我々はこれまでに太陽電池用薄膜シリコン(Si)の作製法として,ZMC(zone-melting crystallization)法により,(100)配向性が高く,欠陥密度の非常に低いSi薄膜の作製が可能となったことを報告した.ZMC膜では,表面凹凸の少ない均一な膜厚のSi膜を形成するために必要な上部酸化シリコン(SiO
2)膜とSi膜との界面に,欠陥が集中していることが分かっている.そこでSi膜表面の欠陥を低減するため,上部SiO
2膜を付けず凹凸の形成を防ぐ方法として,溶融領域に窒素ガス流を吹き付けながらZMCを行う,新規ZMC法「Gas-flow ZMC」を試みた.吹きつけガスの冷却効果によって,溶融幅を2.2–5.2mmと狭く制御することにより,表面凹凸の少ない均一な膜厚のSi膜を作製することができ,膜表面の欠陥生成を抑制することに成功した.しかし,Gas-flow ZMC膜の結晶配向性は均一ではなく,膜内部の欠陥密度は少なくともZMC膜より60倍以上高い値を示した.以上のことから,上部SiO
2膜はZMC膜の(100)配向性を向上させ,それにより膜内部の欠陥生成を抑制する役割を持っていることが分かった.Si膜の膜厚を薄くして,下部SiO
2膜との界面での(100)安定性によってGas-flow ZMC膜の配向性を制御することができれば,通常のZMC膜よりも欠陥を低減できると期待される.
抄録全体を表示