2年間のドクターカー運用の経験をもとに一地域における院外心肺停止の実態を明らかにする。1993年4月1日からの2年間にドクターカー出動で経験した463例の院外心肺停止例を対象とし,頻度,年齢,性別,種別,病前のプロフィール,心肺停止の時刻,場所,目撃者の有無,現場到着時の状況,について検討した。1)頻度:院外心肺停止の頻度は人口10万あたり50.6~59.8人/年であった。2)年齢:71歳以上の例が43.7%と高齢者の占める割合がきわめて高かった。3)種別:内因性心肺停止は65.0%,外因性は21.4%,不明13.6%であった。4)病前のプロフィール:11.4%は病前慢性疾患や末期癌のため寝たきりの状態であった。5)発症時刻:準夜帯,日勤帯,深夜帯の順に多く発症していた。6)発症場所:内因性心肺停止例,不明例のほとんどは自宅内で発症しており,そのうち16.8%は浴槽内で発見された。7)目撃者:目撃者がいたのはのは38.9%にすぎなかった。8)現場到着時の状態,心電図所見:26.3%はすでに死体現象を呈していた。これらを除くと心静止が78.3%,心室細動が12.8%,電導収縮解離が3.1%,徐脈が5.8%であった。著者らの院外心肺停止例は従来の報告におけるDOA例と比べると,1)高齢者の比率が高く若年者の比率が低い,2)内因性心肺停止の比率が高い,3)目撃者(+)の例が少ない,4)心室細動の比率に大きな差はない,5)DOA例のなかには搬送中の救急車内で心肺停止を来した例が混入しているなどの相違点があった。院外心肺停止の実態と従来報告されているプレホスピタルケアが行われなかった時代のDOAとの間には,母集団の質に明らかな隔たりがあった。今後は母集団を統一したうえで各システム間の治療成績を比較検討する必要がある。
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