阪神大震災の発生48時間以内では多大な医療需要が発生し,被災地在住の医療スタッフや近郊医療機関の活躍が期待された。大阪・阪神間在住の外科医師に対して,アンケート調査を行い,今回の震災直後の行動と広域大災害発生時の行動についての意見を質問した。対象は阪神・大阪在住の外科医300人で回答数128人(回収率43%)であった。震災直後の行動は60%がまず勤務先の病院に向かっており,48時間以内において震災に関連した医療活動を行ったのは19%であった。震災に関わる医療活動ができなかった理由は,78%が勤務先の病院の仕事のためで,後方支援にて待機していたが搬送されて来なかったのが49%であった。59%は近郊医療機関の役割は後方支援と考えているが,24%は積極的な現地での活動を期待していた。再び近郊に大災害が発生した場合,34%は積極的に現地での活動を考えており,自分の居住地区に発生した場合は41%は現地にとどまり,そこでの医療活動を考えていた。広域大災害は大量の医療需要を産み出し,現地の医療機関も被害を受け,その活動はごく限られたものになる。一方,今回の阪神大震災では国や自治体の系統的な援助はなく,需要の最も多い48時間以内の超急性期に医療の空白が生じた。その空白を埋めるのは,最も現地にアプローチできる現地在住の医療スタッフと近郊医療機関と考える。広域大災害時には現地の医療スタッフは自分の本来の勤務先にとらわれず,臨機応変に近くの医療機関に参加するということを教育,啓蒙していく必要を感じる。近郊医療機関はただ単に受け皿として待つだけでなく,専門知識をもったスタッフを積極的に現地に送り,トリアージや患者搬送などに活躍すべきではないかと考える。このような災害時の医師としての行動も含めて災害医学の教育・啓蒙が必要である。
抄録全体を表示