日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
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8 巻, 7 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 山下 衛, 田中 淳介, 山下 雅知
    1997 年 8 巻 7 号 p. 273-287
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    経口中毒物質の吸収を阻止することは中毒治療の基本原則である。活性炭投与,催吐剤投与,胃洗浄などの方法が古くから行われているが,いずれの方法が経口中毒物質吸収阻止に最も効果的であるかについては議論のあるところである。1980年代までは活性炭の投与方法やその吸着効果について十分検討されなかったことが,その原因のひとつである。この10年間に,活性炭の効果的な投与方法や投与量についてヒトを使って研究され,活性炭投与が中毒物質吸収阻止のために最も重要であり,そのなかでも頻回活性炭投与法が効果的であることが明らかになってきた。この論文では催吐や胃洗浄の方法を説明し,活性炭の中毒治療への重要性について述べる。
  • 射場 敏明, 八木 義弘, 木所 昭夫, 布施 暁一, 大野 陽一, 金城 義明, 秋山 忠
    1997 年 8 巻 7 号 p. 288-296
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    脂肪は効率のよい栄養源でありながら,長鎖脂肪(LCT)は免疫機能抑制や肝障害などの副作用のため,重症敗血症時には一般的に使用禁忌とされている。今回われわれは完全静脈栄養(TPN)施行下のラット敗血症モデルにおいて,新しい脂肪製剤である中鎖脂肪(MCT)の有用性を検討した。方法:ラットを3日間絶食にした後に中心静脈カテーテルを留置し,輸液をブドウ糖とアミノ酸製剤のみで調製した無脂肪群と,非蛋白カロリーの50%をLCTで補給するLCT群,およびMCTで補給するMCT群の3群を設定した。そしてTPN施行後4日目に0.80あるいは0.05mg/kgのエンドトキシン(LPS)を静脈内投与し,24時間後の生存率を検討した。またLPS 0.05mg/kg投与時の血液生化学検査と腸間膜リンパ節,肝および動脈血培養における細菌コロニー数の検討も行った。結果:生存率はLPS 0.80mg/kg投与で無脂肪群50%, LCT群47%, MCT群83%, 0.05mg/kg投与で79%, 87%, 100%とそれぞれMCT群で最も高かった。血液検査ではLCT群で著明にみられた血小板数低下やGOT, GPTの上昇が,MCT群では軽度の変化にとどまっていた。また腸間膜リンパ節,肝および動脈血へのbacterial translocation (BT)は,MCT群が無脂肪群やLCT群に比し,同等もしくは低下傾向を示した。まとめ:敗血症ラットにおいてMCT投与群では無脂肪群やLCT群と比較して有意な死亡率の低下が得られた。そしてMCT群ではLCT群にみられるような血小板減少や肝障害がみられず,無脂肪群と同等かそれ以上の結果であったことから,MCT製剤は敗血症の治療に有用であると考えられた。
  • 上條 吉人, 増田 卓, 堤 邦彦, 西川 隆, 相馬 一亥, 大和田 隆
    1997 年 8 巻 7 号 p. 297-305
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    常用量のベンゾジアゼピン系薬剤によって,血中濃度が中毒域となった68歳から72歳の高齢者の3症例を経験した。各症例のベンゾジアゼピン系薬剤の体内薬物動態を分析し,高齢者の薬物動態の特徴と投薬上の問題点について検討した。症例1と症例3は食物誤飲による窒息で搬送され,症例2はうっ血性心不全の治療中に意識障害を生じて入院となった。ベンゾジアゼピン系薬剤として,症例1はロフラゼプ酸エチル(Lof) 2mg錠を1日1回とエチゾラム0.5mg錠を発症前に1回のみ服用,症例2はLof 2mg錠を1日1回,症例3はLof 1mg錠を1日3回服用していた。3症例のベンゾジアゼピン系薬剤の血中濃度は,ガスクロマトグラフィおよびベンゾジアゼピンレセプターアッセイを用いて経時的に測定した。来院時のLofの血中濃度は,症例1は256ng/ml,症例2は363ng/ml,症例3は425ng/ml,血清ベンゾジアゼピン受容体結合活性はジアゼパム当量で,症例1は1,800ng/ml,症例2は1,400ng/ml,症例3は2,200ng/mlであり,いずれも血中濃度は中毒域であった。Lofの消失半減期(T1/2)は,症例1は124時間,症例2は212時間,症例3は121時間であり,症例2においてT1/2の著明な延長を認めた。3症例はいずれも高齢者で,青壮年と比較して肝腎機能の低下から薬物クリアランス(CL)が低下し,症例2では心不全のためCLがより低下していたことが考えられる。さらに,脂肪組織の減量による分布容積(Vd)の減少も加わって,ベンゾジアゼピン系薬剤の血中濃度が上昇したものと思われた。また,多剤の服用は遊離型ベンゾジアゼピン系薬剤の濃度を上昇させるため,中毒症状が出現しやすかったものと考えられる。以上から,高齢者へのベンゾジアゼピン系薬剤の投与に際し,肝腎機能,血清蛋白濃度,体重変動,併用薬剤に注意して,ベンゾジアゼピン中毒を未然に防ぐ必要がある。
  • 篠原 一彰, 池上 之浩, 熊田 芳文, 野崎 洋文
    1997 年 8 巻 7 号 p. 306-311
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    A 12-year old boy was hit by a truck and admitted to our hospital. On admission, he was in a semicoma and his abdomen was distended but blood pressure was normal. Emergent brain CT revealed multiple brain contusions which were treated conservatively. Abdominal CT revealed extensive retroperitoneal hematoma and emergent laparotomy was performed. The operative findings were retroperitoneal tamponade and no intra-abdominal visceral injury. Since the blood was dark in color and non-pulsatile, and there was no circulatory shock, we did not explore the retroperitoneum and simple laparotomy was established. Circulatory status was stable after the operation and there was no injury to the pancreas, duodenum, kidney, spine or pelvic bone. Follow-up abdominal enhanced CT was performed on 30-POD, and thrombus was found in infra-renal IVC. The size of the thrombus was 32mm×7mm at IVC angiography which suggested that the cause of the retroperitoneal hematoma was the IVC injury at this site. Anti-coagulant therapy was performed. The thrombus disappeared 2 months after the operation, and there was no evidence of pulmonary embolism. He recovered completely and now doing well 1 year after the operation. Although mandatory exploration of retroperitoneal hematomas is accepted, surgical IVC repair is not always controllable. In some cases with stable circulation and no active pulsatile bleeding, IVC injury may be worth treating conservatively.
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