日本応用動物昆虫学会誌
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38 巻, 1 号
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  • I. 雌成虫による卵の被覆行動の意義
    下田 武志, 真梶 徳純, 天野 洋
    1994 年 38 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ハダニ類の捕食者であるヒメハダニカブリケシハネカクシOligota kashmirica beneficaの雌成虫による産下卵の被覆行動の意義を考察するため,クズ葉上での卵の被覆状況を調査し,さらに被覆の効果に関する室内試験を行った。
    1) クズ上ではほぼすべての卵に被覆が施されていた。おもな被覆材料はハダニの脱皮殻や卵殻などハダニのコロニー内の残渣であり,生きたハダニが使用されることはまれであった。
    2) 雌成虫は受精卵に対してよく被覆を施したが,未受精卵にはほとんど被覆しなかった。
    3) 被覆された卵は,そうでない卵よりも,捕食者に捕食される頻度が有意に低かった。しかし,生きたハダニの卵で人為的に被覆した卵では明瞭な保護効果が認められなかった。
    4) 被覆程度が異なる卵の孵化率には有意差が認められず,乾燥に対する保護効果は今回の試験では否定された。
    5) 以上の結果から,本種の雌成虫による卵の被覆行動は母親による捕食者に対する子孫の保護であると結論できる。
  • 渡邊 朋也, 寒川 一成, 鈴木 芳人
    1994 年 38 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    長距離移動性イネウンカ類(トビイロウンカ,セジロウンカ)の発生動態の年次変化の実態を明らかにし,その原因について考察するため,九州農業試験場(福岡県筑後市)における1951~1990年の予察灯の日別誘殺数データを解析した。
    1) 飛来侵入世代および増殖世代の誘殺数は,トビイロウンカでは変動しつつ減少する傾向があり,セジロウンカでは1970年代中ごろから一貫して増加する傾向があった。1980年代のトビイロウンカの飛来侵入世代,増殖世代およびセジロウンカの飛来侵入世代の年次間変動幅(分散値)は他の年代にくらべて増加した。セジロウンカの増殖世代の年次間変動は1960年代から一貫して減少する傾向があった。
    2) 回帰分析の結果から,両ウンカとも飛来侵入世代の増加に対して増殖率の低下が認められた。セジロウンカでは1980年代の回帰係数の絶対値は他の年代より大きく,増殖率の密度依存的低下がもっとも強かった。トビイロウンカでは他の年代にくらべ1980年代の増殖率が低い傾向にあった。
    3) 各世代の誘殺数の対数値を用いた主成分分析の結果から,両ウンカとも発生パターンを3群に分けることができた。群I, IIは飛来侵入世代誘殺数は同程度だが後半の世代の増殖率が大きく異なった。その要因としてトビイロウンカでは飛来開始時期の早期と8月の気温が,セジロウンカでは9月の降水量が影響することが示された。群IIIはG0は非常に多いが,その後の増殖率が上がらないパターンを示した。1980年代の主成分特性値は非常に極端な値を示すことが多かった。
  • 樋口 博也
    1994 年 38 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1988∼1990年に,イチモンジカメムシの夏ダイズでの産卵消長,産卵部位,卵塊サイズなどの産卵特性を調査し,卵期の死亡要因について検討した。
    1) イチモンジカメムシによる産卵は,夏ダイズの生育段階が莢伸長期に入ると同時に急激に増加した。1988年と1989年は子実肥大期に入っても継続的に産卵が見られたが,1990年は子実肥大期にピークに達した後減少し1山型の産卵消長を示した。
    2) ダイズ株内の産卵部位は,莢に対してが55%以上と最も多く,次いで葉,茎の順となった。
    3) 3年間とも卵塊サイズが11∼25の卵塊の頻度がおよそ60%を占めた。しかし,卵塊サイズの変動は大きく,その範囲は2∼47であった。卵塊サイズの平均値は20.4±8.4(±標準偏差)であった。
    4) イチモンジカメムシの卵期の死亡要因として,孵化失敗,卵寄生蜂による寄生,原因不明の死亡,消失が認められた。卵期の最大の死亡要因は,卵寄生蜂Telenomus triptusによる寄生であり,その寄生率は1989年が91.3%, 1990年が78.0%と推定された。
    5) 卵寄生蜂T. triptusによる寄生率は,寄主の卵塊サイズに関わらず高率であり,本種は卵塊を単位として“all or none”的な死亡要因として働いていると判断された。
    6) 卵の消失が,1989年は18%, 1990年では46%観察され,重要な死亡要因の可能性が示唆された。消失の原因は不明であるが,風雨による脱落の可能性は低かった。
  • 八隅 慶一郎, 大羽 克明, 平野 千里
