ササ・タケ類に寄生するハダニの1種,タケスゴモリハダニ
Schizotetranychus celarius (BANKS)に見い出された形態,および造巣性に関する変異を,主に8地点から採集した9個体群について検討した。
個体群間に見られた形態上の変異は,前胴体背毛P
2と背中後体毛D
2に顕著にみられ,それは野生,および飼育個体群の標本の相互比較から,地域ごとに遺伝的に固定したものと判断された。
前胴体背毛P
2と背中後体毛D
2の長さの比較によって,9つの個体群は短毛形,中毛形,および長毛形の少なくとも3つの不連続なグループに分けられると判断された。
クマイザサ
Sasa senanensis FRANCH. et SAV.を寄主として,実験的にそれぞれの個体群の成虫雌が48時間に作る巣網の面積を測定した。巣網の大きさは,P
2とD
2の長さの変異にほぼ並行した変異を示すことが明らかとなった。
巣網の大きさと,体の各部分の測定値とを重回帰分析を用いて検討したところ,巣網の大きさは,背毛P
2(D
2も同様)の長さによって最も良く説明された。
巣網の下で生活している雌成虫の行動を実体顕微鏡下で観察した結果,胴部の背毛P
2,おびD
2が,巣網の存在を認知する上で重要な毛であると判断された。このことから,巣網の大きさが,胴体部の背毛P
2,およびD
2と最も関連が高いという統計的結論を機能的な面で説明することができた。
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