1968年2月から1969年1月までの1年間,南極昭和基地での越冬観測期間中々に種の雲物理,大気電気に関する観測を行なったが,特に降水粒子の電荷発生機構の観点から雪結晶の電荷と結晶形の関係をみるために多くの降雪の電荷の測定と同時に顕微鏡,レプリカによる結晶形の観測が行なわれた.その結果,樹枝状六花,角板は負の電荷を有するものが多く,角柱,砲弾集合,側面結晶は正の電荷を有するものが多かった.これらの結果は観測場所が清浄な南極であること,大きな雪片がほとんど降らないこと,天然の降雪でしかも各降雪毎の測定個数が非常に多いこと,大気電場の変動にいわゆる wave patternがなかったことなどから信頼のおけるものである.更に各結晶形の成長する温度範囲,すなわち樹枝状六花,角枝は-10°C~-20°C,角柱,砲弾集合,側面結晶は-20°C~-35°C,を考慮することによって雷雪等の正極性の電荷分布を定性的に説明することができ,これからの電荷発生,分離を論ずる際には結晶形も考慮する必要があると考えられる.
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