    1994 年 38 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    走査電子顕微鏡により,ミナミキイロアザミウマ雌成虫の口器構造ならびに本種の摂食により生じたナス,キュウリ葉上の被害部分を観察した。本種の口器は,複眼の間から下に広がる後頭楯の下方に位置する口錐である。左右がやや不対称の逆三角形で,前頭楯,上脣,小腮葉および下脣が癒合して形成されている。口錐の先端は膜状の側舌で覆われ,その上には感覚毛と考えられる約10対の小突起が配列している。摂食時には側舌は口錐側方に後退し,露出した口錐先端から1本の大腮針と2本の小腮針を突出させる。大腮針は肉厚で大きく,直径約1.7μmであった。植物の表皮細胞に穴を穿つ役割をもつと考えられる。一方,小腮針は2本が合わさって1本の吸汁管を形成する。形成された吸汁管の外径は約1.7μm,内径は1μm前後である。膜状の側舌が後退して露出した口錐先端には,突出した大腮針および小腮針の基部を大きく囲んで上脣皿(仮称,labral pad)と考えられる盃状の構造物が認められた。
    被害を受けて陥没したキュウリ葉やナス葉の表皮細胞には,楕円形の吸汁孔の痕(直径約2μm)が認められたが,それ以外の傷痕,例えば咀嚼あるいは嘗食の痕跡はまったく認められなかった。口器の構造および摂食の痕跡からみて,本種は真の吸汁性昆虫であると結論される。
  • 村上 陽三, 平松 高明, 前田 正孝
    1994 年 38 巻 1 号 p. 29-41
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    導入天敵の効果に及ぼす土着天敵の影響を予測する目的で,チュウゴクオナガコバチ未分布地の宮城・岡山両県で,1991年春から2年間にわたってクリタマバチの寄生者複合体について調査を行い,熊本県のチュウゴクオナガコバチ放飼園での結果と比較した。
    1) 寄生者複合体の構造は地域によって異なり,土着の一次寄生蜂は宮城で3種,岡山で8種,熊本で12種観察され,南に向かうほど種数が増加する傾向が見られた。宮城と岡山での優占種はクリマモリオナガコバチであったが,その優占の程度は異なり,宮城では著しく高く岡山では比較的低かった。熊本ではキイロカタビロコバチとオオモンオナガコバチが優占種であった。また同じ地域でも環境条件の違いによって寄生者複合体の構造が異なった。
    2) 寄生率は宮城と岡山の間で差は認められず,また寄生者種数との間の相関は見られなかったが,周辺の植生,寄主密度,随意的高次寄生者の影響がうかがわれた。
    3) 宮城と岡山で優占種であったクリマモリオナガコバチは,終齢幼虫期に高い死亡を受け,終齢幼虫初期密度と死亡率の間には宮城では有意な相関が見られなかったが,岡山では有意な負の相関が認められた。MORRISの方法で分析した結果,岡山では本種は密度逆依存の死亡を受けることが示唆された。
    4) クリマモリオナガコバチの幼虫と蛹を攻撃する随意的高次寄生者は4種認められたが,そのうちの2種Eupelmus sp.とトゲアシカタビロコバチが岡山と熊本で高い寄生率を示した。これらの随意的高次寄生者の二次寄生が,クリマモリオナガコバチの終齢幼虫期の密度逆依存的な死亡要因となっているものと推察された。
    5) 以上の結果から,将来クリマモリオナガコバチの近縁種であるチュウゴクオナガコバチが,宮城・岡山両県に導入された場合には,岡山では随意的高次寄生者の二次寄生による密度逆依存的な死亡のために,チュウゴクオナガコバチの増殖に長年月を要するが,宮城ではその作用が弱いので,短期間のうちにヂュウゴクオナガコバチの密度が増加するであろうと予測された。
  • 下地 幸夫, 小濱 継雄
    1994 年 38 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    The oviposition behavior of the West Indian Sweet Potato Weevil, Euscepes postfasciatus FAIRMIRE was observed in the laboratory. Oviposition behaviors were composed of searching for an egg-laying site, resting, excavating an egg-laying hole with mouthparts, ovipositing into the hole, lidding the egg-laying hole with feces, and resting after ovipositing. The size of the egg, features of the egg-laying hole and the fecal lid were also noted.
  • 望月 淳
    1994 年 38 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 1994/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
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