の均一な沈着は,コーンジェットモードにおいてなされることを明らかにした.走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて,沈着された薄膜の表面形態に対する沈着温度とノズル-基板間距離のようなプロセスパラメータの影響を調べた.523Kの沈着温度では,沈着した薄膜は多結晶体であったが,引き続き,このサンプルを973K,空気中で2時間焼成することで,層状構造をもつLiCoO2が得られた.焼成後の薄膜をリチウムイオン二次電池の正極活物質として用い,それらの電気化学的特性を調べたところ,サイクル特性は薄膜の表面形態によって影響を受けた.
  • 松田 圭悟, 谷口 泉
    2003 年 29 巻 2 号 p. 232-237
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    超音波噴霧熱分解法によりスピネル型リチウム・マンガン複合酸化物粉体(LiMn2O4)を合成した.この粉体の合成には9種類の前駆体溶液を用いた.前駆体溶液は,ギ酸リチウム一水和物,酢酸リチウム二水和物あるいは硝酸リチウムと,ギ酸マンガン二水和物,酢酸マンガン四水和物あるいは硝酸マンガン六水和物との様々な組み合わせからなっている.溶液の金属イオンの濃度は0.54mol/dm3である.X線回折,BET法,TEMおよびFE-SEMを用いて合成されたLiMn2O4の粒子特性を調べた.また,ICP発光分析を用いて粉体の化学組成を決定した.結果として,全ての試料において,X線回折パターンは単一相スピネルLiMn2O4であることを示し,実測した化学組成は化学量論組成と良好に一致していた.しかしながら,粒子の形態は4つのパターンに分類された.合成された粉体を,リチウムイオン二次電池の正極活物質として用い,充放電特性を調べた.また,サイクル特性から試料の電気化学特性を考察した.
  • 伊原 学, 伊藤 晃寿, 横山 千昭
    2003 年 29 巻 2 号 p. 238-241
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    低コストな湿式法で作製できる色素増感型太陽電池は,約10%の変換効率が報告されており,さらに高効率化が可能となれば低コスト高効率太陽電池としての実用化が期待できる.色素増感型太陽電池では,太陽光は色素によって吸収されるため,シリコン太陽電池などの半導体を用いた太陽電池に比べ利用できる波長領域が限られる.本研究では,利用できる波長領域の拡張,特により長波長側の太陽光が利用できる色素増感型太陽電池の作製を目指した.約10%の効率が報告されているRu(bipy)2(SCN)2色素での吸収をできるだけ妨げずに長波長側の吸収を拡張するために,ポルフィリンの一種であるPheophorbide aに注目し,これら色素を混合担持した「増感色素複合型太陽電池」を作製した.混合することによる効率向上には至らなかったものの,利用できる波長領域を広げることに成功した.また,対極の作製方法や両色素の混合比を変化させ収集効率の波長依存性および電流電圧特性を測定し,これら条件と太陽電池の諸特性との関係を調べた.
  • 横山 周平, 伊原 学, 橋詰 浩明, 小宮山 宏, 横山 千昭
    2003 年 29 巻 2 号 p. 242-247
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    我々はこれまでに太陽電池用薄膜シリコン(Si)の作製法として,ZMC(zone-melting crystallization)法により,(100)配向性が高く,欠陥密度の非常に低いSi薄膜の作製が可能となったことを報告した.ZMC膜では,表面凹凸の少ない均一な膜厚のSi膜を形成するために必要な上部酸化シリコン(SiO2)膜とSi膜との界面に,欠陥が集中していることが分かっている.そこでSi膜表面の欠陥を低減するため,上部SiO2膜を付けず凹凸の形成を防ぐ方法として,溶融領域に窒素ガス流を吹き付けながらZMCを行う,新規ZMC法「Gas-flow ZMC」を試みた.吹きつけガスの冷却効果によって,溶融幅を2.2–5.2mmと狭く制御することにより,表面凹凸の少ない均一な膜厚のSi膜を作製することができ,膜表面の欠陥生成を抑制することに成功した.しかし,Gas-flow ZMC膜の結晶配向性は均一ではなく,膜内部の欠陥密度は少なくともZMC膜より60倍以上高い値を示した.以上のことから,上部SiO2膜はZMC膜の(100)配向性を向上させ,それにより膜内部の欠陥生成を抑制する役割を持っていることが分かった.Si膜の膜厚を薄くして,下部SiO2膜との界面での(100)安定性によってGas-flow ZMC膜の配向性を制御することができれば,通常のZMC膜よりも欠陥を低減できると期待される.
  • 喜多 浩之, 温 慶茄, 大友 順一郎, 小宮山 宏, 山田 興一
    2003 年 29 巻 2 号 p. 248-254
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    大粒径を持つ薄膜多結晶シリコン(Si)を低コストに製造する方法として銅(Cu)-Si溶液を用いた溶解析出法に着目し,その製造プロセスの設計および評価を行った.低コスト化のためには,低コスト基板上でのSiの成長が必要である.この成長を基板上でシリカをアルミニウムで還元して核形成させる新しい手法で可能にできることを実験により確認した.また製膜モデルと実験により推定された拡散係数の値を用い,高速製造プロセスの設計ができた.それは,アルミナを基板とし,溶液を乗せた基板を25°C/mの温度勾配中を20mm/sで移動させ,1,000°Cから800°Cまで冷却を行う問に過飽和となったSiを徐々に析出させる量産プロセスである.太陽電池を年産1GWPで製造するケースについて,投入原材料,電力消費量,設備費,建屋代,人件費からコストの推定を行った結果,薄膜製造コストは¥ 6.3/WPとなり,現状のキャスト法による多結晶Si基板に比べて大幅な低コスト化が可能であることが示された.
  • 岡島 敬一, 戸谷 隆史, 須藤 雅夫
    2003 年 29 巻 2 号 p. 255-260
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    ハイブリッド電気自動車用補助電源としての搭載を想定し電気二重層キャパシタ蓄電システムの評価を行った.比較対象にリチウムイオン電池を用い,投入エネルギーおよびCO2排出量について評価した.2,000ccの乗用車を設定し走行条件はJIS10・15モードとした.その結果,キャパシタシステムにおける蓄積可能エネルギー容量を666Whから903Whまで増大させた場合,システム製造時のCO2排出量は増大したが,HEVライフサイクルモデルにおけるCO2排出量は35.7%減少した.システム製造だけでなく走行使用を含めたライフサイクルモデルで評価することにより,高サイクル特性・高充放電効率特性を持つキャパシタシステムの優位性が示された.
  • ――実測エネルギーデータに基づく最適定格出力計算
    村上 恵理, 木村 光, 中川 紳好
    2003 年 29 巻 2 号 p. 261-266
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    群馬県桐生市のいくつかの家庭の電力・給湯・都市ガスの各使用量を実測し,このデータを基に家庭用燃料電池システムの導入を想定した際のエネルギー計算を行なった.
    都市ガスを利用する燃料電池システムの導入に伴うエネルギーコストの削減効果の観点から,各家庭に最適な燃料電池の定格出力を求めた.家族構成,季節の違いによる結果の比較も行った.調査した標準家庭の多くでは,最適定格出力が0.5–1.0kWの範囲であった.また,パラメータ変動による最適定格出力や利益への影響についての検討も行なった.
移動現象,流体力学,混合
  • 長舟 誉也, 小島 英, 平田 雄志
    原稿種別: ノート
    専門分野: 移動現象,流体力学,混合
    2003 年 29 巻 2 号 p. 305-308
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    降伏応力をもつ粒子懸濁流体として炭酸カルシウム水溶液を選び,その流動領域と静止領域の境界測定に電気化学的方法を適用した.電流-電圧-速度の特性を調べるために,回転アームに取り付けた微小白金電極プローブを静止試験流体中で一定速度で移動させ,プローブ速度と印加電圧を変化させて水の電解電流を測定した.電流は電圧とともに増加したが限界電流は得られず,プローブ速度が遅い条件でのみ電流の速度依存性が観測された.混合構内の試験流体の静止領域から流動領域までプローブをトラバースし電流を測定することによって,流動域の境界すなわちcavern境界の測定に本法が十分に適用できることを確かめた.
材料工学,デバイス
  • 下坂 厚子, 塩見 大輔, 白川 善幸, 日高 重助
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 材料工学,デバイス
    2003 年 29 巻 2 号 p. 278-286
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    希望のエネルギー変換特性を持つセラミックスの微構造設計を可能とするために,圧電セラミックスの微構造に基づく電気的,機械的特性値(結合係数,圧電定数,誘電率,弾性コンプライアンス)の推算モデルを提案した.本推算モデルは先に報告したチタン酸バリウムセラミックスに対する誘電率推算モデルを電気的,機械的特性値の推算に拡張したものであり,実際のセラミックスが有する結晶粒径,粒界厚みの大きさ,気孔径およびそれらの分布が圧電特性におよぼす影響を定量的に検討できる.
    本モデルによる推算結果は操作条件によって鋭敏に変化するエネルギー変換特性を良く表現し,提案モデルが十分な信頼性を与えることを確認した.この推算モデルを用いた各特性値の微構造パラメーター依存性への詳細な検討結果は,希望の特性値を与える微構造設計を可能とする.また,本手法は複合圧電材料に対する材料設計シミュレーション法としても期待できる.
分離工学
  • 金岡 千嘉男, 挑 宇平
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 分離工学
    2003 年 29 巻 2 号 p. 267-271
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    本研究では平板型濾布性能評価機を用いて,濾布上の粉塵堆積と払い落としの繰り返しによる圧力損失の時間変化を実験的に検討した.その結果,1集塵サイクル内でのフェルト濾布の圧力損失を3段階に分けることができることが明らかとなった.
    圧力損失変化率は濾過時間の経過とともにI段階では増加し,II段階では減少し,III段階ではほぼ一定である.I,II段階の圧力損失変化率は集塵サイクルおよび払い落とし圧力に強く依存する.集塵サイクル回数が等しければ,払い落とし圧力が強いほど,圧力損失の変化率は小さい.同一の払い落とし圧力では集塵サイクルの増加と共に圧力損失の変化率が増加する.また,最初の数回の集塵サイクルで払い落とし圧力が高ければ圧力損失曲線は下に凸の形状となる.下に凸となる曲線は払い落とし圧力が強すぎて,濾布内部に堆積した粉塵まで払い落とされると考えられる.もし内部に堆積した粉塵があまりにも多く払い落とされると,一次付着層の形成を妨げる可能性がある.
粉粒体工学,流動層
  • 吉田 英人, 宮武 淳, 篠田 栄司, 福井 国博, 金本 浩明
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 粉粒体工学,流動
    2003 年 29 巻 2 号 p. 272-277
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    閉回路粉砕・分級プロセスにおいて製品の粒度分布制御法について実験およびシミュレーションにより検討した.シミュレーションにおいてはピンミル型式の粉砕機および回転羽根型式の分級機の性能特性についての実験結果を基に数式化を行い,分級機からの戻りを考慮して各粒子径における物質収支を逐次的に解いた.製品の中位径を一定とした場合,戻り比が低い場合は分級機の分離径を大きくするために回転数を低くし,粉砕機の回転数を高くする必要がある.また戻り比が高い場合はこの逆となる.製品の中位径を一定とした場合の製品の粒度標準偏差は,中位径の増加と共に増大し,戻り比1近傍において最小値を示す.戻り比1以下において,製品粒度分布幅を大きくするのは,分級機の分離径が大きくなることが原因である.一方,戻り比1以上では,粉砕機の回転数低下による粉砕性能の低下が製品粒度分布幅を大きくする.
生物化学工学,食品工学,医用工学
安全,環境,エネルギー
  • 澤田 佳代, 神田 真吾, 松田 仁樹, 水谷 眞
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2003 年 29 巻 2 号 p. 287-293
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    廃棄物の焼却および溶融処理過程から排出された飛灰をアスファルト中で硫黄,水酸化カルシウムと共に加熱混線することによって,飛灰中に含有される鉛の硫化物化による固定化を試みた.実験は,3種の鉛化合物試薬(PbCl2,PbO,Pb3O4)を用いて硫黄,水酸化カルシウムによる鉛化合物の硫化反応の検討ならびに5種類の鉛含有量の異なる実飛灰の硫化物処理の結果に基づいた鉛の固定化,溶出抑制の検討を行った.
    いずれの鉛化合物試薬(PbCl2,PbO,Pb3O4)も,硫黄と水酸化カルシウムと共に523Kに加熱することで硫化物化した.この523Kにおける硫化反応は,酸化鉛については硫黄との直接反応,塩化鉛については硫黄と水酸化カルシウムの反応によって生成する硫化カルシウムにより引き起こされることが明らかとなった.この試薬を用いた硫化反応の検討結果に基づいて,5種類の突飛灰(10g)をそれぞれアスファルト(2.5g),硫黄(0.4–1.2g)および水酸化カルシウム(0.2–1.8g)と共に二軸混線機を用いて523Kで20分間処理を行ったところ,処理飛灰からの鉛の溶出量は十分,埋立基準値(0.3mg/l)を満たした.
  • 福井 国博, 衣川 元貴, 西本 孝司, 吉田 英人
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2003 年 29 巻 2 号 p. 299-304
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    原料フライアッシュのシリカ成分含有率が水熱法によって得られるゼオライトの結晶構造に与える影響について検討した.その結果,シリカ成分含有率が低いフライアッシュからはフィリップサイトとヒドロキシソーダライトが生成することがわかった.このようなシリカ含有率が低いフライアッシュに溶出速度が大きい非晶質シリカ粒子を混合して水熱処理を行うことで,フィリップサイトのみを選択的に合成できる.また,フライアッシュの水熱処理に使用した処理液(NaOH水溶液)をシリカ含有率が低いフライアッシュの水熱処理に再利用することで,添加物を加えることなくフィリップサイトのみを合成できることがわかった.
    さらに,水熱処理によって得られるゼオライトの結晶構造は,処理液中の可溶性Si種と可溶性Al種の濃度比に依存しており,原料物質の物性から処理開始後90分における両イオンの濃度比を求めることで,生成ゼオライトの結晶構造や吸着能を予想できることが明らかとなった.
  • 澤田 佳代, 松田 仁樹, 水谷 眞
    原稿種別: ノート
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2003 年 29 巻 2 号 p. 309-312
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    飛灰をアスファルトと硫黄,水酸化ナトリウムとともに加熱混線することによる飛灰中重金属の硫化物固定化処理過程において,飛灰中のダイオキシン類の分解が可能であることが明らかとなった.ダイオキシン類の分解は脱塩素化によって進行し,飛灰100g(ダイオキシン類含有量14,490ng/g,毒性当量34.3ngTEQ/g)に対し,アスファルト2.5g,硫黄5.3g,水酸化ナトリウム8.0g,混練温度593K,混練時間1時間の条件下で,ほぼ100%の分解率が得られた.
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